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拳闘士誕生

私の名前はアイシス=ブランフォード、15歳。セレス王国の第三王女として生まれました。

王女という立場ではありますが、冒険者としてギルドにも登録しており、現在のランクはDランクです。冒険者ギルドのランクは下から、G、F、E、D、C、B、A、S、となっているのでもう一人前の冒険者だと思っています。

今、私は『ある目的』のために隣国のアステリア王国に来ています。今日はハインツの街のギルドでDランクの依頼『リセルの森のウェアウルフ5体の討伐』を受けました。リセルの森はハインツの街の東に位置している大きな森で奥へ行くほど強力な魔物が住み着いていると言われている森です。ウェアウルフは比較的森の浅いエリアに生息している魔物で、たまに街道へ出てくることもあるので定期的に退治しておかないと街道を通る人達が被害に遭うことがあるそうです。

私はリセルの森に到着すると、早速森の中へ入って行きました。5分程歩いたところで4体のウェアウルフと遭遇しました。

剣で3体、ファイヤーボールで1体、問題なく倒し、それぞれの証明部位(討伐依頼において魔物を討伐したことを証明するために持ち帰ることが義務づけられている魔物の体の一部)を回収しました。そして、依頼達成のために必要な最後の1体を探してもう少し森の奥へと入りました。

そのとき木の影からウェアウルフが急に襲い掛かってきました。


「きゃっ!」


私は軽く悲鳴をあげてしまいましたが、ウェアウルフの攻撃をかろうじてかわし、その背中に剣を突き立てた。


「びっくりしました………」


そんなことを呟きながら最後の証明部位を回収し終えたとき……


ズンッ

「えっ!」


後ろを振り返ると30メートルほど離れた木の影に人影がありました。一瞬、他の冒険者の方かと思ってしまいましたがすぐに、明らかに隣にある木と同じくらいの巨体であることに気づきました。その巨人はゆっくりと木の影から出てきました。

私はその姿を見て驚愕しました。


「ギガース!?」


ギガースはレベル7(単独で討伐するならAランクの冒険者相当の力が必要)に分類されているとても強力な魔物です。

私の体がまだ硬直していると、ギガースが明らかにこちらに敵意をもった表情で近づいてきた。私はすぐにわれにかえり私の使える魔法の中で最も殺傷力のある魔法を発動した。


「クロスウインドカッター!!」


十字に交差した真空の刃が途中にあった木や木の枝をものともせずに切り裂きギガースへと向かっていく。

真空の刃がギガースに命中する。


「どう?!」


私はギガースを倒せたかとわずかに期待する。

しかし、ギガースの体はほんのわずかに斬れただけだった。血すら全く流れていない。


「ガアアアアアッ!!!」


ギガースは怒ったような叫び声をあげ、私を睨みつけると今度は速度をあげて近づいてきた。


「ファイヤーボール!」


今度は1メートルほどの火の玉が放たれ、ギガースの顔に命中する。しかし、ギガースはほんの少し怯んだけだった。


私はめくらましとしてギガースの顔に向かってファイヤーボールを放つと、全速力で来た道を引き返した。

走りながら後方を確認するとギガースが追いかけてきている。もともとの歩幅に差があるためじわじわと差が詰まってくる。



私はなんとか街道が見えるところまで戻ってきました。街道に人影が1つ見えたような気がしたけれど、今はそちらに気をとられてる余裕はありませんでした。

私が森を抜けてすぐにギガースも森を抜けてきた。


「ファイヤーボール!!」


私はもう一度ギガースにファイヤーボールを放ちましたが相変わらずほとんど効いていません。


「きゃっ!」


ギガースにばかり気をとられていた私は足がもつれて転んでしまいました。

ギガースが視界から外れて私は転がっていきました。

そして、次にギガースを見たときには既に至近距離で拳を振り上げ私に向かって叩きつけようとしているところでした。

私は反射的に目をつぶってしまいました。


こんなところで私はっ………。

そんな後悔が頭をよぎった。


ズガンッ!!


…………………………………痛みを感じない?

痛みを感じる間もなく私は死んでしまったの?

しかし手にも足にも感触は確かに存在している。


私は恐る恐る目を開いた。

私の目の前には知らない背中があった。







~シンイチ~


間に合えっっ!!


