初仕事
翌日、早朝。
オレはアイシスと一緒に再び冒険者ギルドへやってきた。
ギルドの中に入ると昨日と同じように視線が集まってくる。
昨日も見かけた顔がいくつかあるな……。ていうかあの顔はなんでまた来てるんだ?って思っている顔だよなぁ。
オレ達は視線を無視して依頼書の貼ってある掲示板へと向かった。
掲示板にはたくさんの依頼書が所狭しと貼ってあった。
「シンイチさん、どれにしましょうか?とりあえず好きに選んでくれていいですよ」
「え?ああ、なら遠慮なく……」
あんまり報酬が安すぎるのは嫌だし、でもいきなり難しすぎるのを選ぶのもなぁ…。
そんなことを考えながら掲示板を眺めていく。
「よし、これにしよう」
オレは掲示板から1枚の依頼書をはがした。
Cランク
リラの湖付近に出没するオーガ1体の討伐
報酬 銀貨20枚
「………………予想はしてましたけどやっぱり私のランクより高いランクの依頼を選んできましたね…」
「ああ、悪い。でもたしか自分のランクより高いランクの依頼も受けれるはずだったよな」
「はい。Cランク未満の人がCランクの依頼を受けるには銀貨5枚をギルドに預けないといけません」
「え~っと、じゃあこれを…」
オレは袋から銀貨を出そうとした。
「私が出しますからいいですよ?」
「いや、そこはけじめの問題だから」
「そうですか?」
「うんうん、じゃあこれ…」
そう言って、アイシスに銀貨を5枚手渡した。
「それじゃあ受付に行ってきますね」
アイシスが受付へと歩いていった。
これが最初の仕事か………。いきなり死なないように気をつけないとな。
「シンイチさん。依頼を受けてきましたよ。早速行きましょう」
「ん?ああ、行こうか」
オレ達はハインツの街を出発した。
「ところでアイシス…」
「なんですか?」
「そのなんとかの湖ってどこにあるんだ?」
ズルッ
あっ、ずっこけた。
「…………………シンイチさん?まさかそんなことも知らないのにこの依頼を受けたんですか?」
「………すまん」
アイシスがよろよろと立ち上がる。
「はぁ……、目的地のリラの湖は街から南東へずっと行ったところにあるこの国で1番大きな湖ですよ」
「ほうほう」
「その様子だと討伐対象のオーガのことも知らないんじゃないですか?」
「オーガはあれだろ。がっしりとした大きな体で角が生えてる奴」
「それは知ってるんですね」
「まあ……な」
漫画とかだとそんな感じだし……。
「あと、オーガのレベルは5ですよ」
「レベル5ってことはCランクの冒険者なら1人で倒せるぐらいの強さ……だったか?」
「そうですね。でも私はまだDランクですけど1体なら倒せる自信はありますよ?」
「そうなんだ」
「でも今日はシンイチさんに頑張ってもらいますからね」
「分かってるって」
そんなことを話しながらオレ達はリラの湖へと向かった。
道中他の魔物に遭遇することもなくオレ達はリラの湖に到着した。
そこには元の世界ではテレビでしか見たことのないような雄大な景色が広がっていた。
「これは………すげえな…」
「私もここに来たのは2回目ですけど、とってもステキな景色ですよね」
「そうだな」
「ここに訪れる人達のためにもしっかりと依頼をこなさないといけませんね」
「ああ、そうだな。ん……?」
そんなことをを話していると、湖の近くにあった大きな岩の影から大きな人影が出て来た。
「あれ……か?」
「えっ……」
オレの声につられてアイシスが振り向いた。
「はい!あれがオーガです!」
「ふむ……」
大きさは2メートルってとこか…。ちゃんと角もあるな、筋肉ムキムキだし…。なんかこん棒みたいなものも持ってるなぁ。
「あ~~、あれは完全にこっちに気づいてるな。」
オーガはオレ達に向かって足早に近づいてきた。
「どうしますか?シンイチさん」
「ん、とりあえず下がっててくれるか?」
