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短編

転生したら最強魔導士の弟子になっていた〜ツンデレ師匠と弟子の禁断の恋〜

作者: 九葉

「ん…ここは…?」

意識が戻った瞬間、私の視界には見知らぬ天井が広がっていた。木造の梁が複雑に組み合わさり、どこか中世ヨーロッパの古城を思わせる造りだ。

「就活の帰りに…そうだ、トラックが…」

記憶が断片的に蘇ってくる。私、佐倉陽さくら はるは、物理学専攻の大学4年生。就職活動の真っ最中、大手研究所の説明会に向かう途中、信号待ちをしていたところに、ブレーキの壊れたトラックが突っ込んできた。そして—

「死んだのか、僕…」

現実感のない言葉が、小さな子供のような声で部屋に響く。驚いて自分の手を見ると、そこには見知らぬ小さな手が。22歳のはずの自分の体が、どう見ても7〜8歳の少年のものになっていた。

「おや、目が覚めたようじゃな」

突然聞こえた声に振り向くと、そこには一匹の黒猫が座っていた。

「今、猫が…喋った?」

「当たり前じゃろう。わしは使い魔のグランツじゃ。500年以上も生きておる大賢者じゃぞ」

猫は尻尾を高らかに掲げながら、誇らしげに言った。

「ここは…アストラリア大陸、北部の『星霊の森』の中にあるエリシア様の居城じゃ」

「アストラリア?エリシア?」

混乱する私に、グランツは不機嫌そうに尻尾を振った。

「お前さんが森で倒れていたのを、わしの主人が拾ってきたんじゃよ。珍しいことじゃ。エリシア様が人間を拾うなんて」

その時、部屋のドアが静かに開いた。

そこに立っていたのは、息を呑むほど美しい女性だった。銀色の長い髪は月光のように輝き、翠玉のような緑の瞳は鋭く僕を見据えていた。年の頃は二十代半ばといったところか。黒を基調とした魔導士のローブを纏い、その佇まいには威厳が漂っている。

「目が覚めたか」

冷たく、感情の欠片も感じられない声。

「あ、はい…ありがとうございます、助けていただいて…」

「星の加護を持つ者が死ぬのを見過ごせなかっただけだ」

星の加護?何のことかさっぱり分からなかったが、この女性—おそらくエリシアという人物—が私を救ってくれたのは確かなようだ。

「お前は何者だ?名前と、なぜあの森にいたのかを話せ」

「僕は佐倉陽…あ、サクラ・ハルです。なぜ森にいたのかは…」

ここで正直に前世の記憶や異世界転生について話すべきか迷ったが、この世界のルールも何も分からない状況で、変な話をして怪しまれるのは避けたかった。

「覚えていません。気づいたら森の中で、魔物に追われていて…」

エリシアは冷ややかな視線で僕を観察した後、小さくため息をついた。

「まあいい。お前の持つ『星の加護』は珍しい。森で魔獣に襲われていた時、無意識に発動していた防御魔法。それがなければ、お前はとうに死んでいただろう」

彼女は窓辺に歩み寄り、外の風景を眺めながら続けた。

「私はエリシア・フォン・カイゼル。この大陸で最強と呼ばれる魔導士だ」

猫のグランツが付け加えた。「最強どころか、千年に一人の天才じゃ。星霊の血を引く希少な存在なんじゃよ」

星霊の血?星の加護?次から次へと分からない言葉が出てきて頭が混乱する。だが、目の前の美しい魔導士が只者ではないことだけは理解できた。

「ハル、お前には二つの選択肢がある」エリシアは厳しい口調で言った。「一つは、明日にでも近くの村まで送ってやる。もう一つは…」

彼女は一瞬だけ躊躇うように見えた。

「私の弟子になることだ」

その言葉に、グランツが驚きの声を上げた。「な、なんじゃと!?エリシア様、あなたが弟子を取るなんて、500年生きたわしでも初めて聞く話じゃぞ!」

エリシアは猫を無視し、私をじっと見つめた。「お前の中の星の加護が、私の星霊の血と共鳴している。これは偶然ではない。だが、三日と持たずに逃げ出すだろうがな」

挑発的な言葉に、なぜか僕の心に火が付いた。異世界に来て右も左も分からない状況だが、この美しくも高慢な魔導士の下で学べるというのは、物理学を愛してきた私にとって、またとない機会に思えた。

「弟子にしてください!」

即答した私に、エリシアは少しだけ驚いたような表情を見せた。

「…後悔しても知らんぞ」

その日から、僕の異世界での新生活が始まった。


明け方の星影が残る空の下、私は城の中庭で杖を握りしめていた。

「集中しろ!物質の本質を見よ!」

厳しいエリシアの声が響く。弟子入りして一週間、彼女の修行は想像を絶するほど厳しかった。朝は日の出前から始まり、まず基礎魔法の訓練、それから魔法理論の学習、午後は実践魔法の練習と、休む暇もない。

「水の要素を引き寄せ、形を与える…」

僕は目の前の空気中から水分子を集めようと必死に集中した。前世で学んだ物理学の知識が、この世界でも役立つことが分かってきた。分子の振る舞い、エネルギーの流れ、量子力学的な確率—それらの知識を呪文に織り込むことで、魔法の効率が格段に上がるのだ。

「ハイドロ・コンデンス」

僕の杖の先から青い光が放たれ、空気中の水分が凝縮し始めた。通常の初心者魔法では小さな水滴程度しか作れないところを、物理法則を応用した独自の呪文で、拳大の水球を作り出すことに成功した。

「…なるほど」

エリシアが珍しく感心したような声を漏らす。「お前、普通の呪文構造を改変したな?」

「はい。水分子の凝縮速度を上げるために、分子間引力の公式を組み込んでみました」

「公式?」

「あ、いえ…なんとなくそう思って…」

前世の知識をうっかり口にしそうになり、慌てて言葉を濁した。

エリシアは不思議そうな表情を一瞬見せたが、すぐに厳しい顔に戻った。「まあ、結果が出ているならいい。次は炎属性の基礎だ」

こうして一ヶ月、二ヶ月と時が過ぎていった。エリシアの予想に反して、私は修行から逃げることなく、むしろ前世での物理学の知識を活かしながら魔法の習得に励んだ。徐々に、彼女の冷たい態度にも変化が現れ始めた。

ある日の夕暮れ時、書斎でエリシアと共に魔法の古文書を読んでいた時のことだ。

「ハル、お前は不思議な子だな」

突然の言葉に顔を上げると、夕陽に照らされたエリシアの横顔があった。いつもの鋭さは影を潜め、どこか物思いにふける柔らかな表情をしていた。

「普通の子供なら、とうに挫折しているだろう。だが、お前は…」

「エリシア先生の魔法が美しいから」

素直な気持ちを口にした。彼女の魔法は本当に美しかった。無駄のない動き、洗練された呪文の構造、そして何より、魔法を操る彼女自身の姿が。

「…馬鹿を言うな」

彼女は顔を背けたが、その耳が少し赤くなっているのが見えた。

「そ、それよりこの古文書の解読を終わらせるぞ。今日中に目を通しておけ」

慌てて話題を変えるエリシアに、なぜか胸が温かくなった。冷酷な表情の下に、彼女の隠された一面を垣間見た気がしたからだ。


エリシアの弟子となって半年が過ぎた頃、僕たちの平穏な日常に変化が訪れた。

王立魔法書院からの使者が城を訪れ、エリシアに教授就任の要請が届いたのだ。同時に、私にも書院への入学試験の案内が。

「行くつもりはない」

使者が帰った後、エリシアはきっぱりと言い放った。「私は人間社会と関わりたくない」

「でも、せっかくの機会です。エリシア先生の知識を多くの人に伝えることができれば…」

「黙りなさい、ハル」

彼女の声には珍しく感情がこもっていた。怒りではなく…恐れ?

その夜、グランツが私の部屋を訪れた。

「エリシア様にはな、辛い過去があるんじゃ」

猫は窓辺に腰掛け、月を見上げながら話し始めた。

「星霊の血を引く彼女は、幼い頃から周囲に特別視されてきた。恐れられ、また利用されてきたんじゃ。両親は彼女が5歳の時に、彼女を狙う者たちによって殺された」

衝撃的な話に、言葉を失った。

「それからは魔法議会の庇護下に置かれたが、それも彼女の力を利用するためじゃった。10歳で上級魔法を習得し、15歳で大魔導士の称号を得たエリシア様は、やがて人間社会を捨て、この森に隠遁したんじゃよ」

