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サウスカポバーダ公爵領と偽勇者の決意

ショーンとアレックスの2人の横向きです。

挿絵(By みてみん) 貨客船はグランバレーから一番近いサレアの港で修理をする事になった。勿論、最低限の応急処置だけで、直ぐに出発する事になっていた。船での食事に飽きていた乗客達は、皆、港に揚がり食堂に入ったり屋台で買い食いしたりしていた。

 ショーンとアレックスの2人も適当な食堂を選んで、昼食を取っていた。


「アレックス、船に現われた魔族の女の狙いはお前だったんじゃないか?」


「可能性は僕も有ると思うよ。」


「魔族の女は人間と見分けが付かなかったな。」


「嗚呼、身体に魔石を持っているだけで他は人間と変わりが無い。」


「魔族と人間は本当に別の種族なのか?」


ショーンがそう思うのには理由があった。『偽勇者』のジョブのパラメーターに現われた、『魔王』と言うジョブ。『天職』は人間だけが得られる物で魔族にジョブ持ちはいない、しかし『魔王』と言うジョブが存在するならば。魔王は人間と言う事になってしまう。ショーンは考えてもまったく解らなかった。


「少なくとも、人間の体に魔石は埋まっていないね。魔族は魔石を体内に持っているからこそ、強力な魔力を持ち全ての者が魔法を使う。魔力が強力故に髪や瞳に色濃く属性が現れる。」


「魔石とは、一体何なのかな?」


 魔族の話しは結論の出ないまま終わり、雰囲気をかえる為か、ショーンは故郷について話し始めた。


「テスタロッサが寂しいがっているんじゃないか?」


「僕とショーンが2人とも街からいなくなったからね。でもテスタロッサは以外と強い子だから心配はいらないよ。」


「そうだな、結構しっかりしているからな。」


 他愛も無い話しをして食事を終わらせた2人だったが、ショーンの頭の中は『魔王』のジョブの事が渦巻いていた。




 予定に無いサレアでの足止めは何事も無く過ぎて4日目の昼には出航となった。応急処置だけの貨客船は王都の南、サウスカポバーダ公爵領に向けて最後の運行を始めた。




サウスカポバーダ公爵領の領都リバーサイドパレスはその名の通り、トワノ河の港、リバーサイドハーバーを中心にした街である。

 前国王の弟、現国王の叔父に当たるカポバーダ公爵の治める水上交易の拠点である。大河によって内陸と海洋両方からもたらされる物資の玄関口として王国にとって最も重要な交易港であった。

 サレアの港からの先触れで貨客船が魔族に襲撃された事を知らされていた公爵は港に役人を派遣して貨客船の到着を待っていた。


 リバーサイドハーバー港の検問所に貨客船で魔獣と闘った者全員が集められて、調書が作られた。ショーンとアレックスが地竜、ゴーレムの両方を討伐し召喚魔術師の女も力尽き魔石となって死んだ事も、皆が証言した。ショーンとアレックスの2人は魔族の女の身体から残された魔石を渡し、自分たちの身元証明として国王よりの召喚状を見せた。

 検問所に集められた冒険者達は幾らかの報奨金を受け取り出て行ったが、ショーンとアレックスの2人は残され、そのまま公爵邸に案内された。


公爵に失礼が無い様に勇者の服と従者の服に着替えた2人は役人に連れられて公爵の執務室に通された。


「お目にかかり光栄です公爵閣下。」


「報告は聞かせて貰った、魔族を討伐して船を救ってくれた事、感謝する。」


「いえ、私があの船に乗っていたから魔族に襲われた可能性もあります。逆に迷惑をかけたのかも知れません。」


「何れにしても、王国は魔王領と敵対している、仕掛けて来た魔族を撃退してくれた事は事実。何か礼をさせて貰おう。」

そう言って公爵は立ち上がって歩き出し、2人に付いて来る様にと行った。


  2人が案内されたのは公爵邸の武具保管庫だった。その保管庫は公爵軍の装備保管庫とは別の公爵家に代々伝わった武器防具が収められていた。

「此処にある武具は全て光属性の武器と防具だ、好きな物を持てるだけ選んでくれて構わん。従者殿も大変活躍したと聞いている 、その方も好きな武具を選ぶが良い。」

公爵は笑顔で話した続けた。

「此処にある武具は全て300年以上前に造られた物だ、王家の血筋を受け継ぐ者は300年の間、光属性を持つ者が生まれていない。その事はその方等も聞いた事があろう。多くの光魔法師を輩出した家柄から伴侶を選ぼうとも決して王族から光属性魔法を扱える者は生まれないのだ。先祖が使用した光属性武具も現在の王族に取っては何の価値も無い、光属性の無い者が光属性武具を使うと武具に力を奪われて弱体化するだけだ。ならばただ置いておくだけよりも、光属性の勇者に使って貰った方が遥かに良い。」

 そう促された2人は沢山の武具の山の中から自分に合いそうな者を探した。ショーンは武具の間のアクセサリーのような物に目を止め、それを手に取った。それを見て公爵が話しかけた。

「言い伝えによると此処に有るアクセサリーは防御力増幅の魔道具らしいのだが、長い間魔力を通していないので、詳しい事は解らん。興味があるなら持って行くが良い、最も貴金属としての価値はないがな。」

「公爵閣下、このネックレスのような魔道具だけいただきます。私は王都までの従者です。勇者の正式な従者は、より優秀な者が今後選ばれるでしょうから、武器や防具は遠慮しておきます。」

