5話 この世界について知る!
5話更新に伴い1話目の主人公が読む小説を異世界チートものから異世界ファンタジーものに変更させていただきました。話的には問題なく変更できているので違和感は無いはずです。5話も誤字脱字が有ると思いますが楽しく読んでいただけたら私としても嬉しい限りです。
まず物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンに入って真っ先に目に飛び込んできたのは、本当にここは異世界なのか疑うほど整備が行き届いた綺麗な街並みと溢れ返らんばかりの人達だった。外が荒野だった為違和感が半端ない。
粘土に砂を混ぜ焼き固めて出来ているだろう煉瓦で綺麗に舗装された横幅がある大きな道。
道の端には歩道と道に貯まるだろう水と泥を流す為の側溝付き。
よくよく見れば煉瓦と煉瓦の間に溝が切ってある。
そして道には中央分離帯みたいなものがあり、進行方向が違う馬車たちが左右を走っている。きっと進行方向も決まっているんだろう。
馬車が左側を走ってるって事は、日本と同じ様な道路統制してるのね。
俺自身一般的に車を運転出来る最低限の交通知識はあるが、そこまで日本の道交法を熟知している訳では無いので日本での馬車の扱いは知らないが、この世界じゃ馬車って車両扱いなのね。
まぁ馬車は馬に車って書くしね。
道を挟んで左右に建てられた建物も建物で木製では無く煉瓦で作られてる。
ほぅ、2階建ての建物達の中に3階建てや4階建ての建物もチラホラと窺える。
乱雑に建てられている訳でもないので、区画整理もされてるんじゃないだろうか?
「えっと、すごいですね?」
歩道の人達を縫う様に避けながら歩く、赤髪のエロい巨乳ねーちゃんことエレナさん。
エレナ・スカーフィールドに恐る恐る声を掛ける。
先ほど罵られたので結構勇気がいる。
「会話は後でいいかしら? 今は腰を落ち着けて話が出来る場所に向かいましょう」
一応笑顔で答えてくれる。
だから笑顔なのが怖いって! 罵った後は普通は俺に軽蔑の眼差しとか向けてくるもんでしょ?
なんだろう、後が怖いっす! 俺は戦々恐々しながらエレナさんの後を追いかけていく。
ちょうど建物群が少なくなってきた時それは見えてきた。
広大な更地、グラウンドって言えばいいのかな? それに隣接するように建てられた3階建ての建物は兵舎と言うんだろうか?
グラウンドには武器を手に訓練する人達がチラホラ見えるし建物の門の所には武装した兵士も立っているのが見えるので兵舎で間違いないだろう。
俺たちが門に近づいた時
「隊長殿! おかえりなさいです!!」
兵士が大声を出しながらエレナさんに敬礼してくる。
「ええ、ただいま。今の時間は食堂はあいているわよね?」
「はい! この時間は空いているであります!!」
いちいち大声で返答するなよ兵士さんよ、五月蝿いよ! まったく、俺の鼓膜がキーンってなるだろうが!!
心の中で兵士に文句言っていると、いつの間にやら門を越えエレナさんが建物入口で手招きをしている。
俺がエレナさんの所に向かおうとしていると兵士が不振な目をこちらに向けてくる。
おい、こっち見んな!!
「彼は客人よ。今からお話があるので通しても問題ないわ」
兵士はエレナさんの言葉でこちらを見なくなった。うむ! 分かればよろしい!!
君はそこで見張りをしてるといい!! 真面目に働き給えよ兵士君!
俺も兵士の横を通り門を越えエレナさんの所まで行く。
「さぁ食堂に行きましょう。ところで西尾さんはお腹は減っていませんか? 荒野から来たって言ってましたし、見たところ荷物も無さそうなのでご飯とか食べられて無いかと思ったので」
ここにきて俺の腹具合を心配してくれるなんて、エレナさん貴方は女神っす!! 伊達に巨乳じゃない! ……今は巨乳関係ないか。危うくエレナさんの自己主張し過ぎな膨らみに俺の迸る熱いパトスを籠めた目線を送ってしまうとこだった! さっき胸ばっかみてんじゃねーよって言われたばかりだしね!!