グランツの話を聞きながら、これまでのエリシアの言動が少しずつ理解できるようになった。彼女の冷たさは防御であり、孤独は自ら選んだ道だったのだ。

「なぜ僕を弟子にしたんだろう…」

「それはわしにも分からん」猫は首をかしげた。「だが、お前の中の星の加護がエリシア様の心に何かを呼び起こしたのは確かじゃ。彼女は変わった。お前が来てから」

その言葉が僕の心に深く沈んでいった。


書院への返答期限が迫った頃、事態は急転した。

ある雨の夜、城に一人の男が訪れた。

「久しぶりだな、エリシア」

黒い外套を身にまとった高貴な身なりの男性は、エリシアに向かって親しげに語りかけた。しかし、彼女の表情は一層冷たく固まっている。

「ヴァルガス伯爵。何の用だ」

「魔法議会の決定を伝えに来た。お前の力が必要なのだ」

エリシアと対峙する男—ヴァルガス・クロムウェル伯爵は、炎属性の大魔導士だと後に知った。彼はエリシアに向かって、にやりと笑った。

「それに、我々の婚約の話も進めねばならん」

婚約?私は驚いて二人を見た。エリシアの表情は硬く、怒りに震えているようだった。

「勝手に決めるな。議会にも、お前にも従う義理はない」

「星霊の血を引く最後の魔導士が、力を無駄にしてはならん。我がクロムウェル家との血の融合で、新たな魔導士の系譜を—」

「出ていけ!」

エリシアの怒声と共に、城内の空気が一瞬凍りついた。彼女の周囲に魔力が渦巻き、銀髪が宙に舞い上がる。

ヴァルガスは一歩も引かなかった。「考え直すといい。一週間後、改めて返事を聞きに来よう」

彼が去った後、エリシアは疲れたように壁に寄りかかった。

「先生…」

「ハル、お前は明日から王立魔法書院に行きなさい」

突然の言葉に驚いた。「でも、先生は?」

「私はここに残る。お前の才能は、ここにいては埋もれてしまう」

彼女は私に背を向けたまま言った。「…お前のためを思ってのことだ」

その夜、私は眠れなかった。エリシアの苦しみと、彼女を一人残して書院に行くことへの罪悪感で胸が締め付けられた。

星空の下、城の屋上で考え込んでいると、後ろから足音が聞こえた。

「眠れないのか」

振り返ると、エリシアが立っていた。普段の厳格な装いではなく、シンプルな白い寝間着姿。風に揺れる銀髪が月明かりに輝いていた。

「先生、僕は行きません。ここで修行を続けたいです」

「馬鹿を言うな。お前の将来を考えろ」

「先生の将来だって大事です!ヴァルガス伯爵との婚約なんて…」

エリシアはため息をついた。「あれは議会の策略だ。私の血を政治利用しようとしている」

「だったら余計に、先生を一人にはできません」

緊張した空気の中、私たちは星空を見上げていた。沈黙が流れた後、エリシアが静かに口を開いた。

「ハル、私は呪われているんだ」

「呪われている?」

「この星霊の血は、制御できない力を秘めている。感情が高ぶると、時に暴走する。だから人と距離を置いてきた。お前を弟子にしたのも、お前の星の加護が私の血と共鳴し、安定させるからだ」

彼女の告白に、胸が痛んだ。

「でも今は、お前自身の成長のために、私から離れるべきなんだ」

「僕は…先生と一緒にいたいです」

思わず口にした言葉に、エリシアの瞳が揺れた。

「ハル…」

その時、突然城が揺れ、爆発音が響いた。

「攻撃!?」エリシアが叫ぶ。

窓から見える城の正門には、黒い外套を着た魔道士たちが集まっていた。先頭に立つのは、ヴァルガス伯爵。

「エリシア・フォン・カイゼル!議会の命により、お前を拘束する!」

エリシアの表情が一瞬恐怖に歪み、すぐさま戦闘態勢に入った。「ハル、屋内に隠れていなさい」

「でも—」

「これは命令だ!」

不安を抱えながらも、私はエリシアの指示に従った。だが、窓の隙間から外の様子を見ていると、恐ろしい光景が広がっていた。

エリシアは圧倒的な魔力で複数の敵を相手にしていたが、ヴァルガスの策略なのか、彼女の魔力が徐々に弱まっていくのが見て取れた。

「星霊の血の弱点を突いた封印魔法か…」

グランツが私の足元で唸った。「このままでは危険じゃ」

「何か助ける方法は?」

「『星天の書』…エリシア様の部屋に隠されておる最高位の魔導書じゃ。だが、扱いが難しく—」

私は迷わず走り出した。エリシアの部屋に駆け込み、書棚の隠し扉を開けると、一冊の古い本が光を放っていた。

『星天の書』を手に取った瞬間、不思議な感覚が全身を包んだ。まるで本が私に語りかけてくるようだ。ページをめくると、見知らぬ文字が並んでいたにも関わらず、その内容が頭に流れ込んでくる。

「これは…」

星の加護と星霊の血の共鳴を利用した古代魔法。直感的に、私はその詠唱法を理解した。

城の中庭に戻ると、エリシアが魔力の網に捕らえられ、膝をついていた。ヴァルガスが勝ち誇った表情で近づいていく。

「覚悟しろ、エリシア!お前の血は我がものだ!」

その時、僕は本能的に『星天の書』に記された呪文を詠唱し始めた。

「星よ、導きの光となれ…天空の加護よ、我が身に宿れ…」

体から青い光が放たれ、エリシアの周りを包み込んだ。彼女の銀髪が風もないのに舞い上がり、緑の瞳が驚きに見開かれる。

「ハル…?その本は…」

「エリシア先生、僕と力を合わせてください!」

二人の間に光の糸が張り巡らされ、エリシアの周囲の封印が砕け散った。彼女の魔力が一気に解放され、その波動は攻撃者たちを吹き飛ばした。

ヴァルガスは怒りの表情を浮かべながら後退した。「こんなことが…星霊の血と星の加護の共鳴だと?」

「二度と近づくな、ヴァルガス」エリシアは凛とした声で警告した。「次は容赦しない」

敵は撤退し、城に静けさが戻った。

疲労から崩れ落ちそうになる僕を、エリシアがしっかりと支えてくれた。

「ハル…どうしてそんな危険なことを」

「先生を一人にできなかったから」

彼女の目に、初めて見る感情の揺らぎが浮かんだ。

「バカね…」

そう言いながらも、彼女は私を優しく抱きしめた。その温もりが、異世界で孤独だった僕の心を満たしていく。

これが、僕とエリシアの物語の始まりだった。師弟の絆を超えた、新たな感情の芽生えを、私たちはまだ言葉にする勇気を持てずにいた。


だが、星空の下で交わした約束は、これからの二人の運命を大きく変えていくことになる。


あれから約三年が経った。ヴァルガス伯爵の襲撃事件以降、エリシアも私も互いに感情を素直に伝えることができないまま、王立魔法書院へ移ることになった。エリシアは特別教授として、僕は10歳の天才魔法少年として。

初春の朝、王都アストラリオンの石畳が朝日に輝く中、僕たちは書院の巨大な門の前に立っていた。

「緊張するな」

珍しくエリシアが優しい声をかけてくれた。普段の厳しい指導者の顔ではなく、今日は少し柔らかな表情をしている。

「はい…でも、みんなと馴染めるか不安で」

王立魔法書院。魔法大陸最高峰の教育機関であり、五大属性の魔法塔が空に向かって聳え立つ荘厳な建築物だ。貴族の子弟や、特別な才能を持つ平民の子供たちが集まる場所で、僕のような「出自不明の少年」は相当珍しい存在だろう。

「お前の才能があれば問題ない。それに…」エリシアは言葉を切り、少し顔を背けた。「私がいる」

その一言が、不安な気持ちを和らげてくれた。

「お気をつけを、エリシア様」

グランツが私たちの足元で言った。黒猫は魔法書院の外に残り、城の管理をすることになっていた。

書院の中へ足を踏み入れると、そこには別世界が広がっていた。広大なホールの天井は星空を映し出し、床には魔法陣が精緻に描かれている。学生たちは様々な色の制服を着て行き交い、中には使い魔を肩に乗せている者もいた。

「お、エリシア先生、新入生を連れてきたのですね」

振り向くと、背の高い年配の男性が立っていた。半月型の眼鏡と白髪の髭が特徴的な、穏やかな表情の人物だ。

「ファウスト学長」エリシアは軽く会釈した。「こちらが私の弟子、サクラ・ハルだ」

「ようこそ、ハル君。君の評判は聞いているよ。物理演算魔法とかいう新しい魔法理論を構築しているそうじゃないか」

僕は恐縮して頭を下げた。「まだ未熟な理論ですが、少しずつ形にしています」

「謙遜する必要はない」エリシアが横から口を挟んだ。「彼の理論は革新的だ。従来の魔法常識を覆す可能性を秘めている」

先生が珍しく私を褒めるのに、少し照れくさくなった。

「それは楽しみだ」学長は微笑んだ。「では、入学式まで案内しよう」

華やかな入学式を経て、私の書院生活が始まった。エリシアは星霊魔法専門の特別教授として別棟に研究室を持ち、僕は一般の学生寮で生活することになった。寮で他の学生たちと暮らすのは初めての経験だった。

「君が噂の天才少年?私はリーゼル・ウィンドブルーム。風属性専攻の二年生よ」

寮の食堂で、明るい笑顔の少女が声をかけてきた。浅葱色の髪と澄んだ青い瞳を持ち、年の割に落ち着いた雰囲気を漂わせている。

「サクラ・ハルです。噂って…」

「エリシア教授の弟子なんて、書院中の話題よ!しかも物理演算とかいう新しい魔法理論を作ってるって」リーゼルは興味津々といった様子で僕の顔を覗き込んだ。「実は私、理論魔法にすごく興味があるの。今度、教えてくれない?」

