8話 軍に所属する!
ようやく8話更新出来ました!
自然と目が開いた。
目を開けたら周りは薄暗かったが目を凝らせば何となくだけれど天井を見る事が出来る。
「……知らない天井だ。薄暗くて全然見えないけれど、この世界に俺が知ってる天井なんて存在する訳無いか」
なぜ俺が今、薄暗い部屋でベットだろう所に寝かせられているのかは何となく分かる。
きっとティナちゃん達が気絶した俺をここまで運んでくれたんだろう。
俺は“また”負けたんだ。
今度はスライムに腹パン一発で気絶だぜ? あまりの悔しさに目尻に涙が溜まりそうになるのをグッと堪える。
少し瞼を閉じて気持ちをなるべく落ち着かせてから体を起こし部屋の中を見渡す。
部屋が真っ暗では無く、薄暗かったのは窓から微かに入り込む月明かりの御蔭だった。
俺はベットから降り窓に近づき、そっと窓を開け外を眺める。
外は夜なので暗いかと思ったが窓から見える、そう遠くない街並は光が溢れている為、あんまり街が暗くて見る事が出来ないって事はない。
俺は街並みをある程度眺め、窓から少しだけ身を乗り出し夜空に目線を向ける。
真ん丸のお月様と夜の空一杯に広がる星たち。
先程自分で抑えつけ落ち着かせた感情が本当の意味で落ち着いていく。
星空ってのは輝きに溢れていて、自分もその輝きに加わる事が出来る気がする。
自分は輝けない星では無く輝いていられる星に為れる気が。俺は望んで異世界に居る訳ではないが、望んでも異世界に来れる訳ではないのだから。物語の、例えるなら異世界転移・転生系の小説の主人公達みたいに輝けるんじゃないかって思えるんだ。俺の勘違い・妄想・願望と馬鹿にされても今は自分が輝いている星だと勘違いしていたい、そう願わずにはいられない。
誰かに、この感情を分かって貰おうなんて思ってない。
俺が星空鑑賞に耽っていると部屋にノックの音が小さくだが響く。
夜だから周りの人に迷惑にならない様に配慮だろうか? 今、俺がいる部屋の近くに人が寝ていればの話だが。
「……はい、起きてますよ」
俺も近くの部屋で誰か寝ているのを起こすのは申し訳無いと思い、窓から乗り出していた身体を部屋の中に戻し、扉に向かって部屋をノックしたであろう人物に聞こえるぐらいの範囲で声を落とし返事をする。
俺の返事が聞こえたのかノックの主が部屋に入ってくる。
入ってすぐに扉の前に立たれた為に初め部屋に入ってきた人物が誰かは分からなかったが、月明かりに照らされた顔で判断出来た。
「ティナさんですか。どうしました?」
俺はティナちゃんに問い掛ける。
「隊長より伝言です。明日、目が覚めた時間で良いので隊長室に来るようにとの事です。それから隊長室は、この兵舎の一階一番奥なので迷う事はないと思います」
ティナちゃんは声を抑えて俺の問いに答えてくれる。
扉の近くにいたティナちゃんは薄暗い部屋の中音を立てずに、こちらに近づいてきて俺の1mくらい前で止まり
「今日は妹テレサが失礼をしました。大変申し訳ありませんでした」
今日の事を謝りつつ頭を下げてきた。
「いえ、気にしてませんよ。俺も此処まで運んでもらっていますし、迷惑を掛けてます。こちらこそ大変申し訳ありませんでした」
俺もティナちゃんと同じく頭を下げる。
ティナちゃんに謝って貰う事じゃ無い、あれは喧嘩両成敗で当事者の問題だと感じているから。
まぁ、主に俺が原因なのは薄々感じているが、一応喧嘩なのだから折り合いは付けないといけない。
「……そうですか。隊長からの伝言はお伝えしたので失礼します」
ティナちゃんは短く返事を返すと難しい顔をしたまま部屋から出ていった。
ゆっくり音を立てず閉まっていく扉を眺める。
俺は窓を閉め、寝れないかもしれないが再度ベットに横になり瞼を閉じたら自然と眠りにつけた。
太陽の明かりで自然と目が覚める。
俺は寝起きのぼやけた意識のまま上体を起こし周りを確認する。
昨日の夜に確認できなかったが部屋は6畳ぐらいで、入口の扉から向かって左の角に机が一つと今寝てたベットしか無い質素な部屋だった。