「あ、はい! こっちに来てからご飯食べてないのでお腹はメッチャ減ってます!!」
「そうですか。失礼ながらこちらからお聞きしたのに、この時間だと簡単な物しか用意が出来いのが心苦しいですが、すぐに用意させますね」
「よろしくお願いします!」
エレナさんと共に建物の中に入っていく。
うん? 全体的に建物の外観は煉瓦造りの建物だったはずなのに、中は木造なのね。
きっと木造の建物の外壁を煉瓦で補強したのかな? まぁ、俺の知った事ではないが。
エレナさんが一室に入っていくを俺も後追いし一室に入る。
中は30畳ぐらいの広さの部屋だった。テーブルが6卓、1卓4脚の椅子が並べられている。
入口とは反対の壁にカウンターがあり、その奥には調理場がある。
ここにいるであろう兵士の数はこの食堂の椅子が全部埋まると仮定して最低24人となるわけね。
まぁ、ローテを組んで使用されたら何人いるか分からないし、俺の予想なんざ当たらんだろうが。
「すみませ~ん!」
エレナさんがカウンターの奥に声を掛けてる後ろ姿を俺は黙って熱い視線を送る。うん、お尻もいい感じだ!
エレナさんが再度声を掛けようとしてると、調理場の奥からかなり若いであろう給仕服を纏った金髪ロンゲで青い瞳が印象的な可愛い子ちゃんが出てきた。
背は俺より大分低いが、見える! 私にも見えるぞ!!
その給仕服の上からでも判る! 給仕服の胸の所を惜しげも無く二つの膨らみが自己主張しているのがな!!
背が低いせいか、デカさが際立って見える……Fぐらい? Fぐらいなの? まさかGですか!! グレートですよ、こいつはァ!!
はっ! ここは巨乳さんしかいないのか!! と俺がまたも阿呆な事を考えていると
「あら、エレナちゃんじゃない? どうしたの?」
「今、簡単な物用意できないかしら? 絵美ちゃん」
エレナさんと給仕服の可愛い子が会話を始める。
え、絵美ちゃん? おいおい、可愛い子ちゃんはどう見ても日本人には見えないのに名前が和名ってどうなのよ?
「もう! こっちではカトリアって名前なの! あっちの世界の名前で呼ばないで!!」
頬を膨らませプンプン擬音がつきそうな感じに可愛い子ちゃんが怒ってる。
あれだ、可愛い子ちゃんは怒っても可愛いですね。
かぁいいよ~、う~お持ち帰り~!! って出来ないだろうか?
「はいはい、ごめんね。そんなに怒んなくてもいいでしょ? それより、こちらの方は私の客人よ。お腹が減っていらっしゃるそうなので、すぐに用意していただけません? カトリアちゃん」
おぅ、エレナさん俺の時と違ってフランクに会話していらっしゃる。
「ふぅ、分かりましたよ隊長さん。すぐに用意しますから席でお待ちになってくださいね」
まだ少し怒った感じだが、すぐに厨房の奥に消えていくカトリアちゃん。
「では私達は席に着いて、この世界についてお話をしましょう」
エレナさんは部屋の中心に近いテーブルに向かい適当な席に着いて、手でテーブルの向かい側を勧めてくる。
それに倣って俺も席に腰を下す。
「では最初に、この世界につてお話しましょう」
「はい、よろしくお願いします」
対面に座ってるから胸に注意が行かない様にエレナさんの目を見ながら返事をする。
「まず、この世界の名前はエルドランド。数多の神様がいらっしゃって精霊たちが大自然の恵みを謳歌して、野をモンスターが闊歩しドラゴンや魔王が当然の様に居る剣と魔法のファンタジー世界ですね。住んでいるのは平均的な力を持つ人間種に多種多様に進化した適応力がある獣人種、魔力の扱いに最も長けた魔人種。人界に中々姿を見せませんが強大な力を持った竜人種などがいます。どうですか? 異世界物の小説みたいでしょ?」
「あ、はい。まぁ、薄々異世界なんだろうとは思ってました」
野をモンスターが闊歩、荒野で俺はゴブリンしか遭遇出来てませんけどね。
まして人に至ってはケンロウモンでしか見てませんし。
