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「病み鍋」  作者: first
1/5

第一話―前編―


プロローグ   ―― 「病み鍋」 ――




 


 「さあ、今日も始まりました、病み子の~おしゃべりクッキング!!」



  黒い服をまとった少女はその舞台上で満面の笑みで語りかける。



 「作るお料理は皆さんもご存知の鍋です、でもただの鍋じゃないんですよ」


  少女の手にはいつの間にか土鍋が握られている、鍋の大きさはと言うと

  おおよそ、人の頭一つ入る程度の大きな鍋である。


 

 「今日の鍋は皆さんが大好き、鍋の定番・・・・「闇鍋」!!

  素敵ですよね、闇鍋、好きな材料を好きなだけ詰め込めるんです、グルメな

  アナタに最適!!」



  そう、闇鍋とは多人数の参加者プレイヤーが好きな材料を持ち寄り、

  暗闇の中で食べる鍋。

  当然プレイヤーは自分以外のプレイヤーが何を入れたのかはわからず、

  暗闇の中、箸をつけた材料を必ず食さなければいけない


・・・・たとえソレが何であっても。



 「「愛」に「憎しみ」に「妬み」に「悲哀」・・・・「苦しみ」に「絶望」、

  相手から全て奪う「略奪愛」や、自分の世界に入り込んでしまう「妄想」

  なんて材料も鍋にいれるといいかもしれないですね」


  少女は指を折りながらこれ以上無い笑顔であれやこれやとその鍋に入れる

  「材料(思い)」を語る。






 「一つ一つではただの材料(思い)に過ぎないけれども、それら思惑を

  一つの鍋に詰め込み、味が相乗し合えばそれはれっきとした「病み」になる。」




  

 

  いくつもの思いをつめ込んだ先にある狂気の鍋


  その蓋は頑丈に閉じられており、今はまだ開かれてはいない・・・




  

  だが・・・・鍋は沸騰寸前、今まさにその蓋を取るべき瞬間に近づいている。




  「ウフフ・・・・では・・・・」     




  少女はゆっくりと手に持っていた鍋の蓋を開き始めた。

  

  

  

 

    


  「箸を入れてみるまでは何が出るか分からない、血肉踊り愛憎渦巻く具を

   いくつもの出汁(狂気)で煮込んだ「病み鍋」をあなたもどうぞご賞味あれ」
















                  「病み鍋」 









  

     


  バチがあたるとしたら彼女ではなく僕の方だったんだと思う


  いたずらで賽銭箱に石ころを投げたり、神社のご神木の枝を折ってちゃんばらの

  道具にしたりと思い当たる節は山のようにある。


  いや、神社だけじゃない、つい最近、近くの教会のステンドグラスに野球ボールを場外ホームラン

  でぶち込んだ事だって記憶に新しい。


  

  だが、そんな僕にはバチがあたらなかった

  だって、ほら・・・・現実は今目の前に広がっている今その物だもの、

  

  



  暗闇にぽつんとたたずむ街灯の下、女性だっただろう物にかじりついている少女が一人



  女性だった物はたまたま、この薄暗闇の中、僕の前を歩いていた。

  

  暗闇の中、女性を男性が追う構図・・・・・他から見ればストーカーか追跡かとも

  思われかねない状況だが、僕はストーカーでも探偵でもないただの一般人だ、

  たまたま、帰り道が同じ方向でこの道を通ったのが女性の方が早かっただけと言うだけの話。

  


  だが、女性はそうは思わなかったらしく・・・・不安がった女性は僕から駆け足で

  離れようとして





  ―― 「がぶり」 ――





  ・・・・・・少女に食われた。




  

  一瞬人をストーカーか何かと勘違いした、ばちがあたったのだろうと思ったが

  そんな事の代償としてのバチが死だとしたら、僕は数十回・・・いや数百回死んでいる。

  ・・・・どんだけデッドエンドの多いゲームになる事やら。   




  気が付けば血色の池は地面に広がりやがて僕の足元にまで流れ着いていた。


  

  未だに不運な女性に食らい付いている少女を凝視する。  


  少女の口には血一つ付いてはいない・・・・と言うより、僕が見た限りでは少女は

  一度も口をあけずに肉をしゃぶり、血をすすって、晩飯には遅く夜食には少し早い食事を

  楽しんでいた・・・・・




  ・・・・どういう事かって?


  そんな事僕に聞かれてもこまる。

  

  この状況に置かれている僕自身も現状を理解できずに困惑しているのだから。




  ただ、もう少し詳しく言うのなら少女はもうほとんど骨と皮しか残っていない

  ソレに向かって両膝をつきながら手を伸ばし、

  その手に付いたかわいらしいパンダとヒキガエルの人形がご馳走を目の前にした

  ハイエナの如く血肉を豪快に食らっているわけだ。      

    

 

  いや・・・・どういう事だ?



  

  状況を飲み込むことが出来ない  

  理解不可能な現実


  通常では考えられない  

  少女の奇怪な行動


  ただしこれだけは理解できる

  

  ・・・ここは明らかな殺人現場であり、

  今僕はこの少女の次の獲物になろうとしていると言う事。


  


  案の定、食事を終えた少女はゆっくりと立ち上がりこちらを見た。

  足元にはもはや女性だった物の髪の毛一つ落ちてはいない。

  

  逃げるべきだった、そう思ったがもう遅い、完全に目線が合いエンカウント

  してしまった今、この場で生き残るには相手に回りこまれずに「逃げる」コマンドを

  発動させるか、敵を倒して経験地を得るかの二択だ。


  

  逃げるか戦う(?)か迷っていた中での

  少女の初動 


  右手を広げる。


  左手を広げるげる。


  その両手には先程まで血肉を食らっていた悪魔が二匹。


  そんな悪魔をかわいげに手首を少し曲げてペコっとお辞儀させ、

  万歳の姿勢のままニコニコと笑いながらかわいらしくポーズをとる。


  


  「・・・・・・・かわいい」



  いや、そうじゃなくて、意味がわからない  

    

  そのポーズに何の意味が?

  なんかのきめポーズか何かですか?  