彼女の明るさに少し圧倒されつつも、私は頷いた。「もちろん。でも、まだ完成していない理論だから…」

「大丈夫、研究中の方が面白いわ!」

こうして、僕は最初の友人を得た。リーゼルは風属性魔法の天才として知られる名家の娘だったが、身分を感じさせない親しみやすさがあった。

その日の夕方、エリシアの研究室を訪ねると、彼女は魔法の書物に囲まれて何かを調べていた。

「先生、今日はありがとうございました」

「ふむ、寮には馴染めたか?」彼女は顔を上げずに聞いた。

「はい。リーゼルさんという先輩が話しかけてくれて…」

「リーゼル・ウィンドブルーム…」エリシアは少し眉をひそめた。「彼女とは程々に。あまり近づきすぎるな」

「え?どうしてですか?」

「気が散る」彼女はきっぱりと言った。「お前はもっと研究に集中すべきだ」

僕は少し拍子抜けした。エリシアらしい反応だが、なぜか別の感情が混じっているようにも感じた。

「分かりました。でも、友達も作りたいです」

「…好きにしろ」

エリシアは本に視線を戻したが、その表情が少し硬くなったのが見て取れた。


書院での生活は予想以上に充実していた。午前中は一般の魔法理論の授業、午後は実践魔法の訓練、そして夕方からはエリシアの特別指導を受けた。夜は自分の物理演算魔法の研究に没頭する日々。

ある日の授業中、「星の塔」という古代遺跡について学んだ。

「大陸各地に点在する星の塔は、古代文明の遺産です」歴史学の教授が説明した。「各塔には異なる星の力が宿り、古代の魔法の秘密が眠っていると言われています」

それを聞いた私は、ふと思い出した。夢の中で時々見る女性—アストラという名の女神が、僕に告げていた言葉を。

「星の塔を巡り、真の力を解放せよ…」

授業後、その話をエリシアにすると、彼女は驚いた表情を見せた。

「アストラ…星の女神?」エリシアは考え込んだ。「星天の書にも、その名が記されている。お前が星の加護を持つ理由も、それに関係があるのかもしれない」

「先生は星の塔に行ったことがありますか?」

「北方の一つだけ。だが、入り口の封印を解くことができなかった」彼女は少し不機嫌そうに言った。「星霊の血だけでは足りなかったのだ」

「星の加護と星霊の血…両方必要なのかもしれませんね」

エリシアはしばらく黙って考え込み、急に立ち上がった。「ハル、近々、北方の星の塔へ行ってみよう。研究の一環として」

その言葉に、私の心は高鳴った。エリシアと二人きりで塔を探索する機会。それは師弟関係を超えた何かを感じ始めていた私にとって、特別な意味を持っていた。


学期が進むにつれ、私の「物理演算魔法」は少しずつ書院内でも注目を集めるようになった。物理法則を魔法式に組み込むことで、従来の魔法より効率的で予測可能な効果を生み出す私の理論は、一部の教授たちから高い評価を受けた。

だが、すべてが順調というわけではなかった。

「おい、平民の分際で調子に乗るなよ」

ある日、研究室から寮に戻る途中、数人の上級生に道を塞がれた。先頭に立つのは、赤褐色の髪を持つ貴族の少年、クロード・バーンハートだった。彼はヴァルガス伯爵の甥で、僕とエリシアに対して敵意を隠さなかった。

「エリシア教授に取り入って、特別扱いされているのが気に食わないんだよ」

僕はため息をついた。「僕は真剣に魔法を学んでいるだけだ。邪魔しないでくれないか」

「生意気な…」クロードが杖を取り出した瞬間、風が吹き抜けた。

「そこまでよ、クロード」

リーゼルが現れた。彼女の周りには風の魔法陣が展開されていた。

「ウィンドブルーム家の令嬢か…」クロードは渋々杖を下げた。「いいだろう、今日のところは見逃してやる」

彼らが去った後、リーゼルは心配そうに私を見た。

「大丈夫?」

「うん、ありがとう」

「気にしないで。貴族の子の中には、古い考えの人たちもいるから」彼女は励ますように肩を叩いた。「それより、星の塔に行くって本当?エリシア教授と」

「え?どうして知ってるの?」

「書院の噂よ」リーゼルは小声で続けた。「実は私も行きたいの。星の塔の風の力について研究しているから」

私は迷った。エリシアは二人きりで行くつもりだったはずだが、リーゼルも研究熱心な学生だ。

「先生に聞いてみるよ」

予想通り、エリシアはリーゼルの同行に難色を示した。

「必要ない。研究の邪魔になる」

「でも先生、リーゼルさんは風属性の専門家です。役に立つかもしれません」

エリシアは不満そうに唇を噛んだが、最終的には渋々同意した。「…わかった。だが、私の指示には絶対に従うこと」


北方の星の塔への旅の日、僕たちは書院の飛空艇に乗り込んだ。エリシアは黒のローブに身を包み、私とリーゼルは学生用の実習服を着ていた。

「星の塔は古代魔導文明の遺跡で、強力な魔法障壁に守られている」エリシアは飛空艇の窓から見える雪山を指さしながら説明した。「今回の目的は入口の封印を解くことと、内部の初期調査だ」

リーゼルは興奮した様子で頷いた。「風の塔と言われていますが、どんな秘密が眠っているのでしょうか?」

「それを確かめるのが今回の目的だ」

飛空艇が目的地に近づくにつれ、風の強さが増してきた。やがて、雪に覆われた山頂に、青白い水晶のような塔が見えてきた。

「あれが…星の塔」

息をのむほど美しい建造物だった。まるで氷で造られたように透き通り、先端は星型になっている。全体が淡く発光しており、周囲の雪景色に神秘的な雰囲気を醸し出していた。

飛空艇を安全な場所に着陸させ、私たちは塔に向かって歩き始めた。道のりは険しく、時折強風が吹き荒れる。

「この風…自然のものじゃない」リーゼルが言った。「魔法によって作られた防御機構ね」

彼女は杖を取り出し、風の流れを読み取るように目を閉じた。「こうすれば…」

リーゼルの詠唱により、私たちの周りに風の障壁が形成され、進みやすくなった。エリシアも彼女の手腕を認めるように小さく頷いた。

塔の入口に辿り着くと、巨大な扉が私たちを迎えた。扉には何か文字が刻まれている。

「古代魔法文字…」エリシアが近づいて読み取ろうとした。「星霊の血と星の加護が一つになる時、道は開かれる…か」

「先生と僕の力を合わせれば開くということですね」

エリシアは少し緊張した様子で頷いた。「試してみよう」

彼女が右手を、僕が左手を扉に当てた瞬間、不思議な感覚が全身を包み込んだ。エリシアの手から銀色の光が、僕の手から青色の光が放たれ、それらが混ざり合って扉の文字を照らし出した。

「開いた…」

重い扉がゆっくりと内側に動き、僕たちの前に螺旋階段が現れた。

「すごい…」リーゼルが感嘆の声を上げた。「二人の力が共鳴したのね」

塔の内部は予想を超える広さだった。中央の螺旋階段を取り囲むように、何層にも渡る書架や実験台、魔法陣が配置されている。すべてが完璧に保存されており、まるで時が止まったかのようだった。

