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異世界人にとって俺のレゾンデートルは?  作者: 遊司籠
第二章 鴉隊と勉強編
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第8話 換金!

 相変らず展開が中々進展しませんがお付き合いの程よろしくお願いします!

 俺はソフィに袖を引かれ廊下を歩いている。

 時々廊下をすれ違う人達は怪訝な眼差しを俺達に向けてくるが、何かしたかな俺?

 きっと新参者の俺が珍しいのかな……?

 いや、俺の格好から鴉隊ってのは分かるはずだから――墜ち子の方か……。

 黒いツナギを着ている=鴉隊、それで新参者とくれば墜ち子の可能性が出てくるもんね。

 『墜ち子ですか……、久々に見ましたね』

 『久々に鴉隊に新人が入って来た』

 俺はエレナさんとソフィの言葉を思い出す。

 見た事無い男が黒いツナギを着て、鴉隊の取り纏め役であるソルフィナ・ザワードと一緒に歩いていたら墜ち子かどうか考えるかもね。

 今は皆の視線を一旦無視しよう……ジロジロ見られても気持ちの良いものでもないし無視が一番だな。

 意図的に俺は見られている感覚を頭の片隅に追いやり、グイグイ袖を引っ張っているソフィに目線を向けて声を掛ける。


「ところでソフィ……、今どこ向かってんの俺達?」


「ん、便利屋の所」


 ソフィは相も変わらず袖を引っ張りながら答えてくれる。


「便利屋?」


「そ、便利屋さん。取り敢えず今は黙って付いてきなよハル君」


 俺の疑問は、あっさりスルーされたので取り敢えずソフィが言うように黙って袖を引かれるまま付いていく。

 何回か廊下の角を曲がった先に学校の体育館ぐらいはありそうな大きさの場所に出る。

 まず目に入って来たのは大量の作業机と書類片手に忙しそうに動き回る人々。

 そして仕切りの様に取り付けられた受付カウンター。

 冒険者ギルドの中を何倍にも大きくした様な感じを俺は受けた。


「さて換金、換金っと」


 ソフィは俺を引っ張りながら一つのカウンターの前に行く。

 カウンターの上には看板が取り付けられているが異世界の文字と漢字で“受付”と書かれていた。


「おい、お前! 私の名前を言ってみろ~」


 ソフィはカウンターの向い側に座っている軍服を身に纏った男性に声を掛けた。

 前も思ったけど、その台詞って使い方色々間違えているような気がするんだがソフィよ……。


「ひっ! そ、ソルフィナ・ザワード!」


 あ~あ、可哀想に受付の男性ビビってるじゃないですか……。


「そうだ! 私がソルフィナ・ザワード様だ! いいから金を出せ~」


 おい、それじゃ銀行強盗と一緒だろうが!


「ソフィ! その言い方は色々不味いだろ! ちゃんと相手に分かる様に話をしろよ!」


 俺は咄嗟にソフィに突っ込みを入れる。

 そもそもここで金を出せって、ここにお金が有りそうに見えないんだがソフィは分かってんのか?


「うむ。えっと……ココニ、イセカイノオカネアリマース。オウコークエンニコウカンOK?」


――なんで片言の外人風に話してんだよ!! それじゃ話通じないでしょうが!! ……頼る人間違えたかな俺?


「はぁ?」


 ほら、男性もソフィの話が意味不明すぎて困ってるだろ。

 どうすんの?この状況……。


「何回言ったら分かるんだ! ここは便利屋じゃねぇって言ってんだろうが」


 俺は呆れ顔をソフィに送っていると奥から怒声を発しながら恰幅のいい髭面の男性が現れた。


「おっす! 日本円を王国円に換金よろ!」


 ソフィは怒声にも怖気ず髭面の男性に、こちらの用件だけ伝える。


「それなら経理の方に回れってんだよ! 看板をよーく見ろ! うちは人事だ!! おめえさんの目は節穴か?」


 俺は目線を上に向けると受付の看板の横に“人事”と書かれた看板がぶら下っているのが見える。

 さっきは視界の中に入って無かったが、これは間違いにも酷い物がある……。


「経理に行ってみようハル君! ここに来れば目的に対して、どこ行けばいいか教えてくれるから便利なんだよね」


 ソフィは眩しいほどの笑顔を俺に向けてくる。

 凄く良い笑顔をしているが、コイツはアホだ……。

 そしてソフィを頼った俺もアホだった……。

 俺が憐みの目線をソフィに送っていると、いきなり両肩を誰かに掴まれる。

 俺に笑顔を向けていたソフィの顔が一瞬で青ざめたのが見えたので、慌てて掴まれていた手から逃れて後ろを振り返ると、そこには恐ろしいくらい怒気を孕んだ笑顔を浮かべたエレナさんと、どす黒いオーラを纏ったテレサが居た。


