新たな敵 3
「凱――――――!お客さん!!」
胡桃の呼ぶ声が聞こえてきて、俺はゆっくりと腰をあげた。
玄関まで来て呆然とする。
「ジェームス――――――」
奴の姿を見て、顔をこわばらせた。
なんでここにいる? と問い詰めたいのを必死で堪えた。
「凱、久しぶり」
皮肉にもジェームスの笑顔を見て我に返った。
「胡桃ちゃん、悪いけどお茶入れてきてくれるかな?」
「あっ、うん」
胡桃はぱたぱたと小走りに台所に消えた。
彼女が姿を消した瞬間、奴も俺も表の顔なんて捨てた。
「何しにきた?」
「会いにきた、それだけではだめか?」
「イギリスからフラっと来た……と?」
肩をすくめたジェームスを俺はきつく睨んだ。
「中に入れ。こんなところで立ち話をしていたら、くるみに変に思われる」
奴は俺の言葉を聞いてククッと笑いを漏らした。
俺はちっ、と舌打ちした。
□ ■ □ □ ■ □ □ ■ □ □ ■ □ □ ■ □ □ ■ □ □ ■ □
「おまえの養い子を見に来たんだ」
ジェームスは開口と同時に言った。
「――――――わざわざ何故?」
「おまえがハマっている女を見たかった」
「――――――」
「エサに本気になるなよ」
「エサじゃない!!」
俺は、とっさに声を荒げた。
奴は俺の必死の形相もただ面白いようだ。
声を押し殺すように笑っている。
「――――――本気か。彼女いくつだ?」
「15」
「おまえ、ロリコンか?」
「変な日本語、覚えるなっ!」
怒鳴った瞬間、くるみの気配を感じた。
吸血鬼だからこそ気配には敏感だ。
奴も、ぴたっと口を閉じる。
ドアを開けたくるみは部屋の雰囲気にすばやく気が付いて、首を傾げている。
「――――――どうかしたの?」
「なんでもないよ」
俺は胡桃を安心させるように笑むと、彼女の手からお盆を受け取った。
「ジェームスは今日、うちに泊まるから用意してくれるかな?今日一日だから」
「えっ?でも、しばらく滞在するって――――――」
奴をちらっと見る。絶対帰れよ――――――という意味を視線に込めると、奴は息をついた。
ジェームスは一瞬顔をしかめた。
しかし、俺の強固な態度に肩をすくめた。
「明日、帰りますよ――――――彼の言う通り」
奴の目に何か意味がある。
何が言いたいのか、俺は嫌な予感を感じた。
「私はいつまで居てもらっても構わないよ。凱の世話が二人に増えても問題ないし」
胡桃が的外れなことを言って、ジェームスは吹き出して笑った。
俺は冷ややかにジェームスを見下ろした。
胡桃には顔を作って笑んだ。
「あいつは明日帰るよ」