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異世界人にとって俺のレゾンデートルは?  作者: 遊司籠
第一章 気が付けば異世界編
9/45

9話 強敵との邂逅!

 断続的に続く痛みと、不意に包まれる優しい温かさ。


 何回そのサイクルを繰り返しただろう。

 俺の痛みから意識が覚醒に向かうと同時に優しい温かさに包まれる。

 次第にはっきりとしていく意識に俺は瞼を開ける。

 まず、俺の覚醒した意識で一番最初に見えたのは握り拳であろう誰かの手。

 それが目の前に迫ってくる。

 俺が握り拳だと認識している内に、その拳は問答無用に俺の左頬を抉る。


「記憶よ、消えろ!! 消えろ!! 消えろ!! ……完全なる癒し(・・)を!! 記憶よ、消えろ!! 消えろ!! 消えろ!! ……完全なる癒し(・・)を!!」


 先程沈んだ意識の中で断続的に俺を襲っていた痛みは、こちらに迫りくる拳の先に垣間見る事が出来る顔を真っ赤にしたエレナさんの必死の形相とセリフから理解できる。

 俺、顔をサンドバックにされている。

 よくよく確認するとエレナさんは左手一本で俺の胸ぐらを掴み、俺の両足が地面に付かない高さまで持ち上げて、右手で俺をタコ殴りにしている。

 ご丁寧に回復スキルで俺を回復(・・)しながらだ。

 断続的に俺を襲う痛みと優しい温かさの正体はエレナさんのパンチとスキルだった。

 タコ殴りして回復のサイクルって……あなたは鬼ですか!?


「記憶は消えた? いえ、まだ安心できないわ!! さっきの記憶を忘却の彼方に完全に飛ばさないと!! こんな時に忘却系魔法スキルがあったなら!!」


 エレナさんは殴る手を一旦止め血走った目で俺の顔を伺い、再度殴りかかってくる。


「いひゃ、いひゃいれす!! たるけ、たるけてくらはい!! わるれましたから!!」


 俺は顔面をタコ殴りにされながら必死に懇願する。記憶は無くなったから殴らないでと。

 俺の懇願が届いたのかエレナさんは殴る事を一旦止める。


「ホント?」


 エレナさんの必死の形相と暴力に屈した俺は嘘でも忘れたと言い逃れをする。

 断続的に襲ってくる暴力と回復のサイクルなんてトラウマになる!!


「はい!! 白で、スケスケで、バラが刺繍されているレースの紐パンの事は完全に忘れました!!」


「まだ、しっかり覚えてるんじゃないですかーーーーーーーーーー!!」


 ボロを出してしまった!! 咄嗟だったので、つい言葉を滑らせてしまった。

 この後俺の心が完全に折れ、あーとか、うーとかしか話せなくなるまでエレナ式記憶消去術は行使された。





 小一時間ほどエレナさんが落ち着くまで、俺は殴られ続けたが、ついに俺は勝ったんだ!! 記憶を保持したままエレナ式記憶消去術を乗り切った!!


「ハァハァ……、今回はこのぐらいでやめてあげます。もうどれだけ殴っても記憶は飛ばせそうにないですからね。今度からは気を付けないと男性が3番隊入隊したんだから」


 エレナさんは俺を地面に降ろし、額に浮かぶ汗を右手の甲で拭い、こちらに非難の目線を向けてくる。


「あー、うー」


 俺は意味がある言葉を発する気にもなれない。

 今はエレナさんのエレナ式記憶消去術を乗り切った自分を褒め称えよう。

 記憶残って本当によかったよ!!


「もう、ハル君が悪いんだからね……」


 あれ? 俺が悪者になってる!


「あれは不可抗力、俺の目の前で着替えたエレナさんに非がありますよ!!」


「言う事はそれだけか?」


 エレナさんの笑顔が怖い……、本当の意味で女性が怒ると、こんなにも怖いのか。

 もしエレナさんの着替え中に、目を逸らせば少しは許されたのかな俺?


