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2人の力

オレとフィアの見据える場所から、まるで体に貼付けた透明になる膜が流れ落ちるかのように1人の男が姿を現した。

その男は黒いローブを纏い、銀髪で紅い瞳をしていた。


「お前は……?」

「おやおや、人に名前を尋ねる前に自らが名乗るのが礼儀というものでしょう?」

「………シンイチだ」

「フィアなのです」

「まあ、正直あなた方の名前になど全く興味は無いのですがね。私はバイパーと申します。短い間ですがおみ知りおきを…」


うわ…正直ちょっとカチンときた……。


「それにしてもよく私に気づきましたね。姿だけでなく気配も消していたのですが……」

「姿や気配を消しても魔力が漏れていたのです」

「ついでに殺気もたまに出てたぞ」

「それはそれは………」

「………あなたは魔族なのです?」

「えっ……!」


いきなりの衝撃発言にフィアの方を見る。


「フム………、ご名答ですよ、お嬢ちゃん」


お前も簡単に認めるんじゃないっての…。


「魔族は500年前の戦いで滅んだと聞いたが?」

「私は臆病なものでして、その戦いには参加しておりませんでしたから…」

「つまり、お前が最後の魔族ってことか?」

「さあ、それはどうでしょうねぇ。あの戦闘狂どもがどうなろうと私の知ったことではありませんから」

「随分冷たいんだな」

「くくく……」

「ここには何をしに来たんだ?」

「あなた方に話す必要がありますか?」


こういう時は聞いてもいないことまでペラペラ喋るんじゃないのかよ!?


「これから死ぬあなた方に!」


バイパーはいきなり鋭い視線をぶつけてきた。


「なんだと!?」

「私の存在を知ったあなた方に生きていられると面倒なことになりかねませんからねぇ。それに先程言いましたよね?『短い間ですがおみ知りおきを』と」

「くっ!」


オレはバイパーに対して構えをとった。


「喰らいなさい。サンダーレイン!」


空から無数の雷が降り注いでくる。


「ゲッ!」


「シールド!」


頭上に現れた淡い光の膜が雷を受け止めていく。


防御障壁ってやつか!?


「すまん…、助かったよ。フィア」

「いいのです」

「この程度なら防ぎますか……」

「…エクスプロージョン!」

「シールド!」


バイパーが爆発に飲み込まれていく。


だが、バイパーも防御障壁で防いでいた。


「フレイムランス!」


フィアが続けて魔法を放つ。

炎の槍がバイパーめがけて飛んでいく。

防御障壁と炎の槍がぶつかり合い、防御障壁にひびが入ったところで炎の槍は消滅してしまった。


「ほう、なかなかやりますね。今度はこちらの番ですよ。サンダーランス!」


バイパーは雷の槍を放ってきた。


「シールド!」


フィアも防御障壁を張り攻撃を受け止めようとする。さっきとは逆の立場で魔法の槍と防御障壁がぶつかり合う。

しかし、雷の槍と防御障壁は同時に消滅してしまった。


「くっ………」

「かろうじて防ぎきりましたか……。では次は…」


フィアは意を決したような顔でバイパーに杖を向ける。


「これを喰らうがいいです!インフェルノフレイム・アークランス!!」


フレイムランスより倍は大きく、より炎が収束しているためか炎の槍というより紅く輝く槍が生まれバイパーめがけて放たれる。


これならいけるか!?


「イージスシールド!」


今度はバイパーを球体が包むように防御障壁が発生した。


フレイムランスでひびが入ったんだから、もっと強そうなあの槍なら今度は貫けるはずだ!


だが結果は期待を裏切り防御障壁にひび1つ入れることなく紅い槍は消滅した。


「なっ!?」

「今のは……、失われし魔法ロストマジックです!?」

失われし魔法ロストマジック!?」

「よくそんなことまで知っていましたね。その通りこれは失われし魔法ロストマジックの1つ…、最強の防御魔法イージスシールドですよ」


バイパーが誇らしげな顔をしている。


「そ…そんな……」


フィアが力なく崩れ落ちた。


「フィア!?」

「……勝てないのです……」

「どうやら先程の魔法があなたの切り札だったようですね。ではそろそろ消えて頂きましょうか」


バイパーがフィアに向かい手をかざす。


「させるかよっ!!」


オレはバイパーに向かって走り出していた。


「あなたから消えますか?」


バイパーはオレに手を向けてきた。


「サンダーランス!」


雷の槍がオレめがけて飛んでくるが、これをひらりとかわす。


「な……!?」


バイパーもかわされるとは思っていなかったのかわずかに動揺している。

その間に攻撃の届く範囲まで近づけた。


「…っ!?イージスシールド!」

「おりゃあ!!」


バイパーを殴りつけるが防御障壁に阻まれる。


「ちっ!らあっ!!」


今度は顔めがけて蹴りを見舞うが防御障壁にはひび1つ入らない。


「くそっ!」


オレは一旦距離をとった。


「フ…、ハハハハハッ!!そんな攻撃でこのイージスシールドが破れるはずがないでしょう!馬鹿ですかあなたは!?」


…………たしかに生半可な攻撃じゃ破れなさそうだな…。

……なら、オレも出してみようか…『本気』ってやつを……!!


