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異世界人にとって俺のレゾンデートルは?  作者: 遊司籠
第二章 鴉隊と勉強編
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第1話 王都に向かう!

新章突入です!

 俺は幌付きの馬車から見える空をぼんやりと眺める。

 俺達が王都に向かって物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンから出発してから丸一日たった。

 王都フィリアロックに続くだろう道は舗装こそされていないが、しっかり土が踏み固められていて俺達の乗る馬車に余計な振動を与えないでいる。

 道中はモンスターに襲われる等々の問題(・・)も無くスムーズなものだった。

 まぁ、一回馬車が石か何かを踏んで大きく跳ねた際は一緒に乗り合わせていたティナちゃん、カトリアちゃん、そしてエレナさんの胸が凄い揺れ眼福光景が広がって俺が鼻の下を伸ばしていたらテレサにフルボッコにされた事件が起きたくらいだ。

 王都に着く前に天に召されるところだったよ俺は。

 他には基本3番隊は女性しかいないので、夜に野宿する際に俺だけ皆から遠く離れて寝なければならない事ぐらいだったかな。

 羊の群れに狼が一匹いるよなもんだしね、ただし羊たちの方が狼より強いってオチがつくけど。

 それでも皆から隔離されるように寝場所を離されると俺だって少しは傷つきますよ、同意しない女性なんか襲いませんよ俺は。

 あとは道中暇なので空を眺めるか馬車に乗り合わせた隊員と話をするしかなかった、この場合はエレナさん、ティナちゃん、カトリアちゃん、テレサ、今馬車の御者をしている……名前は何だっけな? あ、そうそうエトワール・ブラッドさん。

 エトワールさんは物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンからずっと御者をしてくれている女性で、あんまり姿を見せないと言われている竜人種に転生した方で緑色の髪をロングに伸ばした北欧系美人のお姉さん、スレンダーなんだけど肉感が凄く良さそうなグラマスな人だった。

 緑色の髪、ファンタジー色だね! そして竜人種って聞いたけど人間種と違いが俺には分かりません。

 唯一違いを上げるなら……胸の大きさですか? 人間種では到底到達できないだろう高みに居られる様で、彼女の胸をぜひ直に見せて貰い何カップ相当なのか調べさせてほしいものです。

 俺が邪な考えを持って御者席に座るエトワールさんに熱いパトスを送っていたら俺の隣に座っていたテレサに脇腹をグーで殴られエレナさんから非難の目を向けられた。

 そんなエトワールさんと昨日の野宿の際に、少し話をしたところによると結構3番隊に長くいるらしい……初めて話す人だし歳や結婚してるか又は彼氏持ちなのかは聞けなかったが俺が結局聞けたのは種族と軍歴ぐらいだった、一応軍所属歴は10年って言ってた。

 俺達以外の3番隊隊員は、もう一台の馬車に乗り込んでいて、王都フィリアロックに向け二台馬車が連なって進んでいる。 


「そう言えば、ハルは鴉隊の名前の由来って知らないんだよね」


「ん? いきなりどうしたよテレサ? 鴉隊の由来? 俺は最近3番隊に所属したばかりだし、一昨日だったかな鴉隊の話を聞いたのは。当然俺が知る訳ないじゃん」


 ボケーと外を眺めていたら声が掛かった。

 ただただ暇だったので俺はテレサからの話題に答える。


「ふっふっふ!! なら教えてあげるわ!」


 テレサは自慢げに胸を張ったが、その無い胸をいくら張ろうが俺の心は動かない。

 キョパイニスト(俺的造語で巨乳(・・)を愛して止まない紳士を指す)な俺としては封印解除した状態で胸を張ってくれた方が大変嬉しい。

 だが、声には出さない。あえて此処は心の中にだけで突っ込んでおく。

 下手に声に出して突っ込んだらエレナさんやテレサにフルボッコにされかねない。


「タイの昔話が名前の由来に繋がったのよ。昔、鴉は白色だったんだけど色々な色を重ね塗りした所為で黒になったって話。なぜ、それが別働隊の名前に繋がるかって言うとね、何十年も前の墜ち子の方やスキルが無かった転生者の方々が軍に所属してたんだけど、基本的にスキルは無いけど転移・転生者として軍に所属してるプライドがあって後方支援などの雑務に納得いってなくて軍上層に対して私達の仕事はあーでも無い・こーでも無いと文句をつけた奴らが居たそうよ。で、そいつ等が軍上層から出される仕事をとっかえひっかえしていった結果、彼らが着ていた白い軍服が色々な汚れで黒くなった事から“鴉”って呼ばれ始めたそうよ」