「エレナさんの着替え中に目を逸らさず、すみませんでした」


 一応謝っておく、俺が完全に悪いから謝るんじゃない。

 エレナさんが欲しがってるだろう言葉を言っているだけだ。


「あまり誠意が感じられませんが、これ以上ウダウダしていても時間の無駄ね。はぁ、もう許しましょう」


 そう言いつつ隊長室を後にしようと扉に手を掛けながら、後ろにいる俺に振り向き様に声を掛けてくる。


「今回の任務にハル君、付いて来るんでしょ? とりあえずケンロウモンから一旦出ましょう」


 振り向き様に声を掛けてきたエレナさんだが先程と違って真面目な顔に、仕事に向かう人の顔になっている。

 今から任務に行くのにヘラヘラしてる人もいないか。

 ましてや軍属で隊長なのだから、弁えているのだろう。


「はい、仕事の邪魔に為らないように見学させていただきます!」


 エレナさんは、真面目な顔で俺の返事に了承したとばかりに一回大きく頷き、隊長室の扉を開け背筋を伸ばし颯爽と歩き出す。

 隊長としての威厳の為か、それともエレナさんの元からの性格なのか凛々しい雰囲気を纏っているが、その凛々しさは女性として洗練された好ましさが感じられる。

 俺はこの人率いる3番隊に所属したんだから、部下として迷惑を掛けないようにしなといけないと心の中で呟く。

 ましてや配属されたばかりの新人が任務に同行するとか本来ありえるんだろうか?エレナさんが気を使ってくれたのは何となく分かる。

 俺は物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンに初めて来た時の様に、エレナさんの後に付いていく。

 兵舎を出て、街中を歩く。

 昨日と違い行き交う人は、そんなに多くない。

 今何時かは正確な時間は分からないが、街の中を行き交う人々の中に主婦っぽい人が少ない上に、労働者っぽい人も少ない事から朝から昼の間ぐらいだろう。

 異世界に来たのに行き交う人々の服装は地球の物に近い感じがする。きっと転移・転生者の所為かな? 俺は行き交う人々を視界に収めながら歩き、門まで辿り着く。

 門の左右に兵士が待機しており、エレナさんと俺が門に近づくと門の左側に居た人が声を掛けてきた。


「これは隊長殿。昨日の続きで任務で外ですか?」


「ええ、そうよ。手続きいいかしら? 今回は後ろの彼も同行するので彼の手続きも一緒に」


エレナさんと兵士が会話している内に門の右側に控えていた、もう一人の兵士が俺に近づいて来た。


「指環を提示してください」


 俺は言われるまま右手中指に指環を嵌めているので、右手の指環を兵士の人に見えるとこまで持ち上げる。

 兵士の方は俺の指環を確認すると、兵士の方が指環を嵌めている左手を俺の右手に軽く当てる。


「はい、外出ログは取れたので門から外に出ても問題無いですよ」


 え? 今ので記録取ったの? 俺が不思議そうに自分の指環を眺めていると、いつの間にか俺の横に移動していたエレナさんが顔を覗き込んでくる。


「昨日言ってなかった指環の機能よ。この際だから全部説明するね。1、翻訳機能。2、スキル閲覧。3、身分証。4、時計の機能が付いてるんだよ。で、門兵の方の指環は仕事用の記録保管機能付き。この物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンに出入りする人の管理の為に記録保管機能を付けてるんだよ」


 数種類の機能付きって話は指環を頂いた時に聞いていたけど、身分証って言っても俺の身分なんて、この世界ではどう説明するんだ?


「今の俺って身分はどうなってるんですか?」


「ハル君は、ホーネスト王国の軍人で3番隊所属になってますよ」


 エレナさんは俺の疑問に答えてくれているんだが、新たな疑問が生まれる。


「いつ指環に俺の身分が書き込まれたんですか?」


 俺の疑問にエレナさんは笑顔を浮かべ、右手を俺の顔の高さまで持ってくる。

 その右手人差し指に指環が嵌っているのが見える。


「正式に軍所属が決まった後に私と握手したでしょ。その握手の時に書き込みしました。どうです、驚きました? 私達隊長など軍の幹部が嵌めている指環には記録の書き込み機能と記録保管機能も付いてるんですよ」