「え!?まさか1人でオーガと戦うつもりですか!?」
「そのつもりだけど……」
「……分かりました。でも無理はしないでくださいね」
「ああ」
アイシスが後ろへ下がっていく。
………さてギガースがあんなもんだったんだから多分大丈夫だとは思うんだけど…。
オレはオーガへとてくてくと近付いていく。
それはあまりにも無防備な姿に見えただろう。
「シンイチさん!?」
アイシスが不安そうに叫ぶ。
「オオオオオオオオォッッッ!!!!」
オーガも叫ぶ。
オレとオーガの距離が5メートルぐらいになったとき、オーガがこん棒を振り上げた。
スキだらけなんだけどなっ…と。
その瞬間におもいっきり踏み込んで一気に懐へ飛び込んだ。
そして無防備になっているオーガの胴体へと拳を叩き込んだ。
オーガはその一撃で勢いよく吹っ飛んで地面を転がっていった。
「………………これぞ正拳突き………ってね」
軽口をたたきながらも今度はその場で構えた。
最後まで気を抜かない、これぞ『残心』。戦うものとしての基本中の基本だ。
…………………起き上がってこないな……。
オレは警戒しながら倒れているオーガに近づいていく。
オーガはピクリとも動かない。
「やった………のか……?」
あまりにもあっけなかったので逆に驚いてしまった。
「シンイチさ~ん」
アイシスがオレを名前を呼びながら走って来た。
「大丈夫でしたか!?まさかオーガを一撃で倒してしまうとは思いませんでした!」
「ん?ああ………」
「どうかしましたか?」
「いや、あんまりあっけないものだったからな………」
「普通はこんなに簡単にはいきませんよ。シンイチさんが強すぎるんです」
「そうなのか?」
「そうですよ!」
「ん~。それはそうと証明部位を回収しないと」
「あ、はい、そうですね。オーガの証明部位は角です。早速回収しましょう」
オレ達は手際よくオーガの角を回収した。
「さて、依頼は完了しましたし、どうしましょうか。すぐに帰りますか?」
「いや、少し休んでからにしよう」
オレ達は近くにあった岩の上に腰掛けた。
爽やかな風が頬を撫でていく。
………いい所だな……。
オレはアイシスの方を見た。
彼女のポニーテールが風になびいている。
……………きれいな景色と美少女…やっぱり絵になるなぁ。
「どうかしましたか?」
「いや……ちょっと見惚れてただけさ」
「え……?。い、いきなりなにを言うんですか!?」
アイシスは頬を染めて照れている。
………女の子とこんな風に話すことなんて今まで全っ然無かったからなぁ。なにもかもが新鮮だ…。
「も、もう帰りますよっ」
「ん……、ああ。それじゃ帰りますか」
オレ達はリラの湖をあとにして、街へと帰っていった。
街に着くとオレ達は早速ギルドへと向かった。
「それじゃあ、依頼の完了報告をしてきますね」
「ああ」
………あ!そういえば報酬の配分ってどうなるんだ?勝手に半分ずつだと思い込んでいたけど……。
「シンイチさん、完了報告終わりましたよ」
「あ、ああ」
ドキドキ……
「えっ…と。まず依頼を受けるときに預けた銀貨5枚と報酬の半分の銀貨10枚で銀貨15枚……っと。はいどうぞ、シンイチさん」
「ああ、ありがとう」
オレはアイシスから銀貨を15枚受け取った。
「今回の依頼では私は何にもしてませんから、全部シンイチさんに渡すべきかもって思ったんですが……」
「いやいや、それはパーティーなわけだし、内容は関係なく頭数割りが基本でしょう」
「そうですか?」
「うんうん」
「じゃあ私も半分もらいますね」
「……で、今日はこの後どうしようか?もう1つ依頼受けよっか?」
「依頼は1日1つにしておいた方がいいですね」
「じゃあ今日はこれで解散かな?」
「はい、そうですね」
……こうして、オレの初仕事は無事に終了した。明日からも頑張って稼いでいかないとな、うん。




