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第六話 番長、武器を手に入れる

鍛冶屋はここか。

見たところボロい看板が掛かってるだけで他の民家を広くしたぐらいの違いしかない。

とりあえず入ってみるか。


「邪魔するぜ。」


声を掛けて入った先は目の前に申し訳程度のボロいカウンター。その後ろに剣や槍、斧やハンマー、盾、弓矢等が立てかけられている。

奥には鋳造用の炉がある所を見ると鍛冶仕事はそこで行うのだろう。もう一部屋は倉庫だろうか。扉が閉まっているため分からない。

さしずめここは鍛冶屋兼武器屋といったところか。


「なんだ客か?」


無愛想な返事が返ってくる。

声の主は俺の頭二つ分は小さい、しかし横幅は俺よりも僅かに大きい髭面の男だ。


ピッ


<ヤンザ・エッド>

――――――――

種族:ドワーフ

年齢:56歳

職業:鍛冶師

――――――――


ドワーフか。何かの映画で見たことがある。


「おう。ちっと武器を見せてもらおうと思ってな。」

「冒険者か。しかし武器も防具も持っていないとなるとルーキーか?」

「そういうことになるな。さっき登録してきたばっかりだ。」

「ふん、ルーキーがこんな辺境で何をするつもりだ。お前さんが受けられる依頼なんぞ無いだろう。」

「無いって事は無いさ。だがとりあえずは得物が必要なのは確かだ。見せてくれ。」


ドワーフは釈然としない表情ではあるが、売ることを拒否する様子は無い。


「とりあえず予算はいくらだ?」

「銀貨9枚以内だ。」

「お前さんが扱えそうなのはこの辺りだな。」


そう言って並べられた武器の説明を受ける。


「まずは剣、所謂ショートソードだ。銀貨6枚。こっちのロングソードは銀貨9枚。」

「次に槍、標準的なスピアになる。穂先は鉄、柄は木製だ。銀貨7枚。」

「こっちは斧、両手持ち用だ。刃の部分は鉄製、その他は石を使っている。柄は木製だ。同じく銀貨7枚。」

「最後にハンマー。両手持ち用。斧と同じく打撃部位の先端は鉄製、その他は石製だ。柄は木製。銀貨9枚。」

「弓が扱えるならそちらの説明もするが?」

「いや、必要ない。」


さて、どれにするかだが。

ロングソード―悪くは無いが軽すぎる。相手が熊だとこれでは致命傷にならないだろう。

槍―突く事に限定しているおかげで貫通力は剣よりも高そうだ。だがこれも軽い。

斧―重さは剣や槍よりは重い。振った感じも扱いやすく先程の剣や槍よりはしっくりくる。

ハンマー―そこそこの重さだ。振り回せば大抵の相手は吹き飛ばせるだろう。


この中でなら斧かハンマーだが。先ほどからハンマーを振り回してはいるがどうにも物足りない。

軽すぎるのだ。

これでは熊や虎に致命傷を与えることは難しいように思う。

消去法で斧だな。


「この斧にしよう。」

「・・・。」

「おいオヤジ。斧にするって言ってんだろコラ。」

「ちょっと待ってろ。」


何事か考えていた様子のオヤジは、そう言うと奥の物置のへ行き、何かを引っ張り出すような音を立て始めた。

しばらくその様子を眺めているとようやく目当ての物らしき物体を引きずりながらオヤジが帰ってきた。


「こいつを持ってみろ。」


それは一振りのハンマーだった。いや、ハンマーというよりは鉄の塊だ。

だがそれは長年使われていなかっただろう。持ち手に巻いてある皮以外は全て錆に覆われ、

お世辞にも売り物には見えなかった。

だがその暴力的な見た目と質量だけは失っておらず、立てかけただけでボロっちいカウンターがギシギシと悲鳴を上げている。


「ふっ。」


一つ息を吐いて両腕で持ち上げる。

ずっしりと腕に重量がのしかかった。

今まで持った武器には無かった手ごたえ。

これならばどんな奴だろうと一撃で叩き潰せる。

そんな手ごたえだ。


「うおおおおらぁ!!」


本能の赴くままに振り下ろす。

それは圧倒的な質量と速度によって勢い余ってむき出しの地面に激突した。

凄まじい轟音を響かせ地面を揺らす。金属の武具がガチャガチャと音を立て、建物自体がミシミシと音を鳴らす。


「・・・。ウチをぶっ壊すつもりかお前は・・・。」


オヤジは冷や汗を流しながらも何故か怒ってはいないようだ。


「こいつは良い。いくらだ?」


俺はオヤジに尋ねる。


「そいつは売り物じゃあねえ。だが倉庫の肥やしにするんじゃ武器がかわいそうってもんだ。銀貨9枚で譲ろう。」

「おう。ありがとよ。」


俺は銀貨を支払い、ハンマーを担ぎながら意気揚々と外に出る。目指すは森だ。

そんな俺の背中を見つめながらオヤジが呟く。


「あれを振り回せる奴なんぞ初めてみたわい。」


それはかつてあまりの重量さ故に扱える者がおらず失敗作と笑われ、ネタ武器として皮肉を込めてこう呼ばれた。

《竜殺し》と。

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