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鉄塊のマギア  作者: 佐倉。
12章
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・休止期間を経て依頼を受領、問題なく従事を完了


・自身の機能と、ラボにて周期的に見られる現象について

 業務の際に「迷宮内で見られる生物に変異が見られることがある」という話を耳にした。動植物並びに魔物の奇形化が主であり、それに伴った異常行動が散見されるとのこと。また異常化したモノたちは、凡そ一月もすれば姿を消すのだという。

 話を聞く限りでは奇形化した魔物たちは不可逆的な状態に見受けられるため、元の状態に変化したのではなく魂の器の変異によるオドの過剰流出による自然死が濃厚だと考える。

 尚、同時期にはマナ濃度に異常が見られるとのことから、地下から湧き上がるマナの発生が異常状態となることで引き起こされているのではないかとされているとのこと。その点は私も同意見である。


 前置きが長くなったが、上記に関係があるかは不明だが本日の業務従事中に周辺深視を起動した際、以前と比較し作用範囲が僅かに狭くなっていた。自身の状態には特別の異常が見られない為、周辺状況の把握と警戒により注力する必要がある。



・祭事

 依頼の報告を終え宿へ帰還する最中「祭りを共にしないか」と、以前依頼を共にした二人組の冒険者に声を掛けられた。

 ここ近頃は街中で見かける人々の数がいやに増加したと感じていたが、どうやら街を挙げての祭事が執り行われるらしい。特別誘いを断る理由もなく、祭りの内容も気になった為に同行を願い出る。

 日が落ちているにも関わらず、街中の殆どの通りにナイトマーケットが並んでいた。農産物や酒類、雑貨や織物、飲食物が主だろうか。魔術道具や素材の類も目に付いた。

 しかしながら、漂う活気も何もかも普段より強烈ではなかろうか。慰霊という名目でこんなに御祭り騒ぎなのはどうにも理解できないが、この近辺には無かった遠い地域の部族の風習が起源とされているらしい。とうの昔に外と断絶した私たちの記録になかったのも頷ける。


 いつもより時間をかけつつ喧騒を抜け街の北部に足を運ぶと、ラボに侵入して亡くなった者たちの遺留品の炊き上げを行っていた。小ぢんまりとしているが細やかな装飾が施された祠と、その面前の石床には随分大掛かりな魔術式が刻まれていること、そして「慰霊祭」という名目から、ここで行われていることこそが主目的だったに違いない。

 …私たちからすればラボに無断で押し入った盗人が勝手に命を落としているようなもので、それらを悼みたいとは感じないのだけれど。しかしそれは「私たち」の感情であって、外の彼らは違う。彼らの気持ちをわざわざ邪魔する権利は無いし、その必要もない。



ただ。最後に見た、光。

あれは、不思議と視線を吸い寄せられるようだった。

 出店で見かけた、魔術式を記す為に作られたという特殊なインク。ラボ内の魔物の生成するものと、外の地域で見られる素材とを用いるらしいのだが、これは私たちの手にしたことのなかったものだ。

 何とか、残せないものか。


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(以下、判別出来ない塗り潰しが続く)


 何頁にも渡る塗り潰しの、一番最後。

 淡い、いまにも消え入りそうな青い弱光を放つ魔術式に指を乗せると、頭の中にとある情景が数秒だけ思い浮かんだ。

 夜空を裂くように、突き抜けるように。天に向かって伸びる光の柱。

 羽衣のような光の靄を螺旋に纏い、はらりはらりと火の粉のように、白い光の粒が夜の空に揺れて消えていく。

 それは何度も見上げた、焦壊魔術の光景だった。

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