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勇者じゃなくて◯だった。  作者: トゥルーY
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勇者じゃなくて村人Cだった。

 俺の名前は、日本で約5700人と1番多い名前の田中実(たなかみのる)、35歳、独身である。

 俺は毎朝6時に起きて朝食の食パンを頬ばりながら慌てて着替える。

 そして、7時に家を出て、満員電車に揺られながら日々痴漢に間違われない様に両手を挙げて戦っているので職場に着く頃にはヘトヘトである。

 仕事はどこにでもいる普通のサラリーマン、もちろん平社員で年収は30代の平均年収に近い450万円である。


 そんな普通の人生を送っている俺は、今日もヘトヘトな状態で電車を降りて家まで歩いて帰っている。

 いつも同じ道を通っている。

 コンビニの前を通りずき、この横断歩道を渡ったら家である。




「プァーっ!!」




「ガシャン」



「誰か救急車を呼んで下さい」

 俺の普通な人生は車にはねられて終了した。



 かと思った。

 なんなんだ、このフワフワした感覚は、、

 病院?いや違うな。

 天国だな。きっとそうに違いない。


「あなたの名前は今日から村人Cです」


 うん?どこからか声が聞こえる。

 村人?なんだって、なんのことやらさっぱりわからない。


 もう、あの声は聞こえなくなった。

 なんだ夢だったのか、、、



 目が覚めた。

 うん?なんだもう立っているぞ、体も普通に動くし、頭もしっかりしている。

 ただの夢だったのかな。

 と辺りを見渡した。


「なんだ?こここは!」


 日本とは思わせない様な気品溢れるが少し古くもある建物、そびえ立つ山や崖、そして冒険にでも行きそうな衣装に犬や猫が二足歩行で歩いているではないか!!!


 もしや、俺は異世界に転生してしまったのではないか!!!!!!


 つまり、どうしようもなく、つまらなく、毎日同じ生活の繰り返し、彼女もいない、友達も3人、神さまは、平凡な俺の人生に新たな人生をプレゼントしてくれたのか。


 これってよくアニメとかであるやつだな。

 冴えない男が異世界に転生して、勇者になって仲間を引き連れて経験を積んでチートな技を覚え、最終的には魔物を倒してこの世界を救って英雄となる。


 くぅー完璧なシナリオだ!

 完全にそう思っていた。


 お、誰か近づいてきたぞ!

 なんだ?この冴えなそうな、でも見方によってはイケメンとも捉えられそうな男は。

 おまけにマントに剣と盾を持ってまるで勇者気取りではないか。

 今日ここに勇者が誕生したとも知らないで呑気なものだな。


「私は勇者に選ばれたものなんですが?色々と装備を揃えていて」

 男は勇者だと名乗った。


 おいおい、まさかそんな事があるわけ、ここに勇者がいるんだぞ。

 あ、もしかして勇者が何人もいるタイプのやつではないか!

 そうだ。そうに違いない!

 じゃこの男とも仲良くしなければいけないな。

 よーし!俺が勇者のなんたるかを教えてあげるか。



「この隣の店の薬草は良く効くらしいから、冒険に出る前に買っておくといいよ」


 え、俺は今なんて言った?


 ちゃんと話しをしないと、これから一緒に戦っていくのだから。



「この隣の店の薬草は良く効くらしいから、冒険に出る前に買っておくといいよ」


 うん?また俺同じこと言った?

 すると字幕見たいのが下に出てるのが見えた。


 俺が話した言葉が字になってるんだろう、ゲームの世界と一緒だな。


 そして、字幕の上に名前が出ているのにも気づいた。

 田中実だろ。


 うん?

 なんだ?

 違う?


 これは、俺の名前は、、、、



 村人C!!!


 え、村人ってなんだ!

 しかもCって!

 AとBはどこにいるんだ、あっ!そうかわかったぞ!

 村人から勇者を目指すという新しい展開だな!!


 しかし、村人Cは冷静になった。

 違う。

 俺は本当に村人になったのだろう。

 昔やっていたRPGでよく出てくるやつだろう、村人は勇者の冒険へのヒントを与える役割だ。

 だから同じ言葉しか声に出ないのだろう。

 村人Cは気づいた。

 言葉に出るのは同じセリフで後は心の中でしか話すことが出来ないのだと。


「おじさん、どうもありがとう」

 そう言って勇者は、薬草を買いに店に入っていく。


 おいおい、俺はこれからどうしたらいいんだ。ここにずっと立っているのか?

 声は出ないのはもう諦めた。

 平凡な人生を送ってきた村人Cは諦めが肝心と思うタイプだった。


 だが、動けるのか?

 よし、足を動かしてみよう。


 村人Cは恐る恐る足を動かした。


 う、動いたーー!

 感動、いつも立って乗る満員電車に座れたくらい、7時だと思って起きたら6時だった時くらい、履いたズボンの後ろポケットに100円が入っていたくらいの感動である。


 これで、勇者の様子を見に行ってみよう。

 右に一歩、二歩、三歩、その調子で右に後五歩進むぞ!左に一歩、二本、三歩、おや?右に行こうと思ったら左に進んだぞ?

 もう一度右に一歩、二本、三歩、左に一歩、二本、三歩、まさか?


 左右三歩ずつしか進めない!!!!

 しかも一定の右に三歩行った後に左三歩の周期でしか動けないぞ!!!

 これは、参った。


 歩きの練習をしていると勇者が薬草を買って戻ってきた。

 勇者は次にどこへ行けばいいか悩んでいる様だ。

 すると勇者はこちらを向いた。


 まさか、来るなよこっちに来るなよ来るなよ!絶対に来るなよ!

 わーー来たー!!


「この隣の店の薬草は良く効くらしいから、冒険に出る前に買っておくといいよ」

 だからこれしか話せないんだって!


 勇者がまた、話しかけてきたのだ。


 その後も、勇者は話しかけてくる。


「この隣の店の薬草は良く効くらしいから、冒険に出る前に買っておくといいよ」


 その後も

「この隣の店の薬草は良く効くらしいから、冒険に出る前に買っておくといいよ」


 いや、これ嫌がらせじゃない?

 最初は次行くところわからなくて、もしかしたら村人Cが次のヒントくれる可能性があるかも知れないと思って話しかけたんだろうけど2回連続は嫌がらせだよ!

 俺は、村人だよそんなにヒント与えられるわけないでしょ。

 せめて、ダンジョンとか行ってステージ1クリア!

 みたいな何か達成してからもう一度話しかけに来るならわかるけども。


 勇者は何度か村人Cに話しかけるとその場から去っていった。


 俺はずっとこのままなのか、まさか普通の人生を送ってきた俺が、異世界に転生されたと思ったら、異世界の中でも普通の中の普通の村人になるとは。

 こうして、村人Cはずっと

「この隣の店の薬草は良く効くらしいから、冒険に出る前に買っておくといいよ」


 を言い続ける人生を送るのであった。

 勇者だと思ったら村人Cだった。

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