新たな敵 5
「――――――時々、凱は嘘をつく」
ドキッとした。
「真実に見える嘘をつくの」
気づいていたのか?
「凱って嘘を付くとき笑うんだよ。知ってた?」
胡桃――――――ちゃん、知ってたの?
俺は吸血鬼で、胡桃とは違った人種。
吸血鬼はプライドが異様に高いから、人間なんぞと同格には見ない。
本来人間は餌と見るのが、吸血鬼の姿だ。
けれど、俺の母親は、人間の父に一目ぼれして結婚した。
――――――吸血鬼の世界では一大事だった。
母親は結婚したその日に、吸血鬼仲間から見捨てられた。
それでも母は死ぬまで幸せそうに笑っていた。
俺は裏切り者の血を引いているものの、まだ吸血鬼の仲間に戻る機会があるらしい。
今なら、俺は吸血鬼として誇りを持って生きていける。
だけどそれは古家胡桃との別離を意味している。
そんな大事なことをいつまでも彼女に隠し続けていた。
そのことを隠すためなら平気で嘘をついたし、ごまかしもした。
笑ってすむならそれでいい。
でも、彼女は気づいていた。
そうか。
俺の嘘に君は気がついていたんだね。
――――――もう子どもと呼べないね。
「それで胡桃ちゃん。もし、僕が嘘をついていたとしたらどうするの?」
意地悪な俺は、こういう状況になっても口を割らない。
まだ、君に真実を話すつもりはないんだ。
だけど、彼女は意外なことにとても穏やかに微笑んだ。
「何も変わらない――――――言いたくないことを聞くつもりはないよ」
――――――そうか。
君はもう子どもじゃないんだね。




