表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄塊のマギア  作者: 佐倉。
--
77/138

-幕間-1-1

「はぁ……」


 澄み渡った青空の下。何もかもが抜け出て行くような、深い息を吐く。憂鬱で、気分がしぼんでいたのは間違いない。

 それの理由はまぁ、もう分かっている。前日に受諾した収集依頼でスライムに遭遇したのだが、僕だけが上手いこと貢献出来なかったのだ。

 依頼自体は達成出来たが、滑り出しは決して良いとも言えない。一番浅い階層でこれでは、今後どうなるものか。胸中は言いようの無い漠然とした不安で満たされていた。


 不安を振り払う為に何度握ったか分からない、ボロボロになった木剣を手にしたまま空を仰いでいると、後から呼ぶ声がした。


「どうした、セス?」


 聞き慣れた声のする方に顔を向ける。均整の取れた顔立ちの、ブロンド色の髪をした青年が立っていた。


「あぁ、えぇと……いや、ちょっと疲れただけだよ」


 咄嗟、不器用に笑顔を作る。

 そこには見知った一人の初級冒険者ノービス──アルマンの姿があった。


「んー、そうかい?…まぁ、あんまり根を詰め過ぎるなよ?」

「あぁ、ありがとう。時間も良い頃だしな、そろそろ休憩にしようかと思ってたとこだよ」


 ──アルマンに無用な心配は掛けたくない一心で、自分の中の不安を抑え込んで笑顔を作る。それは誰でもない、自分の為なのだ。


「お、それじゃセスが良ければ昼飯でも行こうか?」

「良いね、それじゃあちょっと顔洗ってくるよ。待っててくれないか?」


 短く言葉を交わすと、一人井戸に脚を運ぶ。木桶に張った水に手を浸すと、心地よい冷たさが両の手を包み込んだ。


 スライムに対し、純粋な物理攻撃が効果的では無い事は前もって聞いてはいた。それでも無意味ではない以上、何か出来ることがあると思っていたのだ。結局、それが甘い考えだと思い知らされた。それだけの事、それだけの事なのだ。


 ──迷いも洗い落とす勢いで、何度も顔に水を掬い掛ける。いつまでも迷ってはいられない、諦める訳にはいかないのだから。


 アルマンが帰還の際に"セスなら二階層ならもっと活躍出来るさ"と言っていた事を思い出す。ケイヴラットのことだろうが、実際にはどうなのだろう。

 迷宮内のどこにでもスライムはいるし、同階層にはファイアウィスプもいるという話だ。どうやらそいつも、純粋な物理攻撃は相性が悪いらしい。魔術的な作用が施された特殊な武器は、駆け出しの冒険者にはとても手は出せない代物だろう。

 消耗品の類で対処することになるだろうが、それも決して安くは無い。無闇矢鱈には使えない筈だ。


 ──本当に、僕が役に立てる事があるのだろうか。


 それでも。とにかく、僕に出来る事を見付けなければならない。アルマンと、自分の期待を裏切りたく無いのであれば、そうするしかない。

 洗い流した黒い靄を振り払うように僕は勢いよく立ち上がると、遠くに見える人影に手を振った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