「これは…古代の研究施設?」私は驚きの声を上げた。

エリシアは慎重に周囲を観察していた。「恐らく、星霊魔法の研究拠点だったのだろう」

僕たちは階段を上りながら、各層を調査していった。第三層に到達した時、リーゼルが風の流れを感じ取り、ある部屋へと導いた。

「ここに何かありそう…」

部屋に入ると、中央に台座があり、その上に小さな水晶球が置かれていた。水晶球の中では、小さな竜巻が絶えず渦巻いている。

「風の結晶…」リーゼルが息を呑んだ。「伝説の風の力が封じられた宝物!」

彼女が近づこうとした瞬間、エリシアが彼女の腕を掴んだ。「待て。罠かもしれない」

慎重にエリシアが魔法で調べると、確かに触れると発動する防御機構が仕掛けられていた。

「どうすれば安全に取れますか?」リーゼルが尋ねた。

「防御魔法を解除する必要がある。だが…」

僕は周囲の壁に描かれた図形に気づいた。それは魔法陣のようだが、通常のものとは少し異なる。よく見ると、それは物理的な運動方程式に似ていた。

「先生、これは…」

エリシアが僕の指す方向を見て、頷いた。「物理法則と魔法の融合…お前の専門分野だな」

僕は壁の図形を解読しながら、その仕組みを理解していった。それは風の動きを物理法則で制御する魔法陣だった。

「物理演算魔法で解除できるかもしれません」

僕は杖を取り出し、独自の詠唱を始めた。物理学の公式を魔法言語に変換し、風の力を操作する呪文を組み立てる。

「風の粒子の運動エネルギーを…反転させて…」

僕の詠唱が終わると、部屋の空気が一瞬静止し、次の瞬間、水晶球を覆っていた風の障壁が消えた。

「見事だ、ハル」エリシアが珍しく笑顔を見せた。

リーゼルは興奮した様子で水晶球を慎重に手に取った。「これで風属性魔法の研究が飛躍的に進むわ!」

僕たちは他の層も調査し、様々な古代の魔法書や道具を発見した。エリシアは特に星霊魔法に関する書物に興味を示し、いくつかを持ち帰ることにした。

最上階に辿り着くと、そこには大きな観測室があった。天井はガラスのようなもので作られ、満天の星空が見えるようになっている。中央には巨大な魔法陣が床に描かれていた。

「ここが塔の中枢か…」エリシアが呟いた。

僕はふと、魔法陣の中央に立ちたいという衝動に駆られた。足を踏み入れると、魔法陣が淡く光り始め、僕の体から青い光が放たれた。

「ハル!」エリシアが心配そうに叫んだ。

だが、不思議なことに痛みはなく、むしろ心地よい感覚が全身を包み込んだ。そして、頭の中に声が響いた。

「星の加護を持つ者よ…あと四つの塔を巡り、真の力を解放せよ…」

アストラの声だった。

光が消えると、私は魔法陣の中央に立ったままだった。

「何があった?」エリシアが私のもとに駆け寄った。彼女の表情には珍しく不安の色が浮かんでいた。

「大丈夫です。アストラという女神の声が聞こえて…」私は言葉を選びながら説明した。「あと四つの塔を巡れというメッセージでした」

エリシアの表情が複雑に変わった。「アストラ…星の女神…星天の書にも記されている存在だ」

「五つの塔を巡ることで何かが起きるのでしょうか?」

「わからない。だが、星霊の血と星の加護の秘密に関わることは確かだろう」

僕たちは十分な調査を終えた後、飛空艇へと戻った。リーゼルは風の結晶に興奮し、研究計画を熱心に語っていた。エリシアは黙って考え込みながら、時折私を見つめていた。

帰路の飛空艇の中、リーゼルが休息を取っている間、エリシアが私に近づいてきた。

「ハル、お前は本当に不思議な存在だ」

夕日に照らされた彼女の横顔は、いつもより柔らかく見えた。

「星の加護…それがお前をこの世界に導いた理由なのだろうか」

「先生は僕がこの世界の人間じゃないと気づいていたんですか?」

エリシアはゆっくりと頷いた。「最初から。お前の話し方や知識は、この世界のものではなかった」

「でも何も言わなかった」

「お前自身が語る時を待っていた」彼女は静かに言った。「それに…お前が何者であろうと、私にとっては変わらない」

その言葉に、私の胸が熱くなった。

「エリシア先生…」

言葉に詰まる私に、彼女は少し赤くなった頬を背けた。

「気にするな。ただの事実を述べただけだ」

そう言いながらも、彼女の手が僕の手に触れ、そっと握りしめられた。


書院に戻った後、僕たちの発見は大きな話題になった。特に僕の物理演算魔法が古代の魔法と共通点を持つという発見は、学術界に衝撃を与えた。

ファウスト学長は僕たちを呼び、称賛の言葉をかけた。「見事な成果だ。特に君の物理演算魔法は、我々の常識を覆す可能性を秘めている」

だが、すべての人が僕たちの成功を喜んだわけではなかった。

「面白い展開だな」

ある日、研究室を出ると、廊下にヴァルガス伯爵が立っていた。彼は魔法議会の会合で書院を訪れていたのだ。

「伯爵閣下」僕は警戒しながら挨拶した。

「星の塔を開けたそうだな。エリシアとお前の…特別な力でね」彼の笑みには冷たさがあった。「議会も大いに関心を持っている」

「何が目的ですか?」

「目的?」ヴァルガスは肩をすくめた。「星霊の血の研究さ。エリシアの力をもっと活用すべきだという声が議会では高まっている」

「エリシア先生は実験台ではありません」

「だが彼女の力は貴重すぎる」ヴァルガスは低い声で続けた。「彼女にも、お前にも選択肢はないよ。次に発見したものは、すべて議会に報告することだ」

その脅しとも取れる言葉に、怒りが込み上げてきた。だが、この場で敵対することは得策ではない。僕は一歩下がった。

「議会の意向は学長から伝えていただきます」

ヴァルガスは面白そうに笑った。「賢明だ。だが覚えておけ、星の力は個人のものではない。大陸全体の資産だ」

彼が去った後、すぐにエリシアに報告した。彼女の表情は固く、怒りに震えているようだった。

「予想通りだ。議会は私たちの研究を監視している」

「どうすれば…」

「今は従うふりをしながら、次の行動を慎重に計画しよう」エリシアは決意を込めた声で言った。「残りの塔についても調査を続ける。だが、表向きは議会の管理下で行うことにする」

その夜、私たちは星天の書を再び調べ、残りの塔の位置を特定した。東の「火の塔」、南の「水の塔」、西の「土の塔」、そして中央に位置する「光の塔」。すべてを巡ることで、何らかの真実にたどり着くはずだった。

「準備ができ次第、東の塔へ向かおう」エリシアは言った。「だが今度は…」

「リーゼルさんは?」

エリシアは少し躊躇った後、「今回は私たち二人だけで行く。これは星霊の血と星の加護に関わる問題だ」と言った。

僕は内心ほっとした。エリシアと二人きりで過ごす時間は、今や僕にとって何よりも大切だった。二人の間に芽生えた感情は、まだ言葉にはしていなかったが、確かに存在していた。

その感情に名前をつける時が、いつか来るのだろうか。


月明かりの差し込む書院の屋上で、僕は星空を見上げていた。今夜は特別な夜。エリシアの誕生日だった。

「ここにいると思った」

振り返ると、エリシアが立っていた。普段の厳格な装いではなく、シンプルな白い衣装を身につけている。月明かりに照らされた姿は、まるで妖精のようだった。

「先生、お誕生日おめでとうございます」

「覚えていたのか」彼女は少し驚いたようだった。

「もちろんです。それに…プレゼントがあります」

僕は用意していた小さな箱を取り出した。中には、前世の知識と魔法を組み合わせて作った特別なものが入っている。

「何だ?」

「開けてみてください」

箱を開けると、中には小さな水晶球があった。エリシアが不思議そうに手に取ると、僕は杖を取り出し、特別な詠唱を始めた。

「星の記憶よ、よみがえれ…光の粒子よ、踊れ…」

水晶球が淡く光り始め、やがてその周りに美しい星空が投影された。それは通常のアストラリアの星空ではなく、前世の地球から見える星座だった。

「これは…」

「僕の故郷の星空です」

満天の星が二人を包み込み、北斗七星、オリオン座、カシオペア座…僕が幼い頃、父と共に観測した星々が、エリシアの周りを優しく照らしていた。

「美しい…」彼女の目に、涙が光った。「こんな星があるのか」

「はい。僕の前世の記憶から再現しました。物理演算魔法と光の屈折理論を組み合わせて」

エリシアはしばらく無言で星空を見上げていた。やがて、彼女は静かに口を開いた。

「ハル、私に話してくれないか?お前の本当の故郷のことを」

その言葉に、僕は深く息を吸い込んだ。そして、これまで誰にも話せなかった真実を、彼女に打ち明けた。地球という惑星のこと、物理学を学んでいた大学生だったこと、交通事故で命を落としたこと…そして、アストラという女神に導かれ、この世界に転生したこと。

エリシアは黙って聞いていた。話し終えると、彼女はゆっくりと私の頬に手を添えた。

「ずっと、言えなかったのね」

「はい…信じてもらえないかと思って」

「私は信じる」彼女はまっすぐに私の目を見た。「お前の中にある知識が、この世界のものではないことは分かっていた。だが、それがお前という人間の価値を変えはしない」

彼女の言葉に、私の目から涙があふれた。

「先生…」

「エリシア」彼女は小さく微笑んだ。「ここでは、そう呼んで」

「エリシア…」

星空の下、僕たちの距離は少しずつ縮まっていった。彼女の緑の瞳に映る前世の星々。二つの世界を繋ぐこの瞬間が、僕にとってはあまりにも尊かった。

「ありがとう、ハル」彼女は静かに言った。「生まれてから初めて、こんなに美しい誕生日を過ごしている」

この時、僕たちの間に流れる空気は、確かに師弟関係を超えたものだった。彼女の銀色の髪が月明かりに照らされ、風にそよぐ。

「エリシア…」

僕は勇気を出して彼女の手を取った。小さな震えが彼女の指から伝わってくる。

「僕は…」

その時、突然の物音が私たちを現実に引き戻した。

「失礼、邪魔したかしら?」

振り向くと、リーゼルが申し訳なさそうな表情で立っていた。

「ウィンドブルーム嬢」エリシアは素早く感情を押し殺し、普段の冷たい表情に戻った。「何の用だ?」

「ファウスト学長がお二人を探していました。議会からの緊急の伝達があるそうです」

僕とエリシアは視線を交わし、屋上を後にした。特別な瞬間は中断されたが、二人の間に生まれた感情は、もう隠せないものになっていた。


東の塔への旅立ちを翌週に控えた午後、ファウスト学長の執務室に呼び出された僕たちを待っていたのは、予想外の知らせだった。

「魔法議会からの命令だ」学長は重々しい表情で言った。「君たちの東の塔探索には、議会の監視役として誰かが同行する」

エリシアの表情が険しくなる。「監視役?」

「そうだ」学長は困ったように髭をなでた。「議会は星の塔の発見を重要視している。特に君たち二人だけで行動することに…懸念を示しているようだ」

「誰が来るんです?」私が尋ねると、学長は窓の外を指さした。

書院の中庭に降り立ったばかりの馬車から、見覚えのある人物が降りてきた。

「ヴァルガス・クロムウェル伯爵…」エリシアが低い声で言った。

「彼一人ではない」学長が続けた。「リーゼル・ウィンドブルーム嬢も同行する。風の塔での功績が評価され、議会は彼女の才能に注目している」

私はエリシアの反応を窺った。彼女の表情は硬く、怒りを抑えているように見えた。

「断ることはできないのか?」

「残念ながら」学長は首を振った。「これは議会の全会一致の決定だ」

執務室を出た後、エリシアは廊下で足を止めた。

「計画を変更する必要がある」彼女は小声で言った。「ヴァルガスは間違いなく何か企んでいる」

「でも、監視の目があっては…」

「そうだ」彼女は周囲を確認してから続けた。「だから私たちは先に行く。今夜、こっそりと」

「え?」

「準備をしておけ。夜中に研究室に来るように」

エリシアの決断力に驚きながらも、僕は頷いた。


その夜、僕は荷物をまとめ、人目を避けながらエリシアの研究室へと向かった。彼女はすでに出発の準備を整えていた。

「計画は単純だ」彼女は小さな地図を広げた。「魔法書院の裏門から出て、森を抜け、小さな港町まで行く。そこから東の国、ルーンガルドへ向かう船に乗る」

「これがばれたら大変なことになりますよ」

「それは承知している」彼女は真剣な表情で私の目を見た。「だが、ヴァルガスの監視下では、星の塔の真実に近づくことはできない。それに…」

彼女は少し言葉を切った。「私たち二人だけの時間が必要だ」

その言葉に、僕の心拍数が上がった。

「わかりました。一緒に行きます」

僕たちは静かに書院を抜け出し、夜の闇に紛れて森へと向かった。エリシアは魔法で僕たちの気配を隠し、追跡を防ぐ結界も張った。二人でひっそりと旅立つこの状況は、危険を孕みながらも、どこか冒険的で心躍るものだった。