ここが兵舎で一人部屋の大きさと考えるなら普通か? と考えながらベットから降り、昨日の伝言通り隊長室に向かう為部屋から出る。
俺が居た部屋はどうも二階だったようで廊下の突き当りの階段から降りたら一階だった。
さて、隊長室はどこかなとウロウロしながら彷徨う事5分。
一階一番奥であろう部屋に辿り着く。
俺は扉をノックしながら、部屋の主に入室の許可を取る。
「西尾 晴武です。部屋に入ってもよろしいですか?」
「はーい、どうぞ。遠慮せず入ってきてください」
すぐにエレナさんの声が扉越しに返ってくる。
「失礼します」
俺は声を掛けながら扉を開け部屋の中に入っていく。
部屋に入って一番最初の感想は何も無いの一言に尽きる。
部屋には執務用の机と椅子、その背後に紋章が描かれた旗が掲げられている以外何も無い。
その執務用の椅子にエレナさんが座っているだけだった。
エレナさんは昨日みたいなタンクトップ姿では無く映画や漫画に出てくる様な軍服に身を包んでいた。
俺は部屋に入ってから一旦エレナさんの顔を見てから部屋の中を伺いつつ歩を進め、執務机1m手前で止まり再度エレナさんの顔を見る。
「今日来てもらったのは西尾さんが正式に軍に所属するにあたっての最終書類の記入の為です」
エレナさんは、そう言ってこちらに書類を机越しに手渡してくる。
書類に目を落とすと、名前・年齢・前世または転移前の世界の知識が何に特化しているかの項目と軍に対しての制約等々や権利などの注意文が書かれていた。
俺が書類に目を通しているとエレナさんが羽ペンとインクをこちらに寄越してくる。
「今この場で書類の必要項目を埋めて頂けると私的には助かるので、いいですか?」
書類に目を落としつつエレナさんの顔を伺うと真面目な顔をしているので、俺も自然に真面目な顔を作る。
きっと、この書類も本来なら昨日作る予定だったんだろうけど、俺が喧嘩をして気絶してしてしまった為に時間をずらして書類作成してるんだろうな。
「はい。必要項目はスグに埋める事は出来ると思いますが、知識は俺が持ってるだろう専門的な事を書けって意味で合ってますか?」
確認の為、書類から目を離しエレナさんに問い掛ける。
「そうですね。建築関係や道路の舗装関係等々、異世界人に取って利益になる、または生活水準が向上する知識ですね。何に特化しているか、何がエルドランドの民の生活を変えれるかですね。例えばこの都市でも採用されているガス灯、こちらでは魔法灯の知識や道路の舗装は転移・転生者より提供されたものです」
エレナさんの説明を受け、俺は考える。
俺は高校卒業と同時に就職してしまった。しかも高校の時は工業系の学校だったが停学食らいまくって碌に授業出ていない上に卒業ギリギリだったんだ。
専門的な知識を学べる学び舎に居たはずなのに何も勉強して来なかった俺に専門的な知識は何も無い。
社会に出ても仕事を覚えるだけで自分から資格を取ったり勉強をしようと思わなかったんだ、ここは無い見栄なんて張らずに正直に書くしかない。
「すみません。恥ずかしながら専門的な知識は持って無いので“特になし”で記入してもいいですか?」
俺は正直に専門的な知識を有して無いことをエレナさんに打ち明ける。
「全然問題無いですよ。残念ながら私も専門的な知識を持っていませんしね。転移・転生者の方の中には若い内にエルドランドに来られる事も多いので、書類の知識特化項目はあくまで自己申告する為のものです。後々異世界の知識を公開するにあたり軍では過去に転移・転生者が開示してくれた知識と参照しやすいように傾向把握の為です。昨日説明していませんが知識の謝礼金ですが、その知識がエルドランドの民にとってどれだけ有用なのかで金額が決まります。先程上がったガス灯なんかは、かなり有用だったので謝礼金として我がホーネスト王国より800万王国円支払われています」
エレナさんの最後の言葉が気になる。
王国円? こちらの世界は異世界物よろしく金貨等々の硬貨主体じゃないのか?