  

  殺伐とした場を和ませる場違いな笑顔・・・・そうか、わかったぞ、

  これは獲物を前にした威嚇のポーズだ、かわいい顔して後からがぶりって奴だ。


  でも大丈夫、逃げ切れる


  なぜなら僕はこの話の主人公なのだから、だから

  ここで選択肢が出るはずだ、逃げるか、戦うか、いや、もしくは説得するか・・・


  さあ、いつくる、その選択肢は・・・  




  ―― 「がぶり」――





  「あれ??」


  かわいい声と共に僕の右腕が食べられる。


  少女は一度も口をあけずにを、僕を食べている。


  



  ――「がぶりがぶりがぶり」――





  「あれ?あれあれあれ???」



  かわいい声・・・・相反するグロテスクな現状、死に行く僕、


  両足、両腕を食べられた所で僕の行動はほとんど閉ざされてしまった。


  


  

  選べる道が無い

 

  途絶えてしまった未来

 

  文字通りの「DEAD END(閉ざされた 終わり)」



  ― い、いたい ―


  誰かがそういったような気がした

  だけど、本当にいたいのは僕の方なんだけどな

  


  意識が痛みと共に朦朧とし

     

  記憶が走馬灯のようにめぐり始めた。

  

  結局ばちはもう形すらない女性だけではなく、この僕にもあたえられていたと言う事だ

  僕が何をしたって言うのか、いやそれよりもどうすれば僕は死なないですんだのか・・・


      

  どこで選択肢を間違えたのか・・・・

  


  

  結論は簡単だった





  ―― 選択肢なんて無かった ――



  ただそれだけの話


  そこで僕は最後に気づいたんだ


  ―― 僕はこの話の主人公じゃなかったんだ ――




  主人公じゃないから道を選べ無い


  主人公じゃないからこんなにもあっさりと死んでしまう


  主人公じゃないからこんなにも雑に扱われる


    

  

 


  始まりから決まっていた運命


  「ああ、主人公になりたかったな」


  もしも僕が主人公だったら・・・・

  漫画の中の、アニメの中の・・・主人公だったら・・・・

  この話の中の・・・主人公だったら・・・・



  この修羅場を乗り越えるだけの力と選択肢が用意されていたに違いないのに・・・


  その声は空しく夜の夜空に響き

  

  最後に見たのは少女の手に付いた牛

  その人形が僕の顔に寄せられる。

 

  その牛の人形の口には明らかに歪な、「人の口」

  歯茎があり白い歯が奇妙に人形と一体化している異型の物。

  


  「あはは、人形に口がくっ付いているよ・・・」


  



   ガブリ



  

   僕はこの話のただの駒となり、消滅した。











 

     セブンズレイヤー ― 第一話  





        ――― 口咲女 ―――




   


  さて、唐突に質問するが、君はオカルトをどこまで信じるか?


  呪い?都市伝説?幽霊?宇宙人?


  他人はどうであれ僕は全て信じない、そんなのナンセンスだ、非科学的だ。



  「まあ、君が戸惑って恐れているのもわかるんですけど、こればっかりは信じてくれ

   としか言えません」






  目の前のエロ本が僕に話しかけた





  いや・・・そうか、唐突な状況に焦ってしまってわれを忘れていたようだ、

  くくっ、馬鹿だな僕は、いつもの冷静さはどこに言ったのやら、冷静沈着

  頭脳明晰、運動神経抜群(全て自称)が僕の売りだと言うのに、


  そう、これは幻聴、もしくは僕は疲れているのかも・・もしくは頭の病気か・・・

  とりあえず超現象ではなく、科学的に証明される心の病とかに違いない。


  そうだ、そうに違いない、そうじゃなければたまたま帰りに入った本屋で

  エロ本を選んでいたらそのエロ本に声をかけられるなんて、前代未問な事起こるはずが無い。



  「僕は疲れているんだ、僕は疲れているんだ、僕は疲れているんだ」


  自分に何度も言い聞かせる


  「まあ、たしかに、目にくまとか作っているようですし、少しお休みなったほうが

   いいかと・・・」



  まだ買ってもいないエロ本に心配された。



  何?この状況?


 「もしかして・・・・疲れから来る幻聴か心の病気か何かとか思われてます?

  そんなのは逃避ですよ、現実を受け止めてください、今アナタは私と会話しているのです。」


  ああ・・・・もう、どうしたらいいのやら


  エロ本に、逃避するなとか言われたよ・・・むしろ、幻聴とか心の病気の方がまだよかった

  よりによってエロ本と話をする能力を得たなんて・・・・



  

  「とりあえず・・・・僕はどうしたらいいんですかね?」


  もうどうしようもなくなって、エロ本と会話してしまった僕、

  いや、まわりからみたらそれこそ、危ない人なのだが、

  幸いこの店には今店員と僕二人だけだった。



  

  「まずは私を・・・・・・買いなさい」 



  「・・・・・・・・・はい」     

  

  エロ本に薦められるまま、エロ本を買った



 

  エロ本一冊を1050円で購入、題名は「ボイン危機一髪ぽ、ロリもあるよ」

  内容は読んでないからわからない、おそらく表紙の絵から幅広い年齢層を考慮した

  グローバルな本なのだろう、当然18指定だが、一応僕は大学生なので問題は無い

  問題は無いが、エロ本と会話できるこの状況には問題がある。

  

 

  店員はにこやかに、ポイントカードはあるかと聞き、出すのもめんどくさかったので

  今日は無いですと答えた。

  

  ぶっちゃけ、この本を買うつもりも無かったのだが    

    

      

  帰り道、僕は紙袋に包んであるエロ本をかばんにつめる・・・確かに紙で包んでは

  いる物の、うっすらと透けて見えるこの本の表紙をみせながら歩く勇気は僕には無い。



  「ちょっと?!なんで私をかばんに入れてるんですか?!」



  唐突にエロ本に注意される・・・・しまわずにどうどうとこの本を持ちながら町中を

  歩けと?


  「え?いや、普通しまうでしょう、そんな出しながらなんてはずかしい」


  「はずかしい?何を言ってるんです?あなたは本の一冊や二冊を持ちながら

   街中を歩く事も出来ないのですか?しかも、こそこそと厳重に紙袋にまでつめて

  ・・・意味不明です、男だったら大胆に本を片手に表紙を見せて街中あるきなさい」


  

  いや・・・男だから、って言うか常識人だから隠すのだが・・・・


  ああ、そうかエロ本に常識をといても無駄か・・・なにせ話すエロ本だしな、




  「で、先ほどの申し出は無視するとして、あんたは何者なんだ?・・エロ本の・・・

   いや、本の妖精?かなんかか?」



  本の妖精・・・・口に出すだけではずかしい、これがエロ本の妖精とか言った日にゃ

  この町をでていかなきゃならん程のはずかしさだ。


  

  「あ、やっと現状に成れてきたようですね、でも、まったく違います、あなた

   妖精とかがいると思ってるんですか?ハハハ、滑稽ですね(笑)」



  いやむしろ、エロ本と話していると言う現状自体の方が妖精よりも数100倍滑稽だろう


  「まあ、でも良い兆候です、このままオカルト何てナンセンス、自分の頭がおかしくなった

   と思われて、私に見向きもされなかったら、せっかく本に乗り移った私の苦労が水の泡ですもの」


  「乗り移った・・・?」



  「いや、失言、忘れてください、まあさっきあなたが言ったように、本の妖精みたいな物と思って

   もらって結構なのですが、より詳しくいいますと私は魔法少女についてくるしゃべるマスコット

   もしくは、しゃべる武装のようなものとして考えてください」


  「はぁ・・・・・」


   エロ本は自慢げにカバンの中から会話を続ける・・・俺は周りの目を気にしながら、携帯

   を耳に当てながら電話をしているふりをしながら話す。


   どうやら、本の声は僕にしか聞こえていないようで電話のふりだけで、何とか回りの目をごまかす事ができた。


  「ほら、よくあるでしょう?魔法少女なんたら~とかで、話す本を片手に敵と戦うキャラクターみたいなの

   あんな感じですよ、ほらなんかかっこいいでしょ?私はあんな感じのを想像してたんですよ

   本がYes, my master みたいな、英語表記で話す感じで」



   確かにソレはかっこいい、だがその本がエロ本で無ければの話だが・・・・


   ふと、この本を持ちながら戦っている自分を想像する


   エロ本を片手に戦闘する僕・・・・・ただの変態やがな。


   

