第五話 番長、依頼を受ける
掲示板の前で依頼表を睨みつける。
別に視力が悪いわけではない。両目とも2.0だ。
問題はランク制限だ。
ほとんどがCランク、簡単な部類でもDランクである。
もちろん俺のランクは最低のGだ。受けられるはずがない。
受ける事ができる依頼といえば、
薬草採取 ランク制限無し(推奨D以上)
湖の生態調査 ランク制限無し(要:経験者)
この2つである。しかも生態調査の経験なんぞあるわけもなく、実質、薬草採取しかないわけだ。
薬草とやらも見たことがねえしな。鑑定を使えば分かるだろうが全ての草を鑑定するわけにもいかない。
とりあえず受付で聞いてみる事にする。
「薬草とは。この中の物を指します。」
そう言って見せられたのは図鑑の様な絵だ。
5種類ほどの草が特徴的な部分を強調して描かれている。
手描きの割には上手いな。
「ほーう。これを採ってきて渡せば量った重さに応じて報酬が貰えるという事か。」
「その通りです。」
「じゃあその依頼を受けるぜ。他に何か注意事項はあるか?」
「そうですね、この依頼は無制限依頼になりますので違約金等の罰則はありません。
特定の依頼者がいるわけではなく、ギルドが買い取り販売します。」
「なるほど。」
「それとこれは余計なお世話になるかもしれませんが・・・」
女の職員が言い難そうな顔をして言おうかどうか迷っている。
「なんだ?」
「はい、この村の周辺は非常に危険な魔獣が生息しています。特に薬草を採取するなら森に入る必要があります。
そして森には狼や熊、虎のような野生動物、さらにそれが魔獣化したものまでいます。」
「・・・。」
「冒険者になりたて、しかも武器もお持ちでないようですので森に入るのは危険かと・・・。」
なるほどこの女の言う事ももっともだ。
さすがに熊と素手でやりあうのは安全とは言えない。
無言で考えていた俺の顔が不機嫌そうに見えたのか、女の職員があわてて謝罪しようとする。
「も、申し訳ありま「いや、いい。あんたの言う事が正しい。」」
「魔獣というのは野性動打が凶暴化したようなものだったか?そういう奴らと素手で戦うのはたしかに無謀だろう。」
「は、はい。では依頼の方はどういたしますか?」
「依頼は受ける。素手で無理なら得物を探してから行くだけだ。」
何もしないうちから逃げるわけにもいかねえしな。
「それでしたら近くの鍛冶屋でお探しになるとよろしいかと思います。
なにぶん田舎ですので品揃えは悪いですが冒険者用に取り寄せた武具を多少販売しております。」
「そうか。色々と助かったぜネーチャン。じゃあさっそく行ってくるぜ。」
俺は礼を言ってギルドを出た。
なんにせよ俺の冒険者としての初仕事だ。気合入れて行くぜ。