7話 己の分を知る!
7話ようやく更新できました。
「ある程度の地位と情報に対しての謝礼金ですか。それは俺でもですか?」
先程のエレナさんの説明、ホーネスト王国の転移・転生者達の扱いについて問い掛ける。
工場勤めのしがないリーマンである俺でも、こちらの世界エルドランドで地位と金が手に入る訳だ。
俺も異世界ものみたいに貴族とかになれるのか~。
「西尾さん、ごめんなさい。先程の言い方ですと誤解させてしまう可能性が有るので、再度そのことについて説明をさせて頂きます。我が国の政体は立憲君主制を取りってます。立憲君主制とは憲法に従って行われる君主制ですね。当然国家元首はホーネスト王国の君主でありますが、君主の存在は儀礼的で“国王は君臨すれども統治せず”のスタイルを取ってます。法の支配が発達していて民主主義で、立法権優位の議会主義が発達しています。また議院内閣制や複数政党制など、地球の数多くの国家が採用した民主的制度で国営をしてます。これは地球で言う処のイギリスに近い感じです、まんまイギリスですね。議会は上院、この場合は異世界人から為る異世界院と下院、庶民の代表からなる庶民院の二院制を取ってます」
何言ってるか全然理解できない俺って阿呆なの?
生まれてから23年全然勉強してこなかったからイギリスの政治が分かんない。
「難しいですね、政治の話は」
「まぁ、政治の話ですから。で、転移・転生者達の方に用意される地位や役職って言うのが上院である異世界院の席ですね。因みに転移・転生者達の方なら誰でも為れる訳でも有りません。当然政治の事ですので、現在異世界院で上院議員をしている転移・転生者の方が新しく王国に来た転移・転生者の方を見極め政治に対しての知識や態度を評価し議員に相応しかったら指名します」
俺じゃダメじゃん! 政治なんて全然、これポッチも興味なんて無かったから勉強して無いし!!
「はぁ、そうなんですか。俺は知識無いんで議員に為る事はなさそうですね」
おう、貴族はどこ行ったのよ?
異世界まで来て政治の話なんて意味分かんない!
「まぁ、転移・転生者の役職は議員だけでは有りませんしね。転移・転生者の方は“スキル”と異世界の知識の関係上、軍に所属してもらいます。先程の話の中でも言った様に戦力強化の為、我が国でも召喚をしています。ですが帝国ほど召喚術を復活させてませんし、召喚術が不完全で勇者召喚や魔術召喚で狙ってスキルを付与することが出来ずにいます。ですから狙って付与出来ないなら数撃ちゃ当たる戦法を我が国では取ってます。そりゃあもう膨大なスキルを召喚陣に付与させ召喚させる人の器が、どのスキルを掬ってこちらに召喚されてもいい様にしました。それで召喚された人の“スキル”と異世界の知識は有用なので軍に所属してもらって、色々な事に役立っていただいてます」
帝国も帝国で異世界人召喚しまくってるって言っていたが、王国は王国でエグイ方法取ってるね。
そこについては、あえて突っ込みは入れない。
「その話だと、俺みたいな墜ち子はどうなるんですか?」
さっきからやたらと“スキル”のとこを強調してくるしね。
気になるでしょ、普通。
「それはですね、西尾さん。指の指環に向かって“スキル表示”って念じてみてください」
俺はエレナさんの言う通り指環に向かって“スキル表示”と念じてみる。
すると指の指環の上あたりに光るウィンドウが出てくる。
おぉ、異世界ファンタジーだ!! この指環翻訳機能以外あったんだ。
そういえば、指環をエレナさんに投げて渡された時に数種類の機能付きって言ってた気がするし他の機能も気になるが、表示されている自分のスキルに目を向ける。
エレナさんも俺のスキルをテーブルから少しだけ身を乗り出して確認している。
- スキル -
1 無し (枠有)
2 無し (枠有)
3 無し (枠有)
4 無し (枠有)
この表示を見るに俺はスキルは無しって事ね。
可笑しいな、俺だって何かスキルを持ってても良さそうなんだけど。
エレナさんは俺のスキルを確認した後、胸の下で腕を組んで少し考え事をしている素振をみせる。
