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異世界人にとって俺のレゾンデートルは?  作者: 遊司籠
第二章 鴉隊と勉強編
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第5話 勉強初日!

俺は執務室で鴉隊員達との顔合わせを終え、手持無沙汰になった時に執務席に座っているソフィから声が掛かった。


「では、ハル君と隊員達の顔合わせも終わった事だし、エレナ隊長からの指示通り冒険者の方々と行動を共にして色々勉強して来てもらう!」


「はい。えっと今からですかね?」


 俺は王都で勉強する事に為っているが詳しい話を聞いてないので、どうすればいいか分からないでいる。


「そうだ。今から我々が要請を掛けておいた冒険者と共に行動してもらうが隊長からは何も聞いてはいないのかい?」


「詳しい話は聞かされていません」


 ソフィの言葉に俺は素直に答える。

 王都に着いたら勉強して来てもらうって事しか聞いてない気がするしね……。


「私も大まかな事しか聞いていないんだがな。一応私が聞いているハル君の予定を言っておこう。今後“約”一か月くらいは朝起床後に冒険者ギルドに顔を出して冒険者の方と行動を共にして勉強、夜には兵舎に戻る様にとの事だ。いいかね?」


「はい、分かりました」


 成程ね、“約”一か月は鴉隊員として活動しなくて勉強してこいと。

 約一か月ってのは最短の勉強期間で、確かエレナさんの一存で“好きに”勉強期間を延ばせるって言っていたから“約”が付いているのね。

 エレナさんを怒らせる様な行動をせずに真面目に勉強してくれば鴉隊の本体に合流して活動出来るのが早まる訳だ、早く玲ちゃんに手取り足取り色々教えてもらいたいですよ! お礼として夜に俺が手取り足取り、更に腰取り(・・・)で色々教えてあげるってのも良い……くっ、妄想が止まらんがな!!


「おーい、ハル君。帰っておいでー!」


 俺が妄想の世界に深くダイブしようとしていたら、ソフィが俺を現実に引き戻してきた。


「あ、はい。なんでしょう?」


「いつまでも“ここ”に居ては冒険者の方を待たせてしまうだろう? 今日は兵舎の前で待ち合わせにしてあるから早く冒険者の方と合流してください」


 おぅ、手回しの早い事で。

 なら早く冒険者の方と合流しないと申し訳ないね。

 俺は鴉隊の執務室から出ると冒険者の方が待っている兵舎前まで足を運ぶ。

 兵舎出入口から一歩足を踏み出すと、出入口から10mぐらい離れた所に二人の人が立っていた。

 この人達が隊長達が要請を掛けた冒険者かな? 1人は男か女か分からないぐらいの中性的な顔立ちをした背が高い方だった。

 金髪ロングの髪で青い瞳をした、男性なら美男子と女性なら凛々しいと表現される顔立ちで、何の素材で出来てるか分からないが厚手そうな生地の七分丈の黒色ロングTシャツみたいな服に胸に革で出来ている胸当てをしていて、エレナさんも履いていた革で出来ているだろうパンツに茶色いブーツ姿だった。

 もう一人は短い銀髪をツンツンに逆立てた褐色の肌をした目つきの悪い男性で、黒色の革で出来ているだろうライダースーツに赤いコートを羽織っている。


「えっと、冒険者の方ですか?」


 俺は二人に近づき声を掛ける。


「ああ、そうだが。あなたが我々と一緒に行動する鴉隊員の方でしょうか?」


 金髪の方が俺の質問に答えてくれた。

 声を聞いた限りだと、金髪の方は女性だった。

 見た目の割には可愛らしい声色で、姿とのギャップが半端ない……。


「はい、俺が西尾晴武です。今日からよろしくお願いします」


「私はシェリー・オムトンです。よろしくお願いします」


 シェリーさんは俺に対して右手を出してきたので、俺も右手を差し出し握手を交わす。

 もう一人の銀髪の方に目線を向けると


「……俺はロイだ。よろしく」


 ロイさんは短いながらも自己紹介をしてくれたので、俺が握手の為に右手を出しても無視してくれやがりました。

 感じ悪いな……。


「大変申し訳ない西尾殿。彼は人見知りするので不愛想になってしまうんです」


 シェリーさんがロイの態度を詫びてきてくれるのはいいが、殿呼ばわりされたり全体的に会話が少し硬い感じがするので俺はシェリーさんに提案をしてみる。


「えっと、俺の事はハルって呼んでください。俺も二人の事はシェリーさん、ロイさんと呼ばせてもらいますし、俺が色々教えてもらうので硬い口調だと俺が疲れてしまいます。普段通りの感じで話して頂いた方が俺としても助かります。あ、俺の話方の方が二人に失礼なら改めますが?」


