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第九話 番長、飯を食う

しまった。ちょっと昼寝するつもりが目を覚ますと日が暮れ始めていた。

小屋を出て沈み始めた太陽見ながら失敗した事に気づく。

さすがに夜の森に入るほど物好きではない。

つまり今日は何もすることが無いということだ。

しょうがないので小屋に戻ってもう一眠りしようと盛大なあくびをしながらきびすを返そうとしたところ―


「ちょっとアンタ!何も言わずにどこへ行ってたのよ!!」


なにやらやかましい女の声が聞こえてきた。

カーラとかいう女だった。


「寝てた。」


まぎれもない事実である。ぶっきらぼうなのはあまり関わりたくないからだ。

番長はやかましい女が嫌いなのである。

どうやらその返事がお気に召さなかったのか女はますます調子に乗りはじめる。


「礼も言わせず立ち去るなんて酷いんじゃない!?こっちの身にもなって考えなさいよ。」

「礼なんぞいらん。俺が勝手にやっただけだ。今から寝るんだ、邪魔をするな。」


問答無用とばかりに小屋に入り扉を閉める。

外で女が騒いでいるようだがそんなことは知らん。

俺はふたたび眠りについた。



小屋の前で罵詈雑言を浴びせている女――カーラは大層怒っていた。

いや、怒っていたというより理解不能な男の行動に混乱していたと言った方がいいか。

真っ赤な髪に褐色の肌、意志の強そうな黒い瞳は普段であれば充分に美女と呼ぶにふさわしい容姿をしている。

だが、今の彼女は怒りのあまり目は釣りあがり口からは唾を飛ばしながらあらん限りの汚い言葉を吐き出していた。


一方、ジルベルトはケインを村の薬師の元に運んだ後、助けてくれた男に礼を言いに行くと言い出て行ったカーラを探していた。

それほど広くない村なので、大して探す必要もなく見つけることが出来た。

しかしそこに居たのは今までに見たことも無い仲間の姿であった・・・。

彼はそっと、その場を後にした。



翌朝、剛田はギルドに顔を出した。

さすがに仕事として受けた以上は経過を報告しておこうという事だ。

結局薬草の1束も持って帰れなかったのだとしても。


「悪いな。色々あって置いてきちまったんだよ。」


昨日と同じ受付の職員に言う。

だが、罰則無しの依頼であったことからも特に問題はないそうだ。

今日も森に入って薬草を取ってくると告げ、ギルドを後にしようとした―ところで声を掛けられた。


「飯ぐらいは奢らせてくれないか?」


その声の主を見る。

そこには頭を掻きながら困ったような顔で見つめてくる男がいる。

ジルベルトだ。

その雰囲気から、どうやら昨日の女との一件も知っているようだ。


「まあ、飯ぐらいなら付き合ってやろう。ただし、飯は大盛りだ。」


こういう話なら大歓迎なのだ。

飯は女と違って煩わしく無いのだから。

番長は意外とチョロイのである。


その後、飯屋で昨日のやかましい女に絡まれたが、そんな事はどうでも良かった。

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