そして考えが纏まったのか口を開いてくる。
「えっとですね、大事な事を言い忘れてました。まずエルドランドでは地球と同じくレベルやステータスの概念が初めから存在してません。西尾さんも地球に居た時にゲームなどでレベルやステータスとかの言葉を知っているかもしれませんが、いざ自分がどれくらいのレベルでどれだけのステータスだったのか分かりますか?」
「いえ、分かんないです」
ゲームじゃ無いんだから俺のレベルやステータスなんて自分で見た事無いから、分かんないって答えるしかない。
「そうです、普通分かりませんよね? ですが昔こちらに転移・転生してきた方達がレベルやステータスを何とかして再現出来ないか四苦八苦したそうです。しかし何を基準に数値化するのかで躓きました。経験値はどれくらいなのか? どれくらい取得すればレベルが上がった事になるのか? ステータスも個々種族の得意な力、スキルを持ってる人でも十人十色な力の振れ幅。情報量の多さに転移・転生者の方はレベルやステータスの再現は諦めました」
そりゃあレベルやステータスなんてゲームじゃ無いんだから再現出来る訳ないよね。
そもそも人一人のステータスなんて情報が多すぎるだろ。
「ですが転移・転生者の方はレベルやステータスは出来なくても、最低限スキルだけでも表示出来ないか試行錯誤したそうです。その結果スキルの表示は出来るようになりました。指環を作った開発者達の言葉では、持ってるスキルはステータスみたいに数値化する必要も無く後から習得するスキルでも、そこまで情報量が多く無い上に、常にレベルみたいに上昇続けませんし習得してしまえば変動する訳でもありませんから表示は簡単だったとの事です。因みにスキル表示ですが。これは付与されたスキルか、エルドランドで習得したスキルのみ表示してます。西尾さんの場合ですが、こちらではスキルを持ってない事になります。まぁ、スキルを付与されて転移されて来ている訳では無いですし、スキルを初めから持って無くても当然ですが。しかし一応4つ枠有って出てますから後々頑張って勉強や修行すれば最大4つスキルが習得出来ることになります。最大4つですが枠を埋める様に簡単にスキル習得出来る訳では無いので勘違いしないでくださいね? 墜ち子の方も枠組みは転移者と一緒なので、これからの並々ならぬ努力の結果、最終的に4つスキルが習得出来ますよって意味ですからね? 西尾さんはスキルなしの典型的な墜ち子の方となります」
転移・転生者の方は根性だな、そこまでゲームっぽくしたいかね?
しかし典型的な墜ち子の俺はスキル無しで今後の努力でしかスキル習得出来ないって事ですか。
「あの、俺はこの世界でどうすればいいんですか?」
「そう心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ。西尾さんも軍に所属してもらいます。墜ち子でも転移・転生者でも異世界の知識がありますからね。軍の上層部は一人でも多く異世界からの転移・転生者を確保する為に作戦行動中でもスカウト活動の許可を兵士全員にしてますから! 当然私も西尾さんをスカウトする権限を有しています。なぜ私が物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンの入門料と指環を無料にして今こうしてエルドランドの話をしているかって言うと私が西尾さんをスカウトする為ですよ! どうですか西尾さん? 軍に来る気はありませんか? 軍に所属すれば給料出ますし、最低限の衣食住は保障されますよ! 異世界の知識も軍に所属していた方が既存の物か新しい知識なのかの参照も早いですしね!」
今までの長い会話は、わざわざ俺をスカウトするためだったの? エレナさんみたいな巨乳な美人さんにスカウトされるのって悪い気がしない!
ハッ!! 俺は気づいてしまった。
今、軍に所属すればカトリアちゃんの笑顔と巨乳と美味しいご飯が付いてくる! あわよくばカトリアちゃんとお近づきになって恋仲にも為れるって事じゃないですか! 俺に断る理由が見当たらない!
