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拾ったネコ

あたし、こと古屋ふるや 胡桃くるみ


もうすぐ冬がやってこようとする、肌寒い日に牧師館の軒の下に捨てられた。



とはいえ、捨て子がその後も不幸せなんて決まっていない


あたしはその館の牧師に拾われて、大事に大事に育てられた。


でも大事にしてくれた牧師夫婦も13歳の時に亡くなって、今はその家の一人息子である船沢 凱と二人暮らし。



それなりに、幸せに暮らしてる。


たった一つ、大きな問題を除いて――――――


******************************


雨に捨て猫なんて、漫画的な出会いだけれど、現実にあったんだ。


真っ黄色の傘を片手に、あたしが見下ろしているのは、みかん箱の中で“にゃー”と鳴いているかわいい猫。


まっ白い質の良い毛並みが、びしょぬれになっている。


どっかの血統書付の猫のように見えるが、なんでこんなところに捨てられているんだろう。


「にゃっ?」


かわいい短い声で猫が鳴いた。


「うちに来る?」


猫が頷くように、“にゃっ”と鳴く。


あたしは自分の服が濡れるのも気にせず、猫を抱きあげた。


猫は白い頭をくるんっと傾げた。


「胡桃ちゃーん、――――――ってあれ?なにそれ?」


帰ってきたばかりのあたしに、同居人の凱が駆け寄ってくる。


近づいてきた凱は、きょとんとした顔であたしの腕の中を見つめる。


「見ればわかるでしょう。猫よ、猫」


「うーん――――――まぁ、猫だよね。どうしたの、それ?」


「拾ったの」


「えっ?飼うつもり?」


あたしはにっこり笑って答えた。


「だって、うちにはもう一匹飼ってるし、あと一匹増えたって変わらないでしょう」


凱が目を見開いて、次の瞬間、今にも泣き出しそうな顔をした。


「胡桃ちゃん、僕をなんだと思ってるの――――――」

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