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「病み鍋」  作者: first
5/5

裏一話 「悔残し」 ③




  おとーさんとおかーさんはとてもやさしくて、わたしはだいすきです。




  どこにいても、どんなじかんでも、わたしたちさんにんはいっしょです。



   

  なぜなら、おかーさんとおとーさんは、










  ――   わたしの・・・おなかのなかにいるからです  ――

















      彼岸花 第三部


  

      裏一話     「悔残し」   

            



  



                 


  骨はカルシウムだから、出汁に使う事にし、それ以外のお肉の部分は、床下の天然冷蔵庫

  に保存するとして・・・問題はどのくらいもつかだ。









  われを忘れてお母さんにかじりつたのが8時間前、


  良く考えたら調理しないともったいない(人の生肉は味がちょっと・・・)

  と気づいたのは6時間前、

  

 

  取り合えずおなかがいっぱいになってしまったので、残りは保存しようと

  思ったのがその10分後、  

  


  お母さんとお父さんを食べやすいサイズに仕分けた(解体)したら朝になっていた。







  


  まるで、いつもと変わらない朝がそこにあった。




  お父さんはここ(お腹)にいる。


  お母さんもここ(お腹)にいる。



  おとうさんとおかあさんは、胃から腸に入り、そしてわたしの栄養となるのだ。


  今日は朝から日の照り返しが強い・・・気温も上がるだろう・・・そうなると、

  問題は、先に述べたような保存期間だ。



  天然の冷蔵庫とはいっても、大部分が外気温に左右されてしまう為、

  今日の気温が数日続くとすると貯蔵時間は少なく見積もる必要が出てくる



  男性70 kg、女性42 kg、合計112kgのお肉はそれなりの量があって、

  腐る前に食べるのは至難の技だ。


  

  だが食べなければならない、


  残すわけには行かない、


  食べ残すなんてことしたら・・・・わたしの為に死んでしまった両親に申し訳が立たない。






  だが・・・・本当に食べきれるだろうか・・・この量を・・腐る前に・・・



  ちょっと不安になる、さっき生肉にかじりついたときだって、

  腕一本分づつでお腹いっぱいだった。



  朝昼晩食べたとしても数日はかかるだろうし・・・・・・





  あ・・・それともう一つ、食べるで思い出した事。




  一人で食べてても楽しくない



  

  食事とは家族や友人・・・あまり友人と一緒にご飯を食べた事が無いから

  なんとも言えないけど・・とにかく家族と食べるから楽しいのだ。


  だが、今その家族は食べる方ではなく、食べられる方にいるわけで・・・・


  

  「・・・・・・・・・・・・・・うーん」




  良く考えると、色々と問題が出てくる。




  そもそも、家族三人の心は一つとは言っても実質、その体を動かせるのは私だけなのだ、

  今後、食料を探すのも自分一人、何をするにも自分ひとり・・・・・




  だんだんと不安がこみ上げてくる、いつもなら家族三人で話し合うのだが・・・

  今はその考える脳みそも一つだけしかない。



  しばらく考えるも、答えは一こうにでない、やっぱり心は一つでも、

  今の家族は私一人なんだと思い知らされる・・・むぅ





  

  じゃあどうする?



  答えは簡単、家族を増やせばいいのだ。




  とりあえず、配偶者をさがして私が母親になって子供を生むとか・・・・?



  なんか違うなぁ、それは違う気がする・・・それに時間がかかりそうだし、

  そもそもめんどくさい。


  

  私は今すぐ、失われた二人分の家族の席を埋めたいのだ、そうじゃないと

  この心の空腹はおさまらない。






  


            唐突に誰かが言った言葉が脳裏によぎる







    ―――   すぐにまた・・・代えてもらってやるよ ―――




                    代わる

 



                代価



                          代理



                   代わりの家族



  

  

  誰かがいった言葉




  母親を代えていた家族




  私たちはいつまでたっても「3人」家族





  


                  結論は単純




               足りないなら補えばいい




                私の母と父役の存在を  






   土曜の朝、私は家族を探しに出かける。







                   ■■■







    

  ― 信じてください、私は彼女を傷つけるつもりは無かったんです。

    本当です、私は彼女を助けたいただそれだけの一心で・・悪意はなかったんです本当です。

    別に貧乏だから、彼女達が嫌われ者だからと言う理由で彼女達に

    手を伸ばしたわけじゃないんです。ただ、私は彼女を救いたくて、救いたくて救いたくて ―

   

   





                   ■■■






   犬を母親と呼ぶには少しだけ抵抗があった。

    

   でもメスだったし、身寄りが無いようだったし、そもそもこのままじゃ死んでしまうと思った。


   それにあの家族も・・・人以外の動物を家族の一員としていたし、この際いいかな、

   この子が母親代わりでも。




   だって、一日探してもお母さんの代わりになる人は見つからなかったのだもの。

   

   人通りの多い商店街を往復しながら探したけど、やっぱりお母さんお父さんに代わる存在は

   そうそう見つからないもので、結局、帰りの公園で途方にくれていた時にこの犬にであった。



   汚く薄汚れたその犬は何日もご飯を食べていない様で、このままじゃこの子もお父さんと

   お母さんと同じく・・・餓死してしまうと思った、だから今、私はこの子を胸に抱えて家路

   についている。


   

   日も落ち始め、人通りもまばらになった林並木を「お母さん」を抱えて歩く。


   この並木はこの頃不審者が出ることで有名だ。


   そんなちょっと恐ろしい道を大して怖くないかの様に堂々と歩く。




   お母さんを抱えて・・・「お母さん」をそう、この子はお母さんなのだ

   



   それは昔、お父さんが言った「ペットは飼えない」のことば




   でも、それは「愛玩動物は飼えない」と言う事で、この犬を家族として、母親として

   向かい入れるなら話は別なはず。


   

   だから、私はこの子をお母さんと呼ぶ事にした。


   

   家に着き、お母さんをお風呂に入れてあげる。


   お湯は出ないが、まだ両親が生きていた時に水は出せる様にしておいたので問題ない

   ・・少し冷たいけど


   

   薄汚れて気が付かなかったが、この犬は実は真っ白な毛を持っていた、まるで昔「シルク」

   と呼ばれていたあの子犬の様に・・・・



   お風呂上りにお母さんにご飯を食べさせてあげる事にした。



   本当は私が全て食べなきゃいけないんだけど・・・私一人ではどうやって食べきれないし

   腐らせてしまう・・・それだけは嫌だ、だから仕方が無いけど、このお母さんに「お母さんの肉」          

   を食べさせてあげる事にした。





   お肉を調理する。


   いわゆる胸肉


   皮はすでにはいであるので、そのままミンチにして、調味料を加えて軽くいためる。




   火は昔捨ててあったガスコンロを使用している、ガスもすておいた缶のもの・・

   たまに少しだけガスを残したまますてる人ガいるようで・・まったくあぶないったら

   ありゃしない・・・まあそのおかげで私はこうやって調理できているのだけれども・・・ 



   

   ホカホカなお肉を平たいお皿に置き、そのままお母さんにだす。




   「お母さん、ご飯ですよ」



   お母さんは、ばくばくと、何の躊躇もなく、「お母さんのお肉」を食べる。

   本当にお腹が空いていたのだろう、皿の上はお母さんのよだれだけが残された。 



   私も、私分に用意したお母さんのお肉に箸を伸ばす。



   「・・・・・・・・・・・」



   お母さんを食べた犬


   この子は今さっきお母さんを取り込んだのだ


   これで名実ともにこの子はお母さんとなった。


   お母さんを食べるという事は、お母さんの魂も取り込むという事。





   これで、やっと・・・・・家族の一人が元の椅子に納まった・・・


   そして・・・たぶん、自分の中でも死んでしまったお母さんとの決別が出来た気がした。


  