「我が隊の馬鹿が騒いでいるので引き取りに来るよう連絡を受けたから来てみれば、またソフィ……君か。それにハル君まで一緒に何してるのかな?」


「私はハルを探してたのに、なんで私じゃ無くソフィと一緒にいるのかな? かな?」


 エレナさんとテレサは互いに言いたい事を言ってくるが……雰囲気というか……殺気が半端ないです!

 俺はソフィに目線を向けると『え? 私じゃないですよ? 私関係ないです!』みたいな顔をして非難の目を俺に向けている。

 おい馬鹿! お前も共犯者、もとい主犯だろうが! 知らぬ存ぜぬって顔をするなよ! なんでエレナさんとテレサの非難の目に乗じて俺に目線を向けてるんだ!


「取り敢えず二人とも私の執務室に来い! 話はそこで伺う。そして事務の皆様方、我が隊の馬鹿が大変失礼しました。」


 エレナさんは事務の皆さんに謝罪の為頭を下げ詫びを入れた後、踵を返して歩き出したので俺達二人は渋々付いていくしかなかった。

 エレナさんを筆頭にソフィ、俺、テレサと連なって歩く。

 事も有ろううにソフィは執務室に向かう際に何回か俺を見捨て逃亡を図ったが一番後ろに控えていたテレサに悉く阻止されていた。

 今から怒られるのにソフィ1人逃げるなんて許されるはずが無い!! ただ静かに俺達はエレナさんに付いていった。

 俺達はエレナさんの執務室、もとい3番隊室に着くなり正座をさせられた。


「とりあえず言い訳は有るかなソフィ?」


 俺達の頭越しに今まで感じた事が無いほどの重圧(プレッシャー)を伴ったエレナさんの言葉が降ってくる。

 俺は今まで感じた事無い重圧の所為で息を詰まらせそうになるのを必死に耐える。

 くそッ! 全身の冷や汗が止まらない!


「――『勇気』とは『怖さ』を知ることッ! 『恐怖』を我が物とすることッ! 人間賛歌は『勇気』の賛歌ッ!! 人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!! エレナ隙あり!!」


 ソフィはエレナさんから向けられる重圧の所為か、訳が分からない事を叫びながらエレナさんに殴り掛かっていった。


「何が『エレナ隙あり!!』よ! そもそも隙なんか無いわよ馬鹿!」


 エレナさんはソフィのパンチを掻い潜りクロスカウンターのパンチ一発でソフィを地面に沈める。

 俺この光景どっかで見た事あるわー。


「こいつはくせえッー! バカ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!! こんなバカには出会ったことがねえほどになッーーーーッ!! 環境でバカになっただと? ちがうね!! こいつは生まれついてのバカだッ!!」


 テレサはテレサで倒れたソフィに罵詈雑言を投げかけている。

 割とノリノリだよねテレサは……。

 そもそも君たちネタとして分かってやってる感がプンプンしますよ。


「で、言い訳あるかなハル君?」


 倒れたソフィを一瞥したエレナさんが俺に目線を向けてくる。

 怖い!! やっぱりソフィに頼ったのが間違いだったのだ。

 失敗した! 失敗した! 失敗した! 失敗した! 私は失敗したーーーーー!!

 あの時のカトリアちゃん言葉通りソフィを頼らなければ、こんな事にはならなかったはずなのに!!


「いえ……ありません。ソフィを頼った私がバカでした。どうか許してください」


 俺は二人の目線から逃げる様に地面に頭を擦り付ける。


「だから何かあったら私に聞けと言っただろ?」


「分からない事あるなら私が教えてあげたのに!」


 俺の頭越しにエレナさんとテレサの声が同時に飛び交う。

 俺は地面に擦り付けていた頭を上げ二人を見上げると、そこには龍と虎が居た!!

 互いの目線の間に火花を散らしたエレナさんとテレサ……。

 え? なんか修羅場って感じがヒシヒシと肌に感じるんですけど!!


