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第八話 番長、帰還する

終わった。

私の前で戦っている戦士―ジルベルト―のハルバードが、宙を舞う。

まるで無慈悲な神が死の宣告を下したような、静寂の時。

そいつは現れた。

決着は一瞬であった。その一瞬で巨大な鈍器は男の膂力によって加速され、兵器に変わった。

魔獣の頭は初めから存在しなかったように綺麗に弾けとんだ。


男が鈍器を担ぎ直す。

衣装の背中には竜の模様、そして担ぎ上げられた恐ろしく巨大なハンマー。

それは、まるでドラゴンですら一撃で屠れるといわんばかりの空気を纏っていた。



一瞬冷やりとさせられた。

完璧なタイミングで飛び出したはずが、まさか反応されるとは思わなかったためだ。

もし俺の得物が普通の鈍器であればグレイベアの片脚を砕くに留まり、致命的な反撃を受けていたかもしれない。

喧嘩に『もし』は無い、が俺の信条とはいえ今回の教訓は忘れてはいけない。

野生動物の防御反応は予想を遥かに上回るということだ。


ゆっくりとハンマーを担ぎ直し、辺りを警戒する。

敵を倒して油断する、こういう時が一番危険だと経験で知っているからだ。

五感から感じる気配と第六感を動員して敵意を探る。


(敵意は無し。ひとまず安全ということだな。)


振り向いて、こちらを見ながら呆然としている女に問いかける。


「さて、怪我をしてる奴はそいつだけか?応急処置ぐらいはしてやる。」

「あ、ああ。そうだ、こいつはケインと言うのだが、肩を爪で裂かれている、その時に吹き飛ばされて足が折れたようだ。」


意識が朦朧とし始めているケインとやらを見た。

俺はとにかく止血をしようと腹に巻いているさらしを解く。

さらしで覆った傷口を圧迫止血しつつ、手早く傷口を縛る。

折れた足に添え木をして固定する。とりあえずの応急処置は済んだ。

あとは村に戻って医者に見せる以外に方法は無いだろう。


せっかく仕留めた獲物ではあるが持って帰るのは不可能だ。

俺達は手早く荷物をまとめ、急いで村に帰ることにした。

戦士の男がジルベルト、戦士の女がカーラ、レンジャーの男がケインというらしい。

負傷しているケインをジルベルトが背負い、食料や野営道具の入っているであろう袋を俺とカーラで分けて持つ。

どうやらこの連中はこの森に慣れているらしく30分もかからず村にたどり着いた。

後のことは自分たちでなんとかするだろう。

俺は居ても邪魔だろうとここで別れることにする。


結局、薬草も置いてきてしまったし、もう一度森に戻る気力もなく。

ずっと歩き通しで足の疲労も溜まっており一度小屋に戻って休む事にする。


ぎゅるるるるる


(腹、減ったな・・・)


小屋で寝転がりながら思う。

あの熊を持って帰れればたらふく肉が食えたのにな、と。

そんな事を思いながらしばらく目を閉じていると次第に眠気が襲ってくる。

自覚は無かったが、かなり疲労していたようだ。


剛田はいつしかいびきをかいて寝てしまっていた。

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