  

  



   だから、私は心からの気持ちをこめて、最後に本当のお母さんだった人に対して



   「・・・・・・・・・ごちそうさま、お母さん」

                 

        

   

                         

   そう一言だけ述べた。






                     ■■■



   

 ― 私が偽善者だとでも言うのですか?違います、私は心から救いたいと思ってただけです。

   別に男の人に、私のいい所・・・いわゆる、やさしい所とか、弱い者に手を差し伸べる女神

   のような存在だとかを見せ付けようとしたわけじゃありません。

   私は顔だけじゃないんです、心も清らかなんです、ペットショップで買った犬を捨て犬の様に

   振舞って、家に連れ帰って夫に見せびらかすなんて事私はしません・・・本当です、私は心が

   清らかなんです・・・なんで信じてくれないんですか?あの人も私をあの後すぐ、捨てて若い

   女の所に行くし・・・信じられない信じられない信じられない・・・・・・・・――





                     ■■■




   「ったく、ろくな女がいねえな」


   

   「右も左もブスばかり、今日のナンパはダメだね、諦めて帰った方がいいかもな」



   「ざけんなよ、収穫ゼロで帰れるかよ、今日はまだ一人も食えてないんだぜ、このまま

    じゃ、俺の欲求がおさまらねえよ」


  

   「食う?よくいうぜ、いつも一口味見したらすぐに、食べ残して捨てるくせに。」


 

   「ああ?!うっせえよ、黙ってろよ」


  

   「いいよなぁ、お前の家は金持ちだからさ、好きな物(女)好きなだけ食えるんだからさ

    しかも、ほとんど食い残して・・・それで誰にも怒られない(バレナイ)んだから」

   


   「まあ、うちにはパパがいるからな、とりあえず何かあったらパパに言えば全て

    解決してくれるし」


   

       

   「まじ、いいよな、その環境、俺も欲しいぜ」


   「あ、俺も俺も信助さんがやってるみたいに、もしも食べにくい子がいた場合でも、

    強引に食い散らかすこともしてみたいっす、いいっすよね・・まあ、そのあとは残飯みたいに

    なっちゃうっすけど」



   「それ以上大きな声で言うんじゃネエよ、何処で誰が聞いているかわからねえんだから」


  

   「うぃっす」


   

   「くそっ、それにしても今日は日曜だってのにクソみたいな飯のやつしかいねえ、だめだな

    ちっ、したがねえ、日も落ちて来たし今日は解散とすっか」



      

   「うーす」




    

    少年達が解散した後、リーダー格の彼は一人家路の林並木をあるいていた。



    彼は自らの最悪とも言える行為や言動を悔い改めるなどしない。



    それどころか、まるで自身が世界の中心で自分の周りを多くの人間が回っているとさえ

    思っていた。



    だから気づかない



    一度でも会った人間をじっくりと食べ残すことなく心まで理解しようとしないから、人を

    表面だけで決め付けてしまう。





    それは貧乏か金持ちか


    綺麗か不細工などで・・・・




    だから気づかない。



    「おっ、お、お、おぉぉお」



    その子が昔・・・



    「メッチャ美人ジャン、何処の学校?中学生?高校生?大人びてカナリ俺好み」



    昔・・汚いと罵った子であろうとも





    「ねえねえ、俺と一緒にこれから飯行かない?カラオケでもいいよ~全部かねだすからさあぁ」




    昔・・貧乏と言いふらし、彼女の家族すらも傷つけた存在だったとしても・・




    

    「欲しいものとか無い?なんでもかってやるぜぇ、だって君ものすごい美人なんだもの、

     俺、初めてみたぜ、君みたいな綺麗な子・・いや、お世辞じゃ無いって、マジマジ」


     

    彼は気づかない、表面しか、人の顔色しか見ない彼「杉乃 信助」には、身なりを整えて、

    軽く、綺麗に化粧した彼女が誰なのかに気づけない。




    「ねえ、行こうぜ、なあなあ、飯を「食い」にさぁ」



    その「食い」の言葉にこれ以上無い程の品の無い意味が含まれているのは

    言うまでも無いだろう

    


    だが、彼女はその問いに何の迷いも無く、うなずいた・・・

    ただし、一つだけ条件をつけて




    「私の・・・私の家でなら・・・・・・・・・・・いいわよ、それでも・・いい?」



    彼女は問う、彼に対しての最終審判でもあった。

            

    だが、そのことに彼は気づかない、欲求だけが先に行くだから

   

 

    「・・・・・・・・・・・・・・・君の家か・・一人暮らし?」



    彼は違う意味で少しだけ逡巡した


    彼女の家・・・もしも、彼女が両親たちとくらしているのなら、

    彼女に手を出すのは難しい

    


    「違うわ、家族と一緒」



    彼は、心の中でちっと、舌打ちする、ならば強引に食い散らすか、と考えたが、

    もしも今日両親が出かけているなどのラッキーな展開があるかもしれないと思い、

    質問をついづいした。



    

    「お父さんとお母さん・・後は姉妹とか今日は家にいるの?」



    名前すら聞いていない少女に、自身の欲求を満たす為だけの質問を投げつける

    いや、彼にとっては名前などどうでもいいのだ、味見だけして食べ残す存在に

    名前など必要ないのだから。



    そして、彼の意図を理解しているかのように彼女は・・・



    「姉妹はいないわ、「今」はお父さんもいない、お母さんは家にいるけど・・・大丈夫

     お母さんは「私達」が何をしていても何も言わないわ・・・・・・・」





    そう、真実だけを淡々と述べた。




    少年はニヤリと下品に笑い、彼女の述べた本当の言葉の意味を理解してはいない。


    「私達」がこれから何をしようとしているのか


    何をされようとしているのか


    

    少年とは別の思惑を持つ彼女の考えに少年は気づけていない。

        

    だから、少年は勘違いする


 

    「そっかそっか、もしかして君も溜まってるの?いいぜ、俺が満足させてやるよ」



    彼女も同じ様な快楽を求めていると・・・




    だが・・・違う



    彼女の思惑と彼の思惑は根本的な所で異なる


    それが、生き様の違いと言うかのように・・・





    あの時とは逆の状況で、



    彼は・・「裕福」な彼は「貧乏」な彼女の家へとついて行く







    そして彼は気づかない・・・この時すでに彼女に食われていたという事を


    




              


           

                   ■■■




 ― 私はあの日彼女が帰った後、彼女が触れたもの全てを綺麗に拭き、洗浄したわ

   別に、あの子が汚いと思ったわけじゃないのよ、夫が今日は帰ってこないとわかって、

   これじゃあ、意味が無いと思ったわけじゃないの・・私はただ、綺麗好きなだけ、

   掃除や洗濯はいつだってしないとね、それにしても、あのガキ・・・うざいのよ・・

   私の事ババァババァ、言いやがって・・っと、でも大丈夫、それがあの子の愛情なのかも

   しれないわ、うん、大丈夫私はなんとも思っていないわ。そんな子供にも優しいのが

   私だもの、息子にはやさしいの、息子じゃなかったら殺してやりたい・・・じゃなかった

   きついお仕置きをしてあげたい所だけど、息子である以上、真心をもって接するわ、やさしく

   やさしくね、息子「だった」彼には・・・ね ―




 

                   ■■■







    

   最悪だ。


   なんだここは、きたねーし、くせーし、そもそもなんで俺が縛られてるんだ?

