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幻想廻帰  作者: 創真
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二章 夢の迷い

 知らない場所、知らない部屋、そこに一本の『黒い釘』が落ちていた。

 私はそれを手に取って見つめる。


 すると、私の体の内側から針が飛び出してくる痛みが走る。

「痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」


 痛みと共に次第に目も見えなくなっていく。


 (…………じゃない)


 声が聞こえる。

 男の人の泣く声……


(お前は一人ぼっちじゃない……私がずっとそばに…………)


 思い出せない……何も……思い出せ……



 

「……う……うん…………?」


 目を覚ます。

 そこには白い空間でフードの女性と私しか居なかった。


「目覚めた?」


 フードの女性はそう話しかける。


「あ、あなたは…………」


 警戒する。

 この人は梨沙を殺した人、私はこの人を睨んだ。


「あれ?なんか、警戒されてる?」


「シャル……あんたは突発的に作戦を始めすぎ」

「あんたに合わせるこっちの身にもなってほしいわ」


 すると、いきなり別の女性が現れた。


「だ、誰……!?」

「ど、どこから来たの!?」


「私は『ヘロ』」

「私達はアンドロイドモデル、ラグナモス軍隊人類調査部隊所属のアンドロイド兵よ」


「そして、あたしも同じ所属の名前は『シャル』」


「あたし達はオーストラリアで旧人類の文明跡地に君という存在を発見してここにいるの」


 彼女達は淡々と話すが、

 私は話についていけない……。


「アンドロイド?旧人類?何言ってんの?」

「私は平和に日本に住んでたのに平穏な暮らしを壊したのはあなた達の方でしょ!!」

「私の友達を殺して私を助けに来た?……ふざけないでよ!!」


 私は感情や情緒の整理が自分でもつけられなくなり、強く握った拳が震える。

 平和な毎日を過ごして、全て幸せだった。

 なのに、二人は私の何もかも消した。


「ねぇ……ヘロ、人間ってかなり繊細な感情プログラムなんだね」


「シャルは黙って……」


 梨沙を殺した女は不思議そうに私を見る。

「あなたが私の友達を…………梨沙を!!」


 私は彼女に襲いかかるが、ヘロという女性に抑えられる。

「落ち着きなさい……今は私たちの話を……!」


「うるさい!離して! 私はお前をっ……!!」


「………………」


 抑えられながらも必死にもがき、あの女を殴ろうとする。


「壊したいのなら壊せば良い」


 突然、あの女は言う。


「………………は?」


「あたしをそう思ってるんならそうすれば?」

「君の感情がそう動けって言ってるんでしょ?」


「シャル、あんた…………」


「あたし達の役目は人類の保護だから、別に良いでしょ?」


 いきなり言うその女の発言に戸惑う。


「な、なんでそんなこと言うの…………」


「なんでって別に?」


「自分が大事じゃないの!?」


「あたし達はアンドロイドだよ?」

「君が今、戸惑って疑問に思ってるのは『生命』における道徳心の話であって『兵器』であるあたしは変えが効く存在」


「でも!! あなたは私の“友達を”殺したんだ!!」


「君の言う“友達”は、『楽園ノ夢』が君の記憶を元に生み出されたデータ」

「つまりただの監視プログラム」


「プ、プログラム…………」

 

「『楽園ノ夢』から監視役として決定された存在」

「所詮、あたし達と同じなんだよ」

 

「アンドロイドやプログラムの役割も元を辿れば『人間』によって生み出された存在」

「『人間』に否定し壊される命令ならあたしは命令を実行するだけ」


「………………」


 言葉を失う。

 彼女の言葉を嘘だと信じたい。

 だけど、今の彼女の表情は人間らしい感情がなく、彼女は『兵器』として命令を聞くだけの『機械人形』でしかない。

 そして、梨沙も新太も全部ただの“プログラム”でしかなかったことを彼女の目を見て現実だってことを叩きつけられる。

 彼女に怒りを抱いて強く握っていた拳はいつしか、感情と共に脱力し、体はその場で崩れ落ちる。

 私はただ呆然とするしかなかった。


「あ、あなたは本当になんなの…………」

「…………」


(シャル…………)


 シャルは私に近づきしゃがみ目線を合わせて言う。


「君が取る行動は二つ」

「一つ、あたし達と一緒に出る」

「もう一つは、自分と言う『個』が消えるまで虚構の世界で外を見ずに消えていくか」

 


「で……どうする」


 

 

 わからない…………。


 わかりたくもない…………。

 

 何も思いたくない、何も知りたくない、どうでもいい…………。


 もう…………何も見たくない…………。


 ……………………。


 目の前が黒い霧のように見えなくなる。


(また、目を逸らすの?)