「よろしくお願いします! 俺頑張ります!!」
俺は椅子から立ち上がりエレナさんに向かって勢いよく頭を下げる。
「何か邪念を感じますが、まぁいいでしょう。ここ物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンでは登録に時間が掛かりますが、すぐに軍に登録させますね。」
エレナさんも椅子から立ち上がり、手をこちらに向かって伸ばしてくる。
俺は笑顔で手を伸ばしテーブルの上で握手をする。
「よろしくお願いしますね、西尾さん。お話の途中で悪いのですが、私は任務の為ここに来ています。少し長く話をし過ぎました。そろそろ任務に戻らなければいけませんから、この後の事は私の部下にお任せします。今の時間なら訓練場に居るはずですから一旦外に出ましょう」
エレナさんが握手を解き真面目な顔をして自分の都合を述べ食堂を後にしようと歩き出す。
俺はすぐにテーブルの上の皿をカウンターに置きに行き
「カトリアさ~ん、ご馳走様でした~!」
調理場の奥に居るであろうカトリアちゃんに大声を掛けて、エレナさんの後を付いていく。
食堂を出たすぐの所に外に出れるだろう扉がある。
エレナさんは、その扉を開け俺が付いて来ているのを確認してから外に出る。
見えてきたのは、兵舎に入る前に見たグラウンドと4人の女性であろう兵士たち。
兵士は門兵と同じ服を着ているので、あれが兵士にとっての制服になるのかな? 俺がグラウンドと兵士を眺めていると、エレナさんが女性であろう兵士の一人を手招きしているのが見えた。
エレナさんがその兵士に何か言うと、こちらに手を少し振ってグラウンドを去っていく。
呼ばれていた兵士が、すぐにこちらの方に来た。
「隊長から話を聞きました。隊長が任務から還られるまで貴方に付くよう任を受けました。名前はティナって言います。分からない事とかは遠慮なく私に聞いてくださいね」
こちらに来た兵士は背は俺より少し高く黒髪をショートカットにした、目は黒目が大きく全体的に整った顔をした陶器のように美しい肌の美人だった。よくよく見ると頭に白い角みたいなのが小さく生えてるのが伺えるが問題はそこでは無い! 胸だ! 胸の膨らみがヤバイ事になってる!! 俺はエルドランドに来てから、エレナさんとカトリアちゃんしか女性を見ていないが、このティナって子はエレナさんやカトリアちゃんを超える巨乳。いや……爆乳だ!! 自己主張し過ぎなんかじゃない!! 暴力的なまでの自己主張と言えるだろう!! けしからん!けしからんぞーーーー!! その膨らみを俺に揉ませろーーーーーー!!
俺が邪な考えをしていると
「えっと、西尾さん? 牛の獣人を見るのは初めてですか?」
ティナちゃんが声を掛けてくる。
なん……だって?
牛の獣人だと?
だから胸もホルスタイン級だっていうのか!! 素晴らしい、素晴らしいよティナちゃん!! 君こそは爆乳の女神や!!
俺がティナちゃんの男の希望に目線を奪われていると、いきなり背中に衝撃が走る。
何事かと後ろを振り向けば、こちらにパンチを放ったままの状態で見た目13歳ぐらいの兵士の恰好をした女の子見える。
全長1mぐらいの半透明の赤色スライムに座っている女の子。君はなぜスライムに座っているのかな?
「お姉ちゃんの胸ばかり見てるな! 変態!!」
女の子は黒髪の可愛らしい顔立ちをしているが、目を吊り上げこちらを睨んで叫んでくる。お姉ちゃん? あぁ、姉妹か。なんとなく顔立ちは似ている気がするが、スライムに乗ってても分かるくらい背は低く胸はツルペタ~な女の子。頭に生えてる角しか共通点ないよ君!
「なんすか? この“ちみっこ”は?」
俺は女の子を視界から外さずティナちゃんに質問する。
「ごめんなさい、私の一歳下の妹のテレサです! こらテレサ! 西尾さんに謝りなさい!!」
ティナちゃんは慌てながら妹テレサちゃんを叱って、頭を下げさせようとしている。
一歳下の妹だと? 一歳違うだけでここまで差が出るというのか? 特に胸とか! 胸とか!!