    

   最悪だ。



   あの女・・・ふざけやがって・・・

   

   

   最悪だ。   








                     最悪だ   




      



   目が覚めたら俺は暗い部屋の中、ボロッちい椅子の上でこれまたボロボロなロープでグルグルに

   巻きつけられていた。


   一本なら、すぐにも千切れそうなそれは、数十回、数百回、しかも何本かに分けられて

   巻きつけられており、これを抜け出すのは非常に困難ぽい。



   

   しかも両手両足のおまけ付き



   

   身動き一つ取れやしねぇ・・・・



   俺は暗い部屋の中、周りを見渡す・・・暗闇に慣れてねえからか、まったくなにもみえねえ


   

   ろくな環境じゃねえが、加えてガムテープが口につけられている為、

   叫んで助けを呼ぶ事も出来ネエヨ・・・・・・  

    

       

    

   しかも、頭がずきずきする、殴られたのか?俺

   ぶっちゃけ、どのタイミングで殴られたのかも記憶が無い・・・

   玄関まで入ったのは覚えているんだが・・・


   

   

   そういえば、あの女何処にいやがる?俺にこんな事しやがって、ただじゃすまさねえ

   ボロボロのゴミくずの残飯みたいにしてやる・・・何度も何度もグチャグチャに

   食い散らして・・



   



   あの女を捜す・・・






   辺りには人影は無い・・・てか、暗くて何が何だか分らない・・・    

   



   トントントン


   俺の後ろから聞こえる音



   トントントントン



   何かを叩く音・・調理する音


   

   トントントントン・・・・トン


   

   調理音が足音へと代わり、こちらに向かってくる。      

             

   

   ボウっと暗闇の中に一点の明り、それが徐々にこちらにむかっている、手には

   おぼんとお皿・・・そして肉?




   「・・・・・・・・・目覚めたのね、おはよう、まだ夜中の3時だけど・・・」



   

   それは昨日の女だった。




   やはり美人ではある・・・が、他人を監禁して楽しむ変質者・・・




   「むぁぐぁぐむがぁ」




   「何を言っているのか分からない・・ちょっと待ってて、お母さんにご飯を食べさせてから

    あなたにもあげるから」



   母親?・・・そう言えば言っていたな、母親と二人暮らしだって・・くそが、この変態女を育てた

   親か・・・親の顔を見てみたいとは良く言うが・・いまはまさにそれだな・・




   「はい、お母さん、ご飯ですよ」



   女はやけに低い姿勢で座り、そして・・調理済みの食事を・・・・「犬」に与えた。



  「??!!」


   

   よほどお腹が空いていたのか、与えられた食事にむしゃぶりつく犬  



  「お母さん、大丈夫ですよ、そんなに急がなくても・・誰も取りませんよ」



  

   親の顔・・・人ではないそれを母親と言う

   この犬に育てられた?



   そんなはずがあるはず無い・・・犬を親と思い込むその精神は既に病んでいる


   

   自分より小さな犬を甲斐甲斐しく面倒を見るその姿は、いつぞのババァを彷彿させる・・が

   なぜだか、この女はあのババァとは違って、表面的ではない、何かをそいつから感じた・・



   「さて、あなたにもご飯をあげないと・・・・」



   そう言うと女は一枚の焼けた肉を差し出した

   酷くクサイそれは、妙に形が生々しい・・・・・・・・何の肉だ?


   

   「むぅぅむむむ」

   


   「おっと、口を塞いでいていては食べれませんよね、ごめんなさい、気が付かなかったわ」


   女は俺の口についているガムテープをはがす。



   ビリィ



   「だれかぁぁぁああ、助けてくれええ!!」



   「・・・・・・・・・・・・・・」



   「うぉおお、だれかぁぁああ」



   「・・・・・・・・・・・・・・・」



   「・・・おい、だれか・・だれか・・・」


    俺が、外にも聞こえる様な大きな声で叫んでいると言うのに、

    この女は顔色一つ変えない、そんな事より、なんでそんなに叫んでいるのか

    と疑問すら覚えているようであった。



   「・・・・・何を叫んでいるのかわからないけど・・・・どんだけ叫んでも、

    ここには誰も来ませんよ・・・・・だって、そういう場所ですから・・」



   女は肉を箸でさし、俺に差し出した。

   

   

   「はい・・・・あーん」


   くさい、くさいくさいくさい・・・・・・・・・・何の肉だ?

   こんなくさいものたべれねえよ。



   「やめ、やめろ、くせえ、ぺっ、ぺっ」




    全力で拒否する。

 

  

    こんなもの食べさせられてたまるか。



    「だめだよ・・好き嫌いしちゃ、ほら、このお肉を全部、食べ残し無く食べなさい」



    俺は何度もその肉を拒否し、首を横に振る、

    肉の脂と、調味料が俺の顔をギドギドに染め上げる。



   「はぁ・・・こまったわ、食べてもらわないと家族になれないのに・・・」



    何を言っているかわからない、言葉の意味が理解できない。


  

   「本当はね、あなたをお父さんの代わりにするのは絶対に嫌だったの・・・でもね

    仕方が無いよね、お父さんとお母さんのお肉

    ・・・いつまでも持つわけじゃないんだもの・・」





                

                  俺の背筋を冷たいものが通り過ぎる



                  コイツはなんて言った?


                   

                  家族にする?



                  お父さんの代わりにする?



                  お父さんとお母さんの・・・肉?






   やがて、空は明るさを取り戻し、


   日の光が部屋中をきらきらと照らす。





   


                   照らされる。


                   犬が食っている物の全体象を


                   俺が食わされようとしている「誰かのふくらはぎ」を




     

   「う、う、うぁああああああああああああああああああああああああ」




     

   「ほらたべなさい」




   嫌だ



   「たべなきゃ、家族になれない」



   嫌だ



   「食べなきゃ・・・死んじゃう」



   嫌だ



   「好き嫌いはだめ・・・初めては大変だと思って、わざわざ、あなたが好きな「ステーキ」に

    してあげたんだから」  

  

   嫌だ・・・・・・・なんで俺の好物を知っている?



   「・・・・・・・ステーキなら食べれるって言ったじゃない・・」



   嫌だ・・・俺はいつそんな事を言った?


   いや、そもそも・・・コイツはだれだ・・・



   「ほら、ほらほらほらほらほらほらほら」


   無理やりにも口に入れようとする、俺は思いっきり首を振り、女に頭突きする



   どばっ



   女は無言だ、淡々と起き上がって、落ちた肉を皿に入れなおす。



   「よごれちゃった・・・でも大丈夫、床に落ちたぐらいで食べれなくなる物じゃないわ

    あなたの家では、落ちた物はたべるなっていわれていたみたいだけど・・うちでは違うの

    おちても、ほこりを払えば食べれるの・・・・いや、埃があったって・・・

    食べれるわ、見たでしょ、あなたが床に落としたハンバーグを私が食べていた所、

    あの後、病気にも腹痛にもならなかったわ、だから、大丈夫」






   言葉は記憶を表していた


   言葉は過去を表していた


   それは遠い昔の出来事


   




   そして、コイツは・・・




   「ねえ、ほらくちをあけて・・・私をこれ以上・・・困らせないで」




   困っているのは俺だ、


   何でコイツがここにいる

   何でコイツがこんなに美人なんだ

   何でコイツがこんなに狂っているんだ









          何で人の肉が・・・俺の前にだされているんだ?????