   なんだかんだ想像しているうちに、自宅に到着

   家はマンションで一人暮らし、壁はそこそこ厚いので、とりあえずは

   独り言?を言っても大丈夫だろう。


   カバンからエロ本をだす、しかし紙袋からは出さない・・・・なんか

   はずかしくて出したくない、なにがはずかしいってエロ本を読むのではなく

   エロ本と話している自分がだ。


   「・・・・・・・・・・・なんで紙袋から出さないんですか?」



   「いや、なんでってねえ・・・・・・・・」



   「出してくださいよ、これだとアナタのパートナーは紙袋ですよ?

    紙袋と話しながら冒険する主人公なんて見た事も聞いたこともないですよ?」


   むしろ僕はエロ本と話しながら冒険をする主人公の方が聞いたこともないし、いやだ、

   どちらかというと、紙袋と話していた方がまだましだ。


   「まあいいです、良くないけど、あなたもまだ混乱しているだろうし、落ち着いて

    からあけるのでいいです、で、本題ですけど・・・・」



   「俺は何かと戦うのか?」


   率直に先程の流れを聞きながら思った感想

   おそらくたぶんあっている。   

   

   「まあ、戦うっていうより、逃げるんですけどね、ハハハ、あなたに戦う能力なんて

    無いですし(笑)」


       

   20パーセントぐらいあってた、すなわち危険が迫っているだけで立ち向かう手段は無いと

   と言う事だ、っていうかなぜ唐突に戦ったり逃げなきゃならんのだ?世の中のご都合主義

   と不条理に怒りが爆発しそうだ。

   

   

   「話す本と出合った事でも気づいたと思いますが、今この区域ではこの事以上に特異な事が

    起こっています」


   「特異な事?」

  

    むしろ、エロ本が話をする事がMAXな特異現象の様な気がするが・・・  


   「はい、この頃この町の一箇所・・・すなわちここから半径1km以内で、殺人事件

    や行方不明者、奇妙な事件が起こっているのを知っていますか?」


   「・・・・・・・・・・うん」


    朝から救急車やパトカーのサイレンが鳴り止まない、おかけで寝不足なのだ、

    おそらく目のくまもそこから来ているのだろうが、そんな事よりも連日、テレビが取材

    しに来るほどの事件がほぼ毎日起きているのは確かだ。


  

   「今から話す事は全てが事実です、驚かないで聞いてください」


   信じるか信じないかは別として、エロ本が話しかけてきた事以上の事は起こらないだろう

   だから驚かない自身はある。

 

   「この区域に6人の殺人鬼が放たれました」

    

   「・・・・・・・・・刑務所から抜け出したとか?」


   「・・・・・・・・・・・・それならまだいいです、もしも刑務所から抜け出した人間

    だとしたら、人の手で対処できるのですから・・・・・ですが、この6人はおおよそ

    一般人の手には負えません、なぜなら彼等6人は全員・・・」



  


  ――――  「呪われているからです」  ――――  

    

      

  

  いや、唐突に眉唾物になってきた、むしろ呪われているのはエロ本に声をかけられた

  自分じゃなのかと・・・・



  「呪われた人物は全てこの区域で生きていた、一般人です・・ただ・・・呪われる

   だけの素質・・・心の病・・・を持っていた者たちなのですが、呪われた彼等は

   その素質(心の病)もあってか、殺人衝動に見舞われ、数多くの人を殺し始めま

   すソレは残忍に・・・・」


  

  「ふむ、じゃあ、警察にまかせよう、僕、わざわざ、その殺人鬼の前に立って殺される

   のとかやだし」


  「そうできれば、どれだけ楽な事でしょうか・・・・それが出来ないから、大変なのです

   と言うのも、呪われた彼等は人ならぬ力を得るのです、それは奇怪な人外の力を・・・」



  なんだかもう、中2病の書いた妄想小説の様な展開だ・・・・だがまだ中2病の方がまだいい

  なぜなら、相棒がエロ本とかふざけた話じゃないはずだろうからだ。


  「で、その人の手に負えない殺人鬼をどうすればいいんだ?結局俺には力が無いんだぞ・・

   って言うか、なんで俺に話しかけてきた?」


  「まあ、先を急がないでください、さっきも言った様に普通の人間がこの6人の殺人鬼に

   挑んでも殺されるだけです、だからこんなにも事件が起こっているのに、犯人の一人も

   つかまっていないのです」


   この本の言っている事はある意味あっている、殺人事件が実際に起きているが、犯人は

   つかまっていない、それどころか、連続殺人の様なのだが、手口がそれぞれバラバラで

   ある、とも今日の朝のニュースで言っていた。


  「そしてこのままでは、この区域・・・さらにはこの町すら巻き込んで、多くの死体

   が出来てしまいます、ですが、それを止める手段が実はあるのです!!」


   紙袋につまったエロ本は自慢げに語る。


  「それは、彼等6人の呪いを解いてやればいいのです!!」


  ああ、なんか完全にゲームとかでよくある展開になってきた、が一応聞いてみる。

  

  「どうやって」


  むしろ、なぜ俺がその呪いとやらをとかなきゃならんのかを聞きたい


  だが数秒後に俺がこの話に巻き込まれる理由を聞くこととなる、それは・・・





  「あなたが死ぬと呪いが解けます」



  「ぶっ」



  それはそれは、ふざけた内容


  このマジックアイテム(?)は敵を倒してのろいを解くとかいうのではなく相棒的なキャラでは無く

  持った人間に死ねといいだす、悪魔のアイテムだったわけだ。



  「いや、いやだから、僕、死にたくないから、死ぬなら愛した人の胸の中だから

   それ以外は認めないから」



  「まあまあ、落ち着いてください、何もアナタが死ぬだけが呪いを解く方法じゃないですから

   ちゃんと選択肢を用意されてますよ、あなた一応今回の事件の主人公の一人ですから、では選択肢

   を言います、選んでください」




  そう言うとエロ本は選択肢を言い出した


  「撲殺と刺殺と溺死と毒死どれがいいです?」



  「とりあえず、僕が死なない選択肢は無いの?」


  「ハハハ冗談ですよ(笑)、軽いジョークじゃないですか?本気にしないでくださいよ!!」

 

  ジョークにしては笑えない、むしろこんな状況になってしまった事に泣きたい


  「まじめな話に戻りますと、6人の呪いを解いてこの事件を完結させるには三つの手段が

   あります、一つは先程も言いましたがヘブンズレイヤーに認定されたアナタが死ぬ事、

   そしてもう一つはヘルズレイヤーに認定された、もう一人の主人公が死ぬ事でこの呪い

   と事件が終了します。」


 

  もう、なにがなんやら、ヘブンズ?ヘルズ?