 そうか、俺が正式に軍に所属が決まった後に書き込みしてくれたんだ。

 今後俺が困らないように。


「驚きましたが、身分の書き込みありがとうございます」


 俺の感謝の言葉を聞きエレナさんは一瞬キョトンとして直ぐに笑顔を浮かべる。


「フフッ、軍に新人を迎えた時に幹部が書き込みするのは当たり前なんですよ。別に感謝される事では無いですよ。さぁ、外に行きましょう」


 エレナさんは笑顔のまま歩き出したので俺も遅れず付いていき、一緒に門を越えて少し歩いた所で声が掛かる。


「隊長!! そこの変態連れていくのなら、私も連れてってください!!」


 後ろから声を掛けられたのでエレナさんと俺は後ろを振り返る。

 門を出てすぐの所に女の子が居た。

 ただしスライムに座ってる女の子だが。


「なんだ、テレサ? 任務に同行したいのか?」


 エレナさんが、テレサに話しかけている。

 俺は昨日の事もあるので、あまり会いたくなかったが仕方ない。

 テレサは昨日と違い白いワンピースにハーフパンツにスニーカー姿だ。


「はい! 同行させてください!! 変態と二人で任務に出かけられたって兵舎で聞いたので追い掛けてきました!」


 エレナさんと話してるテレサは時々俺にガンを飛ばしてくる。

 あらら、嫌われてるね俺。

 仕方ないか、昨日はテレサの姉であるティナちゃんのおっぱいガン見してテレサの気分を悪くさせてしまったんだから。

 しかしガンを飛ばされて気持ちのいいもんじゃないので、俺もテレサにガンを飛ばす。


「テレサ。公然の前で変態呼ばわりはあまりにも失礼でハル君が可哀想だ。先程我々の3番隊に編入が決まって私の部下に、そしてテレサとも同僚になったんだ。人目が有る時は名前で呼ぶように! 分かったかしらテレサ?」


 おぉ! エレナさんが俺を庇ってくれている! あなたは女神や! 巨乳の女神や!! 伊達に巨乳じゃない! あ、今は巨乳関係ないか。

 しかしテレサめ! 公然の前で俺を変態呼ばわりとは、お前は悪魔や! 貧乳の悪魔や!! 伊達に貧乳じゃないな!! きっと、その胸の様に心も乏しいんだろうな!!

 テレサの場合は絶対貧乳関係あるね! オジサン分かるんだから!!

 俺がガンを飛ばしながら阿呆な事を考えていると、すんごい重圧(プレッシャー)を感じる。

 重圧(プレッシャー)の先には鬼のような形相のテレサが俺を目線で殺さんばかりに睨んでる!!

 ……あれだ、このままじゃ俺殺されるわ。

 まじめに殺される! マジで、ガグブルっすよ。


「二人とも落ち着け。特にテレサ! 今から私の任務に同行するんだろう? 私も昨日の件については聞いているが、ここまで来て再度喧嘩するなら同行するな! 付いてこられても迷惑にしかならん! まだ同行の意思があるなら、お前達も大人なんだから最低限、表面上は取り繕え! 分かったな?」


 エレナさんが怖い顔をして俺とテレサを睨んでくる。

 テレサは無言で下を向いて身体を振わせていたが、何とか気持ちを落ち着かせる事に成功したのか顔を上げた。


「すみませんでした。お許し下さい隊長」


「大変申し訳ありませんでした」


 テレサが謝ったので、俺もそれに倣ってエレナさんに謝る。

 そんな俺達を見てエレナさんは盛大に溜息を吐き、顔から力を抜いている。


「もう、本当に同行中は喧嘩しないでね二人とも。先程から私達目立ってるから、さっさと移動しましょう。オープン!」


 エレナさんの声と共に何も無い空間から三輪の大きな白と赤のツートンカラーのアメリカンタイプのバイクが出現した。

 バイクは全長2.5mぐらいの大きさで、前一輪・後ろ二輪で左右にサイドカーが付いていた。

 シートは皮張りで、中々座り心地は良さそうに見える。このバイクで、もっとも目立つのが左右のサイドカーだ。

 右側のサイドカーには盾が描かれ左側は城が描かれている所を見ると、このバイクが3番隊の物なのが分かる。


「今何も無い空間からバイク出てきましたけど、これって?」


「あぁ、ハル君には説明して無かったわね。私アイテムボックスってスキルも持ってるのよ。疑似空間にアイテム持つ事が出来るし、どんなアイテムだろうと登録さえしておけば出し入れは思いのまま。服とかも登録しておけば服を脱がずにアイテムボックスに閉まえて、その場で着替えが出来るのよ」


 成る程ね! だから俺の目の前で軍服消えて白のスケスケで薔薇の刺繍されてるレースの紐パン一枚でおっぱい丸見え状態になったのね。

 うん、大丈夫だ! 俺の記憶は完璧に保持されているぜ!!