   「や、やめろ、やめろ、わかった謝るから、許して、許してくれリナ」



   なぜか、俺は謝っていた。

   たぶん、コイツは「敷居莉那」は俺に復讐しようとしてやっているんだと思ったから、

   小学校の時6年間苛めた俺達に復讐しようと・・・・



   だから、謝れば


       わびれば


       どげざでも、何でもいいからすれば・・・少しは、ほんの少しは、

       許してもらえると思ったのかもしれない



   だが、そんな俺の考えと、彼女の考えには決定的な溝が存在し・・・彼女は・・




   「・・?、何を謝っているの?」


   「・・・いやだから、おまえは、俺達が憎いんだろ、お前を苛めていた俺達を・・」



   ・・・彼女は、彼女はにっこりと微笑み・・・・・・・・俺という存在を、完全に






                   否定した





   「・・・何を勘違いしているんだかわからないけど・・・そんな昔の事どうだっていいの

    あなたのことなんて、あなたの存在なんて・・・これっぽっちも興味をもっていないわ」





   「じゃあ、なんで・・・俺にこんなことするんだよ?」




   「・・・まあ、しいて言うなら、あなたみたいな人間にだったら、何をしても平気かなって

    思った事かな、でも本当は嫌なのよ、あなたを父親役にするのなんて・・・」



   「いやだから、その父親役ってなんだよ?!」

      

   

   「・・・・何を言っているの、あなたが始めに言ったんじゃない?」



   ・・・・・・・・・何を?何を俺が言った?




         ―――  「家族は代えられるって」 ―――


         ―――  「お母さんを代えてもらうって」 ―――


   


   ・・・・・・・・・・・言ったかもしれない



   「だから思ったの、私もお父さんとお母さんを亡くしちゃってね・・・

    もしあなたが言う事が正しいのなら・・・お父さんも、お母さんも

    新しい役の人に代えればいい・・って」



   犬を母親と呼ぶ

   俺を父親にしようとする



   その意味がやっと理解できた。



   理解したくないが、理解してしまった。



   

   「だから、ほら、たべてね、お父さんのお肉、これを食べれば、

    あなたも私のお父さんだから」


   

   「嫌、嫌だ、お前・・狂ってる・・・狂ってるよ」



   「そうかしら、自覚はないんだけど・・・」



   「もうやめろよ、やめてくれよ」



    泣きながら叫ぶ


    誰も来ない、助けは来ない


   「ほら、わがまま言わないの・・・・食べないと・・・死んじゃうわよ・・・」






  ―― 「もしも死んじゃったらあなたをお肉にして、また新しいお父さん役の人を

      探がさなきゃならないんだから・・」―



  ―― 「だから、ほら、それがいやだったら食べなさい、このお肉を・・・・・」――




           









                  「食残し」無くたべなさい








   

    

      


                     ■■■



     私が悪いわけじゃありません、あの方達が悪いんです私はまったく悪くありません

     あの方が悪いんです、社会の屑、ゴミ、ゴミ捨て場にたかる蛆虫どもが・・・

     あいつらを見ていると、あの汚い子供を思い出しました。別に子供が嫌いなわけじゃ

     ありません、子供が悪いわけじゃありません、悪いのは社会です、こんな蛆虫どもを

     生み出す社会、その弊害で生まれてきた子どもに、私の印象を・・夫や、息子だった

     あのガキに対する印象を悪くされてしまったと考えると・・・すごくいらいらする。

     だから、わたしはこの社会の屑どもをそうじする必要があります。

     それに私は女神様です、もし明日も彼らが私の前に現れる事があれば、その時には

     かわいそうな彼らに、パン・・いやおにぎりでも差し上げようと思います。

     ・・・・・毒物入りの・・おにぎりを。





                     ■■■






      


     結局・・・俺は2日間何も食わなかった。



     人の肉を食うなんて真っ平ごめんだ、だから、俺は水だけを飲み、

     与えられる食事は全て拒否し続けた。




     「食べなきゃ・・・死ぬわよ・・・?」


    

     残した食事はリナが毎回全て残さず食べつくした。

     自分の両親をよくここまで食べられると感心する。



     それはそうと、待っていれば俺の行方不明は明確となり、

     いつかは助けが来ると思っていた、だが・・・本当にここはどんな魔境なのか、

     人が寄り付かない結界でもあるのか、そもそもそういう地形なのか、

     彼女が言ったとおり、一日たっても、誰一人俺の事を

     探しに来る、いやこの家に寄り付く者はいなかった。



     「どうして、そんなに拒絶するの?そんなにお父さんのお肉が嫌い?」



     「・・・・・・・・・・バカ言ってるんじゃネエよ、人の肉なんて食べれるかよ、

      むしろ、お前はなんで、両親を食べれるんだよ・・酷すぎるだろ、それって・・」




     「・・・・・・・・何が酷いの?言っている意味が分らない」



      こんな狂った奴にまともな質問したのが悪かった・・・




     「・・・食べるものが無いとき、生きるか死ぬかの時・・・・・」


     リナはぽつり、ぽつりと語り出す。



     「目の前に栄養になりそうなものがあれば、食べるでしょ、例えそれが何でも」



     「・・・それでも嫌いなものは食べないぜ・・俺は」

  

   

     「・・・それは、裕福だからよ、他に食べるものがあるから・・でも、本当に

      本当に・・・食べるものが無くて・・・死にそうになれば・・・アナタは嫌いな

      ものでもたべれるようになる・・・」      

     

  

     

     ――    「あなたも私たちの気持ちがわかるようになるわ」  ――





     その言葉の意味を知るのは・・・・・・2日後の事、




     その日、りなは調味料が尽きた、「他の食材」も探しに行くといい、

     俺が拉致されてから初めて俺の前から姿を消した。


     


     どうやら、ゴミ捨て場をあさりに行くとの事で、その彼女は朝からいなかった。



     俺はすぐにでもロープを外して逃げようとする。


   

     が、当然そう簡単にはずれるものではなく・・・一時間たっても、二時間たっても

     抜け出す事ができなかった。


     3時間


     4時間・・・5時間、6時間・・・


     俺のむなしい抵抗は続く、



     何時間たったのかは定かではないが気が付けば日が落ち始めており、うっすらと暗闇

     が俺の周りを覆っていた。



     空腹の上にさらに、久しぶりに全力で逃げ出そうともがいたのが悪かったのか、俺の

     食欲は限界に達していた。



     目の前をみると、白い白米が横たわっていた。



     その白米は見ようによっては、綿飴にも見えて、とてもおいしそう、

     俺はそれに向かって動こうとする、体を横に振りバランスを崩す、



     ガタガタ、椅子ごと倒れ、俺は白米にかじりついた。




     「ワン、ワンワン」


     

    逃げる白米俺はその白米を絶対にのがしまいと、全力でかじりつく。



     「ワンワンワン」



    この、このやろう・・・くってやる、くって・・・





     「キャン」



    白米に逆にかじりつかれた。


    「いってえ・・」




    「俺は・・・」


    俺は、リナが母親と呼んでいた犬にかじりついていた。









  「おやおや、こんなかわいい子犬にかじりつくとは・・・あなたも相当ひどい人ですね」








    そいつは物陰から現れた。


    唐突の訪問者


    リナ以外の何か






    俺は・・・まだ夢でも見ているのだ、空腹の末に見る幻覚。


    ここからでは顔は見えない、男なのか女なのかもわからないソイツは、ゆっくりと

    俺に近寄ってきた。



    「どうですか?ここでの生活は?たのしいですか?お父さん?