「ハル君お金無いって……」


 倒れているソフィの口から言葉が二人に投げかけられる。


「ちッ! しぶとく生きてやがるコイツ!!」


 テレサは咄嗟に俺達から距離を取り、全身に雷を纏う。

 まさか『轟雷』でトドメを刺す気かテレサ!!

 雷を纏ったテレサをエレナさんが片手を制して止める。


「ほぅ、ハル君お金無いんだ? それでソフィは手助けしようとした訳だな?」


 今も尚倒れているソフィにエレナさんが声を掛けている。


「イエス、マム……その通りです」


 今も尚倒れているソフィは肯定の言葉をエレナさんに向けているが、何かキャラが違うよソフィ。


「で、どうするつもりだったんだ二人とも?」


「ハル君、日本のお金持ってるから換金しようと思って……」


 エレナさんはソフィの言葉を聞きながら執務席に寄り引出しから何か書かれている紙を取り出す。


「ハル君。いくら持ってるの?」


 俺はエレナさんの言葉に素直に答えを返す。

 変に見栄なんて張れないのだから誤魔化さない方がいいに決まっている。


「えっと1万8千円持ってますけど?」


 俺は尻ポケットから革製のウォレットを取り出し札を改めて数えながら報告する。


「ふ~ん……換金するなら立て替えてあげるけど? ああ、後8千円は全部千円札?」


 俺はエレナさんの言葉を受け札を見る。

 1万円札に5千円札、ウォレットに死蔵していた二千円札に千円札が一枚。

 俺はそのままエレナさんに伝えると


「げ! 化石扱いの二千円持ちって凄いね……。うん、換金レート見ながら王国円に換算すると20万王国円に為るわね。どうする? 交換するハル君?」


 え? たった1万8千円が20万王国円になるの? 断る理由は無いが、一応換金率を聞いてみよう。


「20万王国円ですか? 換金率の内訳は?」


「えっと、信じられないでしょうけど、日本の造幣技術はこちらでは美術品の域に達しているのよ。オークションに掛けるとして、一万・5千・1千円は約10倍、2千円札に限っては最低20倍の価値がこちらでは付くので、換金レート表に照し合わせてみると20万王国円になるわね」


「オークションですか?」


 俺はエレナさんの言葉の中で気になった事に対して聞き返す。


「そ、オークション。ハル君が直に競売にかけるんじゃない場合、軍から競売に掛けます。その最低倍率が先程の内訳になるのよ。軍に代行してもらうと貰えるお金は最低倍率で、オークションでの差額は軍の資金の方に充てられるの。ホーネスト王国の富裕層は異世界の物に目が無いので良い“カモ”なんですよ」


 今サラッとエレナさんの口からゲスい言葉が出た気がするが無視しよう、そうしよう! 俺は何も聞いてない! だから今エレナさんから提示された条件で手を討とう!


「では、軍の方でのオークションでお願します」


 俺はエレナさんに目線を向ける。

 もう異世界暦長い人に面倒事はお任せして俺は高みの見物と行きましょう!

 俺はウォレットから一万8千円を取り出しエレナさんに渡す。


「はい、確かに。では少し待っててね。今経理の方にお金用意して貰うから」


 エレナさんはお金を持ったまま俺に話をしてくる。

 あ、他にも相談したい事があったし今相談しても問題無いよね?

 エレナさんに目線を向けると左手を口元近くまで持ち上げ瞼を閉じた姿が目に入る。

 よく観察すると左手人差し指に念話用の黒い指環が嵌っているのが分かる。

 きっと今念話してる最中なのだろう。

 エレナさんが瞼を開くタイミングを見計らいながら、もう一つの相談事を持ちかけてみる


「――他にも相談がありまして……」


 俺が言葉を切り出すと、少し呆けたような表情を浮かべたエレナさんの顔が視界に映ってくる。

 一応こちらの方が本来エレナさんに相談しようとしていた懸案なのだ。

 どう切り出すべきかな? ゆっくり頭の中を回転させながら言葉を俺は探した。

 一章12話構成で展開してくつもりでしたが、もしかしたら変則話数になるかもです……。第2章も上手く纏める事が出来たら12話構成で行きますが、もしかしたら?です。私に構成力が無いばかりに話しの展開が遅くてスミマセン!!

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