「じゃ、二人とも乗ってね」


 エレナさんは俺達に声を掛けバイクに跨る。

 俺は右側のサイドカーに乗り込み、テレサはスライムことワインゼリーと共に反対側のサイドカーに乗った。

 ちょうど真ん中にエレナさんがいるんだ、これなら移動中はテレサと喧嘩する確率は少なくなったと思う。


「では、出発進行!!」


 エレナさんの掛け声と共にバイクのエンジンがかかり、ゆっくりと進み始める。

 思ったよりエンジン音が静かだったのには俺は驚いた。


「結構静かなんですね、このバイク」


 ハンドルを握るエレナさんに、運転中にも関わらず俺は声を掛けてしまった。


「このバイクは、魔力で動くのよ。たしかに液体燃料を燃やす音が無いから静かだけど運転と魔力操作を同時にするのが面倒くさいのよ。ごめんね、ハル君。私運転に集中したいから今から会話出来ないの」


 エレナさんは真面目な顔で前を見つめている。

 なんか大変そうだ、今のは空気読めずに声掛けちゃった感がパネェっす。

 バイク運転終わるまで、エレナさんには声掛けないでおこう。

 バイクはどんどん加速していき、かなりの速さになり今何km出てるか分からないが周りの景色が視界から消える様に流れていく。

 俺は視界から消える様に流れる景色に目を向けるが周りは見渡す限りの荒野、昨日ぶりの景色だな。

 俺が何もない荒野を眺めて小一時間たった頃バイクは減速を始めたので、目線を前に向けると大きな岩山が見える。

 二日前立ち寄った水場がある岩山じゃないだろうか、俺が確認の為少しサイドカーから身を乗り出すとエレナさんから声が掛かる。


「目的地は今目の前に見える岩山で今回の任務は、この荒野を守る最強の守護者のスカウトです。守護者の名前は岡島 哲郎。転生者で強力なスキル、本人曰くユニーク持ちらしいので何としてもホーネスト王国では岡島をスカウトしたいんです。噂ですが、ガストニア帝国も岡島に接触しているらしいんです。過去ホーネスト王国では0番、1番隊の隊長がスカウトに向かいましたが岡島は尽く首を横に振ってます。今回は3番隊の隊長である私が岡島との交渉の為王都より派遣されました。岡島との交渉は、これで3回目となり本部も中々首を縦に振らない岡島に苛立ってます。何とかスカウト出来るといいんですけどね」


 エレナさんが今回の任務について説明が終わるのと同時ぐらいに岩山に着いた。

 さっさとエレナさんがバイクから降りたので俺やテレサ達もサイドカーから降りる。

 ここに岡島なる転生者がいるのか? と俺が周りを見渡していると、エレナさんが大声を張り上げる。


「岡島 哲郎さん! 岡島さん! ここに居るのは分かってます!出てきてください!!」


 エレナさんの大声を受け周りに不穏な雰囲気が漂い始める。

 いつの間にか体に纏わりつくような重圧(プレッシャー)をヒシヒシと感じる。

 俺は静かに周りに注意を払ってると、エレナさんの前あたりの空間にヒビが入り始める。

 ヒビが大きくなって来た時、不意に空間が割れる。

 いや、割れたんじゃ無い! 割られたんだ(・・・・・・)!! 割れた空間から腕が出てるのが分かる。

 人間の腕じゃない、子供の腕ぐらいの大きさをしているが緑色をしている。


「うるさいの~!! またネェーちゃんか!! 何回来ても無駄やっちゅうねん!!」


 あれ? この声に俺は聞き覚えがある。


「それに今は岡島 哲郎ちゃう! ゴブ郎や!! 前の名前で呼ぶなや!! 俺はゴブリンのゴブ郎や!!」


 割れた空間から出てきたのは、ここで俺をボコボコにしてビールを戦利品と称し持ち帰った強敵(ゴブリン)だった。

 岡島 哲郎ことゴブ郎は俺達の顔を眺めて、俺のとこで目線を止め大声を出してくる。


「お? おお? 俺に無謀にも喧嘩売った兄ちゃんやないか! また会ったな!  ビールご馳走様やったで!!」


 うん、俺は君と会いたくなかったよ!

 君の御蔭で俺は絶賛ゴブリンに対してTO・RA・U・MA受けたからね!

 エレナさんとテレサは驚いた顔で俺を見ている。

 あんまこっち見ないでください。






 こいつ本当にスカウトするんですか……エレナさん。

9話更新出来ましたー!やったね!執筆活動捗らないですが、頑張ります!

感想等あればどんどんください。

次の10話はいつ更新できるやら…

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