表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕は滅亡を望んでいたのかもしれない

赤ん坊

作者: 杉孝子


彼女は誰の子供を抱いているのだろう


優しい笑みを浮かべて


まるで天使のような黒い瞳の赤ん坊を


体を揺すってあやしている


彼女の長い髪が


春の風に吹かれてさらさらと揺れている


赤ん坊は笑ってる


何を見て笑っているのか


彼女の揺れる髪かそれとも私の心か


彼女は話し出す


たとえ言葉がわからなくても


小さな瞳が不思議そうに見返して笑う


赤ん坊は自分の未来を夢見ることはあるのだろうか


彼女の腕の中で


赤ん坊の鼓動と彼女の鼓動が重なりだし


やがて一つになっていく


赤ん坊は暖かさと安らぎの中で


目蓋をふさぎ始める


彼女はゆっくりと体を揺すりながら


それでも赤ん坊を見つめている


赤ん坊を見つめながらも


彼女も夢を見る


腕に抱いた子供の夢を


赤ん坊の将来を夢見ているのか


温かい家庭を夢見ているのか


それが現実とかけ離れていようとしても


今の彼女にはわかるはずはない


私は彼女に聞いた


「その子は誰の子」と


彼女はゆっくりと赤ん坊から顔を上げて


私を正面から見据えると


「あなたの子よ」と答えた


私は夢から目覚める


横には赤ん坊が幸せそうに寝息を立てて眠っている


すぐ近くには妻が微笑む遺影が私達を見下ろしていた


お読み下さりありがとうございました。

宜しければ、評価、感想をお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