     ・・・あ、いや、まだ食べてないんでしたっけ

     ・・・失礼、子持ちにするには少し早すぎましたね」


        


   「おまえ・・・だれだ・・人か?それとも、また俺の幻覚か・・・」



   「うーん、人かどうかと言われると、なんともいいがたいですけど、人の言葉を話せる物で

    人以外の存在がいるのなら、見てみたいですね、あと幻覚かどうかは自分で

    判断してくださいね、結局最終的な結論とは己自身できまるんだから、それにしても・・・」





    かつかつかつ、そいつはゆっくりと横たわっている俺をまたぎながら、奥の扉の前に立つ。




   「それにしても・・偶然っておそろしいですよね、よりにもよってここを彼女達家族が

    選ぶとは・・・それに、この家族の環境も、そして、その引き金となったあなたの周りの

    環境も・・・」


    そいつは、フフと笑い、扉に体を寄せた。



   「まあ、ここを選んでくれたからこそ、私たちが、敷居莉那や、

    あなたの現状に気づく事が出来たんだけど、それにしても面白いわ、偶然って」



   「何を言っている・・・お前誰だ」   

   


   「さあ?誰でしょう?」    

   



    

    そいつの微笑はやがて、恐ろしいほどの笑顔となり、けらけらと俺達がまるで、

    珍しい動物であるかのように笑い出した。




   「あ、もしかして、私達がこの事件を起こした黒幕だとか思ってる?

    ・・・残念、私達は今回まだ何もしてないわよ・・・「まだ」、ね」




   

   「・・・・・・・・・・・・・・」 


   いっている意味が分らない     




   「気にしなくていいわ、久しぶりに面白いものみれたから、ちょっと感情が高ぶってるの、

    だってそうじゃない・・・あの時と違って、私達が手を加えなくても、こんな狂気に満ちた

    「彼岸」が偶然の重なり合いによって出来上がっているんだもの・・・おもしろいわ」



   

   彼岸?



   「しかも・・今回あちら側に足を踏み込んでしまったのが二人も・・・ああ、

    素敵素敵素敵素敵過ぎて・・・私も数年の眠りからさめてしまうぐらい、

    もしかしたら今が転機なのかもしれないわね、数年間の眠りを覚ます為の。」         

     

   

   何を?言っている? 

 


   「あなた達に出会えてよかったわ、出会ってからあなた達の事たくさん調べたの・・勉強に

    なったわぁ、だって、こんな自然に堕ちていくサンプルそうそうないだろうし・・」



   「まったく意味が分らないんだが・・・やっぱりおまえ、幻覚だろ」




   「うん、あなたがそう思うなら幻覚なのかもしれないわね・・・あ、もうこんな時間、

    もう少し、あなた達の行動を見ていたかったんだけど・・・残念ながら時間みたい、

    このまま行っても平行線で、あなたが、ただ死んでしまっても面白くないし

    ・・・最後ぐらい私達、を派手に楽しまして欲しいのね、あなた達三人で・・・」



   そういうと、チャリンと金属がすれる音が聞こえた。


   「お、おい、お前何を・・・」


   「あら、気づいた?刃物よ?」


   「いや、それで何をするのかってきいているんだよ・・・」


   「さぁ・・?」


   「さぁ・・じゃねえよ、や、やめろ、俺はまだ・・・」


   「私はあなたの幻覚なんでしょ、だったら私に何を言っても無駄よ」


   「い、いやだ、俺はまだ・・まだ・・」









              ー  死にたくない ー










       


     プツン













   体の何かが緩んだ気がした



   今までに無い開放感、俺は死んだんだと思った。


  

   おれはゆっくりとまぶたを開く、その先には死後の世界・・・・









   





   ではない、あの汚らしい部屋の中で倒れていた。


   何故か俺を縛っていたロープは鋭利な刃物で切られており、俺は4日ぶりに自由となった。


   「な、なにが・・・」

  


   現状が理解できない、何が起こったのか理解できない、さっきのは幻覚?だが周りを見るが人の

   影らしきものは見当たらない。



   今現在の現状が不明、だが・・そんなことよりも、急がなければならないのに気づく、

   もう夜だ・・折角自由に慣れたのにあいつが・・・リナが戻ってきて

   しまってはまた逃げられなくなる。

                 

   

    

   俺は、幻影探しをやめて、走り出す・・部屋を出る時、一瞬だけ「バイバイ」と

   声が聞こえたような気がした。






                     ■■■



   あ、彼ら死んだんですか・・・運が悪かったんじゃないでしょうか?

   毒物と言っても、所詮は下剤だったんですよ。

   死ぬとは思いませんって、だって、あそこまで酷い貧困の状況なんて思いませんでしたもの

   まさか、「脱水症状」になってしかも食べるものも無く死んでしまうなんて、

   私は予想だにしませんでした。まあ、死んでしまったなら仕方が無い事ですけどね。

   これで、世界は少しでも綺麗になるでしょう・・本当にちょっとしたお仕置きのつもり

   だったんですけどね・・・・・



                    

                     ■■■











   開き扉を開けると、最悪が待っていた。


   まさかのバッドタイミング、

  

   これ以上無い最悪な状況


   扉の前に・・今帰って来たばかりのリナが大きなコンビニ袋を二つぶら下げて立っていた。





   「うぁああああああああああああああああああああああああああああああ」





   俺は叫びながら里奈にタックルをかまし、すぐに走り出す。


   だってそうだろ、今の見たかよ?あいつのコンビニ袋の中身、




   「コンビニの店員らしき首が入っていたんだぞ」




   こんな状況じゃなくても叫んでにげだすって。




   なんだよ、あいつ・・・調味料を取りに行くっていっていたじゃないかよ、新しい食材を

   探しに行くって・・・・・新しい?食材?、あいつまさか・・・・



   ――  また人を食べようと  ー―



   食べる為の食材として、人を殺し始めた?


   ざけんなよ、狂ってる狂ってる狂ってる。


  



   俺は無我夢中で走り出す。


  

   振り向く暇も無いぐらいに


  

   逃げ切れた?



   がさ、がさ、がさ、



   袋が擦れる音が聞こえる、追ってきている、追ってきている・・・・


   もしもつかまったら・・・俺は今度こそ・・・本当に




 

    ――   食われる  ――




    鬼ごっこ・・・本当の鬼ごっこ。


   つかまれば食われる、それがここにあった。



    全力で走るが、何も食っていないため、すぐにいきが切れる、

    力がわかない・・・



    おれは、つかまる?ここで・・・・・




    どれだけ走ったかはワカラナイ


    思考がオイツカナイ


   走って走って走って、俺は・・・・・・・・電車の遮断棒の前で力尽きた。


  

   それに気づいて、ゆっくりと近づいてくる鬼


  

   「ま、まて、やめろ、殺すな・・・・・・はぁ、はぁ」



   「殺す?何をいっているの?」



   「はっ?おまえこそ何言ってるんだよ、両手に持っている袋・・どう見たってそれは」






    ―― 今さっき、殺人を起こしてきた、疑いのない証拠 ――  




                   

   

   「・・・・・・・・・・・これ?」


   「あぁ、そうだよ、それだよ、おまえ・・・殺したんだろ?」



   「殺してないわよ?」


   「嘘付け!!!」


    おれは、残りの全てをぶつけるかのように言葉を吐き出す


   「嘘じゃないわ、だって・・・人を殺すって事は・・・・犯罪でしょ・・・

    私は犯罪は起こさない・・・だってお父さんとお母さんと約束したもの」




   「なにをしらじらしい・・・」



   「私はただ・・・あなたが本当にやつれて、食べないと今にも死んでしまいそうな

    顔してたから、早くご飯をたべさせてあげないと・・・って思って・・・」


   「だから・・・殺したのか・・」


   「だから、殺してないって」 



    リナは、ゆっくりと俺に近づいてくる、俺は急いで逃げようと足に力を入れるが

    ・・・入らない立てない・・・くそくそくそくそ



    這いずり回って逃げる、とにかくにげる・・・この線路を渡って反対方向へ・・・・

 


   「ぐふぁ」



   最悪な事に線路の中央で・・俺はリナに馬乗りにさせられた。


   「はなせぇはなせ」



   「おとなしくして」


  

   「嫌だ、おまえ、殺すつもりだろ、俺を俺をそいつらみたいにぃ!!」



    パシン

  