既に巨人は少女に拳を叩き落とそうとしている。

オレはぎりぎりのタイミングで少女と巨人の間へ入りこんだ。少し体勢を崩しながらも叩き落とされる巨人の拳に右正拳を叩き込んだ。

足がわずかに地面にめりこんだが、巨人は5メートルほど吹っ飛んで背中から地面に落ちた。

少女の方をちらりと見て、無事を確認すると巨人を少女から引き離しにかかった。

巨人は立ち上がりながらオレをにらみつけてきた。


よし、完全にオレの方を狙ってきている。


巨人を少女から十分引き離すとオレは立ち止まった。巨人がオレを捕まえようと手を伸ばしてくる。伸びてきた手をかわし、両腕で手首をホールドして………投げる!!!

一本背負いが見事に決まり、巨体が宙を舞い地面にうちつけられる。


ふらふらしながら巨人が立ち上がってくる。

そのとき、巨人の頭がピクリと動いた、すると急に巨人は森の中へ走り去って行った。


………なんだ今のは?まるで誰かに呼ばれて帰って行ったみたいだったぞ?


不思議に思いながらもとりあえず危険が去ったので、少女の方へと近づいていく。


「大丈夫か?」

「えっ…あ、は、はい、私は大丈夫です。危ないところを助けていただいて本当にありがとうございます」


そう言いながら少女は立ち上がった。


「無事で良かったよ、結構ぎりぎりだったからな。っと、オレの名前はシンイチ。君は?」

「はい、私はアイシスと申します、Dランクの冒険者です。シンイチさんはもしかして高ランクの冒険者の方なのですか?」

「いや、オレはこれからハインツの街の冒険者ギルドへ登録しにいくところなんだ」

「そうなのですか!?ギガースを圧倒なされるほどなのに……」

「あの巨人、ギガースっていうのか。それにしてもなんであんなのに追いかけられていたんだ?」

「はい、私はギルドで依頼を受けて、リセルの森に来ていたのですが、そこで偶然ギガースと遭遇してしまったんです。本来あんな森の浅いところにはいないはずなのですが…」

「………偶然……か…」


オレはギガースの走り去る直前の妙な反応が気になっていた。


「ところでシンイチさんは戦士なのですか?それとも魔法士なのですか?」

「えっ、戦士?魔法士?」

「はい、冒険者ギルドに登録する際に提出する書類には登録する方の得意な戦闘スタイルを記入する欄があるんです。先程のシンイチさんの戦い方はどちらでもないように思えてしまったもので……」

「ちなみにその戦士と魔法士のそれぞれの定義を聞いてもいいかな?」

「はい、戦士は主に武器による直接攻撃を得意とする方、魔法士は魔法を主体に戦う方のことです」

「………まんまだな…。その2種類しかないのか?」

「いえ、これは最も大きな分け方でそれぞれにもっと細かい種類があります。戦士の中でも剣の扱いに特に自信のある方は剣士と名乗りますし、魔法士も得意な魔法の名前をつけて火魔法士や治癒魔法士と名乗る方もいます」

「フム………。ちなみに闘士っていうのはどういう意味になるんだ?」

「闘士は戦士の中でも大剣やハンマーのような重くて破壊力のある武器を使う方のことを指します」


闘士は破壊力のある武器……あのアニメの星座の戦士達は漢字で書くと『聖闘士』だからてっきり素手で戦う奴のことを指すかと思ったけど……。じゃあオレは拳士……か?いまいち印象が薄いような気がする。…なら………。


「シンイチさん?」


考え込んでいるとアイシスが声をかけてきた。


「ん、ああ、自分なりに工夫した名称を考えていたんだ。……………拳…闘士。そうだなオレは『拳闘士』って名乗ることにしよう」

「拳闘士……ですか?どういう意味なのでしょうか?」

「闘士が使うような破壊力のある武器にも負けない拳を持つ戦士、という意味を込めてみたんだけど……変かな?」

「なるほど、それで『拳闘士』ですか。ギガースと素手で戦っていた先程のシンイチさんにピッタリだと思います」

「そう?良かった」



これが『拳闘士シンイチ』の誕生した瞬間だった。



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