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9.〜水色の髪の魔法使い〜

前回までのあらすじ

勇者アダシノとエンカウント


「いやぁ〜酷い怪我してなくて良かったな!」

「そすね」


アダシノは爽やかな笑顔で俺に声をかける。

俺はナチュラルボーン陽キャの笑顔に耐えきれず声が小さくなる。


転がっている俺に手を差し伸べてきて、ボロボロの俺を木の下へ座らせてくれた。

しかも「俺も結構怪我するからさ!」と慣れた手つきで怪我チェックまでしてくれた。くそ〜いい奴だと認めざるを得ない。


というか


「あ、なんでこんな所にいるんですか?」

俺は思ったことを聞く。敬語になってしまうのは本能だ。

眩しいくらいの笑顔でアダシノはこちらを見る。


「あぁ、俺は今からマジナって言う魔女に会いに行くんだよ!」



ひぇっ。まじかよ



「リュウジは?」

ニコリとアダシノが尋ねる。


「いやぁ…実は俺もなんすよねぇ…」

 モゴモゴと俺は答える。ソレを聞くとアダシノは一層顔を輝かせる。

「えぇっ!?じゃあ一緒に行こうぜ!

いや、実はさ、仲間の手前言えなかったんだけど1人じゃ心細かったんだよな」


「あ、え。な、仲間?あのツクシとかいう子供のことすか?」


「そうそう。ツクシ以外にも4人仲間がいるんだ。

魔道士のツクシ、剣士のヒカリ、暗殺者のムクル、白魔道士のユキナさんにギルド団長のグリゴリオさん。皆良い人なんだ!」


「へ、へぇ〜」


 流石異世界。めちゃくちゃ異世界っぽい。


「あのさ、」

 アダシノが目を合わせないようにキョロキョロしている俺の目の前に顔を近づけて声をかける。俺は恐る恐る目を向ける。



「俺さぁ、数ヶ月前にこの異世界に飛ばされたんだよね。」



 アダシノは真っ直ぐ俺の目を見て言う。その表情から嘘を言っている雰囲気はなく、事実を話しているのだと分かる。



“異世界に飛ばされた”





その言葉に俺は頭が真っ白になった。





 確かに俺が異世界にいけるなら、別の誰かもコッチにこれる可能性はある。でも、そんな事あるか?

 漫画では珍しく感じる展開だ。一緒にクラス毎とかはある。でもその時は、一箇所から一緒に固まってワープしたりする筈だし。




待て。




一箇所から?


確か俺はトラックに轢かれたはずだ。

轢かれたのは俺だけか?

後ろにも歩行者はいたはず。彼らも一緒に被害に遭う確率は高い。


アダシノの顔を改めてよく見る。


 金髪の短い髪。正統派と言われそうなイケメンな顔立ち。人の良さとネアカがすぐ分かるオーラ。

 何より、アダシノという名前。

 

 俺は1人似ているやつを知っていた。確信すら持てる。



「徒野彗悟……?」


「!!!!!」


 アダシノが大きく目を開く。



 あだしの けいご。

 スクールカースト上位、いやトップといえる立ち位置の男だ。

サッカー部で明るく熱く裏表がないと言われているイケメン。確かハーフだったか?同じグループで狂犬とも言われる短気ヤンキーが唯一アダシノだけの言うことを聞くという。

 教師にも沢山質問をする上に、持ち前の明るさで授業の雰囲気を良くするから教師からの評価も高い。

 俺たちインキャオタクにも優しくて話を振ったりするし、トラブルがあれば颯爽と仲裁・解決まで導く。しかも全然恩着せがましくない。それがまた憎たらしい。

 ザ・主人公。


「え!!!本当にリュウジもコッチにきた人間なんだな!?

この間そんな事言ってたからさ!もしかしてって思ってたんだ!!!」

「え、そんな事言ってたか…?」

「言ってたよ!

うわっ!マジで嬉しい!!!

えっ!てか何で俺の名前知ってんの!?知り合い!?」

「いや、俺は同級生。田ノ原竜二」

「あ!田ノ原なの!?えー、そっか!!