「あ、いや。そうだね。では、普段通りに話させていただくよ。それに私達と話す時もハルさんも普段通りにしてね。軍に所属されている方に敬語使われるくらいに私達冒険者は偉くは無いのよ」


 シェリーさんは笑顔を俺に向け提案に賛同してくれた。

 中性的な顔立ちだが笑うと女性らしく魅力的な笑顔をしている。


「じゃ、一旦ギルドに顔を出して簡単なクエストを受けましょ。今日は薬草摘みと弱いモンスターを討伐してみようか?」


「えっと、二人にお任せします」


 シェリーさんは今日の予定を俺に聞いてくるが、俺は何もかもが初めてなので二人に予定を決めて貰った方が良いと思い、其の旨を伝える。

 やっぱ冒険者としての先輩方の意見に沿った行動の方が勉強になるしね。


「では、今日は薬草取りをしつつモンスター討伐って事で」


 今日の予定が決まったので俺達3人はギルドに向かう為兵舎から離れる。

 ギルドに向かう道中、二人について色々聞いてみて分かった事なんだが、シェリーさんはエレナさんから俺に色々教える依頼を受け、ロイさんはソフィから依頼を受けおったらしい。

 そもそもシェリーさんはエレナさん御用達の冒険者らしく色々エレナさんの仕事を専門に請け負い、逆にロイさんはソフィ御用達の冒険者だった。

 シェリーさんは魔法と格闘に秀でた魔法闘士で、ロイさんは魔法は得意では無いが接近戦と遠距離を両方こなせるオールラウンダーらしく3番隊、又は鴉隊からの信頼は厚いそうだ。


「あ、俺武器持って無いけどモンスター討伐どうしよう?」


 俺は自分が何の武装もしてない事を二人に告げる。


「一応私達で武器は用意してるけど、何がハルさんに合っているかは分かんないから実践中に見極め様と思ってたんだ」


 まぁ、その道のプロがいるんだから二人の判断に任せましょう。


「判断は二人に任せるので、よろしくお願いします」


 俺は二人に軽く頭を下げて先程と同じ様に二人に色々聞きながらギルドに向かって足を進める。

 兵舎からギルドまでは体感10分ぐらいで辿り着けた。

 冒険者ギルドは俺が想像していたより綺麗な建物だった。

 中に入ると、まるで役所みたいな独特の雰囲気が漂う場所で、小説に出てくる冒険者ギルドを想像していた俺は拍子抜けしてしまった。

 美女が立ち並ぶ受付カウンターや簡易的な酒場は、この世界エルドランドでは存在しなかった。

 受付カウンターも役所よろしく黒いスーツに身を包んだ頭が堅そうなおっさんたちが立っている。


「おはようございます。今日のご予定は?」


 カウンターに立っているおっさんが、こちらに声を掛けてくる。

 あ、うん。俺は冒険者ギルドは美女が受付してくれた方が絶対良いと思うんだ……テンプレが成立しないでしょ? この後の薬草摘みで見た事無いレアな薬草を手に入れたりモンスターを一杯討伐して受付嬢が呆れたり、俺に惚れるって展開が待ってる筈なんだよ! なんでおっさんが受付なんだよ! ここはホーネスト王国なのかギルド長のどっちに文句を言うべきか?


「今日は薬草摘みと、フィリアロック周辺のモンスター討伐です。依頼ありますか?」


 シェリーさんがおっさんの問い掛けに答えて、今日の予定を伝えている。


「ありますよ。受けますか?」


「では、それを受注します」


 俺のテンプレの為の苦情をどこにぶつけようと考えていたらシェリーさんがいつの間にやら依頼の手続きを済ませてしまっていたので俺達はギルドから出て、さっさと王都の門兵のとこで外出ログを取りフィリアロック周辺の森まで足を延ばした。

 そんなに大きくは無い森で、フィリアロックから出た時に見えた感じだと外周1kmぐらいだと思う。

 これなら迷う事も無いし、いいかもしれないね。


「取り敢えず薬草摘もっか」


 そう言ってシェリーさんは地面に生えている草を引っこ抜く。え? それ薬草?