夜明け前に港町に到着し、ルーンガルドへの商船に乗り込んだ。船は早朝、霧の中を出港した。

「これで少しは時間が稼げる」エリシアは海を見つめながら言った。

「ヴァルガスはすぐに追ってくるでしょうね」

「間違いなく。だが、私たちが先に東の塔に到達すれば、少なくともその秘密を探る時間がある」

船の甲板に立つエリシアの銀髪が海風に揺れる。朝日に照らされた彼女の横顔は、普段の厳しさが薄れ、若々しく見えた。

「エリシア」いつの間にか「先生」という言葉が消えていた。「昨夜の続きを…」

彼女は少し赤くなった頬を隠すように顔を背けた。「今はその話をする時ではない」

そう言いながらも、彼女の手が僕の手に触れ、そっと握られた。言葉はなくとも、二人の気持ちは通じ合っていた。

三日間の船旅の後、僕たちはルーンガルドの主要港町、フレイムポートに到着した。東の国は火山地帯に位置し、至る所から湯気が立ち上っていた。赤茶色の建物が立ち並び、鍛冶屋や窯元が多い活気ある街だった。

「火の塔はここから二日行程だ」エリシアは地図を見ながら言った。「山岳地帯を通るので、馬は使えない。徒歩での移動になる」

僕たちは必要な装備を整え、フレイムポートを後にした。山道は険しく、時折火山の小さな噴火による地震もある危険な道のりだった。だが、エリシアと二人きりで過ごすこの時間は、僕にとって何物にも代えがたい価値があった。

二日目の夕方、遂に火の塔が見えてきた。北の「風の塔」が氷のような青白い色だったのに対し、火の塔は赤く輝く水晶のような外観をしていた。塔の周囲には溶岩が流れ、自然の要塞を形成している。

「入口にたどり着くのが難しそうだ」

僕は溶岩の流れを見て呟いた。エリシアは考え込み、「水属性の魔法で道を作れるかもしれない」と言った。

溶岩の前で詠唱を始めるエリシアの姿は堂々としていた。彼女の魔法で溶岩が固まり、僕たちは安全に塔の入口まで進むことができた。

風の塔と同様、火の塔の扉にも古代の文字が刻まれていた。

「ここでも星霊の血と星の加護が必要か」

僕とエリシアは手を取り合い、扉に触れた。銀色と青色の光が混ざり合い、扉が開いていく。

「今回はスムーズだな」

火の塔の内部は、風の塔とは全く異なる造りだった。中央には大きな炉のようなものがあり、壁には火の動きを研究したと思われる図や文字が刻まれている。

「火の制御に関する研究施設だったようだ」

エリシアは壁の文字を読み解きながら説明した。「古代人は火を操る技術を極めようとしていた」

僕たちは塔を上っていき、様々な実験装置や記録を見つけた。僕は物理演算魔法の視点から、エリシアは星霊魔法の視点から、それぞれ古代の知識を解読していった。

最上階に辿り着くと、風の塔と同様の観測室があった。中央の魔法陣は赤く輝いており、僕が中に入ると反応した。

再びアストラの声が頭の中に響いた。

「二つ目の星の力を受け取りなさい…あと三つ…」

魔法陣から赤い光が立ち上り、僕の体内に吸収されていく感覚があった。完了すると、僕の手には小さな赤い結晶が現れていた。

「火の星晶…」エリシアが驚いた声で言った。「伝説の宝物だ」

「これが星の力…」

僕たちが発見の喜びに浸っていた時、塔の入口から物音がした。

「やはりここにいたか」

振り返ると、ヴァルガスが数人の魔導士を連れて立っていた。その背後にはリーゼルの姿も。

「追跡魔法で見つけるのに、少し手間取ったぞ」ヴァルガスは冷笑を浮かべた。「勝手な行動をとるとは、議会を軽視しているようだな」

エリシアは身構えた。「私たちの研究に、お前の干渉は必要ない」

「干渉?違う、これは管理だ」ヴァルガスは一歩前に出た。「星の加護と星霊の血の秘密は、個人のものではない。大陸全体の資産だ」

彼の視線が私の手にある火の星晶に向けられた。「その結晶を渡せ」

「渡すわけにはいきません」僕はきっぱりと言った。「これは星の力を理解するために必要なものです」

「ならば力づくで頂こう」

ヴァルガスが杖を取り出した瞬間、エリシアが私の前に立ちはだかった。

「触れさせはしない」

緊張が高まる中、予想外の声が響いた。

「待って!」

リーゼルが前に出てきた。「伯爵様、彼らを攻撃すれば、この貴重な遺跡が損傷するかもしれません。それに…」

彼女は私とエリシアの方を見た。「私たちは同じ研究者じゃないですか?協力して真実を探るべきです」

リーゼルの言葉に、場の空気が少し和らいだ。

ヴァルガスは不満そうに唇を噛んだが、「研究結果の共有と、議会への定期報告という条件で、今回は見逃そう」と言った。

僕たちは渋々その条件を受け入れた。他に選択肢はなかった。

塔を後にする際、リーゼルが私に近づいてきた。

「ごめんなさい、ハル」彼女は小声で言った。「伯爵に協力したわけじゃないの。でも書院を抜け出したあなたたちを見つけた時、議会が動き出すのが見えていたから…」

「わかってるよ、リーゼル」僕は彼女に微笑みかけた。「君が味方だってこと、信じてる」

彼女は安堵の表情を見せたが、その瞳には何か複雑なものが宿っていた。


ルーンガルドからの帰路、ヴァルガスの監視の目があるため、僕とエリシアはほとんど二人きりで話す機会がなかった。だが、時折交わされる視線には、言葉以上の思いが込められていた。

王立魔法書院に戻ると、僕たちの無断離脱と火の塔探索について、厳しい叱責を受けた。特にファウスト学長は心配と怒りが入り混じった表情で、僕たちを見つめていた。

「危険な行動だった」学長は疲れた様子で言った。「だが、火の星晶の発見は素晴らしい功績だ。議会も、その点については評価している」

「星晶は安全に保管されるのでしょうか?」僕は心配そうに尋ねた。

「ああ、書院の最深部の金庫に」学長は頷いた。「君とエリシア教授しか触れられないように、特別な結界も張っておく」

その言葉に少し安心した。

「次の塔への探索は?」

「南の水の塔だ」学長は地図を指さした。「だが今度は、正式な書院の探索隊として向かうことになる。ヴァルガス伯爵とリーゼル嬢も同行する」

エリシアは不満そうな表情を浮かべたが、異議を唱えなかった。この状況では従うしかなかった。

その夜、僕はエリシアの研究室を訪ねた。彼女は古代の書物を読みながら、火の星晶についての考察を書き留めていた。

「何か分かりましたか?」

「星晶は星の力の結晶化した形だ」彼女は顔を上げずに言った。「五つ集めると、何らかの力が解放されるらしい」

「アストラが言っていた『真の力』ですね」

エリシアはため息をついた。「ハル…私は不安だ」

珍しく弱気な彼女の言葉に、私は驚いた。

「不安?」

「ヴァルガスと議会が、この力を手に入れようとしている。もし彼らが悪用すれば…」

僕は彼女の側に座り、そっと肩に手を置いた。「僕たちが先に真実を突き止めればいい」

エリシアは疲れた表情で私を見つめた。「ハル、お前は本当に心強い存在だ」

「エリシア…」

窓から差し込む月明かりの中、彼女の緑の瞳が美しく輝いていた。あの夜、屋上で中断された瞬間を思い出す。

「あの時の続きを…」

彼女はゆっくりと頬を赤らめた。「ここは…」

「誰も来ません」僕は彼女の手を取った。「僕の気持ちを伝えたいんです」

「気持ち…」

「エリシア、僕はあなたを…」

その時、突然ノックの音が響いた。

「エリシア教授?」リーゼルの声だった。

エリシアは素早く私から距離を取り、「入りなさい」と声をかけた。

リーゼルが入ってきて、二人の様子を見て少し戸惑ったような表情を見せた。「すみません、お二人の大事な話の最中だったでしょうか…」

「いいえ、何でもないわ」エリシアは冷静に答えた。「何かあったのか?」

「南の塔への出発準備について、ファウスト学長が明日の会議に来るようにとのことです」

リーゼルが去った後、再び二人きりになったが、先ほどの雰囲気はもう戻らなかった。エリシアは書類の整理を始め、「明日は忙しくなる。早めに休むといい」と言った。

僕は名残惜しく研究室を後にした。告白のタイミングは、また失われてしまった。


南の塔への探索は、正式な書院の遠征として準備が進められた。僕とエリシア、ヴァルガス、リーゼル、そして他の研究者や警備の魔導士たちを含む総勢15人の大所帯となった。

