10.〜勇者との共同戦線?〜
前回までのあらすじ
アダシノと俺、割とピンチ
「まぁ、賭けになると思うけど…アダシノはこれで良いと思うか?」
俺は恐々と下を向きながら聞く。顔は見れない。
正直思いつきだし作戦は穴だらけだと思う。でも熟考する時間はないし…。
「………げぇよ…」
「え?」
「すっっげぇよ!田ノ原めちゃくちゃ頭いいじゃん!」
「え?」
見上げるとキラッキラの眼差しで俺を見るアダシノがいた。
「俺さ、頑張ってどっちかが体当たりして掴まえる?とかくらいしか考え付かなかった!!!天才か!?」
「え、いや」
「うおっ楽しくなってきた!!」
完全に俺を置いて盛り上がっていた…。
「この作戦、お前にかかってるとこあるけど怖くないの?」
あまりに楽しそうなので現実的な話で戻しておこう…。
「え?あぁ、大丈夫!そんな事した事ないけど、大丈夫、結構本番強いんだよ!俺を信じてくれ!」
ザ・主人公なキッパリと断言するアダシノ。いつもならウザイがこの状況ではありがたい。
「………もし俺が失敗しても、お前は逃げていいからな。むしろ逃げて助けを呼んでくれ」
俺の弱気な発言にも怪訝な顔をする事なくアダシノは真っ直ぐに俺を見つめる。
「何言ってんだよ。大切な友達を置いてくわけないだろ?」
まぁ助け方は分かんないけど!とにこやかに、それでいて力強く言うアダシノに俺は何も言えなくなる。俺だったら自分だけ助かって誰かを呼ぶだろう。
なんでこんなに主人公なんだよ。なんでこんなに俺は矮小なんだよ。モブだよ、モブ。………いや、今はそんな事考えてる暇はないな、そう思い頭を振って暗い考えを追い出す。
お互い立ち上がり顔を見る。
「じゃあ、やるか!」にこやかに笑うアダシノ。
「……おう」笑えやしないが目を見て頷く俺。
なんか、いいな。
……………。
数分たち、水の塊が弾ける音が聞こえてくる。
俺たちを探して手当たり次第に攻撃している。音はだんだん近づいていた。
俺は推察を立てた。
距離が開くごとに攻撃の間隔が開いていく。
これは、攻撃の距離が決まっているのではないか?では何を基準に距離をとるのか。おそらく魔女本体だろう。
魔女は俺たちより足が遅い。しかもちょっと立ち止まってても大丈夫なレベルだから体力もそんなにないだろう。
さっきも言ったが攻撃自体は直線上のもの。本体は視認できず水が進行方向の一定方向に飛んでいるところを見ると、本体の前で飛ばしている、つまり本体の向きが分かる。
水の攻撃の威力はすごく、当たっている木々の痛そうな音が森に響き揺れる。
作戦の最初はこうだ。
この揺れる木を目印にして本体の進行方向を確認する。基本に一直線で進んでいるようなので、予測を立てて待ち伏せする。
俺とアダシノはお互い頷き別々に隠れる。木々が重く揺れだんだん迫っているのが分かる。
………緊張する…。
当たり前だ。前世ではこんなに体を張る事も、怖い目にあうこともなかった。
でも、その緊張感のなかにワクワクするものを感じられずにはいられなかった。前世では、味わえなかった感覚だ。
やがてその時はきた。
俺たちの間を攻撃が飛んでいく。かすかに飛沫がかかる。
誰かの体が通過したーーーーーー。
ーーーーーーーー“魔女”だ!!!!!
「アダシノっ!!!今だっっっっ!!」
俺は叫び飛び出す!“魔女”の後ろ姿に向かって俺は走る!
その“魔女”は驚き振り返ると、反射的に俺に向けて手を構えた。
死ぬっっっ!!いや、俺が死んでもせめてアダシノだけでも助けなければ!怖さを感じながらも俺はギュッと目を閉じて必死に特攻する!
「いけっっっっ!!!!!!“リアルエフェクト”!!!!!!」
アダシノも飛び出す。俺の方を向く“魔女”に向けて指を振る。
その瞬間、魔女の顔が勢いよく光る!顔まわりが激しく光り魔女は驚き咄嗟に手で顔を覆う!!