  「ごめん、いまいち内容が理解できないんですけど・・・・・」


  「わからないなら、分からないで結構です、そう言う伏線的な物は物語が進むと共に

   わかってくるので、今は話さずに保留します、んで、あなたは、がんばってもう一人の

   主人公を探し出して殺せばいいわけです、ほら簡単でしょ」


  簡単なはずがない・・・むしろ、殺人者になるなんてまっぴらごめんだ



  「ふざけてる・・・・そんな人殺しなんてまねできるはずがないだろう」


  「まあ、ごもっともです、じゃあアナタが死ねばいいだけの話なんですけど、それはいやですよね」

 

  「当然だ」


  「だったらやられる前にやるしかないわけです、覚悟をお決めになってくださいな、それに

   ぐだぐだしてたら、それこそ、この区域に潜んでいる6人の殺人鬼に殺されて物語終結、って

   事にもなりかねません」



   ・・・・・・・・・・・ああ、どっちに転んでも地獄、夢なら覚めて欲しい


  「フフフ、悩んでいるようですね、死にたくないけど殺したくも無い、だったら

   いい方法を教えてあげましょう、あなたが殺さずに相手を殺す方法・・・・

   それは・・・・・この区域にいる、6人の殺人鬼を利用してやればいいのです、

   と言うよりは元々その為の道具としての殺人鬼なわけですから。」



   なんだか物騒な事を言い出すエロ本、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。


  「つまり、6人の殺人鬼と接触して、それをうまく説得?もしくは誘導して

   もう一人の主人公を消せばいいわけです。」


   なんだか気に食わない、結局殺人の片棒を担がされているだけの様な気がする。


  「6人のうち3人までは比較的アナタに友好的なはずです、なぜならそう言う呪いですから

   ですが注意してください、もう三人は敵対的で、もう一人の主人公に友好的なわけです、

   ですから下手したら、殺人鬼三人があなたをねらってきます。」


  「どういう事だ?」


  「さっき、ヘブンズレイヤーがあなたといったのを覚えていらっしゃいますか?

   そして相手がヘルズだと」


   覚えている・・・意味は理解して無いけど


   「実は殺人鬼には名称がつけられているんですよ、1番から7番まで、つまりセブンズレイヤー

    という感じで、そしてヘブンズレイヤー・・・つまりあなたにとって7、6、5番のレイヤー(殺人鬼)

    は比較的アナタに友好的に接してくれる事になってます、逆に3、2、1番のレイヤーはあなたにとって

    敵対的に接してきます、これは番号が遠くなるほど(ヘブンズにとって1番が一番遠い)敵対的で、利用、もしくは

    仲間にする事は難しくなります、逆にヘルズにとっても、同じ事(ヘルズにとって7番が一番利用しにくく、一番がもっとも

    仲間にしやすい)がいえるわけですが・・・・あ、でもだからといって、自分に近い番号が確実に

    仲間になるとは考えない方がいいです、何せ、たとえあなたにとって一番近い7番だとしても、彼らは

    所詮、狂った殺人鬼なわけですから」



    なんとなく分かってきた、つまり、セブンズレイヤー(殺人鬼)と言う道具を利用してヘルズレイヤー(敵プレイヤー)を殺せという事だ

    ヘブンズレイヤー(自分プレイヤー)は逃げながら・・・・


   「あ、後言い忘れましたが、殺人鬼の能力は数値が4番に近くなるほど、人間離れした特異な力となって行きます

    しかし、同時に、狂ったレベルも近いほどあがりますので、4番に近いセブンズレイヤー(殺人鬼兼駒)は仲間に

    するのは困難だと考えて置いてください」



   「一つ気になったんだが、殺人鬼は6人なんだろ?なのになんで7番まであるんだ?

    そもそも、4番ってなんだ?」


   「いいところに気が付きました、今からそれの説明をしようとしていた所です。

    セブンズレイヤーのうち、4番だけは特殊です、四番だけは元来「四怨」と呼ばれる

    呪いその物がその位置に収まっています、この4番は言うならばジョーカーです、他の6人とは

    比べ物にならない力を持った怪物で、はっきり言って6人一人一人では絶対に倒せません

    と言うか、この4番が、彼等6人を呪った張本人なわけです」



    あーなるほど、だから4番に近くなるほど奇怪な力があがるのかーじゃなくて


   「もしかして、まだ話していない3つ目の呪いのとき方っていうのは・・・」        

    

   「鋭いですね、ご想像の通りです、この呪いの張本人4番であるフォースレイヤー(ゲームマスター)

    を殺せば、呪いが解けます・・・ただ、先ほども言ったように、この四番は危険過ぎる

    のでコイツを倒そう何てこと考えるだけ無駄です、祟り神の様な存在ですし、過去これを

    殺した奴はいないそうです。」 


    だから、俺が死ぬか、敵のプレイヤーが死ぬかのほぼ二択しかないというわけか・・・


    「まあ、6人全員の殺人鬼を4番にぶつけてさらにあれやこれやの手を使えば理論上は

     殺せない敵じゃないのだろうとおもわれますけど・・・まず現実的じゃないです、

     そもそも、殺人鬼全員を手ごまにとるなんて事不可能ですし・・・で、そろそろ

     この紙袋をとってもらいたいのですけど・・・・だいたい、この話の内容も理解できたでしょうし」


   「理解はしたが、納得はしてないし、さっきお前が言った事を信じたわけじゃない、

    そんな御伽話・・・いや都市伝説か?見たいな話信じろってのが無理だ」



   「なーにをいっていますか?!、しゃべる本を目の前にして、挙句の果てには会話までして

    この現状を信じないとはどういった了見で?!」


   「いや、むしろお前が何なんだといいいたい、さっきの話の中ではお前の・・妖精?