 振り返る、そこには小さい頃の私がいた。


(また、そうやって出来ないことから、嫌なことから目を逸らして逃げるの?)


 次第に、苛立ちが込み上げてくる。


「うるさい…………!!」

「私には選べない!!」

「私が信じたいみんなはいない!!」

「私を“ずっと一緒”って言ってくれた新太も梨沙も全部偽物だったんだよ!!」

「誰も私を選んでくれない!!」


(だから、逃げるの?)


「私が知っているみんなは初めから存在してなかったんだよ!!」

「私の知っているみんなは…………」

「みんなは…………」


 涙が溢れる……。


(ここは夢の世界、夢はいつか覚めないといけない)

(あなたには現実を見なければいけないし知らなければいけない)


「どうして、夢を見ているの?」

「どうして、夢は幸せだったの?」


(『夢』は現実の経験と後悔と感情が混じり合った世界)


 その子は私に手を差し伸べる。


 私はその手を掴む。


(これは君の『後悔』の夢)


 記憶を思い出す。

 

『本当』の記憶。

 いつの記憶なのか……。

 どこの記憶なのかも覚えてない。


 私は『彼』と二人、夕暮れの中、帰っている。


 

「ねぇ……あーちゃん」


「うん……何?」


 私は彼に肩をくっつける。

「ど、どうしたんだよ急に!?」


「ねぇ……最近、りーちゃんのことどう思ってたりする?」

 

「別に……な、なんで?」

 新太は恥ずかしそうに誤魔化す。


「………………」

「……そっか」

 

 私は知ってた。

 新太と梨沙は互いに両想いだってことを……。

 そして、私も新太のことが好きだってこと。


「あーちゃん……」


「何?」


「………………」


「えへへ…………やっぱり、なんでもな――い!」


「なんだよ…………」


 言えなかった。

 新太と梨沙の二人の関係は私が思ってるより深い……。

 

 私は所詮“転校”して来た存在の友達だった。

 だから、梨沙から新太を“奪う”なんて、私にはできないし、新太には選ばれないし、資格もない。


 どうせ、蚊帳の外の私だから…………。


 ………………。


 でも、もしあの時…………。


 あの時、告白したら付き合ってたのかな……。

 もしかしたら、新太も私のことを『好き』だったりしたのかな……。


「これが『後悔』の夢……」


(そう……“天音咲夜”が最も深い後悔を負った『夢』)


「…………」


(『今』のあなたは決断できる?)


「そんなの…………もう決めた」


 


(シャルあんた、少し言い過ぎじゃない?)

 ヘロは過剰なシャルに通信会話で苦言を言う。

 

(………………)

 シャルは引きつった顔をしながら言い返す。

(『今』を言わないとこれからの『この子』が生きられない)


「ところでヘロ、この結界プログラムはどれぐらい続く?」


「そうね……今も『楽園ノ夢』はこの子を取り返すためにこの結界を攻撃しているから…………」

「ざっと……崩壊まで2時間ね……」


「…………行く」


「…………え?」

 二人は突然そのように言う私に驚く。


「私も連れて行って!!」


 二人は互いに目を向け合い、ヘロが不安そうに苦言を一つ挟む。

「あなたは『外』の事を聞いて向き合える?」

「『現実』を……」


 当然、怖い……。

 だけど、この目で見たいと思った自分がいた。

 当たり前の日常、当たり前の友達、当たり前の世界すべてが夢だとするとしたら…………。

 目を覚まして『今』の世界を歩んでいきたい。

どうせ無理だからと言って『試さないで終わる』のはもうやだ…………。

 だから、私は“決断”する。


「…………」

「知りたい……教えてほしい」

 静かにそして“強い瞳”で呟く。


(この子、雰囲気が……)

 ヘロは彼女の瞳の雰囲気が変化を察知した。


「目を逸らして逃げるのはもう……やだ!!」



「…………」

「やっと、あたし達の言葉を聞くようになったんだね」


「あと……シャルって言ったっけ……まだ私あなたのこと許してないから!」


 強がってシャルに言い放つ。


「いいよ……それで!」

 シャルは嬉しそうに答える。

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