冒険者不適格
「へぇ、冒険者ギルドってそういうシステムなんだ」
シンイチは今、アイシスと一緒にハインツの街へと街道を歩いていた。アイシスは既に依頼を達成しており、後はギルドに完了報告をするだけだったので一緒に行くことになったからだ。道中シンイチは冒険者ギルドのことをいろいろと尋ねてみた。
要約すると、
冒険者ギルドはギルドに登録している冒険者に討伐や採取、護衛などの依頼を斡旋するところである。
依頼の内容に応じてランクが設定され、簡単なものから、G、F、E、D、C、B、A、S、の八段階に分けられている。
冒険者にも同様にG~Sのランクがあり、最初はGランクから始まり、自身と同じランク以上のランクの依頼を5つ達成するとランクアップする仕組みである。
原則として、自身のランク以下のランクの依頼しか受けることはできないが、依頼を受ける際に一定の金額をギルドに預けることにより、自身のランクよりも高いランクの依頼を受けることができる。このお金は依頼を達成すると返却されるが、失敗した場合は没収されることになっている。護衛系の依頼は対象外にされている、失敗した場合自己責任ではすまないからだ。
魔物にも冒険者のランクを基準にしてレベルが設定されており、Gランクつまり新米の冒険者でも単独で討伐できる魔物はレベル1、Fランクの冒険者なら単独で討伐できる魔物はレベル2とランク毎に1レベルずつ上がっていく。レベル8はSランクの冒険者でなければ単独での討伐は厳しい魔物であり、レベル9は単独での討伐が厳しい魔物、最高のレベル10の魔物は別名神クラスとも呼ばれている伝説級の魔物である。
とまあ、こんなところであった。
そんなことを話していると街道の先に、大きな城壁が見えてきた。
「あ、見えてきました。あれがハインツの街です」
近くで見るとかなり大きな城壁だった。少々、面を喰らってしまった。
オレ達は衛兵さんに軽く挨拶をして、城門から中へと入って行った。
街の中は地面は石畳で舗装されており、建ち並ぶ建物も石造りのしっかりした街並みであった。
歩いている人も結構たくさんいる。耳の尖ったエルフ族や髭モジャのドワーフ族もたまに見かける。
だが、一番嬉しかったのは獣人族がいたことだった。獣耳にしっぽ!不覚にもモフモフしたい衝動にもかられてしまった。
アイシスに連れられて大きな三階建ての赤レンガ造りの建物に到着した。
「ここが冒険者ギルドです」
オレ達は中へ入っていった。
冒険者ギルドの中は思っていたよりも綺麗だった。何卓かある丸テーブルには冒険者らしい人達がちらほら見える。
ギルドへ入ってきたオレ達……というよりオレに値踏みでもするかのような視線がいくつか飛んでくる。『アイシスと一緒にいるオレ』になにか含むところがあるような視線も感じるような気がするが……。
「先に私の完了報告をしてきますから、少し待っていてくださいね」
そう言ってアイシスは受付の方へ歩いていった。
周りを見渡してみると、大きな掲示板のようなもののところにたくさんの張り紙が張り出されている。おそらくあれに依頼が書かれているのだろう。
「シンイチさ~ん、ちょっとこっちに来てくださ~い」
受付のところからアイシスが呼んでいるのでオレは受付へ向かった。
「ここで冒険者の登録をしてくださいね」
「ああ、分かった」
「新規登録の方ですね」
「はい、そうです」
「ではまずこちらで魔力測定をしていただきます」
そう言って、受付嬢は水晶玉を置いた。
「えっ……」
オレはいきなりの展開に驚いてしまった。
「魔力が無いと冒険者になれないんですか?」
「はい、冒険者は危険な仕事ですので多少なりとも魔法が使えなければ冒険者にはなれないんですよ。とは言っても冒険者を目指すような方なら基準値を下回るようなことはまず有り得ませんが…」
「シンイチさんなら問題ありませんよ」
「どうなったら合格なんですか?」
「この魔法玉に手を当てて魔法玉が光れば合格です」
恐る恐る魔法玉に手を当ててみる。
…………………………………あれ?
「えっ…」
「あら…」
魔法玉は全く反応していなかった。
手を離して、もう一度当ててみる。………変化なし。
「誠に残念ですが、冒険者には不適格との結果ですので冒険者登録は御遠慮していただきます」
受付嬢の不合格宣言が頭の中にこだましていく。
このときはまだ誰も気づいていなかった。
正確には気づけなかったのだが……。
ギルドの魔法玉はあくまで冒険者としての最低ラインを測定するためのものだったので、基準値以上の魔力があれば光るという仕様だったからだ。
もし、魔力を数値化する仕様の魔法玉だったならば大騒ぎになっていただろう。
なぜなら、シンイチの測定値は『0』だったからである。
魔法玉による魔力測定は『潜在魔力も含めて』測定するものであり、その場合どれだけ魔法の才能が無くても、魔法の無い世界で生まれ育ったのだとしても、わずかなりとも、どんなに少なくても『1』はあるのだから。
『0』などということは『絶対』に有り得ないのだ。
このことに気づいている者はまだ誰もいない………。