   「信じて・・・私は・・殺していない」



    俺は生まれて初めて誰かに叩かれた。






    ほほがジンジンする。

 

 

    叩かれた事にもショックだったが・・それ以上に   

      



    りなは、手提げカバンから、水を取り出し俺に飲ましていた事にショックを受けていた


   「落ち着いた?・・あなた、これ以上食べないと本当に死んじゃう・・」



    そう言うと、リナは・・・・カバンから・・・コンビニ弁当をとりだし、



   

   「賞味期限切れ・・・コンビニの裏に捨ててあった。大丈夫、人の肉は入って無い・・・

    ・・・今まではお父さんとお母さんしか食べるものが無かった・・でも、どうしても

    あなたが、たべてくれないから、このままじゃ、あなたも、お父さんやお母さんと同じく

    何も食べずに死んでしまうから・・・・だから、どうしても、お父さんを食べてくれないなら

    せめて・・・他に、何か、何か食べれるものを・・って」





    その弁当は俺の嫌いなものだらけだった。


               


    漬物に、骨が多くはいってそうなシャケ、嫌いなにんじんの入ったポテトサラダ・・

    普段は残すものばかりだ。



    しかも、賞味期限切れときた、一秒でも賞味期限が切れたもの俺は食べない・・・

    食べないはずだった。

  





    「なんで・・・」





     俺に父親を食わせるのは、復讐だと思っていた。


     俺が俺達が6年間苛めてしまったことへの、悪質な・・復讐


     だから、いや、それもあって、決して人の肉を口にしなかった。





    意固地になっていた・・・ってのもある、俺が、限界を迎えた人間の気持ちを

    理解できていなかったってのもある。




    だから、一口も食べなかった・・・・だが、

    彼女が俺に肉をたべさせようとしていたのは・・・







     ―― 「だって、あなた、私のお父さんじゃない・・・家族は死なせない」 ――






    そう、ただ単に・・彼女は俺に栄養を与えようとしていただけ、復讐でもなんでもない

    ただ単に母親が、ご飯を作り、家族に笑顔で食べてもらうかのように、ただ単に食べ物が

    人の肉以外に何も無かっただけの話。


    もしも・・・ほかに、食べ物があれば彼女はそれを俺に与えていただろう。

  

    だが、それが出来ないから・・・それはなぜ?


    貧乏だからだ・・買えないからだ、もったいないから、今あるものを最大限に利用して

    生きようとしていただけ。


   

    そして・・・自分の両親を食べさせる、食べるなんて事、恐らくは・・本当は嫌だったはずだ

    だが、彼女は食べる事を選んだ、「食い残し無く」、彼らの生き様に「悔いを残さない」様に、

    最後の最後まで、両親の事を食べる事で、忘れない様に胸に刻んで・・






    それは、貧困ゆえの、ハングリー精神


    そして、貧乏だからこそ、家族で、互いを食べあってでも支えあおうとした究極の「家族愛」


    彼女の両親が彼女を生かそうとした、究極の・・・・




    裕福で、何の不自由も無かった俺には理解できない事だった、知らないことだった。



    だから、リナの言葉を聞かされて・・・俺は



    初めて家族の絆と言うものを知ったのかもしれない。



    俺は・・・気が付けば、箸も持たずにその弁当を食べていた    

    

        



    「うまい、うまい・・・うまい、うまいうまい、」


    なぜだろう・・・こんなにうまい物食べた事が無い。



    あれも、これも嫌いなはずだったのに、腕が止まらない・・・


    

    こんなうまい物があったなんて・・・


    俺は、5分も立たずに弁当を米粒一つ「食い残さず」に完食した。



   

    「お腹いっぱいになった?」



    里奈は俺の上からおりて、水をさしだしている。


 

    「ありがとう・・・」



    俺は水に手を伸ばす。



    水はぬるかった、でも、これ以上無い程おいしかった。


    それは、この子が手渡してくれたからだろうか・・・・


    それは、俺が今までに起こしてきた罪の意識が原因か、

    俺にとっての今までになかった純粋な恋のきっかけだったのかは分らない・・・



    だが、自分が持ってきた食べ物をやっと食べてくれたと言う安堵感と、満足感で

    初めて俺に見せた笑顔は・・



    

    これ以上に無いほど可愛らしく・・・・




    俺は、今までこの子を苛めて、その笑顔を奪っていたと思うと・・・

    俺が苛めていたせいで・・・この笑顔を一度も見る事ができなかったと思うと・・・・・

      


   


    俺が・・・俺がリナに行ってきた、苛めてきた行為自体に


    


      

              深い、深い、・・・・





                 悔いを残す

      










     




    彼岸花  第三部


    裏一話          「悔残し」


























































  「信助君、こんな貧乏な子と一緒にいたら、アナタまで貧乏がうつってしまいますよ」






       














        

            

    

   

   「えっ?」 




  その声は知っていた。


  俺が嫌いだった奴の声


  その女は、血だらけの鉈をもっており、りなの首をはねた。













                   ■■■


   


  だって、あの店員が悪いのよ、何が悪いって態度よ、私が買ったお弁当が変な匂いがしたの

  なーんかくさい匂い、だから、クレームをつけたのよ・・・あ、私をクレームばかりつける

  いやな女性とおもわないでね、たまたまよ、そしたら、この匂いは漬物の匂いです・・なんて

  謝る気ゼロよ・・いやになっちゃう、だからね、やっぱし悪い子にはお仕置きが必要だと思ったの

  次の日私はそのコンビニで弁当を一つ買って、その中に髪の毛を「混入させて」元に戻したの。

  それを買ったお客が私と同じくクレームをつければ、私が前につけたクレームもやっぱり本当

  でしたってことになるでしょ・・・それなのに・・あの店員たら、気が付いたのよそのお弁当に

  ・・・すぐに廃棄しちゃったわ、もーくやしーってなってる時に後ろからとんとんって、

  なれなれしく肩を叩くもう一人の従業員・・・・それどころか私のこの綺麗な腕をつかんで、

  店内に拉致しようとしたのよ、「アナタですね、この頃うちに嫌がらせをしているのは・・・」

  って、もう、なんでわかったのよ、腹が立ったから、近くにあった灰皿で店員の後頭部

  なぐっちゃったわよ。そしたらもう一人の店員も来ちゃって・・・しょうがないからこれの出番よ、

  鉈。まあ、ぎゃーとか、泣き叫び声とか大音量だったけど、たまたま、人が少ない時でよかったわぁ

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?殺した理由、ただそれだけよ。

  深い理由は無いわ、ただ、私の思い通りにならなかったから殺した、それだけよ?


  なんか・・・・文句ある?







                   ■■■









     

   ひー、ひー、ひー


  


  「リナ、リナ、リナぁ!!」



  「あらぁ、まだ生きてるのね、しぶといわぁ、だから嫌ね、貧乏人ってのは」


  うーん、どうやら、浅かったみたいねぇ、本当はスポーンって、鉈が首を真っ二つってのが

  私の理想だったんだけど、ささったまま、めりこんじゃったわぁ、息がひーひーもれてる、

  気持ち悪いわぁ

 

  

  「くそっ、てめえ、てめえ、何でこんな事を!!ってかババァ、てめえが何でこんな所に

   いやがるんだよ」



  「うーん、しいていうなら偶然かしらねぇ・・・」



  「偶然・・・?なんだよ・・それ、今日は偶然偶然って・・・!?もしかして、俺の縄を解いた

   のもお前か?!」



  ・・・?何を言っているのかしら?この子、私が縄を解いた?

 

  そもそも縄ってなによ?