…………えと、見ない間にイメチェンしたな〜!」


アダシノから微妙な反応をもらった。


うるせー。どうせ元はゴリゴリインキャだわ。

てか前世?の時と見た目同じ事ってあるんだな。


「俺さ、異世界では今いるギルドが戦ってるところに飛ばされてさ。行く所もなかったから、助けてもらってそのギルドにずっといさせてもらってるんだ。

 最初はそりゃ寂しかったけどさ、泣き言ばっかり言えないじゃん?だから勇者として頑張ってるんだ。

 ツクシは口悪いけど努力家だし、ヒカリは気が強いけど二刀流の女剣士でカッコいいんだ!ムクルは何考えてるか分かんないし無口だけど、ピンチの時は絶対助けてくれる!ユキナさんは優しくて団長の奥さんで団長は怖いけどめちゃくちゃ尊敬してる!」


 キラキラした目で話す。別にそんな事聞いてないんだけどなと思いつつ、めちゃくちゃ主人公っぽいじゃんと少し恨めしかった。

 俺はずっと家事してたわ。


「やっぱり凄いな、アダシノは」


 思わず呟く。

 アダシノはきょとんとした顔でこちらを見ている。「どういうことだ?」こちらを気遣うような声色だ。


「いや、元の世界でも今でもすげぇ主人公っぽかったし」


「いやいや!そんな事ないよ。俺すげー馬鹿だし」


「馬鹿じゃないだろ。成績いつも良かったじゃん」


「あぁ。それは青ペン先生のおかげだよ。俺1人じゃ無理だった」


「え、お前青ペン先生してたの!?」


「そうそう。サッカーばっかりで成績が悪くて、このままじゃダメだって思って始めたんだ」


主人公っぽいな。


「最初は親も辞めるんじゃないかって反対だったんだけど、頼み込んでさ。親もじゃあやってみればって」


主人公じゃん。


「隙間時間で出来るし、成績もあがった。サッカーも集中出来てそっちも成績上がったし始めて良かったよ」


主人公のエピじゃん。


「てかさ、田ノ原がサッカー部入るって噂聞いて俺楽しみにしてたのに入んなかったよな〜。何で?」

「いや、入る予定とかなくて、勘違いだし別に俺が入っても楽しくないでしょ」

「いやいや絶対楽しいよ!!それに俺、妹がいるんだよね。ちょっとオタクでさ〜この間の呪文も妹が覚えてたやつと同じやつがあって同じ世界の人だって確信した!」

「妹いたの?」

「そう!6歳。プイキュア?とか少女漫画めちゃくちゃ大好きでさ。ツクシと背丈が似てていつもの癖で頭撫でちゃうんだよな〜。ツクシからは怒られるけどさ」


 この世界に来てから初めて元の世界の話が出来たのだろう。かなり嬉しそうにアダシノは語る。聞けば聞くほど主人公だ。というか6歳でそれはオタクではなくて普通だろう。ツッコまないでおくけど。

 自然と共に歩きながら話をする。


「でも凄い安心した!」

「????

知ってる人がいて?」

「それもあるけど、この山には凄い怖い魔法使いが出るって聞いててさ、俺魔法あんまり役に立たないやつだから怖かったんだよ」

「凄い魔法使い?」

「そう!どうやら子どもらしい。凄い魔法使いで、頭は水色。そいつに出会うと襲いかかってくるんだってさ!」


 水色の髪の魔法使い…。そういえばナナが言ってたな。そんな怖い存在とは言ってなかったが…。


「でも田ノ原は凄い魔法使いだもんな!助かったよ」



 ぎくり。

言えない。

俺の力じゃないなんて。


「いやいや〜ははは。アダシノの魔法って?」


 俺は華麗なトークで自然に受け流した。


「俺のはこれ!」

 アダシノは軽く指を振る。


その瞬間、アダシノの顔周りが光った。キラキラと。


「“リアルエフェクト”ってツクシに名付けてもらったんだけど、よく漫画とかであるキラキラってやつとかが出来るんだ」

 特に使い道ないんだよね、とアダシノはポリポリと顔をかきながら困ったように言った。物理的にエフェクトかけるとか面白すぎるだろ。

「田ノ原にも出来るよ。ほらっ!」

また軽く指を振ると、俺の顔周りが明るくなるのを感じた。

いや、てか

「眩しっ!!!」

「あっごめん!そうなんだよな。明るさも変えられるけど細かい調整が難しくてさ。時間も数秒だし魔力消費は殆どないし簡単に使えるけど使い道がないんだよ」


 ははは、と困ったように笑う。魔法は主人公ぽくないな。

 ちょっと好感度が上がった。


「魔法はそんなんだから剣の腕をあげたくて、ヒカリに習っててさ。厳しいけどなんだかんだ言って優しくてさ。疲れた後のユキナさんのご飯は美味しいし。あ、でもユキナさんの料理を褒めすぎて負けず嫌いなヒカリが怒ってユキナさんと対決したりさ」


