0話 齋藤陸太
俺は、俺はただ、みんなに笑って欲しいだけなんだ
2070年、世界はスポーツが全てのものさしとなっていた。
世界、国内、社会、個人間、全てスポーツによって優劣、上下が決められる世の中。
世界で見ると、各種目の大会で上位にいる国は国際社会でも上位に位置し、下位となった国は発言権や決定権を持たない世界の底辺に位置することとなる。
国内では各都道府県が競い合い、個人間では上に立つもの、下に従うものが決定された。
これは小さな街に住む1人の少年が、世界の頂点を目指す物語である。
佐賀県の小さな港町、豊海町。
この町には100年に1度の逸材と呼ばれる1人の少年がいる。
齋藤 陸太(16)
小学1年の頃から全国スポーツテストでは同学年の中で10年連続全国1位という驚異の運動神経を誇り、なんでも出来るスポーツ少年。
佐賀県は、スポーツ序列方式が実行されてから全国上位に位置したことはない。それどころか、ここ数年40番台を抜け出したことがないのである。県民は嘆き悲しみ、苦しんだ。上位県による差別を受け、次こそはと皆が心を燃やした。そんな時代に現れた天才、陸太。
彼ならこの町を、この県を、いやこの国を、上に運んでくれるかもしれない…