気になったので、ついついエレナさんに質問してしまう。
「王国円ですか?」
「はい。我が国ホーネスト王国は昔から転生者が多かったのですが、転生者の大半が日本人だった為に金貨主体だったホーネスト王国のお金の流通を日本と同じく紙と硬貨の流通に変えたそうです。お金の価値も日本と同じで、一万王国円札から五千王国円札、千王国円札に五百王国円硬貨等々、円に王国の名前が付いただけで日本と同じ扱いです」
異世界に来て転生者の方は何をしてるんだろうな。
しかし謝礼金として800万か……かなり魅力的だな。
俺も何か知識を思い出したら報告してみよう。
「なるほど、お金の流通は分かりました。では、記入したいので机の端をお借りします」
俺は執務机の端に書類を置き羽ペンで記入していく。
西尾 晴武・23歳・知識特に無しっと。
記入が終わった書類を机越しにエレナさんに手渡す。
エレナさんは受け取った書類に目を通し、記入ミスが無いかを確認している。
どうやら問題なかった様で一旦書類を机の上に置き、机の一番上の段であろう引き出しから書類が収まるくらいの黒い板みたいな物を取り出し、書類を板の上に置く。
「では、本部に書類を転送します」
エレナさんが、こちらに書類の転送を告げてくるのと同時ぐらいに黒い板が発光して乗せてあった書類が消える。
黒い板は転送装置か何かなのかな? 不思議そうに眺めているとエレナさんが一回咳払いをし、俺の目線を奪ってくる。
「本部から返答があるまで、少し部隊の話をしましょう。軍の部隊は大まかに4部隊に別けられています。主に諜報活動や暗殺、諜報や暗殺のスキルに特化した転移・転生者で構成された諜報部隊、0番隊。短刀が二本十字に重ねられたように描かれている紋章を掲げてます。主に武器や肉体での戦闘、武芸のスキルに特化した転移・転生で構成された攻撃部隊、1番隊。ショートソードと戦乙女が描かれている紋章を掲げてます。主に魔法での戦闘、魔法や支援のスキルに特化した転移・転生者で構成された魔法部隊、2番隊。杖とローブが描かれている紋章を掲げてます。主に盾や結界による防御、防御や結界のスキルに特化した転移・転生者で構成された防御部隊、3番隊。盾と城が描かれた紋章を掲げてます」
俺はエレナさんの説明を受け、エレナさんの後ろに掲げられている旗を見る。
エレナさんが言っていた盾と城が描かれている事からエレナさんが防御部隊、3番隊なのが分かる。
「エレナさんは、3番隊。昨日の会話から3番隊隊長ですよね?」
「はい。私は主に防御系のスキルが多かった為、3番隊に所属してます。まぁ、隊長って言っても私以外の隊員が、防御系に対して私以上の強力なスキルを持って無かったので、必然と隊長に昇任してしまったんですけどね」
エレナさんは少し覇気が無い返事をしつつ、右手で前髪を弄っている。
「私達3番隊は主に都市防衛を最大の任にしています。後で説明しますが、西尾さんは3番隊に所属になり、都市防衛以外の後方支援等の任務に当たって貰う事になりますよ」
エレナさんは前髪を弄りつつ、こちらに目線を向けてくる。
その時、黒い板が再度発光を始める。
発光が終わった黒い板の上に書類が乗っかっている。
エレナさんは、その書類を手に取り目線を落としている。
本部から帰ってきた書類の内容を確認しているようだ。
「今日はヤケに事務の反応早いですね。はい、西尾さんは3番隊に所属ですね。正式に書類での編入が書かれてます」
そう言いつつエレナさんは、俺を歓迎するように笑顔を振りまいてくれる。
「えっと、隊長殿。今後3番隊でお世話になります。色々迷惑をお掛けすると思いますが、よろしくお願いします」
俺は自分が正式に3番隊所属になるに当たり、エレナさんに挨拶をする。
一応最低限の挨拶は出来る、出来てるつもりだ。
「フフッ、そんな堅苦しい挨拶は無用ですよ。外ではアレですが、部隊内または人目が無ければエレナでいいですよ。私も西尾さんが正式に3番隊所属が決まったので、西尾さんの事を今後ハル君って呼ばせていただきますね」
