拾ったネコ
あたし、こと古屋 胡桃
もうすぐ冬がやってこようとする、肌寒い日に牧師館の軒の下に捨てられた。
とはいえ、捨て子がその後も不幸せなんて決まっていない
あたしはその館の牧師に拾われて、大事に大事に育てられた。
でも大事にしてくれた牧師夫婦も13歳の時に亡くなって、今はその家の一人息子である船沢 凱と二人暮らし。
それなりに、幸せに暮らしてる。
たった一つ、大きな問題を除いて――――――
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雨に捨て猫なんて、漫画的な出会いだけれど、現実にあったんだ。
真っ黄色の傘を片手に、あたしが見下ろしているのは、みかん箱の中で“にゃー”と鳴いているかわいい猫。
まっ白い質の良い毛並みが、びしょぬれになっている。
どっかの血統書付の猫のように見えるが、なんでこんなところに捨てられているんだろう。
「にゃっ?」
かわいい短い声で猫が鳴いた。
「うちに来る?」
猫が頷くように、“にゃっ”と鳴く。
あたしは自分の服が濡れるのも気にせず、猫を抱きあげた。
猫は白い頭をくるんっと傾げた。
「胡桃ちゃーん、――――――ってあれ?なにそれ?」
帰ってきたばかりのあたしに、同居人の凱が駆け寄ってくる。
近づいてきた凱は、きょとんとした顔であたしの腕の中を見つめる。
「見ればわかるでしょう。猫よ、猫」
「うーん――――――まぁ、猫だよね。どうしたの、それ?」
「拾ったの」
「えっ?飼うつもり?」
あたしはにっこり笑って答えた。
「だって、うちにはもう一匹飼ってるし、あと一匹増えたって変わらないでしょう」
凱が目を見開いて、次の瞬間、今にも泣き出しそうな顔をした。
「胡桃ちゃん、僕をなんだと思ってるの――――――」