11話 今後の為に!~その1~
今回は話が中途半端に長くなりそうなので一回切りました。
俺は眠っていたのか?
暗闇に沈んでいた意識が覚醒し始めてきている中、顔と身体中が何か柔らかい物に包まれている事、何かを抱きしめていることに気づく。
俺は温かく柔らかい感覚に少し戸惑い、恐る恐る目を開けるが前が見えない。
俺は何を抱きしめてるのか? 手を顔の近くに持ってくると、俺の顔は柔らかい物に挟まれていることが分かった。
ムニュ、ムニュ、ポヨン、ポヨン。
……俺は、この柔らかさの正体に薄々気づき始めている。
俺の予想が当たっているなら、これは人の柔らかさだ。
それも女性特有の柔らかさ。
俺は、そっと顔を柔らかい物から離して柔らかさの正体を確認をする。
俺の予想は正解だったようで、シーツの中で俺の目の前には女性だけが持つ事を許された大きな膨らみがあった! しかも服やら下着やら付けてないため、モロに視界一杯オッパイが広がっていて、未だに俺の手は膨らみに触れている状態で柔らかさで手の平が幸せな事になってます!
俺は誰の裸体に抱き付いているのかと考えていると、自然と手が胸を揉んでいたようで胸の持ち主が起きた。
「んっ、んっ。もう朝からいやらしいわね」
声が聞こえたので胸から目線を上に向けると、そこには元の姿に戻ったと言っていた成長したテレサの顔があった。
おぅ、このパターンはヤバイのでは? 俺はテレサを抱きしめていたって事と胸を無許可で揉んだって事で後からテレサにボコられる可能性が出てきた。
「すみま『もうしょうがないんだから、ハルは』うっぷ!」
俺はテレサに謝る為口を開いたが、直ぐにテレサが俺の頭に両腕を回し俺の顔を大きな膨らみに引き寄せて抱きしめてくる。
どうした、テレサ!! お前はそんなキャラじゃないだろうが!! あぁ…、顔が幸せな事になっとるがな!! うわーい! 柔らかいぞーーーー!! それに甘い香りがするよ!! 俺は柔らかさを堪能しているとある事に気づく。
テレサはシーツの中で積極的に俺を抱きしめてくるので、その積極さに甘えて両手をテレサの背中に回し背中から尻の方に手を動かしていくとテレサが一糸纏わぬ姿なのが分かった。
そして俺も一糸纏わぬ姿をしているんだろう、身体中直にテレサの柔らかさと温かさを感じる。
テレサは両腿で俺の左足をホールドしているが、俺の左腿にサワサワした物が当たってますよ!! え? 俺そろそろ死ぬのかな? きっと神様が俺の最後にプレゼントをくれたに違いない。
俺はテレサの胸に挟まれて幸せと死亡フラグの危機感を感じていると、頭越しにテレサの声が聞こえてくる。
「ハルは丸1日眠ったままだったんだよ。私も守る為ロックスキンベアの攻撃を受け重傷だったし、私や隊長がどれだけ心配したと思ってるのよ! でも私を守ってくれてありがとう」
「別に感謝はいいよ。か弱い女の子を守るのはスキル有ろうが無かろうが男として当たり前だろ?」
俺は顔を胸に挟まれたままテレサに返事をする。
初めて会った時に俺はテレサに男女平等パンチをしそうになったが、それと今回の件は違う。
命の掛かった戦いでは男が女の子を守るのは普通だろ? 喧嘩とは訳が違いすぎるしね。
それより今俺達が裸で抱き合ってるのかの方が知りたいよ俺は。
「テレサ。なぜ俺達は裸で抱き合っているんだい?」
「ん~? 私の感謝のお礼と、マーキングかな?」
感謝のお礼に真っ裸で抱き合わしてくれるなんてテレサはエロい女神や! 伊達に爆乳じゃない! 今は爆乳関係ある!! 顔が幸せだぞーーーー!! 俺はもう一つ気になるワードについて聞いてみる。
「マーキングって?」
「マーキングはマーキングよ。ハルに他のメスが寄ってこない様に私の匂いをマーキングしてるのよ。ハルはこっちに来て間もないし当然彼女居ないでしょ? 私って自分で言うのもなんだけど良い女よ。彼女とかにしたくなるでしょ? 私は貴方の事が好きになったの。どうかしら? こんな爆乳な綺麗な子、いい物件だと思うのだけれど?」
テレサは俺の顔を胸から離してニヤニヤ笑顔を浮かべながら目線を合わしてくる。
マーキングってテレサよ君は犬か! あなたは牛の獣人でしょうが! 心で突っ込みを入れつつ俺はテレサの黒い瞳に引き寄せられていく。
どうしたらこんなに心変わりできるんだろう? 俺の記憶ではテレサは俺の事嫌ってたはず。
俺がテレサにした事と言えばロックスキンベアの攻撃から守っただけだ。
まさか? そんな事で俺に好意を持つなんてテレサよ……チョロすぎやしませんか? 段々と俺の中でテレサ=チョロインになりつつあるよ。
さて、どう答えるべきか。
確かにテレサは可愛いのだが、急に心変わりしたのも気になるし、今は俺も軍に所属したばっかで色々分からない事ばかりだし。
今後俺はどうなっていくのかも分からない。
当然勉強したりしないといけないのだろうし、テレサに構ってる時間があるのかも分からない。
うん、今は下手に答え出さない方がいいのかも?
