不思議な仲間
4年前、他人のあたしを大事にしてくれていた牧師夫妻が亡くなった。
それ以来、あたしは牧師夫妻の一人息子の凱と二人っきりで生きてきた。
凱はあたしを家族として認めてくれていた。
たった一人のあたしの家族。
二人きりの家族。
吸血鬼の凱と人間の胡桃。
種族は違っても、二人は仲好く暮らしていると思っていた。
だけど、凱にはあたしだけじゃなかった。
あたしだけじゃ――――――
「胡桃ちゃん!」
名前を呼ばれた時には、あたしはもう走り出していた。
逃げる必要なんてなかったのに、ここにはいられないって思ってしまった。
敷地を飛び出そうとした瞬間、あたしは腕を掴まれた。
「は、離して!!」
叫びながら、頭が混乱していた。
――――――離して!!
離さないで!!!!!!!!!
「胡桃ちゃん!落ち着いて」
凱に引っ張られるように、牧師館に押し入られた。
そして強い力で、抱きしめられる。
神様の近くでぎゅっと強い力で抱きしめられた。
目の前がくらくらする。
凱の匂い、体温に安心する。
「胡桃――――――」
「凱――――――」
抱き合うと、優しい心臓の鼓動を感じる。
すると、突然、くすくすと女性の笑い声が聞こえた。
声の方を見ると、先ほど凱とキスしていた女性が木の机に座って笑っていた。
「かわいらしいのね」
「――――――凱、あの人だれ?」
凱はにっこり笑って答えた。
「胡桃ちゃんが一番、よく知っているよ」
「えっ?」
次の瞬間、ボンッと何か音がした。
「はいぃぃぃ?!?!」
あたしは目を白黒させた。
目の前には美人女性がいたはず――――――なのに、今、そこにいるのは――――――
「クリス――――――?」
猫のクリスがいた。
「ちょっと、あたしは、前から言おうと思っていたんだけれど、私の名前はクリスティーヌよ」
「えっ?どこから声が――――――」
「足元を見なさいよ!あたしはここよ」
ここって、クリスしかいない。
猫が口を開いた。
「あたしよ。貴方がクリスって呼んでいる猫よ」
「猫が――――――喋った――――――」
猫をじっと見て、それから凱を見た。
凱はにっこりと笑って答えた。
「うん。だって、彼女は化け猫だし」
「化け猫!?」
あたしは、ぐるっとクリスを見た。
クリスはプイっと顔をそむける。
「化け猫って呼び方はやめてくれる?あたしは、人にも変われて喋ることもできる高貴な猫なの」
「クリスってすごいのね」
「だから、あたしはクリスティーヌ。名前を略すのはやめてくれる?」
「クリスティーヌ――――――」
クリスは猫なのに、胸を張って言った。
「改めて、よろしくね。胡桃ちゃん」
クリス――――――クリスティーヌは笑った。
今日から、不思議な仲間がまた一人増えてしまった。