 いや、好感度下がったわ。


「パン屋の二階に住んでるんだけど、パン屋で働いてるハナが朝起こしてくれたり色々この世界のことを教えてくれて本当に皆最高に優しい人達なんだ」


 もっと下がった。

主人公じゃん。主人公特有の恵まれ方じゃん。


「田ノ原はどんなーーーー」

 そうアダシノが言った時だった。


バシャッ!


「「!!!!!!!」」


 俺たちは頭から冷たいものを被った。喋っていたから冷たいものが口に入る。

ペロッ。こ、これは…水!!!!!

驚いて頭上を見上げるが、青い空と木々が見えるだけで水がふってくる状況ではなかった。



魔法だ!!



 それを悟った瞬間に俺たちはすぐに臨戦体勢をとる。

アダシノは剣を構え、俺はどこから魔法がくるか注意深く観察する。


“凄い怖い魔法使い”


アダシノの台詞が頭を巡る。

もしこの魔法使いがソイツだったら。というか、水の魔法という時点でソイツの可能性が高い。


ソイツの足音はしないか、耳を澄ませる。

この音は…


「アダシノ!とりあえず走るぞ!」


「えっ?!」

「川だ!!!向こうは水の流れる音がする!離れるぞ!!」

「!分かった!!!!」


水の魔法、冷たい水。この季節で冷たい水はおそらく川のものだろう。

魔法使いとしても限られた水を使用するより流れている川を使用する方が絶対に良いはずだ。

水源から離れれば、水を移動させる。おそらく、その分魔力の消費も多いはず。


俺たちは走った。


時々冷たい水が後ろからバシバシ当たってよろける。硬い石を投げられているようにも錯覚するほどその塊は重かった。後ろから飛んできた水が近くの木に水が当たり弾けて、飛沫が顔にかかる。しかし俺たちは止まらなかった。

相手も追いかけてきているようだったが、段々と距離ができているようで攻撃の回数と間隔がかなり減ってきている。


 実は俺は走る体力にはちょっっっと自信がある。

家事しかする事がない日々の生活で、魔法の練習と軽いランニングが趣味になりつつあるのだ。(隙自語)

走りながらアダシノに話しかける。


「おいっ!アダシノ!大丈夫かっ?」

「ああ!問題ない!」


流石サッカー部は違う。


「でも、逃げてるばかりじゃダメだよな…」

「田ノ原なにか案があるか?」

「え、いや、特にーーーー」


ガコッ!!!

ずべしっっっ!!!!


「おべぁっっっ!!?」


「!?田ノ原!?」


話すことに一生懸命で俺はまたコケてしまった。しかも盛大に。

転がりはしなかったが、ガッツリ見られた。

死ぬほど恥ずかしい。


「大丈夫か!?」

アダシノが駆け寄る。

「だ、大丈夫大丈夫。いゃぁ〜恥ずいわ〜」

恥ずかしさのあまり、へらへらと起き上がる。

「まぁでも、確かに逃げてばっかりもダメだよな」

アダシノがコケて汚れた俺の足を見て言う。

いや、結構汚れたけど靴も頑丈だし、マジで大丈夫なんだけどね?

「田ノ原の凄い魔法は狭い森じゃちょっとアレだし、何より相手に当たったらヤバいよな…」

「そうなんだよな〜」

そんな凄い魔法は実際使えないのだが、とりあえずノっておいた。


「俺思ったんだけどさ、ずっと木にあたる水の音も聞こえてたし、多分手当たり次第に水を飛ばしてる気がする。しかも水の軌道的に曲げたり複雑な攻撃はしてこないんじゃないかな?」

「なるほど確かに。じゃあ木をうまく使って直線上にならないよう逃げるか??」

「できれば捕まえて話を聞きたいな。どうしたら良いかな…」

「「うーん……」」

俺とアダシノは唸る。

何が出来るか。あっちは凄い魔法使いだ。至近距離であれを喰らったら骨が折れる可能性もある。……………。

「……そうだ!!!アダシノ、ちょっと聞いてもいいか?」

俺はふと考えついたことをアダシノに話す。



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