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野盗の襲撃

 3、4時間ほど眠っていただろうか?ショーンは何か嫌な気配の様な物を感じてテントの中から飛び出した。月の高さから朝日が昇までは5時間ほどある事が推測された。その月明りの中アレックスはロングソードを抜いて身構えていたが、防具は身に着けていなかった。ショーンと言えば、毛布から飛び出して来たものの、武器ひとつ持っていない。

「アレックス、何かあったのか。」

「まだ見えないが多分、野盗の集団だ、ショーン、君の方がスキルで解るんじゃないか?」

「俺のスキル?」

 ショーンは今までジョブやスキルに関してあまり考える事が無かった。ジョブを得た事を感じたその時に父親に尋ねてみたが、説明しても伝わらないだろうし、そのうち自然にすべてを感じられるだろうと言われて、それ以降はあまり気に掛けていなかった。

 しかし今、緊張感の中で精神を集中させると、頭の中に文字とも音声とも言えないパラメータが浮かんだ。

ジョブ[盗賊]

クラス [初級ジョブ] 現在クラスチェンジ不可

スキル [索敵] スキル解放可 未実行

    100m以内の殺意、害意の有る者の居場所を調べる 

    [投擲]スキル解放可 未実行

    20m以内の敵に石、ナイフなどを投げ付け命中させる事が出来る

    [強奪] スキル解放可 未実行

    至近距離の敵から物を奪う事が出来る

 ショーンは直ぐに[索敵] スキルの解放を意識すると、一瞬で野盗の位置と殺意、人数を把握できた。

「右の木の陰に2人、左の草むらに3人、本気で俺たちを殺そうとしている。」

「僕も殺意は感じる、ついてないね、まずは僕から仕掛けてみるよ。」

 アレックスは10m以上距離のある野盗が潜む木に向かってロングソードを横なぎに払ってみせると、すさまじい剣圧が疾風と共にその木を襲い、根元から2m程の所で幹が折れ音をたてて倒れた。彼は命を奪わない為わざと上を狙っていた。これで恐れをなして逃げ出してくれるなら、それでもかまわないと思っていた。いや、むしろ戦いたいとは思っていなかった。

 少しの間、何が起こったのか解らなかった野盗たちだったが、木の倒れた音を合図に5人が一斉に飛び出して手に持った50㎝程の幅の広い山刀で切りかかってきた。アレックスの一撃はあまりに常軌を逸していた為、野盗たちは彼と倒木との間に関係性を見て取る事ができなかった為だった。

 最初に襲い掛かってきた2人の男たちはロングソードを構える男よりも丸腰の男を先に始末してしまおうとショーンに切りかかる。

 彼はまずい、と思ったが、それと同時に自分の体が風の様に2人の男たちをすり抜けていく事を他人事のような感覚でとらえていた。それは自分以外の全てが止まったかのように、ゆっくりと動く世界。2人の男は目の前の丸腰の男が突然消えて、気付くと10m以上離れた場所に立っているのを見た。しかも何故か自分たちの持っていた山刀をそれぞれ両の手に握っていた。

 ショーンは彼のゆっくりと動く世界で[強奪]のスキルを解放し、そのスキルで一瞬の内に野盗2人から武器を奪っていた。

 この時に至って野盗は自分たちの獲物と思っていた相手が手を出してはいけない者達だった事に気付いた。

 そんな一瞬の間にショーンは次の行動に移っていた。奪った山刀を遠くへ投げ捨てると、残像を残して素早く移動して同じように残り3人の野盗から次々に武器を奪い去っていた。完全に丸腰となった5人の男の中のリーダー格と思われる男が声を上げる。

