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夜空の月が笑う時  作者: ぶちょう
地獄編
8/63

ダンスと秘密

翌朝。

「…とりっく、おあ、とりーと」

「………」

部屋から出ると、よく見る黒い魔女服を着たメリアがそこに居た。

ハロウィン仕様か。

「…お菓子くれないと」

「…?」

「じいやに言いつけてクビにするぞ」

「怖っ!!」

現実的だな!


「なにかご用はございませんか?」

「お待たせいたしました」

二日に亘って開催されるハロウィンパーティー。遠くから来た客のはそのまま城で一泊することが多い。そのためロットやジオを含む使用人たちは接客に追われていた。

「…で、なんであなたは城の廊下にボケーっとその忙しそうにしている使用人たちを眺めているわけ?」

「接客はしなくていいって。オレ敬語使わないし」

「ああ…」

シオンが半ば呆れたような顔をしているが気にしない。

「そういえば貴方、今夜のパートナーは誰と組むのかしら?」

「パートナー?」

「知らないの?今夜はダンスパーティーをするから、誰か女の子をエスコートしなくちゃいけないのよ」

「へぇ…。誰にすっかな」

「早めに決めた方がいいわよ。なくなっちゃうから」

「ちなみにお前は?」

「私はアトラス先生が踊ってくれると仰ったけど、できればバーム様と踊りたかったなぁ…ってなに言わせるのよ!!」

「オレのせいかよ!」


「ごめん。もうジオと約束しちゃってて」

ロットは駄目。

「…いいの?」

「いや、やっぱ駄目だ」

メリアはやだ。

「シオンも駄目…だったな。そもそもオレも踊らなくちゃいけないのか?オレ使用人なのに」

「はぁ…」と大きくため息をつく。

現在時刻を確認する。午後七時。パーティーまであと三時間。もうそろそろ決まらないとやばい。

「参加者という参加者は全員出なくちゃいけないんやで」

「ん?ああ、ロゼか。そういえばお前何時間か顔見なかったけど、なにしてたんだ?」

「今日は最終日のダンスパーティーもあるさかい、照明とかのメンテナンスをしとったんや」

「へぇ、お疲れさん。…そうだ」

「?」

「お前、ダンス誰からも誘われてないか?」

「え?ないけど…」

「じゃ、オレと踊ってくれない?」

「え、ええ!?別にいいけど…その、うちなんかでええんの?」

ロゼは驚きと当時に、どこか俺と踊ることに抵抗があるようだった。

「どっか嫌なところでもあるのかよ?」

「そ、そういうわけじゃないけど…」

「じゃあいいじゃねえか」

「う、うん…。せやな。よそしゅう」

「ああ。よろしくな」



ダンスパーティーの時間になった。流石ハロウィンパーティーのメインイベントと言うべきか、昨日よりもたくさんの客が来ていた。

「ぐ、グラン」

普段のマントを被った姿とは違い、白いフリルが付いた赤いドレスを着たロゼがそこに居た。

「ど、どう?似合う?」

「ああ、いいんじゃないか?」

「そ、そう?ありがとう」

照れてる?

「あ。曲、流れ始めたで」

「そうだな。じゃ」

ロゼの前に(ひざまず)き、右手を差し出す。

「一緒に踊ってくれるか?」

「もう…エスコートする時くらい敬語使えや…」

そう言いながらもロゼはオレの右手に手を添えた。

「よそしゅう」


「ったくあのリンゴ、楽しく踊りやがって」

ワイングラス片手にアトラスは二人を眺める。ミネルはその隣でアトラスのいつもの愚痴に相槌を入れる。

「まあいいじゃないですか」

「いいわけねえよ。あのドレス手に入れるのにオレがどれだけ苦労したか知ってるか?」

「ええ。でも頼まれて断りきれない貴方も貴方ですよ」

「………」

やけになってアトラスは手元のワインを一気に飲み干す。

「アトラス先生!早く踊ってください!!」

黒い髪とは対照的な白いドレスに身を包んだシオンがしびれを切らして自分からアトラスの元へ来た。

「へいへい」

「いいですねえ。貴方はモテて」

「そんなんじゃねえよ」

アトラスはシオンに手を引かれ、ダンスをしている人たちの中へ消えていった。そんなアトラスをミネルは手を振って送り出す。

「…にしても。あの青年、敬語も使わず品性に欠けていると思っていたのですが…」

二人を見る。ダンスは見たところロゼにリードされているわけではなく、むしろグランがリードしてる。

「ダンスは習っていたようですね」

ミネルは持っているシャンパンを一口飲む。

「あのお方の出生が気になりますね…」


るんたった、るんたった。

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