11.〜ギャル魔女登場〜
前回までのあらすじ
マジナはギャル魔女
白い肌に金髪の長い三つ編み。黒いシンプルなワンピースに黒いトンガリ帽子、その手には箒。
この情報で誰もがマジナが魔女だという認識をするだろう。それは間違いではない。
マジナへの客だとルゥから告げられると、マジナは「マジ?よろよろ〜♪」と顔の前で裏ピースとウィンクを決める。その爪にはピンクのキラキラネイル。
ギャルだ。完全にギャルだ。
「わたしに会いにきたってマジ??大変だったっでしょ〜!なになに〜?」
俺を見て凄い軽い感じで聞いてくる。
というか、インキャがこんな陽キャに目を合わせられるはずもなく…。
「あ、あの、いや、あはは…」
「?」
キョドキョドする俺をキョトンとした顔で見てくる。外見が良くなってもこの性格治さないとダメだなと痛感した…。
「こんにちは」
そんな俺を見てアダシノはマジナに声をかける。
そうだ!アダシノは前世でもガンガンイケイケスクールカースト上位だから、ギャルには慣れているんだ!
頼もしい…!俺の隣にいるアダシノに気づいたマジナはおおっ!と小さく驚く。
「よすよすー。ーーってかヤバ、イケメンじゃん!?君も私に用がある感じ??」
ぐいと距離を詰めてくるギャル魔女にも臆せずアダシノはさわやかに対応する。
「俺はアダシノです。こっちの田ノ原と一緒で薬草を貰いきました」
「え、そうなの?」
不思議そうに俺の顔を覗き込みながらこちらを見る。
「あ、あ、あ、まぁ」
マジナの顔の少し斜めを見て答える。
「薬草かぁ…。ホントかなぁーーーー?」
きょどる俺の方を見ながら、ポツリと囁く。さっきとは裏腹に低いその声に俺はびくりとする。
「………うーん、全然オッケー!私を頼ってくるなんて、ワカってるじゃん???」
先ほどの低い声が嘘のように首を傾げて両頬に指でつくった丸をくっつけて、ニンマリと笑う。
「ダビィたそとルゥたそも元気〜??♪」
くるりと向きを変えてダビィとルゥに声をかける。
「今日もダビィたそは激かわ〜!」
そういうとマジナはダビィに抱きつく。そんなマジナに慣れているのか「うるさい」と言いつつダビィは体勢を変えない。
「ルゥたそは今日もお姫様を守ってたんでちゅか〜?」
「うっざ!!!黙れ!」
ルゥをヨシヨシしようと手を伸ばしたところをルゥに払われる。
「……マジナはこの性格だから、魔女たちに嫌われて追い出された」
「ちょっ!ダビィたそってば〜!」
もー!っと照れるそぶりをする。照れるとこか?
でも確かに魔女はしからぬ雰囲気というか、どっちかっていうとJKみたいな…
「見た目も変。爪に色ついてるし、そもそも魔女はこんなしょぼい格好しない」
「え〜良いじゃん!可愛い方が気分あがるし!一応この爪も攻撃対象への切れ味あがるように効果付与つけてるもん」
何気に怖いこと言ったな。というか、
「魔女ってこんな格好じゃないのか?これがセオリーというか、」
俺が口に出すより先に、アダシノが尋ねた。
黒いシンプルなワンピースに黒いトンガリ帽子。ついでに持ってるものは箒。まさに魔女の王道セオリーといったところだろう。
俺たちの疑問にルゥは「はぁ〜?」と怪訝な顔をした。
「ちげぇよ。魔女っていったらヒラヒラした服着てるだろ」
「そう。お姫様みたいなのとか」
「ん〜!まぁね〜。魔女って女地域社会だからオシャレさんなんだよね!しかもむずいワンピース作んなくても魔法である程度は好きなように作成できるかんね〜。あとは装飾魔法のアクセつけてデコったり!みんな個性的なわけ!」
「なのにマジナは地味な服。帽子も下手なのに縫い直してるし、しかも訳わかんない大きさだし」
「え〜可愛いじゃん♪?魔女の宅急便と、ドレミちゃん的な????」
「いつも言ってるけどなんだよソレ」
マジナ達の話が弾む。というか!
「「魔女○宅急便!?」おジャ魔○ドレミ!?」
アダシノと声が被る。いや、そんな事はどうでも良い!