「!?!?!?!?!?!?」
驚いた本体にすかさず俺は飛びついた。薄目で見ていたとはいえかなり眩しい。目を閉じてもその光が瞼越しに飛び込んでくる。
加減を考えずとにかく光らせろとは言ったが……まぁ良い。
そのまま思い切り抱きつき、俺と本体は転がる。こんなのばっかだな俺。
「田ノ原っ!大丈夫か!!?」
すぐに駆けつけたアダシノが一緒に押さえつけてくれる。
「ああ、何とか!…………って、子供!???」
落ち着いて顔を見ると、噂のとおり水色の髪をしている子供だった。
足が遅いのも持久力がないのも子供だったからか…。
アダシノが手を捕まえると子供はまだ眩しいようで薄目でギロリと睨みつけ
「てめぇら何だよ!!!!勝手に森に入んなよ!!!」
と啖呵をきる。
「落ち着いて!…しかし、子供だったとはなぁ」
アダシノは声をかけつつ驚いている。もちろん俺も驚いている。
「あんな痛そうな強い攻撃をこんな子供が使ってるなんて…」
「うるせぇ!離せ!!!!」
足をバタバタと動かして抵抗を見せる子供。気づくと涙目になっていた。
ちょっと罪悪感。
「………あれ、」
俺はあることに気づく。
「?どうした田ノ原?」
「あのさ、」
「?」
「たしか、こいつ“水色の魔女”かもって言ってたよな?」
「?あぁ」
「こいつ………男じゃn」
ドゴォオオォォオオオオオン!!!!!!!!
俺が疑問を口にした時だった。
俺たちのすぐ後ろから木が倒れる轟音が聞こえた。しかも一本とかじゃなく、複数の木が倒れる音だ。その衝撃は波のように森全体に響き、俺たちの耳を痛く攻撃する。
衝撃によるものだろうか、かなりの風圧がかかり木々も植物も激しい音を立てながら地面に頭をつけた。
俺たちは驚いて後ろを振り返る。
「……………ルゥから手を離して」
小さい声だが怒りを孕んだ強い声が聞こえた。
木がバキバキに折れて倒れている中心に小さな女の子がいた。
青みがかった水色の髪。髪を高い位置で二つ結びびしており、大きなロール状のくるくるした髪が目を引く。真ん中分けのワンレーンで表情が良く見えた。丸い眉を眉間近づけて、じとりと大きな瞳でこちらを見る。敵だと言わんばかりに小さな口はきつく閉じていた。可愛らしい出立ちと違い、彼女の放つオーラはただの少女ではないとすぐにわかる。
俺たちは本能的に理解した。
さっきの捕まえた子供の魔法の威力と比べ物にならないくらいの桁違いの攻撃、怒りを含んだ無表情彼女から発せられる“強キャラ感”。
この子が、“水色の魔女”だと。
「ルゥに、意地悪しないで」
固まっている俺たちを彼女の言葉が溶かす。
「あ、ああ、あの、あの俺たちは、あ…」
「ごめん!勘違いしてないで。この子が先に攻撃してきたんだ」
どもまくりの俺を庇うようにアダシノが話し出す。緊張した空気でピリピリする。
「攻撃を全然やめてくれなくてさ、俺たちもこんな子供って知ってたらこんな手荒いマネはしなかったよ」
アダシノは焦りつつも優しい声色で、彼女を落ち着かせようとしていた。
そんなアダシノを睨み警戒を解かないようにしながら、呟いてように吐き捨てる。
「………信じること、できない」
「っそうだよな…。これだけ見ればそうとは思えないよな、でもほんt」
「うるせー!!」
この緊張感を壊したのは捕まえた子供の叫び声だった。
怒りを露わにしたまま、助けに来たであろう少女にも怒鳴る。
「うるせーよ!ダビィは黙ってろあっちいけ!!」
ダビィと呼ばれた少女はその言葉にも無表情を崩さなかった。
「お前は隠れとけばいいんだよ!!」
ルゥと呼ばれた子供は吠える。
「こんなクソハンターなんて俺がボコボコに殺してやる!!」
「……でもルゥ、捕まってる」
「っっうるせー!!これはちょっと失敗しただけ!いや、作戦だ!!お前が出てきちゃ意味ねーんだよ!」
「?????あの、どういうこと?」
完全に置いてきぼりを食らっている俺たちを代表してアダシノが声をかける。
「てめーら殺してやる!」
声をかけられたダビィは俺たちに視線を移し、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ダビィをてめーらにやるかよ!!お前らの相手は俺だ!!!!」
おやおや。
「殺してやる!!ダビィ!お前は逃げろ!!!!」
アダシノの拘束から逃れようとバタバタと腕を動かす。
「ちょっあぶなっ!!!っ!?あでっ!?!?!」
その両腕の拳が俺の顔にクリーンヒットして俺は後ろに倒れる。鼻に当たってツーンとする…。
「こらこら!暴れるな!!」
慌てたように拘束をアダシノが強める。「くそーっ!」とルゥは悔しそうだ。こっちが「くそーっ!」って感じなんだが???