「今から、もっと小説っぽくなりますよ。世界中に残る碑文や古文書を集めて紐解き歴史を纏めると、今から約1500年前頃に強力な魔王が誕生したそうです。魔王は数百万のモンスター達を従え世界征服を企てた。エルドランドの主な都市国家はモンスター達によって蹂躙され、力無き人達が傷つき倒れていったそうです。家族を失った悲しみを後世の人達に味会わせない為に立ち上がった人達。生きたくても生きれなかった人達を想い、今を生きる全ての人を守る為武器を手にした竜人達。世界が怨嗟の涙に濡れようとしているのに、見て見ぬ振りは出来ないと自分たちの領域から出てきた魔人達。エルドランドの母なる大地は一人の者が独占するものじゃない、ここに生きる皆の為存在すると獣人達が。それぞれの想いを重ね種族の壁を越え大連合を組み、魔王率いるモンスター数百万の大軍相手に三日三晩寝ずの激戦をしたそうですが力及ばず大連合は敗北、人々は絶望の淵に立たされました。しかし、この時希望の光が現れました。ある王国の王女が自分の命と引き換えに勇者召喚をしたそうです。王女の死にゆく間際に受け取った思いに応える為、勇者は再度残った人達を纏め上げ魔王に最終決戦を挑んだそうです。持てる力のすべてを出し、自分の命を差し出してまで勇者を召喚した王女の様に、最後の最後まで勇者は自分の命を燃やし尽くながら魔王を討ったそうです。一応遡れる歴史をすべて調べましたが、これが歴史上一番最初の勇者召喚となります」
うん、この話だけで壮大な連載小説書けるんじゃないだろうか?
「なんて言ったらいいのか……壮大なお話ですね」
エレナさんが続けて話をする。
「感想はそれだけ? まぁ、いいでしょう。とりあえず約1500年前ぐらいには勇者召喚が…異世界人がエルドランドに召喚、転移されています。当時の召喚陣はかなり強力な力を転移者に付与出来るタイプだったと推測されていますが、なにせ今ほど術式が多種多様に発展していなかった為か術式を固定する陣が弱かった為か召喚者に負担が大きく、死亡する確率が高かったみたいですね」
「ああ、それで王女が亡くなったって訳ですか」
いろいろ調べてるんだな、この世界の人は。
「その一番最初の召喚から数百年もしない内に次の召喚がなされてます。これは曖昧にしか記録に残ってないので確たる証拠はないのですが。それから約900年ほど前から召喚術が学者達の間で頻繁に研究され始めました。これは比較的記録が多く残っていたので調べるのには時間が掛かりませんでしたね」
「召喚術の研究ですか?」
話を聞きつつテーブルの下で足を組み替える。
「そうです。召喚術の研究、当時魔王とかの脅威が無かった為かエルドランドの大地を懸けて国家間戦争が頻発していたようです。よく考えてください、単体で魔王を討ちとれる力を持った者を戦場に投入出来たらどうなります?」
そんな事したら人と人、国家と国家の戦争じゃ無くなるだろう。
「まさか兵器運用ですか!」
「そうです。戦場に勇者を投入……数多の異世界人が戦場を駆けました。それから国家間戦争はもう血を血で洗う怨嗟に塗れた戦争になりました。各国が挙って召喚術の研究を学者たちに推奨させ成果を出した者には地位や名誉を与えたそうです。この頃から召喚術は飛躍的に進歩をしました。この頃ですか、勇者召喚とは異なる新たな召喚術。魔術召喚が開発されたのは」
戦争は武器開発の母って訳ですか、この場合召喚術に置き換わるって事ね。
「それから約500年エルドランドの大地は絶えずエルドランドの民、異世界人の大量の血に塗れました。いくらエルドランドの大地が血に塗れようと人々は何かに取り憑かれた様に争う事を止めませんでした。しかし約200年ほど前にある二人の勇者が召喚された事により突如、国家間戦争に終止符が打たれました。一人は戦争を嘆き言葉で自分を召喚した国家を説得し、さらに周辺諸国を言葉で纏め上げ合併、吸収し一大王国を。もう一人は戦争に歓喜し武力をもって自分を召喚した国家を乗っ取り、さらに周辺諸国を隷属、吸収し一大帝国を築き上げました。二国間の力は均衡していたので、戦争が長引く事が容易に想像できたので二人の王、勇者は和平を結んだそうです。この時両国にて召喚術の全てを封印されたそうです」
両極端な二人だな……言葉と暴力ねぇ~。
「その後100年はエルドランドの大地に平和が訪れました。しかし、今からちょうど100年前帝国が裏切りました。封印されていたはずの召喚術を復活させていたのです!復活させた召喚術で、またも多くの異世界人を勇者召喚や魔術召喚して王国に宣戦布告してきました。残念ながら王国に戦う力は無い、黙って蹂躙されるのを待つしかなかったのですが」
「ですが?」
「西尾さん、質問です。召喚以外で異世界に来るにはどうすればいいでしょう?」
エレナさんからの質問について考えてみる。
先ほどから聞いてる限りだと召喚しかないよな?