「やばいぞ、ジョブ持ちだ。何でこんな田舎に居やがるんだ。」

「兄貴、もしかして噂になっていた勇者じゃないですか。」

「いや、動き方から考えても恐らく『盗賊』か『暗殺者』辺りだ、どっちにしても俺たちが相手できる奴じゃない」

「早く逃げないと兄貴。」

 本当に逃げられるのか?と思いながらも、恐怖に駆られた野盗たちは、その場から走り出そうとするが。最初は逃がしてやろうかとも思っていたアレックスの気が変わった。何故か彼は自分の能力を人に見せたがらなかった。それは勇者の力に限った事ではなく、普段の生活でも色々と能力を隠しヘラヘラとして誤魔化していたが。しかし今回は違っていた。いつもとはまるで別人のような顔付きで、ロングソードを寝かせると、握り手の底を5人の野党の溝内へ次々に叩き込んだ。その素早さは『盗賊』のジョブを持つショーンでさえも目で追う事が出来ない程だった。出来る限り手加減をしたアレックスだったが、5人の内、野党としては軟弱な2人は口から血を流していた。恐らく内蔵にまで損傷が及んだのだろう。残り3人も強烈な痛みで気を失っていた。

 さっきまで自分のスキルに驚いていたショーンであったがアレックスの格の違いに驚愕した。

「すごいな、アレックス・・・」

「いやぁ、ショーン、君が武器を奪ってくれたからだよ。僕の従者は優秀で本当に助かるねぇ。」

 いつもの様子に戻ってアレックスはヘラヘラと笑っている。

「ショーンそこの3人をロープか何かで縛ってくれないかな?血を流してる2人は、まあ動けないだろうから縛らなくてもいいかな。」

 ショーンは返事を返してロープを馬車から取っきて男たちを縛りはじめた。

「アレックス、お前も手伝ってくれ。」

「どうもそう言うのが苦手なんだよ。」

「おまえなぁ。」

 騒ぎの中やっと目を覚ました御車の男は何事かとテントの中から這い出してきて倒れている男の顔を覗き込んだ。

「坊ちゃん方、こいつらここを通る行商人を狙っている野党集団ですよ。これから行くリンフォリィの街で賞金首の手配書が貼られていやしたよ、この季節は行商人が少ないんで他の場所で悪さをしてると思ってやしたが、勇者様の王都召喚が噂になっているのに、こんな馬車襲うなんて気がつかなかったんかねぇ?間抜けな奴もいたもんだ。」

 言われて見るとショーンも保安官事務所にある手配書で見覚えのある顔が何人かいた。御車の男は仕事柄、荷運び仕事は慣れていて。5人の男を縛り上げると、全員を次々に屋根の上に持ち上げてそのまま屋根に縛り付けた。中々の怪力ぶりである。

 その内に空は少しづつ明るくなり、ショーンとアレックス、御車の男の3人は木にさして炙ったベーコンと黒パンで簡単な朝食を取り早めにリンフォリィの街へ出発した。

「坊ちゃん方、リンフォリィの街に着いたらたんまり賞金が貰えるだよ。」

 馬車を走らせながら御車の男が馬車の中の2人に話しかけた。

「お金には余り興味が無いから君に上げるよ。運んでくれているのも君だしね。」

「さすが勇者様だねぇ、どうせなら馬車に(勇者様、盗賊を退治)って旗でも掲げて走るかね。」

「それもいいね、そうすれば馬鹿な野盗がこれ以上襲ってくることもなくなるだろうしね、どう思うショーン?」

「確かに悪人は襲って来ないだろけど、野次馬が山ほどやってくると思うぞ。」

「それはショーンが大変だよね。」

「何で俺だけ大変なんだよ。」

「そりゃあ、野次馬の処理担当は従者だから。」

「おまえなぁ。」

(野盗の相手は嫌だけれども、野次馬の相手もそれ以上に憂鬱だ。アレックスの事だから本当に全部、俺に野次馬の相手をさせるつもりだろうし、旗何か掲げなくても勇者の噂で大騒ぎになる事は確実だろう。)

「本当におまえなぁ・・・」

「どうした?元気がないねぇ?」

 ヘラヘラと笑いながら例の本を読みながらアレックスがショーンに訪ねてきたが、返事をする気にもなれずショーンは、ため息をつく。御車の男だけが満面の笑みを浮かべリンフォリィの街へと馬車を急がせるのだった。

今回はショーンの能力とアレックスの能力の一部が披露されました。次回は勇者がリンフォリィの街にやってきた事で大騒ぎになります。

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