出発の朝、学院の中庭は活気に満ちていた。大型の飛空艇が待機し、遠征隊のメンバーたちが最後の準備を整えていた。

「ハル、準備はいいかね?」ファウスト学長が近づいてきた。

「はい、万全です」

「君とエリシア教授の力が、今回も鍵となるだろう」学長は真剣な表情で言った。「だが気をつけたまえ。水の塔は海の中にあると言われている。危険も多いはずだ」

僕が頷くと、学長は少し声を落として続けた。「それに…ヴァルガス伯爵の動向にも注意した方がいい」

ヴァルガスは遠くから僕たちを観察しており、その視線には計算高さが宿っていた。

飛空艇に乗り込む際、エリシアが私の隣に来た。「ハル、何があっても私の近くにいるように」

彼女の真剣な表情に、僕は「わかりました」と答えた。

三日間の飛行の後、僕たちは南の大海「蒼穹の海」に到着した。海岸線に張られたベースキャンプから、伝説の水の塔を探すことになった。

「古文書によれば、満月の夜に海面から姿を現すという」エリシアは探索会議で説明した。「今夜がちょうど満月だ」

夕暮れ時、私たちは海岸に集まった。満月が地平線から昇り始めると、海面が不思議な青い光を放ち始めた。

「来るぞ…」

海中から巨大な塔が姿を現し始めた。青い水晶のような外観は、月光を受けて神秘的に輝いていた。塔の周りには水のカーテンのようなものが張られ、入口を守っているようだった。

「水の塔…」リーゼルが感嘆の声を上げた。

ヴァルガスは目を細め、「さっそく入るぞ」と命じた。

小型のボートで塔に近づくと、水のカーテンが立ちはだかった。他の魔導士たちが様々な魔法を試みたが、カーテンを突破することはできなかった。

「星霊の血と星の加護が必要なのだろう」エリシアが僕に視線を送った。

僕たちは皆の見守る中、一緒に水のカーテンに手を伸ばした。銀色と青色の光が混ざり合い、カーテンが二人のために開いた。

「驚くべき光景だ」ヴァルガスが呟いた。「二人の力の共鳴…」

塔の内部は幻想的な青い光に包まれていた。床は透明で、海の生き物が泳いでいるのが見える。壁には水流の動きを研究したと思われる図や装置が並んでいた。

探索隊は二手に分かれ、塔の各階を調査することになった。僕とエリシアは最上階を、ヴァルガスとリーゼルたちは下層階を担当した。

上層階へと上っていく途中、エリシアが不意に足を止めた。

「ハル、私は思うのだが…」

「何ですか?」

「この力…星の力は、何のために残されたのだろう」彼女は物思いにふける表情で言った。「単なる知識や力ではなく、何か目的があるように思えてならない」

僕も同じことを考えていた。「アストラが言っていた『真の力を解放せよ』という言葉…それが何を意味するのか」

二人で黙考していると、不意に塔が揺れ始めた。

「何が!?」

「満月の時間が限られているのかもしれない」エリシアが急いだ。「最上階へ行こう」

僕たちは階段を駆け上り、最上階の観測室にたどり着いた。中央には青く輝く魔法陣があり、天井からは月明かりが差し込んでいた。

僕が魔法陣の中に入ると、またもアストラの声が聞こえてきた。

「三つ目の星の力を受け取りなさい…残るは二つ…」

青い光が僕の体内に流れ込み、手には青い星晶が現れた。

「これで三つ目だ」エリシアが近づいてきた。「あと二つで…」

その時、後ろから拍手の音が聞こえた。振り返ると、ヴァルガスが立っていた。

「見事な光景だ」彼は冷笑を浮かべた。「しかし、今回はその星晶をいただこう」

彼の背後には数人の魔導士が控えていた。リーゼルの姿はなかった。

「どういうつもりだ、ヴァルガス」エリシアが身構えた。

「議会は決定した」彼はゆっくりと歩み寄ってきた。「星の力は管理下に置かれるべきだと。特に、不安定な星霊の血を持つ者と、正体不明の少年の手に委ねるには危険すぎる」

「星晶は僕とエリシアにしか使えません」私は冷静に言った。

「それは研究すれば解明できる」ヴァルガスの目が鋭く光った。「さあ、大人しく渡すんだ」

エリシアが私の前に立ちはだかった。「下がれ、ヴァルガス。私の力を見くびるな」

緊張が高まる中、塔が再び大きく揺れ始めた。

「時間切れだ」ヴァルガスが杖を構えた。「力づくでも奪い取る!」

炎の魔法が放たれる瞬間、水柱が彼らを押し流した。

「早く!」

振り向くと、リーゼルが駆け込んできた。「塔が海中に戻り始めています!急いで脱出を!」

「リーゼル…」

「説明は後で!」彼女は急かした。「今は逃げて!」

僕たちは急いで階段を駆け下り、出口を目指した。塔はすでに半分が水中に沈みかけており、階段には海水が流れ込んでいた。

「間に合わない!」

その時、エリシアが杖を取り出し、「私に触れていろ」と言った。彼女が詠唱を始めると、私たちの周りに水の結界が形成された。

「水中でも呼吸できる結界よ」リーゼルが驚いた声を上げた。

塔が完全に海中に没する中、私たちは結界に守られながら、海を通って岸に戻ることができた。

浜辺に這い上がると、他の探索隊員たちが心配そうに駆け寄ってきた。ヴァルガスの姿はなかった。

「伯爵たちは?」ファウスト学長が尋ねた。

「恐らく別の脱出手段を使ったのでしょう」リーゼルが答えた。「彼は優秀な魔導士ですから」

脱出の混乱が収まった後、リーゼルは私たちに説明してくれた。

「ヴァルガスに協力するふりをしていたの」彼女は申し訳なさそうに言った。「彼が星晶を強制的に奪おうとしていると気づいたから、少し…邪魔をしただけ」

エリシアは彼女をじっと見つめた後、珍しく柔らかな表情で「礼を言う」と言った。

キャンプに戻った夜、僕はテントの外で星空を見上げていた。青い星晶が手の中で静かに脈動している。

「眠れないのか?」

エリシアが近づいてきた。彼女の銀髪が月明かりに輝いている。

「少し考え事をしていて」

「今日は危なかったな」彼女が隣に座った。「ヴァルガスの動きは予想以上に早かった」

「リーゼルのおかげで助かりました」

「そうだな」エリシアはしばらく黙って星空を見上げていた。「ハル…あと二つの塔で、すべてが明らかになる」

「すべてが…ですか?」

「星霊の血の秘密も、お前の星の加護の目的も」彼女はゆっくりと僕の方を向いた。「そして…私たちの運命も」

その言葉に、僕は勇気を出して彼女の手を取った。「エリシア、僕はもう決めています」

「決めた?」

「どんな真実が待っていようと、僕はあなたと共にいたい」

月明かりの下、エリシアの顔が赤く染まるのが見えた。彼女はゆっくりと僕に近づき、初めて自分から私の手を握り返した。

「ハル…私も同じだ」

その瞬間、僕たちの周りの空気が変わった。波の音だけが響く静かな浜辺で、僕たちは言葉以上のものを交わしていた。エリシアの緑の瞳に映る月明かり。彼女の銀髪の香り。

少しずつ縮まる距離の中で、僕は彼女の唇に自分の唇を重ねた。一瞬の躊躇の後、彼女も応え、二人の間に芽生えた感情がついに形になった瞬間だった。

キスを終えた後も、私たちはしばらく抱き合ったまま、言葉を交わさなかった。心の中で育まれてきた思いが、今や疑いようのない確かなものとなった。

「ハル…」彼女が小さな声で言った。「これは師弟の間では許されないことだ」

「僕たちはもう、単なる師弟ではないはずです」

エリシアはゆっくりと頷いた。「そうだな。私たちは…」

言葉を探すように彼女は空を見上げた。「運命で結ばれた者たちだ」

夜風が二人を包み込み、星々が僕たちの新たな誓いを見守っているようだった。

「次の塔へも、一緒に行こう」私は彼女の手を強く握った。「そして真実を見つけ出そう」

「ああ」エリシアは初めて見るほど柔らかな笑顔を見せた。「必ず」

二人の前に広がる未知の道のりは、まだ多くの試練を秘めているかもしれない。だが今、僕たちは互いの力となり、共に進む覚悟ができていた。互いの手を握りしめながら、僕たちは星空の下で静かに未来を誓い合った。


書院に戻った僕たちを待っていたのは、予想外の事態だった。ヴァルガスの報告により、魔法議会は星晶の研究管理体制を一層強化すると決定。僕とエリシアは実質的な監視下に置かれることになったのだ。