「魔女の宅急便て、どういう事だ!?」
俺はマジナの肩を掴む。どう考えても前の世界の作品だ!
慌てている俺をにまりと見ると、マジナは言った。
「やっと目を見てくれた♪」
「私はマジナ。千里眼の魔女。未来も過去も、遠くも近くも。別次元だって私の領域」
「!?」
さっきまでの能天気な明るさはなくなり、顔は笑っているが細めた瞳はギラギラしていた。俺は思わず肩から手を外して後退りする。
「ねぇ、さっきわたしに嘘ついたでしょ?」
「あ、あ、の」
爬虫類に狙われた小動物のように動けなくなる。さっきまでのキラキラした感じはなくなり、魔女というに相応しい雰囲気だ。黒くどろりとした威圧的なオーラはじりじりと獲物を追い詰め絡みつくようにマジナは俺の腰をゆっくりと掴む。
「薬草ぉ……?ホントは、違うんじゃない???」
「あ、いや、俺は……」
「ねぇ、……私の眼から逃げれると思ったの、ウソツキくん?」
「あ、あ……」
「ーーーーーーー。」
マジナはふふふ、と怪しく笑うと、
「ーーーな〜んてね☆☆☆実はナナちんから要件聞いてたんだよん♪♪♪」
ぱぁっ!と両手を眼前に広げて楽しそうに笑う。俺はさっきの気迫に押されてなにも言えない。
昔を思い出してしまったのだ。ヤンキー崩れみたいな奴らにどつかれた思い出を。あいつらも、捕食者みたいに、反抗できない弱い奴って分かってて狙ってくるみたいな、ギラギラした眼…。
そんな俺を見てマジナはビックリする。
「ごめんごめん!怖くないよ〜☆マジナちゃんは、マジで優しいマジナちゃんだから!」
「あー、悪いマジナさん。田ノ原にそういうノリやめてあげてくれないか?」
「え、ごめんなさい!もうしない!!怖がんないで〜〜!」
制するアダシノの言葉にマジナは反応して謝る。いや、別に怖いとかじゃなくてただビックリしただけだし………。…。
「べ、別に大丈夫だし」
「ほんと??良かった〜!マジでごめんねぇ!!実はナナちんに聞いてたんだよ〜!!」
ごめんねと言いながら俺を抱きしめてヨシヨシしてくる。
優しい撫で方。柔らかい布から伝わる柔らかい肌と温かい体温。そして鼻腔をくすぐる甘い匂い。
これは危ない。さっきの事を忘れて好きになってしまう。
「それで、何で魔女の宅急便とか知ってたんですか?」
固まってあまり喋らない俺にアダシノが話を戻してくれる。
「あ、それはね〜!」
マジナは俺を離し、とんがり帽子の中をゴソゴソした。
「じゃっじゃじゃーん!!これ♪」
取り出したのはーーーーー
「俺の携帯!!!!!!」
そう、俺の携帯だった。
「俺の携帯じゃん!!」
「!」
混乱のあまり何度も言ってしまう俺と、突如現れた携帯を見て固まるアダシノ。
「これケータイって言うの〜?マジ凄いねこれ!」
「何だよそれ」
「ツヤツヤした…板??石で出来てるの?」
「ね〜これやばいんだよ〜!」
「どどどど、どうしてそれが!?」
「なんでケータイ!?」
和やかに3人は話しているが、俺たちは気が気じゃない。
「とりあえず返してくれぇ!!」
魂の悲鳴のように俺が叫ぶ。はーいと気の抜けるような返事ですんなりと返される。
平静を装うが汗が自然と額をはしる。この中にはプライベートでプライバシーがセンシティブでセクシュアルな内容がたんまりと詰まっててだな…。それをこんな陽キャで女性でしかもギャルに見られるなんてだな…!想像しただけで死んでしまう!
「あ、それね〜。なんか数字の暗号入れないと入れないみたい☆」
その言葉にハッとする。そうだよ!大事な大事なプライバシーを守るためにロックを設定しているんだった!良かった〜!俺はホッとため息をついた。
「あれ、じゃあどうやって宅急便とか知ったんだ?」
そうだ。携帯を見れないなら、どうやって?