問答無用に殴られたので仕返しの為、俺は憐みの顔を作りテレサと目線を合わせる為少し腰を曲げテレサにだけ聞こえるように言葉を紡ぐ。
「お姉ちゃんであるティナちゃんは凄い物持ってるのに、一歳下のテレサはダメダメだね。敢えて言おう、貧乳であると!」
テレサは俺の言い放った言葉に最初反応できずポカンとした顔を作っていたが、少しづつ理解できて来たのか顔を真っ赤にして
「っっ! 誰が貧乳だ! アホーーーーーー!!」
目線を合わせる為腰を曲げていたのが災いしてテレサに力一杯左頬を殴られ、俺は衝撃を受け流すことが出来ずに、その場で尻餅をついてしまう。
テレサに目線を向けると服の上から両腕で胸を守る様にクロスして身体を抱きしめ顔を真っ赤にしている。
「親父にも打たれた事なかったのに!」
つい名台詞が俺の口から出てしまう。
「お前みたいな変態殴って何が悪い!!」
お? お兄さん年下の女の子でも喧嘩なら買うよ?
俺の男女平等パンチ炸裂するよ?
俺は立ち上がりながらテレサを睨みつける。
「西尾と言ったな? 貴様みたいな変態は早いとこ何とかしないと、後々何の罪も無い女性たちが被害に遭うかもしれん。悪の芽は今刈り取らねばならん! やれワインゼリー!!」
テレサが叫ぶやいなや赤色スライムから飛び降りる。
テレサが飛び降りてから、スライムは命令通りこちらに攻撃を仕掛ける為近づいて来る。
しかもスライムの名前がワインゼリーって凄いネーミングセンスだな! 赤色で、半透明でプルプルしているからか?
俺は無駄な事を考えつつ、スライムに攻撃する為距離を詰める。
「バカが!! 俺はスライムより、もっと格上の敵と戦い、今も生き延びているんだぜ!! キサマのスライムなんざ相手にならねぇーよ!!」
スライムは全長1mぐらいある、全長1mぐらいあれば重さも結構あるだろう。
俺は蹴る事を止め上からの振り下しのパンチを選択する!
某ボクシングマンガに出てくる死神の鎌に例えられるアノ人ばりのチョピングライトだ!
ワインゼリー! お前は処刑台直行だ!!
「くらいやがれーー!」
俺の中では完璧に決まるもんだと思ってた。
しかし俺の渾身の一撃は外れた。
スライムであるワインゼリーは身体を変形させ、俺のパンチを避けつつ身体を弾ませ俺の腹に体当たりをしてきているのを俺は見えているんだが、俺は腕を力一杯振り下ろしていた為に次の動作が出来ずモロにワインゼリーの攻撃を食らってしまう。
スライムの攻撃と侮っていたがモロに入った為かかなりの痛さだ! 俺はあまりの痛さで意識が朦朧として姿勢を崩し地面に蹲ってしまった。
蹲ったまま朦朧とした意識の状態でテレサに目線を向けると彼女はキョトンとした表情を浮かべていたが、いきなり真面目な表情を作り俺に声を掛けてくる。
「えっと、ニシオ君。ごめんなさい、私こんな時どんな顔をしていいか分からないの……」
「こんな時は、笑えばいいと思うよ」
朦朧とした意識の中、俺とテレサは汎用人型決戦兵器に乗る少年・少女の様な会話をする。
くっ、テレサは分かってて俺にネタ振りしてきてるだろ!!
テレサは真面目な顔を少し崩し笑顔を作る。
しかもニコッじゃなくてニマァって感じの笑顔なのがムカつく!
次第にニマァの顔が崩れ始めて笑いを堪えてるのか段々身体が震えている。
そして遂に耐え切れずに笑い始める。
「プフッ、フフ、フハ、アハハハハハハ!!!! 何がスライムじゃ相手にならないよ! 格好いいこと言ってた割には一撃で沈んでるじゃない! 因みに貴方、転移者か何かでしょうが、ここに居る人転生者しかいないから普通喧嘩しようとは思わないわよ? “ちみっこ”? 私を見た目で判断したんでしょうが転生者の精神年齢は異世界の分も加算されるから見た目道理とは行かないわよ? 転生者に会ったら皆精神年齢的に年上と考えた方が失礼が無いわよ。分かったかしら?」
じゃエレナさんもカトリアちゃんも、もしかしたらティナちゃんもテレサのいう事が本当なら俺より年上のお姉さまとなるのか……。
俺はそんな事を朦朧とした意識の中考えつつ暗闇に意識を閉ざしていった。
色々ネタがありますが、楽しく読んで頂けたらいいなって思います。7話まで更新できたのも読んでくださってくれる皆様のお蔭です!頑張って面白い作品に出来る様に精進します!