「欲の無い男だな、その方の剣が魔族との闘いで使い物にならなくなったと聞いておるぞ。私が選んでやろう。」公爵は武器の中から、それ程目を引かない地味な長剣をショーンに渡した。

「その剣なら、その方も気にせずに受け取れるであろう。一様は光属性に耐性があるはずだ、今その方が使っている剣よりは少しはましであろう。」

 わざわざ公爵が手渡してくれた長剣を断る事も失礼に当たると思ったショーンは公爵に頭を下げて受け取った。

 アレックスは剣の握り手だけで刃のないような武器を手に取った。柄と鍔だけで、刃が付くべき所に金色の魔石が付いている物だ。公爵はそれを見てアレックスに話しかけた。

「古い物だから壊れている物も多い、それも刃が抜けてしまったのだろう。」

 アレックスは手に取った握り手だけの武器に光の魔力を通した。すると、握り手の先の魔石から金色の80㎝程の光の刃が現れた。

「魔力剣であったか、300年の間、誰も光属性の魔力を注ぐ者がいなかった為、知れずに放置されていたようだな。気にいったのなら持って行くが良い。」

「ありがとうございます。この剣は私の魔力特性ととても相性が良いようです。」

「防具は選ばんで良いのか?」

「私も従者も国王陛下より此の服を頂きましたので、またの機会にしておきましょう。」

 2人は武器を貰い公爵に礼を言って帰ろうとしたが、アレックスの魔力剣の切れ味を見てみたいと願われ公爵軍の練習場で太い丸太をみじん切りにするのを披露して公爵他、軍人達の賛辞を得て無事解放となった。


 領都リバーサイドパレスから広い石畳の街道を北に進めば王都は直ぐそこまで迫っていた。旅を始めた頃と違いアレックスは認識阻害のスキルを常時発動して極力目立たぬ様に行動していた。本来、面倒事を嫌うアレックスらしい行動に納得する半面、わざと目立とうとしていた様なフォレストリアでの行動との違いに、ショーンの心には引っかかる物があった。

 

 サウスカポバーダ公爵領最北の街リバーノースでショーンとアレックスの2人は国王直轄領に入る前の最後の宿を取った。明日更に石畳の街道を北に進めば昼には国王直轄領に入る。

「ショーン、君との旅はもう直ぐ終わるな、国王直轄領に入ってしまったら、ゆっくりも出来ないだろうから今日は2人で新たな旅立ちの前夜祭にしよう。」

「そうだなアレックス、前途を祝って祝杯でも上げるか?」

 この世界で15歳の2人は既に成人していて、酒を飲んでいたとしても、誰も変に思わない。

「たまには、それも良いかも知れないね。」

 2人は宿屋の食堂で細やかな王都前夜祭を行った。食事に合わせて、その日は冒険者の様にエールのジョッキを注文した。

「ショーン、君には色々と迷惑をかけて申し訳なかったね。」

「本当に短い間に色々とあったな、王都に着いたら別れる事になるけど、アレックス元気で頑張れよ。」

「ショーン、君も頑張てくれ。」

 アレックスは何か思いが有りそうな感じでそう言った。2人はエールのジョッキで乾杯して今回の旅の思い出を語り合い、王都前夜祭とした。アルコールに慣れていない2人は直ぐに酔いが回り、早々に部屋に戻って就寝した。


 翌日ショーンが目を覚ますといつもより随分と遅い時間だった。慣れないエールが原因だろう。宿屋の部屋を見回すとアレックスの姿が無かった。頭がはっきりとしてくると、ショーンは何か違和感を覚えた。部屋がやけに片付いている気がした。その理由が解った、アレックスの荷物が見当たらないのだ。首をかしげながら、部屋を見回すと以前と同じようにテーブルの上に手紙が置かれていた。

 ショーンは何か嫌な予感を感じながら、その手紙を読んだ。


『おはようショーン、僕はどうしてもやりたい事が有るので、勇者の身代わりをお願したい。今の君のスキルなら誰にも悟られずに勇者になりきれるだろう?数ヶ月、遅くても2,3年したら帰るから国王との謁見だけでも身代わりを頼むよ。その後はまあ好きにして貰って構わないから。君の事だから僕の父リンカス町長や妹テスタロッサ、それに君の両親の事など考えて皆に迷惑を掛けない為にも身代わりを務めてくれると信じているよ。追伸、勇者の服は君の荷物の中にいれてあるから。君の友人アレックスより。』


 手紙を読んで少しの間ショーンは理解が出来なかった。頭が働きだすと怒りがこみ上げて来て同時にアレックスを探さなければと一瞬思ったが、計画を立てて行動しているアレックスを見つけられる訳が無いと思い留まった。王命を反故にして故郷の者に害が及ぶのは絶対に避けなければと思った。従者として付いていながら、アレックスに逃亡された失態も事実であり、従者に任命した父が保安官を解任される事も充分考えられた。暫く考えていたショーンは大きなため息をついて、それからアレックスの身代わりの偽勇者として、国王との謁見の覚悟を決めた。


 ショーンは勇者の服に身を包み腰に公爵から下賜されたロングソードを差して、王都に向けて石畳の街道を北に進みだした。


 

ショーンは偽勇者として国王と会う事になってしまいました。次回やっと他の2人の偽勇者と出会います。

やっと本編のスタートです。

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