「ルゥに!乱暴しないで……!」
拘束を強められたことに驚いたダビィが叫ぶ。
「大丈夫だから!!!俺たちは、ハンターじゃない!」
アダシノが大きく叫んだ。この混乱している現場を落ち着かせる。
「たまたまこの森を通っただけ。ほんとうだよ」
冷静な声で簡潔に真実を話す。その言葉に二人は半信半疑という感じで怪訝な顔をする。俺は援護するように大きく頷いた。
「もう攻撃しないなら、手を離すよ」
「………」
「もし俺らが攻撃したら、殺して良いから。ダビィちゃんの実力ならできるでしょ?」
「…ダビィに殺しはさせない。俺が殺す」
「分かった。俺らが攻撃したらルゥが殺していいから」
「………分かったよ」
ゆっくりと手を離し、拘束をとく。ルゥはゆっくり後退りしながらダビィの隣に立った。
二人とも歳は近そうだ。8-10歳くらいだろうか。少女の方が背が高く少しだけお姉さんな雰囲気だ。
ダビィはまだ俺たちから目を離さず、警戒心が高いことを示していた。
かたや水色の短髪のルゥは、頭につけていた茶色のゴーグルを外しガラス部分を見ながら「壊れたんだけど」と不服そうにつぶやく。
「大体さぁ!なんでダビィがくんだよ!」
隣のダビィにルゥが怒る。
「ルゥが心配だった」
「はぁ!?余裕だし!お前が捕まったら元も子もねぇだろ!!」
「私は大丈夫」
「お前が良くても、俺が嫌なの!」
おや。
「お前が居なくなったら嫌なんだよ!!!!」
おやおや。
「……………大丈夫。私は、ルゥのそばにずっといる…」
「は、はぁ!?ずっととかそういう意味じゃねーし、遊び相手がいねーから、嫌なの!!!!」
おやおやおや。
これはなんだ?ちびっ子青春物語か?嫌いじゃない。
真っ直ぐなボーイと無表情だがボーイへの信頼と愛情を感じ取れるガール。いいじゃないか。思わず頬が緩む。にやにや。
「はははっ!仲良しなんだな〜!」
にやついている俺の横でアダシノは朗らかに笑う。笑っている俺たちにバツが悪そうにする二人。
「…わ、悪かったな!でもそっちだって悪いんだからな!!勝手に森に入ってきて!」
「ごめんね。俺たち、マジナって魔女に会いに行く途中だったんだ」
森に入るのに許可なんているのか?どうやって取るんだ?という疑問を置いてアダシノは大人な対応をとる。
「…マジナに?」
ダビィが驚いたように聞く。
「そうそう。俺は薬草もらいに!あれ、田ノ原はなんでだっけ?」
「あ、俺はーーーー」
鍛錬の方法、なんて恥ずかしくて言えない。しかも凄い魔法使いみたいなテイなのに。
「あ、ま、まぁ俺もアダシノとおんなじ感じ」
「そっか〜気が合うな、俺たち!」
何も疑わずににこやかにアダシノは頷く。
「じゃあお前らラッキーだったな」
ルゥが言う。ダビィもそれに頷く。
「今日、この森に来てる」
「多分前の丘にーーー」
ルゥが遠くを指差した時だった。
「どぉ〜〜もぉ〜♪」
明るい声が響く。その声は上からだった。
俺たちが一斉に空を見上げると、
「ハロハロ〜♪マジナちゃんで〜す!」
箒に乗った女性が降りてきた。近くにすとん、と綺麗に着地すると「いや〜♪」と楽しそうに声を上げてこちらに歩いてくる。
「おっきい音聞こえてマジでビックリしちゃった。久しぶりにダビィたそのドッカン聞いた〜!どしたの〜?あれ、てか誰??」
マジナはギャルだった。
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