んふふ、といたずらっ子のような笑みをこぼす。
「ん〜とね、裏技!千里眼を使えば!マジナちゃんには暗号なんて関係ナッシン♪♪こうグーっとねしたら見えちゃうんだ〜♪」
そういうと、親指と人差し指で丸をつくり目に当てる。
それってつまり、
「中を見たのか!?」
「???うん♪」
ロック意味ないじゃん!見られてんじゃん!?俺は顔面蒼白だ。
アダシノは察したようになんとも言えない顔をする。
中になにを入れてたのか思い出………せ
……………誰かマジナの記憶を消してくれ!!!!!
「その中をテキトーにちょちょっと見たら絵が動く動画があってさ〜!そっちの世界をお勉強したの〜♪マジ偉くね??」
いえーいと言いたげな表情のマジナを尻目に「それ以外は…アニメ以外の動画とか、写真は……見たのか??」と俺は聞く。
進むも地獄、退くも地獄。
「あ〜、文字ばっかりで見てないかも〜?文字はお勉強中!」
嘘か本当か分からないが、マジナの言葉を信じるとする。そうしなければ自我が崩壊してしまいそうだから…。
携帯を見る。画面はヒビが入っているがその他に大きな損傷はないみたいだ。電源を押すと、全体的に暗くは見えるが作動した。しかし、いくら触っても動かない。どうやらバグっているようだ。
懐かしい…。
まだ数ヶ月だが何年も触ってなかったように感じる。懐かしくて涙で画面が滲みそうだ。
「あ、あの!!!」
アダシノが大声を上げる。
「俺のは!?俺のスマホありますか!?」
初めてアダシノの狼狽する姿を見た。それもそうか。現代人にスマホは必須。アダシノにとってもかなり大事な物のはずだ。
「あ……ごめんね」
気まずげにマジナは告げる。
「そうですか…」
その瞬間アダシノは悲しげな表情になる。俺は気の利いた言葉をかけようとして、でも何も出てこなかった。同情も励ましも、たまたま貰えたラッキーな俺が言うには軽すぎた。アダシノは少し沈黙した後、気を取り戻したように質問する。
「それはどこで見つけたんですか…!?」
そこに行けば、運が良ければ、自分のも見つけられると希望を含んだ言い方だった。その言葉にマジナはバツが悪そうに言い淀む。
「あ〜……。ごめん。それは言えないかも…。というか、多分…いや絶対君のはないの」
「ごめんね」先ほどのギャルの雰囲気はなくなり、小さくしゅんとしてマジナは言う。
そっかぁ…と消えそうな声とともにアダシノは頭を掻く。俺の携帯の使い方なんて数少ない相手とのMINEや観賞用のSNSしかないが、アダシノは違うのだろう。沢山の友達や仲間がいて、沢山のつながりとかやりとりが携帯に詰まっている筈だ。
俯き大きなため息を吐いた後、自分の頬を何度か叩いた。
「携帯はあったほうが良かったけど、いや、残念だったな。でも田ノ原のだけでもあって良かった!」
そう言いながら俺の肩を叩く。なんて良い奴だ。
「それより、薬草!珠玉の玉って薬草なんですけどありますか??団長が欲しいって言ってて…」
その表情は固い笑顔だったが俺は気づかないフリをした。
「ああ。珠玉の玉ならいくつかあるよ!アダッチーはイケメンだし、全部上げちゃう!!」
アダシノに合わせてマジナも努めて明るく返す。
「ほんとですか?今度団長の誕生日なので欲しくって。あ、団長はスピカ団のグリゴリオって名前で」
「あー!知ってる!最近スピカ団頑張ってるって聞いたよ〜!グリゴリオ元気??腰痛大丈夫そ???」
「腰痛は波があるみたいで…。珠玉の玉があれば腰痛もだいぶ楽になるって言ってたのでプレゼントしたくって…」
「アダッチーまじやさし〜!団長孝行じゃ〜ん♪珠玉の玉は珠玉草って草から取れるんだけど、生息が森の奥で見た目が似てるのが多いのと、棘がある草だから中々流通しないんだよね〜」
うんうんとマジナは頷く。しかし俺らを見て「あ〜」と微妙な声を出した。
「でも二人は飛べないよね?」
「?」
「この箒は一人乗り用なんだ。珠玉の玉はウチにあるんだよね〜」
「マジナさんの家はどのくらいの場所にあるんですか?」
「うーん。私はいつも飛んでるからなぁ。結構遠いかも。ダビィたそとルゥたそはウチに来たことあったよね?」
「ある。結構かかった」
「多分ここからだとあと2〜3日くらいかかった気がするな」