    マジックアイテム?の事なんて一言もでなかったぞ?」



    「むむ・・・」


   唐突に黙り込むエロ本


   「わ、私は先程にもいいましたとおり、主人公を助けるサポートアイテム・・・

    そう、サポートアイテムですわ、ほらほら、さっきもいったじゃないですか、

    魔法少女とかについてくるしゃべるアレにあこがれているって・・・・」


  「・・・・まあ、そう言うことにしておくか・・・・・・・」


   信じてはいないけど


  「だが、なんでよりによってそのサポートアイテムが、そんな姿なんだ?」


  「そんな姿?何をいってらっしゃるの?いいじゃないですか本、魔法使いのアイテムっぽくて

   そんなに本がお嫌いで?」


  「嫌いじゃないけど・・・」


   いや、確かに成人男性としてエロ本は嫌いじゃないけど・・・公共の場で持ち歩けるような紳士な雑誌でも無い

   気がする・・・・いや僕の勝手な偏見かもしれないが・・・・うん、そうかもしれない

   もしかしたら、僕の男としてのレベルが上がれば、エロ本の一冊や二冊どうどうと街中でもってあるけるのかも

   しれない。


  「出来ればもっとかっこ良いアイテムがよかった・・・もしくは通常持ち歩いてはずかしくない物」


  

  「何がはずかしいんですの?さっきからぐちぐちぐちぐちと、せっかくアナタをたすけてあげようと言う

   親切な相棒にむかって(怒)」



  「でもな、その相棒がエロ本っていうのはなぁ・・・・」



  「えっ・・・・・・・・・・・い、いまなんて・・・・」



  予想外の反応、あれ?・・・・もしかしてコイツ自分のこと・・・・



  「いやだから、「相棒がエロ本」っていうのは」






  「Nooooooooooooooooooooooooooo!?」






  おお、どこぞのマジックアイテムの様に唐突に英語使用になったぞ?!


 

  「ちょ、ちょっとあなた、まじですの?始めっから知っていましたの?

   わ、わたくしが・・・そ・・・・・そのえ・・・えろ・・ほ」



  「エロ本?」



  「OOOOOOOOHHHHHHHH、my goooooooooooooooood!??」





よくわからんが、これはこれで面白い




  「はあはあはあ、ようやくあなたが紙袋から出さない理由がわかりましたわ、

   たしかに、こんな姿じゃ、外に出して歩くなんてできませんものね、私だったら

   数百回死ねますわ、町から逃げますわ」


   そうだろうそうだろう


   そして結局、コイツも自分が本は本でもエロ本の姿をしているとは気づいていなかった

   わけだ。


   「・・・・・・・・・でっ、わ、私は興味はありませんけれども・・・・

    ほ、本当ですわよ・・・ち、ちなみにこの本の題名は・・・?」



  「ボイン危機一髪ぽ、ロリもあるよ」


  「ぶくぶくぶく」


   どうやら、本なのに泡をふいたらしい

   

  「おーい、大丈夫かー」


  「ふ、封印指定!!!!」


  「は?!」


   意味がわからん、この本は18指定だが


  「この紙袋から出す事も、ましては読む事も許しませんわ」


  「は、はぁ」


  「まだ、X指定本と話しているより紙袋と話している方がましですわ」


   それは、俺が一番先に思った事そのままだよ


  「くっ、私のミスですわ・・・まさかこんな卑猥な本に乗り移ってしまうなんて・・・

   く、屈辱・・・・」


  「で、どうするんだ」


  「もし私(この本)を読んだら殺しますわ」


  「いや、そうじゃなくて」

  

   まあ、女性の声のするエロ本というのもまた、どこぞののマニアには受けそうな気もするが

   今の僕にとってはなんだか奇妙なものでしかないわけで・・・


  「しばらくは、他の媒体に乗り移ることもできませんし・・・・くっ、紙袋をつけたままなんて、目隠しされた状態

   のようなものじゃないですか・・・・これじゃ現状を理解しようにも・・・・・」


   なにやらエロ本は難しそうな事をいくつかかたり・・・・


  「とりあえず寝ますわ」


   ふて寝という単純な答えにたどりついた。


  「今の私では紙袋の中からの映像しか見る事が出来ませんのだから、この回りの現状を

   口頭でおしえてくださる?」


   怒ったように、威圧的な態度で命令する。


  「ここは僕の家、3階、夜の9時、鍵はしまっている・・あとは・・・」


  「とりあえず、今は大丈夫そうね、でも安心しないで、敵はいつ出てくるか分からないですわ

   いつでも逃げ出せる準備だけはしておく事です、あと・・絶対に殺人鬼に出会っても

   戦おうとしない事、あなたたちプレイヤーはどうあがいても、ただの人間なのですから、

   できる事といえばそれは・・・・」


  

   説得と利用


   そして逃避



   それだけが僕に与えられた力


   あ、あと、なぜか仲間になった「エロ本」


 

   「じゃあ、明日の7時に起こしてくださいまし、

    あと今日はもう寝る事、勝手に外にであるかないでくださいよ、

    ではおやすみなさいませ・・・」


   勝手な事をいって、勝手に今日を締めくくる自称主人公の為のマジックアイテム兼相棒

   

   やがて、静かな寝息をたてて、エロ本は睡眠につく

   


   そして夜は更けていく・・・・




  口咲女 Aパート 終了






  

  

  「お前はもうしゃべるな」



  そう言ったは実の父親だった。


  その男は私の口をガムテープで縛り、食事と排便の時間以外の全ての時間を

  部屋にある小さな押入れに押し込み、扉につっかえ棒をかけた。




  

  私が6歳の時の記憶だ。





  私にとってこの男は決してよい父親とは言えなかった。


  ギャンブル好きで、女好き、借金は多く、よく酒によって私をぶったのを覚えている。


  母親はと言うと・・・・・物心付く前にこの男に愛想を尽かし、私を置いて、出て行ってしまった。


  

  だからだろうか、母親がいなく、父親だけにすがるしかなかった私は、より良い心の

  より所を探して近所のおばさんやおじさんたちとお話し、自分の居場所を作った。


  いまではその面影は一切無いが、当時は近所では有名な明るいおしゃべりな女の子で

  通っていたほどだ。

   

  父親は最悪な人間で母親はいない、それでも近所の人たちはよくしてくれる・・・

  近所の人達との会話は唯一楽しかった記憶だった。


  だが、さらに近所の人たちと仲良くしようとして、よりおしゃべりになってしまった

  のが悪かったのかもしれない。



  私は近所の人に言ってはいけない事を言ってしまった。


  

  「お父さんね、このごろ家でずっとごろごろしてるの、ちょっと前まではね、ちゃんと

   朝からお仕事いってたの、だからね、私がね、お仕事いかないのって聞くんだけど、

   そしたらお父さんいつもぶつの」

  

  6歳の子供にとってはただの疑問だった、隣の家や幼稚園に通っている友人である

  京君のお父さんは毎日同じ時間に家を出て、夜遅くまで仕事に言って帰ってくる

  しかし・・・・自分の親はその当たり前の行動すらしていない。


  

  そんな些細な疑問



  そして、その頃の私は自分自身ではその答えに行き着くことが出来なかった、


  だから聞いた。


  聞いた結果、その質問は聞いたおばさんだけではなく、ご近所全てに伝わった。


  

