第二章 戦場のソムリエ
降下作戦成功? いいえ、ケフィヤです。
ついに犠牲者が出始めた本作品。
実は最終回で全員生き返ります(嘘)
降下した兵士たちが見た光景は、まるでロシアの密林地帯だった…
ダダダダダ!
「敵襲だ! HQ! HQ! 増援願う!」
辺りは、火薬の臭いと木々が燃える独特の匂いに覆われていた。
敵兵と思われる兵士が、容赦なくAK47をぶっ放してくる。
いや、あれはAK74か…
というか、ココハ…ドコダ?
我々は、こんな密林には降下していないはずだぞ?
そう、私が見たトウキョウと言われている資料の映像とは、とても比較出来ないほどの密林地帯が、そこには広がっていた。
どこかの金持ちが、趣味で都会のど真ん中に密林を作っているのか?
だが、トウキョウにはそんな密林ができるほどの広い場所は無いとも聞いた。
となると、いくつか考えられることがあるが…
それにしても、降下した仲間たちは、予想以上に散らばったようだ。
だか、一人ほど仲間を確認することは出来た。
そいつはパラシュートが木に引っ掛がって、降りれなかったのだろうか? マイナスドライバーで必死にパラシュートを切ろうとしたに違いない。
奴の目は、敵兵への憎悪と、あまりにも残念な終焉を迎えた事による悲しみのような感情がこもったように、大きく見開いていた。
撃たれて死んだのか? 隙だらけのところをナイフで刺されたのか?
まあ、どうやって死んだのかはもうどうでもいい。彼が生きていない事は間違いないんだからな。
仲間の死体を運ぶ余裕はないが、死亡した事を証明するにためにドッグタグだけを取り、死体を後にした。
ドッグタグには【E】とだけ書かれていた。
俺の名前はアルフォード・A
年齢は43。しがない傭兵の男だ。
家に帰れば女房と娘がいる。娘の方はもう17になるお年頃だ。
俺としては、最近娘に悪い虫が付きまとっているとか聞く。だから、この戦いが終わったら故郷に真っ直ぐ帰り、娘に問い詰めるつもりでいる。娘は俺の嫁。嫁は俺の嫁。俺は俺の嫁。
「この殺虫剤!」
と、娘にはいつも褒められながら怒鳴られてはいるが、父の日には、とても綺麗な白い菊の花を、丁寧にプレゼントしてくれる。
俺の娘は、俗に言う“ツンデレ”のようだ。
早く娘に会いたい。
昨日寝ている娘のほっぺにチューしたけど、まだ物足りない。
もっとも、今回の任務。無事に帰れる可能性はあるのか心配になる。
こうして“既に仲間が一人死んで”いるんだからな。
(がさがさ)
十時の方角から何者かの接近あり。
素早く周囲を警戒しながら木に張り付いている草の塊をエイミング。
どうしてAK47を装備しているのかって…そりゃ、敵兵から奪ったからに決まっているじゃないか。
俺がやっているFPSじゃ、敵兵から奪えるのは弾の入った新品のマガジンだけだからな。
うにゃー。うにゃー。
「何だ猫か…」
ダダダッ
3点バーストにしてあったAK47を遠慮なく発砲した。3発ともに草の塊に命中。
ガサッ
両手を上げて姿を現したのは“敵”だった。敵だと理解するまでに1秒も掛からなかった。そいつはAK47を装備し、ロシアン迷彩を着ていた。弾は足にヒットしたのか? 足を引きずっていた。
こいつは……KGDか!? なぜKGDがここにいる?
KGDもトウキョウに“仕事”があったのか?
低めを狙ったので、足にヒットしていた。どうやらまだ生きているようだ。
俺は足を痛めて苦痛の表情を浮かべているロシアン兵を、慎重にエイミングしながら、使い慣れていないロシア語を思い出し、ゆっくり近づきながら尋問を開始しようとした。
が、その時!
「アキハバラ…メイドさん…萌え…」
日本語だと!? しかも今“アキハバラ”と言ったな?
ということは、少なくとも彼は今回の任務を知っていることにならないか? なぜKGDが関与している? アメリカの情報が漏れているのか…それともKGDもアキハバラに任務があるのか…。
「おい! 日本語しゃべレル? ナゼだ! 答えろ! アンサー!」
「アキハバラは…した…い……」
敵兵は、突然そんなことを言い出した。
死体? どういうことだ?
「答えろ! アキハバラはどうなったんだ! KGDの目的はなんだ! 答えろ!」
「ダイアナ…ツンデレ……」
ダイアナという言葉に驚愕した。俺はこれ以上尋問する気になれなかった。
なぜKGDがダイアナ嬢の情報を知っていたのか? もしかしてKGDもこちらとは異なった目的があるのか?
どちらにしても、これ以上彼を生かして置いて良いのだろうかと自問する。
正直、敵を生かしておくというのは、自分自身の安全が保証できない。かといって、捕虜にするには荷が思い…。
とりあえず縛る事にした。縄は敵さんが何故か大量に所持していた。その時に分かったのだが、どうやら奴は俺が撃った弾に当たって足を痛めたのではなく、草の中でサボっていたところを奇襲され、それに驚いて足を捻ったらしい。なんとまあ間抜けな…。
縄で敵を縛り上げた後、彼が所持していた装備を調べた。
大量の縄 AK74 グロック18 無線機 赤外線ゴーグル 新品のタバコ(ラッキーストライク) MARIA様が眺めてる(3巻) etc…。
こいつは随分と私物を持っているな…と呆れながらも、MARIA様が眺めてる(3巻)だけは回収した。これは俺も欲しかった最新刊だ。
AK74とグロック18のマガジンと装填されている弾を抜いて足元に返してやった。
ついでに、残った縄を少しだけ拝借することにした。
どうも気になる…この縄が今後役に立つ気がしてならないと、俺の中の何かがささやく。
「よし、味方の助けが来るまでおとなしくしてろよ? 味方が通りかかればお前は助かるんだからありがたく思えよ?」
「やめてくれ! そいつは上官に借りたライトノベルなんだ! 殺される!」
自分の身よりライトノベルとは……この国では貴重な物なのかな?
「安心しろ。最新刊なんてどこでも売ってるし、今やネットショッピングだって充実している」
俺はそれ以上奴の口を開かせないために濡れタオルを口に巻き、その場を後にした。
「んぐー! んぐぅうううう!」
その時、俺はこの敵兵が花粉症で鼻づまりを起こしていることになんか気が付きもしなかった。
とりあえず。辺りを詮索しなくては……。
3章へ続く。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
今回も訂正するかも(笑)
私の作品は雰囲気で読んでください(コラコラ)
後、夏コミと冬コミで忙しくなりそうなのでしばらくかなり不定期です。すみません。




