新たな敵 4
ざぶざぶお湯を流しながら、洗い物に手をかける。
夕食3人分の皿やら箸やらフォークやら出た洗い物を台所で洗った。
「手伝おうか?胡桃ちゃん」
洗い物を始めて少ししてから顔を出した凱に私は小さく頷いた。
私が洗った物を凱が拭いて、戸棚に戻してくれる。
数回その作業を繰り返してから、私が口を開いた。
「今日のお客様――――――ジェームスさんだっけ?」
「〝さん〟なんてつける必要ないよ。あんな奴」
苦虫をかじったような凱の顔つきに、私は目を伏せた。
「なんで来たの?」
おかしいよね?
わざわざ一泊するためにイギリスから来たの?
「遊びに来たんだよ。古馴染みなんだ」
もっともらしい顔を凱が微笑む。
私は口を尖らせた。
「――――――時々、凱は嘘をつく」
「えっ?」
「真実に見える嘘をつくの」
凱の顔色が、からっと変わった。
私は凱から視線を外して、皿を見つめる。
あわぶくの付いた真っ白い皿をさらにごしごし洗ってみる。
「凱って嘘を付くとき笑うんだよ。知ってた?」
凱が背後で息を呑むのが聞こえた。
だけど私は振り返らない。
――――――今の凱の顔を見たくないから。
ねぇ、凱。
図星なんて顔をしないで。
それじゃぁ、まるで私の言葉合っているみたいじゃない。