  「うーん、言っている意味がよくわからないんだけど・・・まあいいわ、とにかく偶然

   なのよ、私はたまたまコンビニで接客がなってない、店員にお仕置きをしていたら、彼女

   がきたのよ、一発で分ったわ、この子があの時の「りなちゃん」だってね、なんでわかった

   かってそりゃあわかるわよ、だってわたし、この子をお風呂に入れて、綺麗サッパリ

   真っ裸の姿を見たのよ女がてらにしっとしちゃったわよ、こんなに小さいのにこんなに

   かわいいのかって・・まあ、信助君は、食べず嫌いで、見ただけで、汚い汚い言っていたから、

   気づいていなかったでしょうけど」



  「・・・・じゃあ、リナがもっていた死体は」


  

  「あぁ、意味不明よね、彼女、私が殺した死体に一度手を合わした後、すぐにばらばらにして、

   袋につめて、もって帰ろうとしたのよ・・・わけわかんないわぁ、普通警察よねぇ・・

   でもそのおかげで、他の客が来たときに隠れていた私がやったっておもわれずに罪を擦り付ける

   事ができたんだけど」

  

  「・・・そっか、じゃあ本当にリナがこの人達を殺したわけじゃないのか・・・ただリナは、

   死んでしまった人間をもったいない・・と思って・・」


  ごめんなりなと声を掛けながら傷口を懸命に抑えている・・・なによ、見せ付けてくれるじゃない

  いつからそんなになかよくなったのよ、気持ち悪い。



  「その後は、なんか面白そうだからついていったのよ、そしたらまぁ、面白いことに

   アナタと出くわすじゃない、私もびっくりよ、あなたがあの家から出てきたこともそうだけど

   あの家が、リナちゃんの帰る場所だったってことにもねぇ」

  

 

  「何を・・言っている?」



  「偶然って恐ろしいわぁ・・・、いやね、この前たまたまお仕置きしたゴミにたかっている屑

   がいたのよ、それがまさか、りなちゃんのご両親だったとはねえ・・・死んじゃったみたいだけど」



   そう、偶然よ、偶然たまたまよ、彼らは殺すつもりは無かったんだから



   「お前がリナの両親を・・・・」




   「ヒー、ヒー、ヒー」



   これ以上無く仰々しい目線で睨んでくれてるわネエこの子、まあ、どうせこのまま死んじゃうん

   だから、問題ないけど。


  

   「それにしても信助君、あなた妙にりなちゃんの肩持つじゃない、昔のアナタだったら

   触るのもいやだって言っていたのに」



  「ついさっきまではな」



  「心変わりでもしたの」



  「ああ、悔い改めた」


  

  「アラ立派」



   おもしろくないわぁ、この子、あの髪入りのお弁当も全部食べちゃうし・・・本当に

   何があったのかしら・・・気持ち悪いわぁ、やっぱし貧乏ってうつるのかしらねぇ、いやだわぁ



  「ババァ」



  「お義母さんって呼びなさい」



  「ババァ」



  「ちっ・・くそガキが、」



  「・・・俺達を追ってきたところまではわかった、とりあえず、全ては偶然だったんだろ、

   あの時の幻影も言っていた通り、それで納得してやるよ、だが、なぜたまたま偶然あった

   俺達をババァが殺そうとする・・・?」




  「なぜって、ねえ・・・・ゴキブリを見つけたら殺すでしょ?それと同じよ、

   たまたま、いやな人間にであったそれだけのはなし、前にどうにかして駆除しておこうと

   思ってたんだけど・・その機会を逃しちゃったっていったらいいのかしら・・まあはっきり言って

   あなた達二人は、うざいのよぉ・・・直接わたしとあの人(夫)が分かれる原因を作った

   わけじゃないとしても、間接的にあなた達が関ってたのは事実だろうし、それにもし、

   私が、この子に出会っていなければ、アナタがあんなにも

   怒って、あの人に私の悪口をいう事もなかったでしょぉ」



  「じゃあ、俺が気にくわねえだけだろうがぁ、リナは・・

   こいつは関係なかったじゃねえかよ!!」 



  「関係あるわよぉ・・・・」


   それにしても以外ねぇ、この子がこんな貧乏人にいれこむなんて・・・


  

  「彼女の罪は、私とたまたま出会ってしまった事よ」



  「なんだよ、その理由・・・ただの・・・幼稚な逆恨みじゃねえか」




  幼稚とは言ってくれるわね・・・まあ、人は逆恨み程度で殺せる怖い存在なんだけどね




  「それに私、嫌いな奴は徹底的に消し去らなきゃ気がすまないたちなの、

   ただそれだけよ、もうそろそろ・・・いいかしら・・・、」




  「なにが・・・・やめろっ」



   りなちゃんにささってる、なたをー引抜く!!



   プシューアーーーーーーー



   まるで噴水ね、赤い赤い噴水!!


   

   「リナ、リナっ」


   がんばって抑えてるけど無駄ね、この血じゃたすからないわぁ




   それに、人の事にかまってる暇無いわよぉ





   鉈を振り落とす


   スパーんと



   「うぐぁあああ」



   あはっ、右足もらったわぁあ



   次はぁ左足

  

   スパーんとぉ


   「ぐっ・・・」


   あら、またささっちゃったわねえ


   早く抜かないと・・・よいしょ、よいしょ



   「うぐぁああああああ」



   よっと、はずれた・・・綺麗に切断は出来なかったけど・・・

   まあ、こんだけやれば動けないでしょ


  

   「ふう、お仕事おわり・・と、これで私にとって「悔い残し」は無いわ、

   むかつく奴らはこれで一掃できたんだから」



   

   私は時間を見る、もうすぐだわ



   カンカンカンカン、



   「タイミングバッチしね」


   「てめえ、」



   「終電よ、文字通りあなた達の人生のね」


 

    時刻は夜の12時を回ろうとしている。


  

    遮断棒が下り始めたので私も退避しなきゃね



   「なるほど、てめえ、これで俺達を終わりにしようっていうのか、」


   「そうね、店員の事は運よくリナちゃんに罪を擦り付けれちゃったし、そのまま二人は

    電車に罪を擦り付けれるし・・・・」



   「・・・・・・・・・・・・・・・そうか、じゃあ、悔いは残してねえんだな・・」




   「もちろん、悔いなんて残さないわぁ」


   何を言っているのかしらこの子・・・気持ち悪いわ     

      


 

    カンカンカンカン   


   電車のライトが見えてきたわ・・早くここから退避しないと・・




   「俺は・・・俺は残したぜ、リナを、彼女を苛めてしまった事、彼女の笑顔を今の今まで

    見れなかったことを・・・」



   だから何?


   「たぶん殺された、リナの両親や、コンビニの店員も悔いを残しただろうよ、

    こんな所で殺されるなんて嫌だ、死ぬなんて嫌だ・・・ってな」

  

     

   だから、なんなのよ?


   

  「だから、自己満足で人を苦しめたお前だけ悔いなくノンノンと

               生きているなんて許されねえんだよ」   

  


   だから?そんなの負け犬の遠吠えでしょ?それがなんなのよ・・・・




  「だから、てめえも「悔い」を残すべきだ、多くの人を傷つけてしまった罪という「杭」を」









    クソガキの手が大きく弧を描いて






                     ぐさっ




    「うぁあああああああああああああああああああああああああああああああ」











                              わたしの右足に「杭」が刺さる








    何よ、なんなのよ、このクソガキ・・・・なにをしやがったのよ


    何が刺さった?杭?痛くて動けない・・・・





  「杭だよ・・・・・・店員が残した「悔い」・・生きたかっただろうよ、そいつらが残した

   ボールペンだよ」




   ボールペン??


   どうして?