「これでは西の塔への探索も難しくなる」

エリシアの研究室で、僕たちは頭を抱えていた。研究室には常に議会派遣の監視役が外に立っており、自由な行動が制限されていた。

「何とかして、監視の目を逃れる方法を…」

その時、ノックの音がして、リーゼルが入ってきた。監視役に何か言い訳をしたのか、彼女は一人だった。

「大変なことになってるわね」リーゼルは小声で言った。「でも、助けになれるかもしれない」

彼女は袖から一枚の古い羊皮紙を取り出した。

「これは風の塔で見つけた古文書のコピー。西の塔への別ルートが記されているわ」

エリシアと僕は興味深く羊皮紙を見た。そこには確かに、西の「土の塔」への地下通路についての記述があった。

「王立魔法書院の地下深くに、古代の通路が…」エリシアが呟いた。

「ええ、書院が建てられたのは、古代文明の遺跡の上なの」リーゼルは説明した。「この通路は何百年も使われていないはず」

僕は希望を見出した。「これなら監視の目を逃れて西の塔に行けるかもしれない」

エリシアは慎重な表情を見せた。「危険は伴うだろうが、他に選択肢はない」

リーゼルは続けた。「私も同行するわ。風属性魔法は地下道での探索に役立つはず」

「ありがとう、リーゼル」僕は心から感謝した。

「でも、どうやって監視を振り切るの?」

「それについては…」エリシアが小さく微笑んだ。「アイデアがある」


二日後の深夜、僕たちの計画が実行された。エリシアが開発した特殊な幻影魔法により、研究室には私たちそっくりの幻影が残され、監視役を欺くことに成功。リーゼルの協力もあり、三人は書院の地下へと潜入した。

「1500年前の地図だから、正確かどうか…」

リーゼルが懐疑的に呟きながら、古い羊皮紙を照らしていた。魔法の灯りだけが、狭い地下通路を照らしている。

「このままいけば、西の山脈の下を通って、土の塔近くに出られるはず」

通路は想像以上に長く、時折崩れかけている箇所もあった。エリシアの魔法で補強しながら、三人は慎重に進んだ。

僕の手には、これまで集めた三つの星晶—風、火、水の結晶—が入った袋があった。それらが微かに共鳴し合い、前方へと私たちを導いているようだった。

「おかしいな…」三日目の朝、リーゼルが立ち止まった。「地図によれば、もう出口に近いはずなのに…」

行く手を阻むのは、大きな岩の壁。どこにも通路の続きはない。

「行き止まり?」

エリシアは壁に手をかざした。「いや、これは…魔法の障壁だ」

彼女の言葉通り、壁は触れると微かに波打ち、幻影であることがわかった。だが、通り抜けることはできない。

「星晶を使ってみよう」

僕は三つの星晶を取り出し、壁に向かって掲げた。風、火、水の結晶が同時に輝き、壁に反応する。光の筋が走り、幻影の壁が溶けるように消えていった。

「開いた…」

壁の向こうは、広大な地下空間だった。眩い緑の光に満ちており、中央には巨大な樹が一本、天井まで伸びていた。その樹は、まるで塔のように見える。

「土の塔…樹の姿をしているのね」リーゼルが感嘆の声を上げた。

地下空間は、地上の森を思わせる環境だった。小さな生き物たちが草の間を動き回り、清らかな水の流れもある。

「古代人は、地下に理想的な生態系を作り出したのか」エリシアは驚きの表情で周囲を見回した。

僕たちは巨大な樹—土の塔—に近づいた。幹には入口らしきものがあり、その前には土の結晶で作られた門が立っていた。

「これも星霊の血と星の加護が必要なのでしょうね」

エリシアと僕は手を取り合い、門に触れた。銀色と青色の光が混ざり合い、門が開いていく。

塔の内部は、樹の中心を螺旋状に上る道になっていた。壁には植物の生命力や大地の力を研究した痕跡が残されている。

「生命の神秘を探求した場所なのね」リーゼルが壁の図を見つめた。

三人で上っていくと、途中で不思議な種子の保管庫や、植物を操る魔法の研究室などを発見した。最上階は、予想通り観測室になっていた。

中央の魔法陣は緑色に輝き、僕が入ると反応した。

「四つ目の星の力を受け取りなさい…残るは一つ…」

アストラの声と共に、緑の光が私の体内に流れ込み、手には緑の星晶が現れた。

「あと一つで完成ね」リーゼルが興奮した様子で言った。

エリシアは少し心配そうな表情を見せた。「最後の光の塔は、最も中央に位置し、最も探索が難しいと言われている」

「どうして?」

「光の塔は、時間の流れが異なると言われているからだ」彼女は静かに説明した。「入れば、外の世界より速く時間が過ぎる…または遅く過ぎる」

その謎めいた言葉が、私の心に不安を呼び起こした。

「とにかく、まずは書院に戻ろう」リーゼルが言った。「長く姿を消せば、疑われるわ」

僕たちは来た道を引き返し始めた。だが、地下通路の入口近くまで来たとき、前方から足音が聞こえてきた。

「誰かが来る…」

三人は身を隠し、様子を見守った。通路に現れたのは、ヴァルガスとその配下の魔導士たち。

「彼らがどうして…」

「私たちの行動を予想していたのね」リーゼルが小声で言った。

「別ルートで戻るしかない」エリシアは決断した。

僕たちは来た道とは別の分岐路を選び、迂回して書院に戻ることにした。だが、その道はさらに古く、時折崩れかけていた。

「気をつけて」

エリシアの警告が空しく、リーゼルが踏み出した床が突然崩れ、彼女が落ちかけた。

「リーゼル!」

僕は咄嗟に彼女の手を掴み、エリシアも魔法で彼女を引き上げようとした。だが、床の崩壊は続き、三人とも危険な状態に陥った。

その時、僕の袋から四つの星晶が飛び出し、互いに共鳴し始めた。風、火、水、土の結晶が宙に浮かび、光の輪を形成する。

「これは…」

光の輪が僕たちを包み込み、次の瞬間、周囲の景色が変わった。僕たちは書院の裏庭に立っていた。

「瞬間移動?」リーゼルが驚いた声を上げた。

エリシアは冷静に分析した。「星晶の力が、私たちを危険から救ったのだろう」

四つの星晶は再び僕の手に戻ったが、以前より強く輝いていた。まるで、互いの力を高め合ったかのように。


書院に無事戻れたものの、監視は一層厳しくなっていた。ヴァルガスは私たちの地下通路の探索を知っており、激怒していたという。

「最後の塔へは、どうやって行けばいいのでしょう」

僕はエリシアと二人きりになれた瞬間、不安を口にした。彼女は物思いにふける表情で窓の外を見ていた。

「中央の光の塔…古代の文献によれば、それは物理的な場所ではないとも言われている」

「物理的な場所ではない?」

「そう…むしろ、他の四つの塔の力が一つになった時に、初めてその存在が顕現するという」

それは僕の専門分野、物理演算魔法に関わることかもしれない。四つの星晶の性質を研究すれば、何かわかるかもしれない。

「僕に考えがあります」

エリシアは期待を込めた目で僕を見た。

「四つの星晶のエネルギー波形を分析し、物理演算魔法で共振周波数を計算できれば…理論上は、光の塔を呼び寄せることができるかもしれません」

「それは可能だろうか?」

「やってみる価値はあります」

僕は熱心に研究を始めた。四つの星晶を前に、物理演算魔法を駆使して複雑な計算式を組み立てていく。エリシアも星霊魔法の知識を生かして協力し、リーゼルは風の結晶についての詳細な分析を提供した。

一週間の研究の末、僕たちは一つの結論に到達した。

「理論上は可能です」僕は導き出した魔法陣の設計図を示した。「四つの星晶を特定の配置で並べ、特殊な詠唱を行えば、光の塔への門が開くはず」

「どこで実行するの?」リーゼルが尋ねた。

「書院の中央広場が適している」エリシアが答えた。「古代の地図によれば、ここは元々、五つの塔の中心点だった」

だが大きな問題があった。監視の目があるなか、どうやって儀式を行うのか。

その答えは、思いがけない形でもたらされた。

「創立記念祭?」

ファウスト学長から告げられたのは、来週に行われる書院の創立1000年記念の祝祭の話だった。

「そう、盛大な魔法ショーも行われる」学長は微笑んだ。「エリシア教授と君には、中央広場での特別演目をお願いしたい」

これは絶好の機会だった。祝祭の喧騒のなか、監視の目を逃れやすくなる。

「喜んでお引き受けします」

僕とエリシアは視線を交わし、密かな計画を確認し合った。


創立記念祭の日、書院は華やかな装飾で彩られ、多くの来賓や市民で賑わっていた。ヴァルガスも議会の代表として出席しており、警戒を怠らない様子だった。

「準備はできているな?」

エリシアが祝祭の衣装に身を包み、僕に囁いた。彼女はいつもの黒のローブではなく、儀式用の銀と青を基調とした豪華な衣装を着ていた。銀髪を美しく上げ、星型のアクセサリーで飾っている。