「それ薬草? 俺にはタダの草にしか見えないけど?」


「あ、うん。ここに生えてる草は全部薬草だよ? ここなら間違える事なんか絶対無いから安心して摘んでね。ここで薬草の形や色を覚えてね」


 シェリーさんは俺に説明と笑顔を向けると、次々と薬草をブチブチと引っこ抜いていく。

 簡単な作業だな……薬草摘みがイージーモードに為ってますがな! 俺は心の中で突っ込みつつ地面に生えてる薬草をどんどん摘んでいく。

 何て言えばいいのか、俺には薬草と普通の雑草の違いが全然判りません。

 こんな事で俺は雑草と薬草の違いを覚えることが出来るのかね? せめて違いが分かる様に見本を用意してくれればよかったのに、でも敢えて突っ込まない。

 二人は俺の為に時間を費やしてくれているのだから意地でも薬草の形や色を覚えてやるよ!!

 俺達黙々と作業を続ける事10分ぐらいで大量の薬草が手に入った。

 シェリーさんはいつの間にか用意していた麻か何か出来た袋に摘んだ薬草を詰めていく。

 俺はその作業をボケーと眺めていると、いきなりロイさんがコートの中に隠し持っていたと思われるナイフを二本、コートの中から引き抜き両手に装備して森の奥に視線を向けている。


「おい。スライムが5匹来るぞ」


 ロイさんは戦闘準備になったのか急に真面目な雰囲気を纏い俺達に声を掛けてくる。


「そう。なら足止めして置いて」


 シェリーさんは薬草が詰まった袋を地面に置き、何も無い空間からショートソードを取り出し俺に渡してくる。

 きっとシェリーさんもエレナさんと同じくアイテムボックスのスキル持ちなのかな?


「ああ。時間を稼ぐのはいいが。別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」


 ロイさんはシェリーさんの返事に答えているが……その答え方は不味いと思います!!

 そのセリフは各方面で『死亡フラグ』と言われる名台詞じゃないですか!


「ロイさん! そのセリフは危険です!! 撤回してください!」


 俺の言葉を聞いたロイさんは、顔を真っ赤にし俺に怒鳴ってくる!


「なんだと!! この言葉はソルフィナ様から教えて頂いた“有難いお言葉”だぞ!! このような状況で、尚且つ足止めを頼まれたら先程の台詞を言うのが最上の返し方だと俺は教えて貰ったんだ!! ハル、君もソルフィナ様と同じ異世界人なら俺の放った言葉の素晴らしさが分かるだろうに!!」


 ……うん、何教えてんのソフィは? きっと間違った事教えてるよね。


「ちょ! 全部倒しちゃハルさんの戦闘訓練にならないから一匹残してね!」


 シェリーさんはロイさんと俺の会話は無視してスライム一匹だけは残す様に伝えている。


「ふっ、言われなくと一匹ぐらいは残してやるさ!」


 ロイさんはシェリーさんに答えながら木々の間から現れたスライム達に飛び掛かっていく。

 ロイさんは先程のフラグ的な台詞なんて関係無いとばかりに、目の前のスライム一匹をナイフ一振りの一撃で倒し、周りに居たスライム達も簡単にナイフによる一撃の下に倒して残り一匹だけにして俺達の所に戻ってきた。


「じゃ次はハルさんの番ですよ頑張ってください! スライムは子供でも倒せますから! スライムは身体の中心に弱点となるコアが存在するのでゆっくり焦らずに慎重にコアを狙ってくださいね!」


 ほぅ、成る程! だから先程ロイさんがナイフの一振りでスライムを倒せたのか、一撃でコアを攻撃できれば簡単に倒せるっと、俺は心の中のメモ帳に記録をする。

 子供にも倒せるモンスター……俺が本気を出すような相手じゃない! ましてや相手は転生者であるゴブ郎や疑似生命体であるスライム武器のワインゼリーじゃないんだ! あの時は二人に倒されてしまった俺だが、今回の相手は何の知性も感じられない野生のスライム一匹だけ!


「はい。では戦います」


 俺は二人に見送られるように前に出て、まともに握った事も無いショートソードを構える。

 一応自分に当たらない様には気を付けないとね、だって偽物じゃ無く本物の剣だから怪我だけじゃ済まないから!



 俺と野生のスライムは森の中でシェリーさんとロイさんに見守られながら対峙した。

 さて、俺の戦いぶりを見せてやんよーーーーーー!!


 

一応活動報告の方でも報告はさせていただきましたが、各話タイトル変更しました!

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