いや、待て! そうか、俺の境遇なら!
「墜ち子ですね!」
「私が求める答えとは違いますが、それも正解です。他には?」
エレナさんがニッコリ笑う。
おぅ、墜ち子以外あるのか異世界に来る方法が。
召喚、墜ち子、転移、転移?転……生……そうか!
「転生ですか!!」
「正解です。そう転移とは違う方法で異世界に来る可能性があるのは転生。異世界人だろうと記憶を保持したままエルドランドにエルドランドの民として生まれれば、こちらの世界に来た事になるでしょ?」
「なるほど!」
小説なら異世界転生物か! 俺は異世界ファンタジーものをメーンで呼んでるから、すっかり頭から抜け落ちていたぜ!
「約100年前の帝国からの宣戦布告で王国の危機に一人の少年が立ち上がりました。彼は転生者で神様に貰った強大な力を隠して生活していたそうで、王国の危機に居ても立っていられず王様に自分の出生の秘密を打ち明けたそうです」
よく一般市民の話を聞く気になったな王様よ。
「その「はいはい!サンドイッチもってきましたよ~」って、今ちょうど話のいい所なの!」
エレナさんが話の続きをしゃべようとしたら、カトリアちゃんがテーブルにサンドイッチを一杯載った皿を置いてきた。
少し前かがみ気味に身体を倒していたので、自己主張し過ぎな二つの膨らみが重力に逆らえずエロい事になってる!!
俺も前かがみ気味になりそうだ!! と嬉しく眺めていると、テーブルの下で俺の左側の脛が思いきり蹴られた!
恐る恐るエレナさんの方に目線を向けると、メッチャ無表情で俺を見ていた……怖い!!
クソ虫を見る目で俺を見ないでください!!
「ほら。腹減ってんでしょ? 食えよ」
おう、言い方までキツイわ。
「もぅ~、なに? お客様にそんな言い方したら失礼でしょ。エレナちゃん?」
エレナさんも少し表情を戻しカトリアちゃんを見てる。
カトリアちゃん……まじ天使っす! 伊達に巨乳じゃない!! あ、今は巨乳関係ないか。
「さっきの話。転生者のお話かな~? エレナちゃん」
少しムスッとした表情のエレナさんが相づちを打つ。
「ええ、そうよ」
「そっか~。じゃあ、もう私たちが転生者って話はしたのかな?」
ん?今聞き捨てならない話が聞こえてきた気がする。
私たちが転生者って!
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 二人とも転生者だったの!!!!」
食堂には似つかわしくない叫び声だけが大きく響いた。
マジっすか、二人とも……
物語を書き進めていくにつれて、どんどんハルがアホでただの変態と化していく。私の頭の中の最初の設定からどんどんかけ離れていきます。今後どうなることやら……期待して読んでください。最後に私の小説を評価してくださった方、本当に感謝しています!どうもありがとうございます!