  父親がリストラにあったと言う情報を・・・・・




  この話が近所中に広まった次の日、私は父親に呼び出され、例の「口封じ(呪い)」

  をされて、監禁される事となる。




  確かに、今考えれば父親の言いたい事も少しは分かる、

  特に無駄にプライドの高いあの男の事、自分がリストラにあい、その上自らの子を

  殴っているなんて事、近所には知られたくは無かったのだろう。



  だが、その事を当時6歳の子供に理解しろと言うのは酷な話だったのだ。    


  私はわけも分からず、会話する事を封じられ、朝も昼も夜も暗い押入れの中

  ただただ、許される時を待った。



  しかし、その許される時は一生訪れる事は無かった。


  

  最後にあの男の顔を見たのは監禁されてから1週間がたった日の晩、

  食パンと水だけを与えられ、その後また乱雑に口を縛って扉につっかえ棒をした。

 

  その時顔を見たのがおそらく最後であり、次に押入れの扉を開けたのはあの男

  では無く、近所のおばさんだった。



  おばさんは「大丈夫かい?、今ほどいてあげるからね」といい、私を縛っていた

  ひもやガムテープを全てはがし私を解放した。


  

  だが、その開放はあくまで私の体を縛る物理的なものだけであり、父親が言った

  「お前はもうしゃべるな」と言う心の縛りまでは開放されなかった。


  もしもここで開放したのが父親だったのなら、あるいは・・だがもはや、

  もうこの世にいない人物に許しを請う事など出来なかったのだ、なぜなら

  父親は前日に酒によって車に轢かれ死んでしまったのだから。





  あっけない父親だった者の死


  残していった私への縛り


     

  

  これが直接の原因であったことは確かであろう、

  この時を境として私は「言いたい事」・・・・すなわち「私の本心」

  を言う事が出来なくなった。


  極力無口に・・・そして物を言う時は、一つ一つの言葉に気をつけて何度も何度も

  考えた上で言葉に出す、そして回りに都合の良い事だけいい、自分の本心は言わず

  に押し殺す。


  そんなめんどくさいやり方でなければ人と話す事が出来なくなってしまったのだ。




  そう・・・・幼少期の明るくておしゃべりな女の子が一転し

  暗くてなんにでもなあなあな、無口で、さえない女の子になっていたのだ。



  それが原因でいじめの対象に選ばれる事もしょっちゅうあり、

  特に中学の時はひどく、嫌な3年間を過ごした物だ。



  だが・・転機は高校入学時に起きた。



  私は同じ学年の男の子に恋をしたのだ、その子の名は「林山 京」

  昔近所で、遊んでいたご近所さんだ。



  ある意味幼馴染とも言っていい彼は、父親が死んだ後にすぐに引っ越してしまい

  高校入学時に戻ってきたというわけだ。


  彼は男前で背が高く誰にでも優しかった、それもあって多くの女子から人気があり

  男子からも信頼があつかった。



  偶然私に話しかける機会があった時も、親切に、そして優しく接してくれた

  それはそれは初対面の人物と話すように・・・・・



  そう、彼は私の事を覚えてはいなかった・・・いや、当然か、幼少時の短い

  期間しか接点が無いのに覚えていろというのが無理な話。

  

  私が覚えていられたのは、私の人生の中で、唯一楽しかった思い出が、

  近所の人たちや彼と遊んでいた時の時間にあるからであり、普通は覚えてはいない

  だろう。



  さらに彼との立場も大きく変わっていた、昔は私が口早にしゃべり、弱気な彼を

  強気に先導していたのだが、今は立派で自信に満ち溢れた彼と、なんにでも消極的

  で地味で無口な少女。


  あまりにも違いすぎた・・・・でも、彼と一度話してから私はどんどんと

  彼に引かれていった。

  昔の楽しかった記憶も彼に引かれていく大きな理由であったのかもしれない。


  

  そして私は勇気を持って彼に話しかけた。


  

  今まで・・・いや、あの日から、私は自分から話しかけるなんて事はしなかった

  それは、あの日の父親の一言が今もまだ心をしめつけているからだ

  だけど、それでも私は彼と話し、仲良くなりたかった、だから、この呪縛を

  乗り越え様として必死にがんばりそして・・・・・・



  「ご、ごみすて一緒にいきましょう・・・・」


  呪縛を乗り越える些細な一歩を踏み出した。


  それからと言うもの、少しずつの努力を重ね、彼と少しずつではあるが

  話す事が出来るようになり、彼と話している時だけが唯一の安らぎであり

  唯一私が多くを話す事の出来る時間だった。


  

  彼の好きな野球の話や、テレビの話、人気歌手の話・・・・などなど

  私にとって興味の無いことまで、彼に合わせて話、その場を出来るだけ長く

  続けようとした。


  だが・・・・それでも私の呪いは完全に解けることはなかった。

  

  確かに彼と話ができる様にはなった、だが・・・・彼に合わせるだけで、自分の

  言いたい事を言えない、思いを伝えられない、それどころか、彼にあわせるばかり

  知らない事まで知っていると言い、知らない事さえ知らないといいたいことが言えない



  ―― 私の本心(言いたい事)を言う事ができない ――



   



  彼と話していてもその呪縛だけは解けることがなかった。  

  

  

  


  そして、中途半端にほどけたまま、あがいたのが悪かったのかもしれない・・・

  中途半端に解けた紐は、がんじがらめに私を縛りつけだまになり、解けなくなり

  私はその後本物の呪いにかかることになる。




  

  それはつい2週間前の事だ


  私は放課後に中学の時に私をいじめていた女子生徒4人に音楽室に呼ばれた。


  女子生徒4人はそれぞれ椅子に座ったり、窓に寄りかかったりしていおり、

  そのうち一人は私が入った後すぐに防音の為厚い壁で仕切られた扉の前に立ち

  行く手をふさぎこう言った。



  「鈴子・・・・・あんた、京君に色目使ってるだろ・・・・キショイんだよ」


  色目・・・・始めは何のことを言っているのか分からなかった、確かに

  彼には好意をもって話しかけていた事は事実だ・・・・しかし、色目など

  という大胆なまね、一度もしたことは無い。


  「え・・・いや・・・何の」


  もじもじとはっきりと物を言わず話す・・・それが普段の私。



  「はっきり、物をしゃべれよクズ、何言っているかわかんねーよ、バーカ、」

  別の女子生徒が私に罵倒する。


 「京君にはちゃんと話せているじゃねーか、ぺらぺらぺらぺらと、ある事無い事

  その口からよくでるよな?あ?この口先女がぁ」


  「気持ち悪りーんだよ、普段は無口でさえねーくせに、京君の前ではおしゃべりになる

   しかも、てきとーなあいづちばかり、いいやがって」


  そうか・・・この女子生徒達が何を言いたいのか少しずつ理解できてきた、

  

  つまり、彼女達はは



  ―― 普段は無口で地味な奴が好きな男の子の前でだけ明るくなり、

     おしゃべりをしている・・・色目を使っている姿が気に食わないんだ ――


  それは同時に彼女達が憧れの男子生徒と話をしている私への嫉妬でもあり、彼女達が

  彼と話できない事への苛立ちのはけ口として私が標的になっただけの話。



  女子生徒は私の髪をつかみ音楽室の真ん中にある机の上に頭を押し付ける。


  バタン


 「ほら、なんとかいってみろよ、京君とはあんなに話できてただろ、ほら、口先だ

  けの、中身の無い会話をよ!?・・・・ほら、どうしたよ?私とは話が出来なんですか?