「まぁ、今はハルの答えは保留しておくわ。取り敢えず、目が覚めたのだから隊長のとこに行ってらっしゃい。隊長も心配していたんだから顔くらい見せても罰は当たらないわ」
俺が答えに迷っているとテレサから隊長に顔を見せに行くように提案される。
そうだな、隊長も心配してくれていたなら元気な顔を見せるべきだよな。
よし、隊長に顔を見せに行って来よう。
「ゴメンなテレサ。今は隊長に顔見せに行ってくるよ」
テレサは俺の言葉を聞くとシーツを退けて素っ裸のままベットの端に座り、ベット脇に脱いであったであろう衣服を着用し始める。
俺はテレサの美しく出るとこは出た身体を呆然と見ていたら、丁度黒のレース生地のパンツを穿き、対になってるだろう黒のレース生地のブラを胸に当てているテレサから声が掛かる。
「ハル、ブラのホック留めて。この身体になると胸が大きくて上手い事ホック留めれないの私」
俺を見るテレサの表情が扇情的だった。
おぅ、ワザとしてるならテレサは悪女認定されるくらい色っぽい顔をしている。
「――ハル?」
俺がテレサに見惚れているとテレサが疑問に思ったのか再度声を掛けてくる。
「あ、ごめんごめん」
俺は慌ててブラのホックを留めてあげる。
テレサは胸の位置を正しながら、昨日見た兵士たちが着ていた茶色い兵士服を着込んでいく。
服を着終わったテレサは大きく伸びをした後、俺の方に振り向き俺の顔を胸に抱き寄せ耳元で囁いて来る。
「また夜来るわ。その時は楽しみにしててね♡」
それだけ言うと俺を胸から離し俺の部屋から出て行ってしまう。
楽しみにって何をするんですかテレサさん!! あぁ、ヤバイ妄想が膨らむ!くっ、鎮まれ俺の小宇宙よ!!
危うく俺の妄想が超新星爆発するとこだったぜ!!
毎度の如く阿呆な事を考えながら俺は服を着込む為ベットから降りる。
服は今までの物と兵士服が一式机の上に置いてあったので、俺は軍所属になったので真新しい兵士服に袖を通す事にする。
この部屋には姿見が無いのでイマイチ似合っているのかどうか分からないが服のデカさは丁度良かった。
さて、隊長殿に顔を見せに行きますか!
俺は前回と同様な道筋で隊長室まで移動し、ドアをノックする。
「西尾です。入室してもよろしいですか?」
「ああ、入室を許可する。入ってきたまえ」
俺の掛け声にエレナさんが直ぐに反応してくれる。
ドアを開け中に入るとエレナさんが笑顔で出迎えてくれた。
俺はエレナさんの執務机の前まで歩き机の前で止まった際にエレナさんの眉間に一瞬皺が寄ったのを見逃がさなかった。
エレナさんは笑顔を消し一気に不機嫌な顔を作り俺を眺めている。
ん? さっきまで笑顔だったのに…急に不機嫌顔になりましたねエレナさん。
これはアレか? 隊長として部下が大丈夫と分かって嬉しいが顔に出すと舐められるので、危険を冒した部下を叱る為ワザと不機嫌な顔になったというパターンですか?