エレナさんは笑顔を俺に向けながらフランクに話してきた。
カトリアちゃんと話すような感じで今までの堅さを感じさせない。
しかし、ハル君ね……見た目俺より若い感じがするエレナさんに呼ばれると少し照れくさい感じがする。
テレサが言っていた事を真に受けると、エレナさんは俺より精神年齢が高いはずだからエレナさんにとっては何の問題も無いんだろう。
「あ、はい。分かりました。では、今まで通りにエレナさんって呼ばさせていただきます」
「少し硬い気がしますが、いいでしょう。では、ハル君。今からよろしくね」
エレナさんは事務机の席から立ち上がり、机を迂回し俺の前まで来て右手を差し出してくる。
「よろしくお願いします」
俺は差し出された右手を握手しながら、再度挨拶をする。
「今から私は昨日の任務の続きの為、ここを離れるから3番隊の話などは私が戻ってからでいいかなハル君?」
俺は初めてエレナさんと会ってから、ここ物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンには任務で来ているとしか聞いていなかったので、何の任務で来たのか気になったので、質問をしてみる。
「エレナさん、俺と初めて会った時から任務って言ってましたけど、何の任務ですか?」
「そうですね、ハル君さえ良かったら私に付いてきます? 私の今回の任務を知る事が出来ますよ?」
俺は答えが返って来るとは微塵も思ってなかったが、俺の斜め上の答え“付いてくるか?”って返事が返ってきた。
でも、俺が今後お世話になる人の仕事振りを見る機会でもあるし、ここはエレナさんに付いて行ってみようかと思う。
「邪魔に為らない様にしますので、見学させていただきます」
「では、今着替えますね」
そうエレナさんが言いつつ右手を離したと思ったら、俺の目の前でエレナさんが身に纏っていた軍服が一瞬の内に消えた。
軍服が消えた先にはレースの刺繍がされた白の紐パンのみ着用したエレナさんがいた。その紐パンは、ほとんど大事な部分しか守れていないスケスケなもので、かなり際どい。目線を上に移すと綺麗な双丘が、これでもかってくらいに目に飛び込んでくる! 昨日見た服の胸部分を押し上げる巨乳が生で目の前にある!!
突然のサプライズに俺の思考が停止寸前に追い込まれそうになるのを必死に耐え、網膜にエレナさんのエロ素晴らしい肢体を写す!
俺がエレナさんの肢体を脳内保管している間に、エレンさんは昨日と同じタンクトップにパンツスタイルになっていた。
エレナさんが着替えに要した時間は、約1秒も掛かって無いが俺は完全に網膜にエレナさんの肢体を焼き付け、完璧に脳内保管を完了していた。
「あ!」
エレナさんは何かに気づき俺に目線を向けてくるが、その顔は真っ赤で目元には薄っすらと涙を浮かべている。
「私率いる3番隊は女性しか居ないので、いつもの癖で人前で着替えてしまいましたが……見えてませんよね?」
俺は無言を貫く。
今下手な事は言えない、言ってしまえば殺されてしまうかもしれない。
俺は今網膜に焼き付けてたエレナさんの肢体の映像と共に部屋に帰還しないといけないんだ! これは男の性って言っても過言じゃない!!!
「そうですか、見えてなかったのならいいです。今日は黒のTバックだったので見られていたら恥ずかしすぎて死にそうでしたよ……」
「え? 白のレース刺繍の紐パンでしたよね?」
エレナさんは先ほどより更に顔を真っ赤にして身体を振わせている。
何たる事だ! 俺は今の状況で一番言ってはいけないことを言ってしまった!
「しっかり見てんじゃないですかぁーーーーーーー!!!」
エレナさんが怒気を込めた大声と共に振り下ろしてくる右手パンチを、俺の左頬がしっかり受け止め壁際まで、身体ごと俺を吹っ飛ばす。
かなり強いパンチだった為か俺の意識も一緒に吹っ飛ばしてくれた。
沈んでいく意識の中で俺は決意する。
何があってもエレナさんのエロい姿は忘れない。絶対にだ!!
仕事が忙しく中々執筆活動出来なかったです(言い訳
感想等待ってます!
頑張って面白い作品を作っていきたいです!