耳そうじ
ふわ、ふわ、ふぅっ…
僕は今、耳掃除をしてもらって、いる。
ムチムチした、膝の上。
目を閉じて、ただ至福を感じ、彼女に身をゆだねている。
こんなにも、耳掃除が気持ちがいいだなんて。
こんなにも、幸せな気分になれるだなんて。
耳が幸せ過ぎて、涙が出てくるよ。
「ねえ。」
ふぅわっ
「幸せ…?」
「うん。」
「今、私、あなたの耳、独り占め、してるのがうれしいの。」
耳掃除をすることが幸せなのか…それは、それは。
かわいいやつめ…。
「ねえ、聞いても、いい?」
やさしく、僕の耳の穴をなでていた梵天が、ぴたりと、止まる。
「うん…?」
「はるかって、誰…?」
!!!!!!!!
「私、今、あなたの鼓膜と一番近い位置に耳かき棒、ツッコんでるのよね…。」
「ちょっとグイってしただけで。」
「どうなっちゃうんだろうね?」
「ねえ。」
「なんて、こたえる?」
「なんて答えたら、あなたは助かるのかなあ…?」
…僕は微塵もうごけない。
一言も、話せない。
命が、危ない。
何も、出来ず。
時間が過ぎて。
僕の失ったモノは、なんだと、思う…?