まぁ、今回は無謀にもモンスターと戦闘して、重傷を負い尚且つテレサが居たおかげで勝てた戦いだった。一歩間違えれば死んでいた様なものだ、当然エレナさんに怒られたって仕方ない。
まずは謝っておこう。
「隊長! 今回は大変ご迷惑と心配をお掛けしました!! 心より反省してます! すみませんでした!!」
エレナさんに頭を下げ返事を待つ。
俺はエレナさんから直ぐに何かしらの言葉が掛かると思っていたが一向に返事が返ってこないので、恐る恐る頭を上げエレナさんに目線を向けると不機嫌オーラ全開で無表情のまま俺を見てるエレナさんと目線が絡み合う。
あれ? 謝ったのに不機嫌なままだ。
俺は何か謝り方を間違えたのかな?恐る恐るエレナさんに声を掛けてみる。
「えっと、隊長?」
エレナさんは俺の掛け声を無視してあからさまに溜息をつく。
あれ? 俺なりに一生懸命謝ったのに溜息吐かれたよ!!
「隊長?」
再度俺がエレナさんに声を掛けると、エレナさんは作り笑顔と分かる満面の笑みを浮かべて返事をくれる。
「なんでしょう」
……笑顔が怖い。
怖いが再度謝りを入れてみる。
「今回の件で隊長には大変ご迷惑と心配をお掛けしました。すみませんでした!」
再度頭を下げた俺にエレナさんは身も凍るような冷たい声で話し掛けてくる。
「ハル君。心から反省している人は謝りに来る際どこぞかの女の匂いをさせながら大変心配しているだろう人に謝るのかな?ん?」
ヤバイ!
テレサの匂いだ!! そうかエレナさんの眉間に皺が寄ったのは、心配していた部下が元気な顔を見せに来たのに女の匂いがしたからか! その後不機嫌になったのは心配してたのに俺が女と遊んでいたと思われたからか!!
俺自身気づかないがテレサのマーキングの効果抜群だな!
俺と一緒に居たのがテレサかは知り様は無いだろうからエレナさんでも分からんだろう、それより今はエレナさんに弁解しないと!!
「えっとですね」
「君は私を舐めているのかな? どれだけ心配したと思っている? 心配した部下は元気な顔と共に女の匂いをさせながら『心より反省してます! すみませんでした』とほざいてくる始末。反省しているならテレサとイチャイチャしてないで私のとこにスグに来るのが普通だと思うのだが?」
ばれてるーーーーーーーー!!
俺がテレサと居たのバレてるーーーーー!!
「なぜバレた!!」
「ハル君。女の嗅覚舐めてるだろう。それだけテレサの匂いさせていて気づかれないと思ったのか? ん?」
俺は咄嗟に顔を上げてエレナさんに目線を向けるが、俺を見る目が笑ってない。
ははっ、やっぱりテレサの裸抱擁は死亡フラグだったのか……。
「正座」
エレナさんはクソ虫を見る目で俺を見ながら声を掛けてくる。
「正座しろ」
俺は言われた通り、その場で正座をする。
エレナさんは椅子から立ち上がり机を迂回して俺の後ろまで歩いて来る。
エレナさんは俺の後ろで立ち止まった為表情が見えないが背中にビシビシと冷たい視線が刺さっているのが分かる。
「重症の君を手当てしたのは私なのだが、あれほどの怪我でも私は治せるんだ。今から君をどんなに痛めつけても回復はスグにしてあげられるよハル君?」
緊張して正座していると俺の耳元でエレナさんが囁いて来る。
怖い! 怖い! そんなセリフを耳元で囁かないで!!
俺は身体中に冷や汗を流していると不意に後ろから抱きしめられた。
「本当に心配したんだぞ。それなのにハル君はテレサの匂いをさせてくるんだから! 心穏やかには居られなかったんだぞ私は!!」
あれ? 何これ? エレナさんが可愛い事言ってるよ!!
「少し動くな。匂いの上書だ」
エレナさんはそう言って俺を強く抱きしめてくる。
あれ? 俺って今モテ期到来中ですか! ってぐらいに今女の子にモテてます?
「さて、匂い付けはこれくらいにしてお仕置きしましょうか?」
あれ? モテ期は?
俺は恐る恐る後ろを振り向くと、そこには般若がいる!! いや、殺意満々の笑顔のエレナさんだった。
俺の胸ぐらを掴み左手一本で俺の足裏が地面に着かない所まで軽々と持ち上げ、右手で俺の顔をタコ殴りにし始める。
「私が心配したのに! したのに! したのに! テレサとイチャつきやがって!! どれだけ心配したと思って! この! この! この! ……完全なる癒しを。この! この! この! 馬鹿ハル! この! この! この! 阿呆ハル!! ……完全なる癒しと見せ掛けてのアイアンクローからのナックルアロー!! この! この! この!」
エレナさん……あんた鬼やで!! 何が完全なる癒しと見せ掛けてアイアンクローからのナックルアローですか!!
