魔法少女
1日目に引き続き2日目、3日目とオレ達はCランクの依頼をこなしていった。
正直物足りなさを感じていたが、Sランク、Aランクの依頼はそもそも貼り出されておらず、Bランクの依頼も目的地が遠かったり拘束期間が長いものしかなく、とりあえず日帰りで出来そうなものの中でランクの高いものを選んでいたので3日連続でCランクの依頼をすることになったのだ。
3日目の依頼の完了報告をしたところで、アイシスの冒険者ランクがCランクに上がった。
これでCランクの依頼を受ける際にギルドへお金を預ける必要が無くなった。余計な手間が1つ減って良かった。
アイシスがなにやら微妙な顔をしながら受付から帰ってきた。その手にはなにやら依頼書らしき物が握られている。
「それはなんだ?」
「これは明日ギルド主導で行われる大規模討伐の依頼書ですよ」
「どれどれ……」
Bランク
街の北に位置する岩山にある洞窟に拠点を築きつつあるオークの群れの討伐
参加資格 Dランク以上 (ギルドへの預け金不要)
報酬 1人銀貨20枚 討伐数により追加報酬有り
「へぇ…。で、どうするんだ?受けるのか?」
「私は受けたいんですけど……。いいでしょうか?」
「うん、別に問題はないよ。でも、どうしてこの依頼を受けたいのか聞いてもいいかな?」
「それは………、この国の北に隣接するセレス王国が私の生まれ故郷だからです。この依頼のオーク達がこちらへは来ないで北へ行ってしまう可能性もあるじゃないですか」
「ああ、なるほど」
「ですから、この依頼を受けたいんです。受けてもいいですよね……?」
「うん、いいよ」
「それじゃあ参加登録をしてきますね」
そう言ってアイシスは再び受付へ向かった。
………アイシスってセレス王国の生まれなんだ……。そういえばオレってアイシスのことほとんど知らないんだよなぁ。
そして、当日。
集合時間の10分前に冒険者ギルドへ到着すると、他の参加者が既に集まっていた。
その集まりに近付いていくと黒い鎧を着た男が声をかけてきた。
「君もオーク討伐の参加者かい?」
「あ、はい。そうです」
「フム……。私は今回の依頼でチームリーダーを任されている漆黒の翼のサムスというものだ。ちなみに冒険者ランクはBだ。君の名前を確認してもいいかな?」
「はい、私はアイシスといいます」
サムスが名簿らしきものを確認している。
「む…。ああ、あった。これで全員だな。早速ミーティングをしたいのだが……」
「はい、構いませんよ」
アイシスがそう言うとサムスは他の参加者達を集め始めた。
参加者はアイシスを含めて9人だった。オレをいれると10人だが……。
「あれ?1人多いぞ?」
サムスが不思議そうに首を傾げている。
「あ、こちらのシンイチさんは私のお手伝いをしてくださっている方なんですが、冒険者ではないので参加登録はしてないんですよ」
参加者達の視線が一斉に集まってきたので少し後ずさりしてしまった。
「フム、そういうことか……。別にかまわんがその男の分は報酬が出ないのは分かっているね?」
「はい、分かっています」
「なら……」
「ああっ!!お前たしか何日か前にギルドの魔力測定で落とされた奴だろ!」
参加者の1人がそう言って指差してきた。
「そうだけど……」
オレは少し不機嫌そうに答えた。
「あれに落ちるようなのがついてきても足手まといなんだよ!」
「たしかにオレは魔力測定で落とされたけど、それが弱いってことを意味するとは思わないことだな」
「なんだと!?」
「やめないか、2人共!!!」
サムスの怒鳴り声が響いた。
「チームの和を乱すようなことをするんじゃない!」
「ちっ…、分かったよ」
「すいませんでした……」
「む…、わかればいい。では気を取り直してそれぞれ軽く自己紹介でもしてもらおうか」
サムスがそう言うと参加者達は順に自己紹介を始めた。
サムスの率いる漆黒の翼の4人、さっきの失礼な男のパーティーの3人、そしてアイシスついでにオレ、と自己紹介していく。
「え~っと、君で最後だな」
最後の1人はアイシスよりもさらに年下っぽい青いフワフワなショートヘアの美少女だった。灰色のローブを身につけ、紅い宝石の埋め込まれた杖を持っている。なんだか眠たそうな顔をしているようにも見える。
「フィアと申しますです。よろしくです」
「なんで子供が紛れ込んでんだよ?」
あのヤロ、また絡んでやがる。
「名簿によるとフィア君の冒険者ランクはCだぞ」
「俺より上なのかよ……」
「てへ…です」
フィアがはにかみながら微笑んだ。
グハッ………。可愛すぎるだろうが…。
「みんなの自己紹介も一通り終わったようだし、そろそろ出発するぞ!」
「はい!」「おうよ!」
オレ達はハインツの街を北へ向かって出発した。
オレはまた絡まれると面倒なので1番後ろを少し離れてついていくことにした。
アイシスは漆黒の翼のメンバーとなにやら話している。おそらく作戦でも相談しているのだろう。
今日の依頼はオークの討伐か……。かなりの数がいるらしいからなぁ。まあ、これだけの人数がいるんだしオレがでしゃばる必要も無いだろ…。
そんなことを考えながら歩いていると、フィアがトコトコと近づいてきた。
隣を歩きながらオレのことをじいっと見上げてきた。
うぬぬぬ…、どうしてそんなに可愛いんだ!