  この口先女が・・」


 顔を机に押し付けられる、

 

 気が付けば私の周りを4人の女子生徒が回りを囲む形・・・完全なるイジメパターン


 バタン


 女子生徒の一人が机の上に切り取られた白いノートと鉛筆を叩きつける。


 「ほら、これで書けよ、私は口先だけの女です、京君に近づきたい為に適当な事で

  彼の関心を引いていました、私はそう言う陰湿な女です、口先女です、もう、

  適当な事を言って京君には近づきません、約束します・・・・・ってな」



 無理やりペンをもたされ、紙に顔を押し付けられる、そんな状況で、そんな事

 かけるはずもなく・・・また、言いたい事が言えない自分が悔しくて



 「ち・・ちが・・わ・・わた・し・・は」


 何とか反論しようとする・・・だが、言いたい事が言えない


 「あん?何言っているかわかんねえよ?!はっきりしゃべれ・・・いや、口はいいから

  口より手を動かせよ、口先女さんよぉ」



 がん、また頭を机の上におしつけられる。


 悔しい、でも何もいえない


 そんな時だった・・・・音楽室の扉を開いて予想外の人物・・・いや、というよりは

 一番今会いたくない、自分のこんな姿を見られたくない人物が入って来たのは。






 「何を・・・やっているんだ?」


 驚きの表情と共に京君はこちらを見る。


 その一言に、自分たちがイジメを行っている姿をみられた事に気づき、

 即座に手を離す。


 「いや・・・違うんだ、こいつがわりいんだよ・・・・」


 「そ、そうよ、こいつが、口先だけで、京君に近づこうとするから・・・」



 他の二人もそうよそうよと合図地を打つ、だが、あきらかに先ほどの態度とは異なって

 弱々しくなっている四人


 彼はそんな女子生徒の間を通って私の元へと歩み寄る。

 私の前にまで立つとゆっくりと顔をのぞきこむ。



 その姿はまるで私を救いにきた王子様の様に見えた。

 


 

 確かに、苛められている惨めな姿は見られた、でも、こうやって私に近づいて

 手をのばしてくれようとしている、どんなにダメな私でも彼はいつも同じ優しい笑顔で

 私と会話してくれる・・・・・そして、彼が私にとっての呪縛を解くきっかけを作って

 くれた大切な人、おそらく彼が・・・私の全ての呪縛を・・・・・解いて・・・





 「僕も、君の口先だけの言葉にはうんざりしていたんだ・・・・野球の事も知らないくせに

  知っているふりしてさ、いつも適当な事言って僕に話しかけようとする・・・・

  ぶっちゃけ、うざいんだよね、そう言うの・・・・いい機会だ、君、もう話しかけないでくれる?

  君と話してるといらいらするんだよね、自分の言いたい事言わないで、人に合わせてさ・・・

  それだったら君、いっその事・・・・」








           (お前はもうしゃべるな)

  ――― 「もう、しゃべらないで無口でいた方がいいよ」 ――― 

  


 

  






  回りが一気にうるさくなる、さっきまで小さく肩を震わせていた4人が、

  「そうだよな、やっぱり京君もそう思ってたんだ、私も大変だよなとか

   思ってみてたんだよね」などと言いながら、彼の周りに集まってくる。


 

  「ほらほら、口先女さん、わかりましたかー?うざいんですよあんたは!!」


  「ほらっさっさと、手うごかせよ、私が悪かったです、口先女ですって」


  「当人が口先だけっていってるんだから確定だな、口先女さん」


  

  ハハハハ


  ハハハハ


  笑い声が頭の中にこだまする。



  私は最も好きだった人に、あの時の呪いと同じ言葉をかけられた。


  もう・・・・立ち上がれない・・・・声も出ない・・・



  頭を机の上に押さえつける・・・・・抵抗出来ない・・・・

  

  抵抗しなくていい・・・・だって、もう話すな・・・って言われたんだもん

  

  抵抗の言葉すら封じられたんだもん・・・・


  ハハハハ


  ハハハハ


  もういい、私は何も話さない・・・何も・・・・


  私は涙を流しながら、机に突っ伏す。


  鼻水がでて、髪の毛が口に入って、わけが分からない


  ハハハハ

  

  ハハハハ


  まわりがうっとおしい、


  でも、言いたい事は言えない


  言うなといわれたから・・・・もう、私が言いたい事を言える「口」は存在しないから


  でも、言いたかった、確かに私が言いたい事を言えず、あいまいな、都合の良い事しか

  言えなかったのは事実であり、自分の責任だ・・・・・だが、それは過去のあの事が原因

  であって、本当は私は・・・・・・・・




  私は言いたい事を言いたかった、



  言いたい事を言える少女だった



  なのに・・・もう言えない、言う事も許されない、なぜなら完全に拒絶されたから


  話す事を・・・・言う事を、思いを・・せめて嫌われる前に、好きだと・・・

  伝える事を。



  私は・・・・「私の口」からはもう、言えない


  

  何か・・・私の口以外の別な口が使えればいいのに・・・




 ―――― 「じゃあ、わたしが、私の代わりに言ってあげる」 ―――

 

  

  唐突な声に笑い声がぴたりと止む


  

  

  「え?・・・今の声・・・・?何?」



  女子生徒の一人が驚きながら聞き返す、

  なぜならば、その声はまるで、電子音のような人間の声で無いような音

  言うならばヘリウムを吸った後の様な、奇妙で歪な声。



  「な?なに?、誰なの」



  音楽室には机に突っ伏している私と、私を苛めていた四人そして私の言葉を拒絶した

  彼しかいない・・・だが、確実に6人目が会話をおこなっていた。


  「くくく、驚いてる驚いてる、ほーらこっちだよー」



  その声はどこからか語りかける、その奇妙な声をさがし、少女たちは、周りを見渡す

 

  窓の外


  入り口

 

  掃除箱


  あげくのはてには、天井付近にぶら下げてある、バッハやベートーベンの写真にまで

  気を配っている。



  「キャハハハ、滑稽だなぁ・・・・ベートーべんがしゃべるはずないだろうが、

   こっちだよ、こっち、ちゃんとしゃべるにはくちが必要だからね」


  