もっと回復スキル挟んでよ!! 案外意識飛ばないし、ただ苦痛を与えられ続けるって俺死ぬから!!
「たるけて!! たふけてくらはい!! えれなしゃん!! ハグッ!! オエッ!! アガガ!! しむ、しんひゃうから!!」
俺は顔面を強打され続けながらエレナさんに必死に命乞いをする。
「ダーメ♡」
エレナさんは笑顔で答えてくれる。
但し俺を殴る手は一切緩めずにだ。
あぁ、俺の人生長いようで短かったな、意識が途切れそうになるとエレナさんは回復スキルを使ってくれる。
そんな優しさ俺は要らない!! いっその事楽にして欲しい!! 今後女関係でエレナさんを怒らす事は絶対にしないと心の中で誓う俺だった。
あれから小一時間ぐらいエレナ式お仕置き術を受け続けたがようやく解放された。
解放されたが俺の心に深々とトラウマが刻まれたのは言うまでも無いだろう。
「ふうっ、少しは気が晴れたわ」
エレナさんは自分の顔に付いた返り血をハンカチで拭きながら俺を見てくる。
いや!! 俺を見ないで!! またタコ殴りにする気でしょ!!
俺がプルプル震えていると肩に手が置かれる!!
いやーーーーーー!! 殴らないで!! 俺がガクガクと身体を振動させて拒絶を表現してるとエレナさんは笑顔で話し掛けてくる。
「ハル君。今後は気を付けなさいね?」
「サー! イエッサー!」
俺はすぐに了解の返事を返す。
きっと次は今回のエレナ式お仕置き術を越えるものが待ってる気がする。
うん、僕気を付けるよエレナさん!!
はっ! あまりの事で幼児退行を少しばかりかしてしまってた気がする!!
「さて、本題に入りましょうかハル君?」
エレナさんは執務席に腰かけ真面目な顔をこちらに向けてくる。
「ハル君は今後の為に一旦冒険者として、エルドランドの知識や戦闘術を学んで来てもらうと思ってます」
「冒険者ですか?」
いきなりファンタジー的な職業が出てきたな。
こちらの世界にも冒険者っていたんだ。
「きっとハル君は少し勘違いをしてると思うから説明しましょう。エルドランドに措ける冒険者って言うのは転移・転生者以外のエルドランドの民でモンスター戦闘や対人戦闘が出来る力ある者を指します。我々軍は帝国から王国を、魔王やドラゴンから国民を守りますが、何せモンスターや盗賊となると数が多くそれ程強くは無いので一々軍で相手をしていられないんですよ。そこでホーネスト王国の民に対処してもらって、尚且つ民の中である一定の実力がある人達を冒険者として王国でモンスター退治や盗賊の駆除などに活動してもらい、有事の際には力さえあれば軍に所属して行動してもらいます。まぁ、さすがに冒険者で相手にならないモンスターなどは軍に要請が掛かるんですがね。簡単に軍の下請け組織だと思ってもらってもいいですよ」
「俺が冒険者として勉強してこいってことですか?」
「まぁ、訓練は軍で出来ますが実践はそうは行かないでしょ? 冒険者ならある程度の実践は積めます。それにハル君は3番隊所属になったので前回少し説明させていただきましたが、都市防衛や民を守る事が最大の任務となります。そして3番隊には墜ち子の方や戦闘系スキルを持って無い方達で構成された別働隊、別名“鴉隊”って部隊があります。主な任務は各部隊の後方支援と冒険者達の軍スカウト、都市内外の冒険者達の支援、任務協力や共同作業など色々な業務があります。ハル君の顔を冒険者達と取り付けるって名目で勉強会ですね」
まぁ、言ってる意味は理解できるが別働隊ね。
「それで一旦冒険者たちと一緒に行動して顔を広めつつ色々勉強して来いって事ですか」
「ええ、そんなに堅苦しく考えなくてもいいですよ。軽ーくモンスターと戦って実戦経験積んでくるだけですから」
エレナさんは良い笑顔俺に向けてくるけど、俺スキル無いのにどうやって戦うの?
俺は今後の事に不安を覚えるしかなかった。
次で一応第一章・異世界来ちゃった編を終わらすつもりですが、次の投稿いつになるやら、頑張ります!!