 ……鴉隊の名前の由来は分かったけど、これは不名誉からくる部隊名じゃないですか。


「それから私達鴉隊の制服は黒のツナギに変更されたのよ。基本色々な雑務が回って来て汚れやすいから、汚れが目立たない黒になったんだって。ちなみにツナギなのは基本(・・)私たちが戦闘要員じゃなく後方支援メーンに担当してるからって区別の為にツナギらしいわよ」


 成程ね、基本戦闘要員じゃない鴉隊は裏方だからツナギね。

 でもテレサの言い方は含みを持たせているような感じだった様な。


「テレサ。それじゃ西尾さんが少し勘違いしますよ」


 俺の感じていたテレサの言い方に含まれる違和感に戸惑っているとテレサの姉であるティナちゃんが話に入ってきた。


「今の鴉隊は戦闘力(・・・)が高い為、3番隊と同じく戦場に出たり都市防衛に参加出来るって教えてあげないと。まぁ、墜ち子の方は支援に回される事に違いありませんので気にしないで下さい」


 やっぱり戦場に駆り出される可能性があったのか、でも俺は墜ち子だから後方支援だね。

 俺を含めて3人の墜ち子と戦闘スキルを持たないカトリアちゃんは後方支援で他の隊員は戦闘可能ね。

 昨日エレナさんから聞いた話だと取締役のソルフィナ・ザワードを含め他の4名、0番~1番隊からの移籍組は戦えると。

 そりゃあ問題児や部隊に馴染めなかったと言っても元よりスキル(・・・)持ち、戦えて当然だね。


「そういえばテレサは1番隊からの移籍だったよな?」


「そうだけど何?」


 テレサは俺の言葉に眉を少し寄せる。


「確か1番隊って身体的に優れてるスキルや武器系スキル持って無いと所属出来ないんだよな? テレサはそんなスキル持ってるの?」


 俺はテレサのスキルを完全に知ってる訳じゃないので好奇心から聞いてみる事にした。


「ハルは知らないんだよね? 私とお姉ちゃんは獣人が讃え崇める神によって転生されたんだよね。でね、私は『轟雷』ってスキル、ユニークスキルを神様から頂いてるんだけど、これが中々曲者で上手い事扱えないの」


「曲者?」


 俺はテレサの言い方に引っ掛かりを覚え話の途中なのに言葉を挟む。


「そ、曲者ね。『轟雷』は本来、完全解放状態までスキル解放してしまうと私達は変身(・・)してしまうの」


「変身? 魔法少女的な何かに変身?」


 僕と契約して魔法少女になってよ?っ て神様に言われたのかな?


「ははっ、それならどれだけ良かったか。私もお姉ちゃんもスキル完全開放するとベヒモト(・・・・)、旧約聖書とかに出てくる地上の怪物ベヒーモスに変身してしまうの。私の場合は雷纏いしベヒモトにね」


「だから封印してると。でも、身体まで封印してるよねテレサは」


 轟雷は通常時に完全解放できないのは何となく理解できたが身体まで封印する必要は無い気がする。

 俺は成長したテレサの方が好きなので、いつも成長したままのテレサでいて欲しんだが……。


「あ、うん。昔は元の姿だと、お姉ちゃんみたいにスキル調整が上手く出来なくて暴走してベヒモトになりやすかったんだよね。だから『身体』まで私は封印してたの。でも、先日のロックスキンベアとの戦闘の際『身体』解放してみたんだけど、問題なく戦闘出来たわ。だから隊長、私の通常時の姿を本来の姿に戻してもいいですか?」


 エレナさんは私には関係無いとばかり瞼を閉じていたが、いきなり話を振られ少し焦った様にこちらに目線を向けてくる。


「いきなりですねテレサ。通常活動、日常生活に支障が出る可能性がある為その姿で居たいって鴉隊に編入時言ってなかったですか?」


「はい。あの時はそう言ってましたが、今は問題無いですし、この姿も色々窮屈で、戦闘の際に一々服を脱がないといけません。3番隊で行動してる際はいいですが他の男性居る前で下着姿になるのは厳しいですよ隊長殿」


 テレサよ、そう言っているが君は俺の前で下着姿になって戦闘していたんだよ? まぁ、俺的には大変あの時のテレサの姿(・・・・・)には助けられているんだが、ここでは何も言わない。