うーんと3人は首を傾げる。子供で2日なら俺たちでも1日はかかるのか?結構遠いな……。
そんなに遠いと思っていなかった俺とアダシノはちょっと考え込んだ。
そんな俺たちを見てマジナはポンと手を叩く。
「そ〜だ♪町に用事あったし、その時に持ってくよ!明後日くらい!」
名案名案♪と両手ピースを揺らしてニコニコ笑い出した。
俺は別に早めに聞けたらそれで良いけど…
「アダシノはそれで良いのか?」
「明後日なら俺は大丈夫。田ノ原は大丈夫か?」
「あー。俺も別に。まぁ、聞きたいこともあったけど別にその時で良いや」
「ほっほ〜?なになに〜☆?何が知りたいの??」
俺たちの会話にウキウキと入ってくる。鍛錬の方法なんて恥ずかしくて聞けない。
「いや、あー、あんまり人がいない時に聞きたくって…今度でも大丈夫です」
腑に落ちない感じであったが、なるほどとマジナはつぶやいた。
「じゃさ〜明後日また会お〜」
「はい。何時くらいの場所はどこにしますか?」
「お昼くらいに行こっかな〜♪んでご飯食べよ!スピカ団のとこ分かるからアダッチーを迎えに行くよ〜」
スピカ団の居場所も知らないし何なら町にも全然行きたくないんだが、ほかに会う場所もなさそうなので恥を忍んで行くしかないか……。
「もちろん、オネェさんがお昼奢っちゃうよ〜!」
そう言いながらピースを突き出しウインクをする。
「え?マジナさんはいくつなんですか?」
思わず聞いてしまう。見た目は俺らと変わらないか少し上そうだが。
俺の質問にう〜んと、と頬に指を当てて空を見上げる。
「私はね〜にひゃく〜」
「「!?」」
「きゃっ♪これ以上はヒミツ!」
いや、200歳以上なら下二桁を恥ずかしがる必要ないだろ、と思いつつそれ以上は突っ込まないでおこう。
「…ねぇ、どお?」
頬に両手を当てながら俺に近づく。近い。
「な、何がですか…??」
俺は近づく綺麗な顔に緊張して目をキョロキョロさせる。
白い頬を赤らめながら、マジナは吐息のかかる距離まで顔を近づけた。
俺は思わず顔を背ける。今横を向いたらキキキキキキスしてしまうんじゃないか!?
長くくるんとしたまつ毛、近づいても毛穴の見当たらない滑らかな肌。
服の時とはまた違う匂いがする。薔薇のような気高くも綺麗で可愛いらしい良い匂い。少なくとも前世では女子がこんな顔を近づけることも匂いを感じることもなかった。
ーーーーーどお?って何!?!?
俺のことが好きなのか????????
にひゃく以上は嫌かって???????
たしかに最初からアダシノを置いて俺に話しかけてくれていた。アダシノをイケメンと褒めていたが社交辞令の可能性もあるし、イケメンだから好きとはならないかもしれない。もしかしたら俺くらいの顔で綺麗めの顔が好きなのかもしれない。
大体嫌いな人間にこんなに近づくか?馴れ馴れしく気さくに話すか?
こんなに顔を近づけるか!?キスしても良いって感じの関係性を築きたがってるんじゃないのか!?
「ななななな、何が、どお↑なんですか!?!?!?」
ドキドキが止まらない俺はギュッ目を閉じる。口から出た言葉も喉がギュッと締まっておりキモさ全開だった。
「年上のお姉さん、スキ、なんでしょ?」
そう言って耳に「ふぅっ」と息を吹きかけ、マジナはニヤリと笑う。
一瞬誰にもそんなこと言った事ないので、何のことかと固まった。
そして脳裏によぎったのはーーーーーーーー。
「あぁぁあぁ"ああぁぁああ"あ"ああ"!!!!!!!!!」
「「「!?!?!?」」」
俺は突如発狂の絶叫をした。
マジナ以外は俺の叫びに驚く。
「うぁあおうぇおぅうおおおぉぉぉぉうぅおあ!?!??!」
俺は思い出した!携帯の中身!!!!
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「わたしがもっと背が高かったら良かった??」
ニヤニヤとするマジナ。
「」
お姉さん年上シリーズ!!背が高くしっかりとした骨格のお姉さんが優しくしてくれる動画の数々を思い出す………。シリーズの名台詞は、
「優しくしたげよっか??」
「」
辞めてくれ…。俺のライフは0だ…。
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