頭を撫でくりまわしたい衝動を抑えながら歩いているとフィアが話しかけてきた。
「シンイチはなにか不思議な感じがするのです」
「ん?そうか?」
「そうなのです。他の人とはなにか違う気がするのです」
もしかしてオレが違う世界から来たってことを感じ取っているのか?
「なにかってなんだい?」
「………わかんないです」
フィアが可愛く首を振った。
「まあ、分かったら教えてくれるか?」
「はいです、約束なのです」
「ああ」
途中で1度休憩をはさんで進んでいくと、遂に目的の岩山が見えてきた。
「みんな、あれがオーク共がいる岩山だ。ここからは気づかれないように気をつけて…」
ピーーーーーーッ!!
急にまるで笛のような大きな音が鳴り響いた。
「………なんだ?今の音は…?」
「オーク共の見張りに見つかってしまったんじゃないんですか?」
「む……そうかもしれんな。みんな周囲を警戒しながら行くぞ」
オークに既に見つかってしまっている可能性が高いと判断して、オレ達は十分に気をつけながら岩山に近づいていった。
岩山のふもと近くまで来たオレ達の目にしたものは、岩山の洞窟からぞろぞろと出てくるオークの群れだった。
「いかんな……。やはりさっきのはオークの見張りの合図だったようだ」
洞窟の前に陣取っているオークはざっと30体というところだった。全員剣や槍で武装している。
「どうすんだよ?リーダーさんよ」
「そうだな………」
サムスが思案しているうちにオークの群れがこちらに向かってきた。
「来るぞ!!各自孤立しないように注意しつつ、オークを迎え撃て」
「了解!」「はい!わかりました」「ん……」
「…エクスプロージョン」
フィアがそうつぶやくとオークの群れの中で爆発が起こる。
オークは爆発の中心から四方八方に吹き飛ばされた。爆心地にいた3体のオークは黒焦げになっている。
「おお……。よ、よし、みんな行くぞ!」
一瞬、唖然としていた他の冒険者達もオークの群れへ斬りこんでいった。
オレはそれには続かずに距離をとっていた。
う~ん、どうしたものか。オレ1人なら迷わず突撃してもいいんだけどなぁ。
連携とかは苦手だしなぁ…。
ん……?………気のせいか?
そんなことを考えている間に次々とオークは片付けられていた。
フィアがオークを孤立させるように魔法を放っているためだ。
オークに連携をとらせない見事な腕だ。
フィアも凄いけど、サムスさんもBランクだけあって強いな。オークをほぼ一太刀で倒してるぞ。
オークが1体オレのほうへ突進しながら槍で突いてきた。
オレは飛び上がってかわした。
空中で体をひねり、落下しつつオークの背後から両肩へ両手刀を振り下ろす。
「諸手打ち!」
オークの両腕がボトリと地面に落ちた。
「脆いな……」
オレはオークの背中を蹴り飛ばした。
あっちの戦いもそろそろ終わりか………ん?
…………気のせいじゃないようだな……。
ようやく戦闘が終わりサムス達はオークの証明部位の耳を回収したり、怪我を負ったものをヒール(下級治癒魔法)で治療していた。
一段落つくと、サムスがみんなを集めた。
「さて次は洞窟の中へ行くぞ。だが、2人ほどここに残ってもらいたいんだが…」
「なんでだよ?」
「万が一オークの残党や他の魔物が来て、洞窟の中で挟み撃ちになったり、この洞窟の出口を塞がれたりしたらまずいからだ」
「ああ、そういうことか…」
これは好都合だな。オレから言い出そうと思っていたのに……。
「それで残ってくれるものは……」
「オレが残るよ」
「む…。君が?………まあいいか。もう1人は…」
「フィアも残るです」
「そうか…、よし、なら君達に任せようか。残りのものは洞窟の中へ向かうぞ」
「はい!」
「行ってきますね、シンイチさん」
「ああ、気をつけてな」
オレとフィア以外のメンバーは洞窟に潜っていった。
さてと……。
「ところでフィアはなんで残ったんだ?」
「ん…。多分…シンイチと同じなのです」
「そうか……」
オレと同じ……か。
「ならそろそろいいかな?」
「うん……、いいのです」
オレとフィアは一緒に同じ場所へと顔を向ける。
そこは誰もいない隠れる場所もない空間だった。
「そこの奴、いい加減出てきたらどうだ?」
……………………………。
「くくくくく………。まさか気づかれているとは思いませんでしたよ」
やれやれ……面倒なことにならなきゃいいが…。