「私は本人の意思を大事にしたいが、事が事なだけに厳しいな。姉であるティナはどうだ? テレサの元の姿での行動は許可するかね?」


 エレナさんは真面目な顔をしてティナちゃんに目線を投げかける。


「私は許可していただけるならテレサには封印解除して日常生活してもらいたいです」


「私もテレサちゃんは本来の姿の方がいいと思いま~す」


 ティナちゃんが意見を言った後、聞かれても居ないのにカトリアちゃんが話に加わってきた。

 話題すら振れていないのに、今の状況で話に入って来るって中々度胸がありますねカトリアちゃん。


「カトリアには意見を求めてはいない。が、いいだろう。通常時も封印解除しての活動を許可しよう」


 そう言ってエレナさんは真面目な顔をテレサに向ける。

 結構簡単に判断、返事をした気もするが、きっとエレナさんも考えあっての事だろう。

 エレナさんからは見えてないが、エレナさんの左右に座っていたティナちゃんとカトリアちゃんの顔が笑顔になっていた。

 俺には分からない姉妹間での感情や同僚としての配慮が二人の笑顔の裏にあるんだろう。

 そんな二人の笑顔は輝いて見えた。


「ありがとうございます!」


 テレサは隊長に、いや三人に向かって感謝を述べた後すぐに封印解除して本来の姿になるべく服を脱ぎ始めたが、隊長に慌てて止められている。


「テレサ、君は馬鹿か! ここにはハル君がいるんだぞ!!」


 ちっ! 隊長が余計な事を言わなければ、テレサのストリップショーを見れたのに!!

 ……部屋の中で服を脱ぐテレサの姿ではなく、外で健康的に脱いでゆくテレサの姿に意味があるのに……残念です!!


「私は問題無いですけど?」


「ちょっとテレサ! せめて王都に着いてからハル君の目の届かない所で封印解除しなさい! 今は禁止します!」


 テレサが余計な事を言った所為で、エレナさんがヒートアップしてしまったじゃないか!


「はい、は~い。分かりましたよ! もう隊長も頭が固いんだから」


 テレサは隊長の言葉に了解の返事を返しているが最後の方に小声で文句を言ってる、因みに俺はテレサの隣に居たからテレサの最後の言葉はしっかり聞こえてるんだが。


「隊長! その王都にもうすぐ着きますよー!」


 御者をしていたエトワールさんが先程の話が聞こえていたのか御者席からこちらに声を掛けてきた。

 俺達は馬車の中から御者席の方に目線を向けると、御者席に座って馬の手綱を握っているエトワールさんの先に大きな城壁と、その城壁に隠しきれてない大きな城が見えてきた。

 何て大きさだ、物資運搬中継用城壁都市ケンロウモンもかなりのデカさだと思っていたが、こちらの城壁は20m以上の高さがあるんじゃないだろうか? 今、王都フィリアロックまで目視で大体1km以内だとしても城壁の高さが伺える。


「ハル君。あそこが我がホーネスト王国の首都であるフィリアロックです」


 エレナさんは馬車内から王都フィリアロックに目線を向けつつ俺の方に声を掛けてくる。


「エルドランドの大地に立つ国々の中でも最大のデカさと繁栄を極め、ホーネスト王国に住む人々の最後の砦、王都フィリアロック!ようこそ我が国の首都へ」


「「「「ようこそ!フィリアロックへ」」」」


 エレナさんの言葉の後にティナちゃん、カトリアちゃん、テレサ、それにエトワールさんまで歓迎の言葉を俺に向けてくれる。

 皆から言葉を向けられると恥ずかしいと言うか照れると言うか、でも悪い気は全然しない。

 例えスキルが、特筆すべき知識が無くても俺は歓迎されてると思うと嬉しさが自然と溢れてくる。

 ……そうか今見えているのが俺がお世話になるホーネスト王国の首都・王都フィリアロックか。

 今から始まる俺の物語。

 あの日夜空を眺め俺も(・・)星々(・・)の輝きに加わっていられると感じた勘違い・妄想・願望が今から動き出す気がする。



 さて、まずは冒険者の方から行ってみますか!!

 俺は高鳴る鼓動を押さえつけながら馬車から王都フィリアロックを眺める。

更新遅くなって申し訳ありませんでした。私の作品読んでくれてる皆様方これからもよろしくお願いします!

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