  そう言うと、私は気が付かないうちに右手を高く上げていた。


  「ハロー、わたし、鈴子~、よろしくねー」


  声は私の右手から発せられていた、


  それは歪な状況


  私の手の親指は人の下あごがくっ付いており、人差し指、中指、薬指、小指は

  上の歯と連結していた。


  まるで、入れ歯を使った腹話術の様な右手に驚く、だが声は出ない・・・

  出さないのでは無く・・・出ない。



  勝手に右手が動きそれに連動して右手の口がパクパクと動く


  「あれ?何驚いてるの?みんないきなり静かになっちゃって・・・・

   まあ、一番驚いてるのは私なんだけどね、私の右手こんなんなっちゃった(笑)」


  そう言うと私の右手はケラケラと笑い出す。


  青ざめる5人


  そのうちの一人の女性とは腰を抜かし、床に暖かな水溜りをつくってしまった。


  「きったなーい、さいてー、失禁?はずかしー、もう高校生でしょー?」


  よっこらしょっと右手が勝手にいいながら体が立ち上がる、私の意志ではない・・・

  いや・・・・私の意志なのか?

  

  確かにこの右手の口が行っていた事は私が心の中で少しでも思った事だが・・・


  


  「そういえばさっき、あなた私に口より手を動かせって言ったわよね?

   じゃあ、言葉通り・・・・・・えい」




  右手が勝手に女子生徒の前を空振りする。




  「むしゃむしゃ、いただきます・・・あ、食べた後で言っても遅いか、じゃあ

   いただいてます。」



  私の右手は何か赤いものと肌色の物をほおばっていた、視線を前に移す

  私に口ではなく手を動かせといった女子生徒の喉がぱっくりと開いてえぐられていた。


  血がたれる


  血が飛び散る


  肉片はフローリングを汚し、喉元からはヒー、ヒーと息が漏れている。

  やがてひざをつき仰向けに倒れた。  


  そこで理解した、私の右手は相手の首下を空振りしたんじゃなくて、あの一瞬で

  抉り取ったんだと・・・ものすごい握力・・・いや、顎の力で・・・



  「きゃああああああああああああああ」


  残った女子生徒が目の前の光景を信じられずに叫ぶ・・・だが、その声は外には

  とどかない・・・なぜならここは音楽室で、学校内でもっとも防音がなされている部屋である

  ・・・・実際の所、彼女達が制裁の場に音楽室を選んだのはそれが一番の理由だが、

  今の状況では裏目以外の何者でもない。



  逃げようとする女生徒、それを押しのけて逃げようとする彼・・・・・



 「あー、がっかりー、女の子をほっといて、自分だけ逃げようとするんだー

  京君幻滅ー」



  ガブリ


  二人目の少女の顔がえぐられる、ぐちゃぐちゃになった顔のまま地面に倒れる、

  だが、まだ二人とも死んではいない・・・・虫の息ではあるが。


  

  一番初めに扉にたどり着いた女子が一生懸命とってをつかんで押してあけようとしている。



  「なんで、なんであかないの?あいてよ・・・」


  私はそれをみて馬鹿だな・・・冷静になれば開いて逃げれるのに・・・と思う


  

 「ねえねえ、それって引きドアだよ」


  ガブリ


  扉を握っていた両手首が噛み千切られる



  「あぁああああああああ、私の・・・私の手ええええ」



  いきおいよく飛び出す血しぶき

  混乱で何も出来ない少女、


  早く抑えないと、出血多量で死んじゃうよ?


  「さて」

  

  扉と彼の間に立つ形で私の右手はゆっくりと、私の伝えたかった事を伝えだす。



  「京君・・・私の事覚えてるかな?」



  「し・・・しらない・・・お前みたいな口・・」


  「あ、わたし、じゃない私、北原 鈴子の事、小さい頃あそんだんだけど・・・」


   

  「し・・・・しるかそんなもん・・・・」



  そっか・・・やっぱし・・・おぼえていなかったんだ・・・ちょっと残念


  「まあ・・・いいや、じゃあ過去は関係なしで・・・今を語るとしますか」


  

  私の右手がゆっくりと彼の目の前に置かれる


  「ひっ・・・」


  足元から崩れ落ちがたがたと震える彼


  そして、





  

  ガタン




  私の後ろで尿を漏らしていた少女が、私に向かって近くにあった椅子を投げつけてきた。


  だが・・・その椅子は私には当たらない・・・なぜなら私にあたる寸前で私の「左手」が

  椅子にかじりついているからだ。



  「あらー、なかなかやるわね~ワタシに椅子をなげつけてくるなんて、いい度胸してるわん」


  それはそれは綺麗で色っぽい声をした声が左手から聞こえ出した。


  当然左手にも右手と同じような「口」がついている。


  「あぶなかったぜーワタシ、ワタシのおかげで、私が傷つくの防ぐ事ができたぜーサンキュー

   ワタシ」


  

  「もうしっかりしてよね、わたし、せっかく今回は出番なしでゆっくり高みの見物できる

   とおもってたのに」


   

  私の右手と左手が会話してる・・・なんだか不思議な気分だ


  「でも、椅子投げてきたアナタ・・・なかなかいい度胸してるわぁ」


  左手が本気で褒めている


  「京君に・・・・京君に手を出すな!!」

  

  がたがたと膝を震わせており、スカートはびちょびちょにぬれているが目だけは

  こちらを一瞬も逃さずににらんでいる。

  

  「あら・・・・他の三人と違って、あなたは本気で彼の事すきだったのね」



  「そ・・・そうよ、なんかもんくある?だからうざかったのよ、京君に話しかけている

   あんたが」



   左手が淫美に笑う


  「いいえ・・・素敵よ・・・・私よりしっかり物事を言えているものそれだけで

   あなたに文句なんて無いわ・・・でも」



  噛み付いていた椅子をそのまま、少女に投げ返す。


  まるで、大の大人が力いっぱい投げても不可能なぐらいの力で軽々と椅子を投げる。



  ガタン


  「きゃ」


  少女は勢い良く壁にぶつかった。


  そして


  「さて・・・さきに言われちゃったわねえ」


  「まあ、先に言われちゃったもんはしかたがねえよ」


  二つの口が交互に語る

  

  私の思いは伝える事が叶わず、 

  

  「・・・・・・・・・さよならだ(よ)」


  「へ」



  がぶり がぶり








  人一人が完全に食べられるまで5分持たなかった。



   

  「まずい」



  「口に合わないわ」



  「さて、どうするよ、こいつら」



  回りをみると、顔が削られた子に腕が無い子、首から息が漏れている子に、部屋の片隅でがたがたと震えている子

  の四人が散らばっていた。


  「とりあえず、責任もって全て食うか」


  「そうね、食べ残しはよくないわ」


  結論


  好き嫌いはよくない

  残したら生産者(?)に怒られる

  食べれる時に食べておこう





  

  いただきます








  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  私はその日殺人鬼となった。




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