   痛みの中目を凝らすと、くそガキが、りなが持ってきた肉袋の中に入っている上着のポケットから

   更にもう一本のボールペンを取り出そうとしていた。



   「や、やめろぉぉ」


   

   グサッ




   「うああああああああああああああああああああ」



   しゃがんでいたからか、私の右胸に「杭」が突き刺さる


    

   「私の、私の胸ええええええ」




   「どうだ・・・少しは痛みが分ったかよ、少しでも悔いを残す気になったかよ?」



    

   くそくそくそ、くそガキがぁあああ、

  

   私にこんな事して、ただで済むと思うな、電車が来るまで生かしておいてやろうと思ったが

   もうゆるさない、今すぐここで、この鉈で・・・あれ?鉈が・・・・






   ぐちゃ




   「あああああぁあああああああああああああ」



   私の足、私の足がぁああああああ、



   「ヒーヒーヒー」



   こいつ、私がボールペンで指された瞬間落とした鉈を奪って・・・



   「イタイイタイイタイ」



    足が、足が


    皮一枚でつながった私のあし・・・こんな、こんなのっていやいや、私の足、



   「おいおい、足、の一本や二本でこんだけ「悔い」を残してたんじゃ、もたねえぜ」



   何を言っている・・自分の足だぞ、それを失って悔いを残さない人間なんていないだろ

   てめえだって・・・



   クソガキは悔やんでいなかった、自分の足を失ったのに、そのことで悩む様な事はしていなかった

   


   「てめえ、足惜しくはないのかよ?!」


   

   「まあ、惜しい惜しくないって言ったら惜しいけど・・・だが、俺がすごしてきた

    くだらねえ人生の方が悔い改めたいだけだ。」



   なんだコイツ、わけが分らない・・・そんな事より・・・早く、早くここから抜け出さないと

   電車が・・・・・・・・・・・・




   ちくしょう・・・・・・・・・・・・足が動かない・・・・・・・・・・




   いや、それだけじゃない、こいつら、私を地獄に引きずりこもうと言うかのように



   リナは、私の右腿を

 

   ガキは、私の左腿を



   逃すまいとつかんでいる。



   「やめろ・・・・離せ」


  

   「ヒーヒーヒー」

  


   「離さねえ・・・・離してしまったら、お前だけ逃がしてしまったら、それこそ俺達は

   「悔いを残す」ことになる」



   「ふざけんな、あんなに、お前に協力してやったじゃねえか、あの日から、こいつ(りな)

    にあって、そのあと私が捨てられることになった後から、こいつを苛める手助けをよぉ

    ・・・家に火を付けるのも、はっきり言って私の、大人の手伝いがなけりゃたっせい

    できなかったんだぞぉぉ」



    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ、私は何を・・



    彼女の目がこれ以上無いほどきつく睨んでいる。


   「ヒーヒーヒー」


    のどがつぶされて話せなくなったリナが呪いの言葉のようにヒーヒーヒーと

    何かをつぶやいている   

   

   「そっか、俺だけじゃなかったんだな、リナに対して罪をつぐなうのは、リナに対して

    悔いを残すのは!!!!」



   

    カンカンカン、



    目の前にまで迫る電車、


    光るライト


    早く、早く抜け出さないと・・・



    私は・・・・



    だれか、誰か助けて・・・・



    車線をまたいだ先に、二人の人物が立っていることに気づく


    一人は・・まぶしてくてわからない・・・だがもう一人は・・・女性・・しかも「彼ノ女」

    は・・・・・・・・・・・・




    懸命に「たすけて」とさけぶ



    だが彼等は、私に気づいているはずなのに、ただただ、笑っているだけ、まるで面白い

    ショーを見ている観客の様なふるまい。


    ケラケラと笑っている・・・なんなんだよあんたら、助けろよ、人間だろ・・・それとも

    あれは私の・・・幻覚?



    だめだ、くそ、じゃあ反対車線は、一人の少女が立ちすくんで・・・・





    「ババァ、これで最後だ、手前の悔いは何だ!!?」



    「しらねええ、そんなのどうだっていいんだよぉお、死にたくない、死にたくないぃいいい」



    「「死にたくない」それが手前の悔いか・・・だが、人を殺した手前にその悔いだけを

     残す事はゆるさネエ、手前は、いや、てめえも自分の人生に悔いを残すべきだ、

     見えや、周りの目、意地ばかりで、自分の都合の悪い事に対して、すべてを擦り付けてきた

     自己中心的なてめえの汚い人生に・・・・・・










           ――    「悔いを残して死ね」  ――





  


               






   







                     バチュ











              




          

 

          

      

   


                     ギュシャ




               


           私の体は、逃げだそうとしていた為


           線路から半分だけはみ出していた。


           それが幸運だったのか不運だったのかは分らない

  

               

           恐らく幸運と言えるのは、下半身がちぎれた後も

           数分間生きていられたという事だ。

           不運だったと言うのは、彼等二人の様に即死でなかったため、

           地獄のような苦しみを、即死できなかったと言う

           「悔い」として受け取る事になったという事だ。






                     ■■■




  



     


      「・・・・・・・・・・・・・・・・・うん、私決めたわ」


      少女は仕事帰りだった。


      この少女とは長い付き合いが、こんな生き生きとした顔を見るのは久し振りでならない


      「何を決めたんだ?」


      「彼等を見ていて目が覚めたの・・・、やっぱり、「彼岸」はあるのよ。

       だって彼女達・・見たでしょ、彼女達はいくつもの不運や病むファクターを

       誰の意図も無く、今回偶然をいくつも絡み合わせて、一つの狂気の果てである

       「彼岸」を作り出したわ・・まあ、本当に少しだけ、着色はしたけどね、

       そこはほんのちょっとの誤差にすぎないわ」



      まあ、確かに今回の件は、あまりにも偶然が重なった末の稀なケースである。

      一つの仲のよい「家族」と、家族を何よりも大事にした「彼女」


      そして、彼女をいじめ、その罪に悔いを残した「少年」と自身の事しか考えな

      いで見下し続けた自己中心的な「女性」の「悔残し」の物語。


      彼等三人は、狂気の末に、自らの日常と非日常の彼岸につかった、

      人の肉を食べる狂気の世界という彼岸に・・・・

  

      

      「でも、まだ、これじゃあ浅いのよ・・・これは取っ掛かりにすぎないわ

       もっと、もっと深い、狂気の果ての彼岸が、存在すると思うの・・・

       ・・・・・・そして私はその先に咲いている「彼岸花」を見たい、

       だから・・私達で彼岸を作ろうと思うの、そして、その奥の花を見ようと思うの

       ・・・・・・・・・・・・・・・手伝って・・くれるよね?」


      

      少女は、いつにも無く自分に向かって色目を使って、可愛らしく懇願する。



      当然、断るような事はしない・・・・あの日、誓ったから、この少女の

      「彼ノ女」の「悲願」であるこの願いを叶えると・・・


   

             

       「当然・・・手伝うさ・・そして・・これからが、始まりなんだな」




       少女はニコニコしながら頬にキスをした。



       「アリガト、大好きよ」 



       そう言った後、目の前に転がっている、自己中心的だった虫の息の女性を見て


       「コイツも・・折角少しだけ、手を貸してあげたのに・・

        もう少しうまく立ち回ってくれれば、もしかしたら、彼岸花の

        片鱗だけでもみれたかもしれないのに・・・使えない奴・・」





 

       そう言って、彼女の死体を可愛らしく蹴って、その場を後にした。




    


       そう、彼等の狂気が眠っていた彼ノ女の彼岸を目覚めさせたのだ。


       そして・・・この事件がその後の多くの者達の人生に「杭」を残し


       狂気の果てへといざなうこととなる。








                            彼岸花 第三章 「病み鍋」





                             裏一話  「悔残し」完






                           



       

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