初戦闘
「……ふうっ」
シンイチの周りには盗賊3人と彼らの持っていた剣が3本転がっている。
いきなり襲い掛かってくるってことは見た目通りこいつらは盗賊だろうな。
この村の状況を見る限り、村に侵入しようとしたところで、突然現れたオレをまず血祭りにあげようとして、切りかかってきたのだろう。
オレの後ろで村の人達が慌ただしくしているようだし、まだ村には被害はでていないようだ。
なら、オレのやることは決まっている。
ーーー盗賊を倒すーーー
残りは、剣持ちが10人、弓持ちが4人、そして大きな斧を持ったリーダーとおぼしき男が一人。
先の3人の程度から考えれば、問題は無いだろう。
……とりあえず、弓持ちが邪魔だな。
シンイチはゴルフボールほどの大きさの石を両手に2つずつ拾いあげると、手首にスナップをきかせ下手投げで、盗賊(弓)の内2人の額に投げつけた。
鈍い音が響き、2人が倒れた。間髪入れずに、再び鈍い音が響きさらに2人倒れた。
「な…なんだあいつは……、くそがぁ!!全員でかかれ!!」
リーダーとおぼしき男が叫ぶと、残りの盗賊たちが一斉にシンイチに向かってきた。
一番足の速かった盗賊が剣を振り上げた瞬間、シンイチは一気に間合いをつめ、胸に拳を叩き込んだ。
ものすごい勢いで吹っ飛び、後ろの数名を巻き込んで倒れた。
巻き込まれなかった連中が、呆気に取られた一瞬をシンイチが見逃すはずもなく、次々と殴り飛ばし、蹴り飛ばし、倒していく。起き上がってくる最初に巻き込まれて倒れた連中もきっちりと倒していく。
あっという間にシンイチの足元に10人の盗賊が寝転がることになった。
…変だな………なんだかいつもより身体が軽い気がする。
ひょっとしてこれが噂に聞く、『異世界召喚補正』ってやつか?
「くっ……今度はこの『大戦斧のガザン様』が相手になってやるぜぇぇぇぇっ!!!!」
一瞬、本気で忘れかけていた盗賊のリーダーが叫んだ。
ダッシュで近づいてくる。
振り上げている斧はかなりデカイ、刃の部分だけでも1メートルぐらいありそうだ。
「もらったぁぁぁっ!!!!」
振り下ろされた斧をシンイチはバックステップでかわした。地面にぶつかると同時に直径1メートルほどのクレーターができた。
「ちっ……」
ザガンが悔しそうに吐き捨てた。
凄いパワーだな…
だけどそれ以上に……っ
こいつからはとんでもない血の臭いがする。一体何人いや何十人の人たちを殺してきたんだ……
子分連中は死なない程度に加減したけど、こいつは………………
オレは生まれてはじめて、人を殺す覚悟をした
ガザンが斧を振り上げて向かってくる。
オレは息を整えた。
ガザンがなにかを叫んでいるようだがオレの耳にはとどいていない。
シンイチは振り下ろされた斧をかわし側面にまわりこんだ。
そして、ザガンの延髄に蹴りを叩き込んだ。
ゴキリ、という嫌な音が聞こえた。
骨が折れた感触が足から伝わってくる。
ザガンはバタリと倒れ、しばらく妙な痙攣をした後…………動かなくなった。
………………なにも………感じない???
どういうことだ?
こういうときは普通、急に吐き気を感じたり、罪悪感に押し潰されそうになる場面じゃないのか?
シンイチがそんなことを考えていると、髭をはやしたいかにも村長風な人が近づいてきた。
「どなたかは存じませんがこの度は村の危機をお救いください、本当にありがとうございました!」
「あ………いえ………」
「私はリーゼ村の村長、アルフと申します。立ち話もなんですから、まずは我が家へおこしください」
「あ…はい、それではおじゃまさせていただきます。
ああ、そういえばそこのザガンと名乗っていた男以外はまだ生きているはずですから、気をつけて下さい」
「はい、わかりました。それはこちらで捕まえておきます」
村の若者たちが何人かやってきた。気絶している盗賊たちを縛り上げていく。
シンイチは村長に連れられて、村長宅へと向かった。
…………………………………………………あれ???
そういえば、さっきから村長や盗賊たちは『何語』でしゃべっていた?なんでオレはそれが理解できている?そして、さっきオレは『何語』でしゃべっていた?
そんなことを考えているうちに、村長宅に着いていた。
オレは村長に促され椅子に腰掛けた。
「あらためましてこの度は本当にありがとうございました」
「あ、はい、あの…ひとつ確認したいことがあるのですが」
「はい、なんでしょうか?」
「この世か…いえ、この大陸の名前はなんといいましたか?」
「……?それはもちろん『セイファート大陸』ですが?」
………………『セイファート大陸』………
オレはその名前を……………………………………『知っている』