「はい、ばっちりです」

僕も特別な儀式用の衣装を着ており、星晶を隠し持っていた。リーゼルは観客席に紛れながらも、いつでも協力できる位置にいた。

太陽が沈み始め、中央広場での特別演目の時間が近づいてきた。ファウスト学長が僕たちを紹介した。

「次は、エリシア・フォン・カイゼル教授と彼女の弟子、サクラ・ハルによる特別演目『星の協奏曲』をご覧ください」

観客から拍手が湧き上がる中、僕たちは広場の中央に立った。

「始めよう」エリシアが小さく頷いた。

僕たちは演目を装いながら、実際には光の塔を呼び寄せる儀式を開始した。観客には美しい魔法ショーに見えるよう、エリシアが見事な幻影魔法を展開する。

風、火、水、土の星晶を、計算された位置に配置していく。四つの結晶が輝き始め、特殊な共鳴を起こす。僕は物理演算魔法の詠唱を、エリシアは星霊魔法の詠唱を同時に行う。

観客たちは息を呑むような美しい光景だと思っているようだったが、ヴァルガスの表情が次第に変わっていった。彼は何かに気づき始めていた。

「これは単なる演目ではない…」

彼の声が聞こえてきたとき、すでに儀式は最終段階に入っていた。四つの星晶が宙に浮かび、強い光を放ち始める。地面から五芒星の魔法陣が現れ、広場全体が光に包まれた。

「何をしている!」ヴァルガスが叫び、杖を取り出した。

だが遅かった。魔法陣が完成し、中央に光の柱が立ち上がる。それは次第に形を変え、純白の塔の姿となっていった。

「光の塔…」

観客たちは混乱と驚きの声を上げ、多くの人が広場から逃げ出し始めた。ヴァルガスと議会の魔導士たちが私たちに向かって駆け寄ってくる。

「リーゼル、頼んだよ!」

僕の合図に、リーゼルが強力な風の障壁を展開し、ヴァルガスたちの進行を一時的に阻んだ。

「急いで、ハル!」エリシアが光の塔の入口に向かって走り出した。

僕たちは塔の中に駆け込んだ。内部は予想を超える光景だった。純白の空間に、星々が浮かんでいるかのような無数の光点。時間の流れそのものが可視化されているような不思議な感覚。

「ここが光の塔…時間の塔」

エリシアが畏敬の念を込めて呟いた。

僕たちは中心部へと急いだ。ヴァルガスたちがすぐに障壁を突破するだろうことは明らかだった。最上階の観測室に到達すると、そこには前の塔とは異なる光景が広がっていた。

中央の魔法陣ではなく、巨大な水晶の玉座があった。その前には、僕が夢で見た女性の姿が。

「アストラ…」

銀色の長い髪と、星のように輝く瞳を持つ女性は、微笑みながら僕たちを見つめていた。

「よく来たね、星の加護を持つ者、そして星霊の血を引く者よ」

エリシアは驚きに目を見開いた。「あなたが…星の女神?」

「そう呼ばれてきたわ」アストラは静かに頷いた。「でも実際は、古代文明の守護者。五つの塔の知識を後世に伝えるために残された存在よ」

「僕をこの世界に導いたのは、あなたなんですね」僕は確信を持って言った。

「そう。星の加護を持つ者が必要だったの」アストラは悲しげな表情を見せた。「この世界の危機が迫っているから」

「危機?」

「古代文明が滅んだのは、『影』と呼ばれる存在によるもの。その封印が今、弱まりつつある」

アストラは水晶の玉座を指さした。

「五つの星晶が揃うとき、『影』を永遠に封じる力が目覚める。または…その力を使い『影』を制御する者が現れる」

その言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。

「ヴァルガスが狙っているのは…」

「そう、彼は古文書から『影』の存在と、それを操る方法を知ったのよ」アストラは厳しい表情になった。「だからこそ、星晶を集めようとしている」

「だけど、なぜ僕なんですか?別の世界から呼ばれなければならなかった理由は?」

「星の加護を持つ者は、この世界には生まれ得ない」アストラが説明した。「星霊の血との均衡を保つため、別の世界の魂が必要だったの」

エリシアが一歩前に出た。「では、私の星霊の血とハルの星の加護が共鳴するのは…」

「二つの力が一つになることで、初めて『影』を封じることができる」アストラは微笑んだ。「そしてそれは、二人の心が一つになった時にのみ可能なの」

その瞬間、塔の入口から物音がした。ヴァルガスが部下たちを引き連れて現れた。

「とうとう見つけたぞ」彼は冷笑を浮かべた。「星の女神にも会えるとは、予想外の収穫だ」

アストラは厳しい表情でヴァルガスを見つめた。「あなたには星の力を使う資格はない」

「資格など必要ない。力があれば十分だ」

ヴァルガスは杖を構え、「今こそ、最後の星晶を頂こう」と言った。

危機の瞬間、僕とエリシアは互いに視線を交わした。言葉なしの意思疎通。僕たちは手を取り合い、四つの星晶を中央に掲げた。

「させるものか!」

ヴァルガスが攻撃魔法を放つ直前、四つの星晶が強く輝き、アストラの姿が僕たちの中に溶け込むように消えた。同時に、第五の星晶—光の結晶—が僕たちの間に現れた。

「これは…」

光の星晶が加わることで、五つの結晶が円を描くように宙に浮かび、眩い光を放った。僕とエリシアの体も輝き始め、彼女の星霊の血と僕の星の加護が完全に共鳴する。

「何が起きている!?」ヴァルガスが後退した。

アストラの声が、僕とエリシアの心の中で響いた。

「今こそ、二人の力を一つに…真の封印を完成させなさい」

僕たちは無言のまま、互いを見つめた。エリシアの緑の瞳に映る決意と愛情。僕は彼女をしっかりと抱きしめた。

「エリシア、僕はあなたを愛しています」

「私も愛している、ハル」

その告白と共に、僕たちの力が一つになった。五つの星晶が合わさり、部屋全体が純白の光に包まれる。

光が収まると、空間が変わっていた。僕たちは書院の中央広場に立っており、周囲には驚きの表情で見守る人々がいた。ヴァルガスと彼の部下たちも、混乱した様子で立ち尽くしている。

そして僕たちの前には、一冊の本が浮かんでいた。『星天の書』の完全体。五つの星晶がその周りを周っている。

「これが…真の力」

エリシアが畏敬の念を込めて呟いた。

ヴァルガスが震える手で杖を向けた。「それを渡せ!」

だが、星天の書から放たれた光が彼を包み込み、彼の中に潜んでいた黒い影のようなものが引き剥がされていく。

「ぐああっ!」

ヴァルガスが苦しそうに叫び、膝をついた。彼の体から抜け出た黒い影は、星天の書の光に晒され、次第に消えていった。

「『影』の断片…」エリシアが警戒しながら言った。「彼は既に影響を受けていたのだ」

ヴァルガスは力を失ったように地面に崩れ落ちた。

「何が…私は何を…」

彼の目から混乱の色が消え、自分がしてきたことを思い出して愕然とする様子が見て取れた。

周囲から拍手が沸き起こった。人々は何が起きたのか完全には理解していないようだが、壮大な魔法ショーを見たと思っているようだった。

ファウスト学長が駆け寄ってきた。「素晴らしい…これが本当の星の力なのか」

「はい」僕たちは頷いた。「そして、これからも守り続けなければならないものです」


それから一ヶ月後、事態は大きく変わっていた。ヴァルガスは影の影響から解放され、自分の行動を深く反省。議会も星の力を管理するのではなく、保護する方針へと転換した。

僕とエリシアは星天の書と五つの星晶の守護者として、特別な地位を認められた。書院には「星の研究部門」が新設され、僕たちがその責任者となった。

ある夕暮れ時、僕たちは星の塔があった場所—今はただの遺跡となっている—を訪れていた。

「すべての塔が消え、星晶の力も星天の書に封じられた」エリシアは物思いにふける表情で言った。「これで『影』の脅威も去ったわけだ」

「アストラも、役目を終えて消えてしまいましたね」

僕たちは静かに手を取り合った。もはや師弟の関係ではなく、魂で結ばれたパートナー。運命の二人。

「星の力が再び必要とされる日が来るかもしれない」エリシアは空を見上げた。「その時のために、私たちは知識を継承していかなければならない」

「二人で一緒に」

僕は彼女をそっと抱きしめた。夕陽に照らされた彼女の銀髪が風に揺れている。

「ハル」彼女が真剣な表情で僕を見つめた。「あなたはずっとこの世界にいるの?前の世界のことを思い出さないの?」

その問いは、僕自身も何度も考えてきたことだった。

「僕の居場所はここだと思う」僕は彼女の手を強く握った。「あなたがいるこの世界が、僕の本当の家だから」

エリシアの目に涙が光った。「本当に?」

「本当だよ」僕は微笑んだ。「それに、僕たちにはまだやるべきことがある。物理演算魔法を完成させ、この世界の魔法理論を革新する。星霊の血の真の力を解き明かす。そして…」

「そして?」

「あなたと一緒に、新たな物語を紡いでいくんだ」

その言葉に、エリシアは珍しく柔らかな笑顔を見せた。

「そうね」彼女は頷いた。「私たちの物語は、まだ始まったばかり」

夕陽が地平線に沈み、最初の星が空に輝き始めた。僕たちは静かに唇を重ね、新たな誓いを交わした。

かつて最強の魔導士とその弟子だった二人は、今や星の力の守護者として、そして何より互いへの愛を抱く一組の男女として、新たな冒険へと歩みを進めていくのだった。

遠くの空から、アストラの微笑むような光が私たちを見守っているように思えた。前世の記憶と新たな運命が交錯する中、僕は確信していた—この世界こそが僕の本当の居場所だと。

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