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巡る魂に祝福を

 カッサンドラの現状を知ったタナトスが神々を訪ねる前、初めて彼女の状態をその目で見たときのことだ。呪いで目を覚まさない人間の手を掴み、悲しみの表情を碌に知らない真顔の神の両目から涙が、無口だった身体と心が嗚咽を吐く。


「っ、ふっ、うっ」


 タナトスは不思議だった。なぜ、初めて慈しんだ命が、誰よりもその生に喜びあれと祝福した命が、どうしてこのような末路をたどるのかと。魂を連れて癒すことすらもできず、ただ幸せでいてほしかった魂はどこへも行けない。


 親が子供にするように頬を撫でることもできず、頬にかざした手は震える。生ききれない身体に触れることの苦痛。


 あの時から千年以上もの時が流れた。目深にかぶっていたローブのフード部分をめくると識途と瓜二つの顔があらわになる。


 黒髪の姫君、カッサンドラに近づいて一房、髪を手にとってするりと撫でる。ふと、胸が大きく上下した。


「タナトスさま」


 カッサンドラの躍動感あふれる瞳だ。


「迎えにきた」


「ふふっ、初めて拝見したときのようなお顔です」


「そうか。さぁ」


 一陣の大きな風が吹く。茨も戦いの残滓も全て払い、僅かな痕跡ばかりが残った。


 今度こそ、彼女の魂は冥府に誘われる。何よりも信じた神の慈愛を受けて。


 記憶の共有と力を使えるようになったものの、識途の物理的な本質はコピー。今度こそ未亜の人生を見届けるため、神々の酒、ネクタルを飲むことで架論と同じく完全な俗界の神となった。


 陽希先輩が咎を負わないよう、彼自身の精神的回復に現在、識途は努めている。結局、彼は人間を憎むことなどできないのだ。


 古都音は今一度、未亜の両親に療養を取らせた。彼らが識途と未亜の間の絆を理解できる日が来るかは不明であったが、未亜の幼少期を夫婦で振り返って過ごしていると識途は古都音から聞いていた。


「きっと素敵よ」


 初めて会ったリップを付けるのを恐れていた少年に未亜が送った言葉。識途として、(タナトス)として相変わらずあの言葉を日々大事にして生きている。

 何度でも、巡るその魂を愛でるために。

 各人の感情の掘り下げが本当に難しく、いずれ改稿するかもしれません。

何回も識途と向き合い、彼と未亜が納得できるような最期を迎えたつもりです。古都音さんが思ってたよりもずっといい働きをしてくれて、だから予定よりずっと短く終わってしまったのですが結論これで正解だと思っています。未亜の視点はほぼなく、出会いの描写も少なめですがあえてこうしました。物語として構成として欠陥があるかもしれないです。ですが、あくまで傲慢な神である彼が主人公でそんな神の視点で進んでいます。ただ、もしかしたら未亜側の視点をいつか追加するかもしれないですし、しない可能性も充分あります。やった事に後悔はありませんし未亜は最初から死亡エンドでした。けど、もっと識途の心を理解できたような気がしなくもありません。自分で作った登場人物とどこか離れた位置に立っているような気がしています。だから、とりあえず投稿することで一旦区切りを付けます。また私が成長して識途と向き合えるようになったら戻ってくるかもですね。

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