愛でも


勇気でも


友情でもなく


思い込みを力に変えて!!



~フィア~


フィアの魔法の中で攻撃力、貫通力ともに1番のインフェルノフレイム・アークランスが防がれてしまったのです……。


シールド魔法を使う相手に勝つ方法は……、

1つは攻撃で破壊する方法、でもフィアにはあれ以上の威力のある魔法は使えないのです。

2つ目はシールドを使っていないタイミングを狙う方法、あのバイパーという魔族は防御を1番にして戦っているから、その隙をつくことは難しいのです…。

最後はシールド魔法の弱点、1方向にしか防御障壁を張れない、ですが……あのイージスシールドは全部の方向に防御障壁を張り巡らせていたのです……。

インフェルノフレイム・アークランスは魔力消費が激しいからあと1回が限度なのです。


どうやっても勝てないのです…。



あ………、シンイチがバイパーに向かって行ったのです…。

シンイチがバイパーを攻撃しているけど……。

無理なのです……。素手ではイージスシールドは絶対に破れないのです………。


……………あれ………?シンイチなんだか嬉しそうな顔をしているように見えるのです。


「ーーームのォ………」


……よく聞き取れなかったけど、シンイチは何かをするつもりなのです?

シンイチが凄いスピードでバイパーに向かって走っているのです。


「イージスシールド!!」

「ガァァァトリィィングッッ!!!!」


ガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!


シンイチがもの凄い勢いでイージスシールドを殴りつけているのです。

速過ぎて残像で腕が何本もあるように見えるのです。

でも、全部イージスシールドに防がれてしまっているのです。

………………素手で破るなんて不可能なのです…。不可能なはず…、そのはずなのに……。

シンイチならなんとかしてくれる、そんな思いが生まれてきているのです。

………なら…フィアも諦めるわけにはいかないのです。




~シンイチ~


オレはイージスシールドによって生み出された防御障壁を両腕で殴りつけていた。


「ハアアアアアアアアッッッッ!!!!」


もっとだ、もっと。もっと強く、もっと速くっ!!



シンイチの攻撃は決して止まることはなかった。むしろ少しずつ威力も速度も上がってきている。

最初は余裕に満ち溢れていたバイパーの表情もわずかに険しくなっていた。



ピシリ


遂に防御障壁にひびが入った。


「そんなっ!!」


そのまま殴り続ける。バイパーの顔からは完全に余裕が消えていた。


「うあああああああっっ!!!!」


右拳が防御障壁を突き破りバイパーの顔面をとらえていた。

あくまで防御障壁を狙っての攻撃だったためバランスも崩れ、威力ものっていなかったがバイパーを吹っ飛ばすには十分だった。

バイパーは空中で体勢を立て直し着地する。


「…ぐっ……」


もう一撃!


オレは追撃のためにバイパーへと突っ込んだ。

だが拳が届く寸前でバイパーの姿がかき消えた。


「なっ!?どこだ!?……………………上か!!」


バイパーは上空に浮かんでいた。

表情こそ平静を保っていたが全身から怒りのオーラが出ているようだった。


「フ、フ、フハハハハハッッ!!下等生物の分際でこの私を………。お遊びは終わりです!消し飛びなさい、ジャッジメント・ライ……」


ヤバイッ!



ヒュンッ!ーーーーーーーーーーーードスッ!!


「グハッ!」


バイパーの左脇腹から紅く輝く槍が突き刺さり体を貫いていた。


槍の飛んできた方を見ると……。


「フィア!!」

「あなたの相手はシンイチだけじゃないのです…」

「ブハァッ…。ま、まだです……、ジャッジメ……」

「させないのです。エクスプロード!」


バイパーを貫いていた紅い槍が消えた。だが次の瞬間、バイパーを中心にして直径3メートルほどの小さな太陽が出現した。


「ギャアアアアアアアアッッッッ!!!!」


バイパーの絶叫が響き渡る。


小さな太陽が消えたあとにはチリ1つ残っていなかった。




『エクスプロード』火属性補助魔法

自身の放った火属性攻撃魔法を火属性攻撃魔法『エクスプロージョン』のように爆発させる魔法

威力はかけられた魔法に比例する

インフェルノフレイム・アークランスの場合、炎の収束率が高いので爆発というより高密度の炎の球体が発生したのである。

さらに、かけられた魔法が相手の体を貫いていたために相手は体の内側から焼き尽くされたのだ。









シンイチは決して腕は伸びません、念のため。

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