新たな敵 6
次の日の朝、ジェームスが旅立つ。
彼が来て、私と凱の関係は少しだけ何か変わった気がする。
何が変わったのかって?
そんなのわかんない。
だけど、前とは少しだけ――――――少しだけ違いを感じるの。
なんでだろうね。
「じゃぁ、僕は帰るね」
ジェームスが玄関先でにこやかに笑った。
「たいしたおかまいもできませんで――――――」
大人びたことを言ってみたけど、彼はにこにこ笑っているだけ何も言わない。
途端に彼が私に手を伸ばしてきた。
そっと私の頭に触れる。
「可愛い子だね。僕でも食べてみたいと思うよ」
「えっ?」
私が顔を上げると、ジェームスはさらにニコッと笑った。
「凱、君もおいでよ」
不意にジェームスが言った。
「はっ?」
凱も私もあっけに取られる。
「凱もイギリスにおいでよ。君の仲間がたくさんいる」
「僕には胡桃ちゃんがいるんですよ」
やんわり凱が断った。
だけどジェームスは少しも諦めていないみたいだよ?
だって彼の目はずっと凱を見つめている。
「そんな餌、どこにだっているよ」
「え、さ?」
――――――そっか。
私って餌なんだ。
馬鹿みたいだけど、今気がついた。
吸血鬼にとっては私は餌。
食べ物と同じなんだ。
「ジェームス、貴様」
凱の声色が変わった。
怒気をはらんだ声が頭の上に響いた。
「だってね、君の仲間がたくさんいるんだ。胡桃ちゃんも凱は仲間と暮らしたほうがいいと思うだろう?だって、ここでは彼は孤独じゃないか」
不意に私に振られて、私は視線を宙に放り出す。
――――――確かにここには凱の仲間はいない。
もう凱のお母さんはいないから、このあたりで吸血鬼は凱一人だけ。
それって吸血鬼の凱にとっては孤独だったんだね。
「連れて行ってもいいよね?」
駄目押しのように問いかけられて、凱がとっさに口を挟もうとした。
だけど私のほうが先に口を開いた。
「だめよ」
短い言葉にジェームスが目を見開く。
「なぜ?」
その問いは短いけれど、怒気をはらんでいる。
ジェームスの怒りが見え隠れしている。
「だって凱は私の家族よ。家族は一緒にいるものよ。確かに凱は吸血鬼だけど、その前に私たちは家族だもの」
凱もジェームスも言葉を無くした。
黙って私を見ている。
――――――ねぇ?凱。そうでしょう?
だって、私たち17年前から家族だもの。




