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鉄塊のマギア  作者: 佐倉。
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-幕間-2-5

 朝、玄関から出ると洗い立てのような軽快な日光が全身を照らし出す。


 その日は早くから支度を整えると、早速あたしは家を後にしていた。其れと言うのも、久方振りにアルマンから声が掛かり収集依頼随行の誘いを受けていたからだ。

 直近では仔細な調律が必要となる作製依頼も特に無く、手持ち無沙汰にしていたので断る理由も無い。ついでに収集品の一部を個人的に買取ることが出来れば、それも仕事に活かせるだろう。


 いつもの場所で皆と落ち合うと、ギルドに向かう道すがら屋台で朝食を済ませることとなった。

 少し迷ったが、あたしはチュロスとホットチョコレートを選ぶ。──うん、朝から脳を動かす為には糖分が必要だ。このまったりとした甘さがたまらない。

 一口一口を楽しみながら頬張っていると、アルマンが唐突に口を開いた。


「なぁ、近頃迷宮でおかしなことが起きてるらしいんだが…皆は何か知らないか?」


 "おかしなこと"というアルマンのざっくりした質問に、皆は一度視線を合わせ思案していた。さて、この街でどこからどこまでを"おかしなこと"と表現するのが適切だろうか。

 ホットチョコレートに口をつけつつぐるぐると考えていると、ティルが"そういえば"と続ける。


「この手の話で合ってるかは分かんねぇけど…気色悪い形のクラニアが獲れた、とか騒いでたヤツがいたな」

「ぁー、おかしなことってそういう事?この前のファイアウィスプの件みたいな?」

「前回俺達が潜った時には、そういうの見なかったよな?」


 それならあたしも聞いている。

 確か迷宮内の広範囲で奇種が発見されつつある、とかいう噂。少し前に巨大なファイアウィスプが出現して、それを討伐する為にギルドがだいぶ騒然としていたっけ。


「成程…表層でもか。もしかしたら、それに関する調査の依頼とか出てるかもな」


 非日常の何かに期待しているのか、そう続けるアルマンの目はどこか爛々として見えた。

 出会って以来何度も冒険を共にしてきたが、彼の印象は初対面の頃からだいぶ変わった様に思える。元々冒険物語に触発された口なのだ。この手の"面白そうなもの"への食いつきが良いのは言う迄も無かったのだろうが。

 まぁでも、うん。確かにこの街にいれば面白いものに事欠かないというのは分かる。


「出た出た…こうなったアルマンとウィルマは本当止まらないからな」


 一人心の中で頷いていると、思わぬとばっちりに咳込みそうになった。


「ちょっとティル、なんでそこであたしも?!…いや、まぁ、確かに面白そうなのがあったらワクワクしちゃうけど…」

「ははは、まぁそれも悪いことじゃないだろ」


 事実、迷宮の遺物や収集品を面白く感じる自分がいるのだから何とも歯切れが悪くなる。仕方ないじゃないか。幼い頃からのあたしの感性なのだ、どうしようもない。


「勿論一部の収集品の高騰もまだ続いてるからさ。予定通り、収集依頼(そっち)の方はちゃんと探そうと思ってるよ。当然だけど、いきなりだと対応出来ないしね」


 人の悪い笑みを浮かべつつナッツを口に運ぶティルに無言で抗議を送りつつ、話を先に進めるアルマンの提案に耳を向ける。うん、それなら良いんじゃなかろうか。


「んー…そうさなぁ。まぁピークも割りと過ぎてきてるだろうから、アルマンの言う通り併行しながら情報収集すれば良いんじゃないか?」


 ──さて。大体の方針は決まったようだ。最後の一口となったチュロスとチョコレートドリンクを口に放り込むと身体に流し込む。うん、準備は万端だ。

 そういえば。この前収集依頼で一緒になった機械人形の同行者の人を紹介しておかないと。あの人は採取の手際も扱いも丁寧で凄く助かった。機会があるなら今後もお世話になりたいものだ。


 ──見慣れた日常と、見慣れた街に眩しいくらいに朝陽が満ちている。今日も、見慣れたいつもの一日が始まろうとしていた。

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