リンゲン
この作品では少々グロテスクな表現や鬱要素がございます。注意して閲覧お願いします。文章がわかりずらいところがありましたらご了承ください。
この世界は狂っている。能力があるものは気味悪がられ遠ざけられる。
「行こうか」
「うん!」
私、リンは元気よく答える。
私は今日も役目を務めに行く。私の隣にいるのは師匠のギムル両親を事故で亡くしてから私を育ててくれている。
「今日はどこに行くの?」
「隣国の町だ」
「えー遠いよー」
「…」
ギムルは無口だ。町の人からは変人扱いを受けている。でも私も変な目で見られているのはなぜだろう?そんなことを思いながら歩き始めた。
2日経ち、目的の場所に着いた。
「ここだ」
「この岩だね...」
「そうだ」
この世界には琳腺という脈があり、そこから災いが吹き出しているのだ。
「覚悟はできているか?」
「…できてるよ」
そういうとリンは手袋をはめ岩に触れた、瞬間右手の皮膚が熱くなっていく、
「痛っ」
「…」
30分ほどして琳腺は閉じた。リンの腕は腫れ上がり、紫色に変色していた。
「大丈夫。これくらい平気。」
息を切らしながら涙をこらえて言う。
「では戻ろう。」
ギムルは何事もなかったかのようにホテルへと向かった。
次の日、リンの腕は完治していた。いつものことだ。
「ギムルおはよ!」
「…あぁ」「次の琳腺へ向かうぞ」
「わかった…」
慣れない。
2時間ほど歩いたところに琳腺はあった。
「助けてくれぇ!」
誰かが叫んでいるのがわかった。琳腺から出た小さな災いが具現化し、リンゲンとなり、少年の体に絡みついていた。
「今助けるから!」
私は両手でぶちぶちと少年にまとわりつく糸を引きちぎり、自分の体に吸収させた。
「ありがとう、助かったよ。君は?」
「私はリン!」「君は?」
「僕はヴァン」「それにしてもすごいね!助けてもらっていうのもおかしいけど琳腺を消せるニンゲンなんて都市伝説だけだと思ってたよ!」
「えへへ~すごいでしょ」
ギムルがこちらを見ている。わかっている。早く琳腺を処理しろと言っているのだ
「ヴァンはもう帰って」
「いいや君にはまだいてもらう」
ギムルが意外な言葉を発した。
「じゃあ…始めるね…」
また激痛が走る、2時間経ったころ、ようやく琳腺は閉じた、今回は右肩まで麻痺して動かなくなっていた。ヴァンは白目をむいて気絶していた。
「次が最後の琳腺だ。ヴァンもこれからついていかせる」
「わかっ...」
それからの記憶がない。
しかし泥のような夢の中で声が聞こえた
「お前たちは知らない。人の愚かさ、醜さを…お前達のチカラに抑えられているがそれも次で終わりだ。せいぜい頑張ることだな」
次に目が覚めた時、ベッド上だった。
「目覚めたか」
「よかった~!もう目覚めないかと思ったよ~!」
「ギムル、ヴァン!」
「もう腕は大丈夫なの?」
「うん!もう平気!」
「これから僕も協力させてくれないか?」
「じゃあおしゃべりしましょ!」
そうして1月が経った。明日は最後の琳腺を消しに行く日だ。
「ついにこれで最後なのね、」
「あぁ。これが最後だ。」
しかし最後の琳腺は小さな水たまりのようだった。油断したのが間違いだった。
「くっ、ああああああああ!」リンが絶叫する、水たまりがとてつもないでかさに広がり、町を飲み込んでいく。
「リン!」ヴァンがギムルの防御の術内から叫ぶ。
リンは全身が焼かれる痛みに耐えながら両手をかざし続ける。
5時間が経とうとしたとき、町はどす黒い津波に襲われ見る影もなかった。琳腺の下は大きな空洞ができており、闇が広がっている。
リンの体は完全に壊れてしまった。全身が黒く変色し、ヒトの形をとどめていなかった。
「どうしてリンばっかり…」
「リンを救いたいか?」
「救えるのか?」
「お前がリンの苦しみを引き受けるのだ。」
「それでリンは救えるんだな。」
「あぁ」
「ならやってやる。」
リンの手にヴァンの手が触れた刹那、ヴァンは絶叫した。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
ヴァンの体に白いリンが入っていく。
「くそがあ゛あ゛あ゛あ゛こんなことならこなかった!俺たちは悪魔だ!人じゃないリンゲンだ!僕は...本気で…あぁ」
ヴァンは黒い塵になって消えた。
「あれ私は…ヴァンが…」リンが泣き崩れる。
「あっちだ!あっちが震源だ!」たくさんの人達が取り囲んできた。
「ギムルは…いない。なんで?!」
「お前がやったのか?」
「違う!落ち着いて、」
「落ちついてられるか!」「お前のせいで家が!家族が!」「殺してやる!」「お前は魔女だ!」
「なんでぇこんなことにっ」
その瞬間リンの体は蹴られ、落ちる。地の底へ
そこで琳腺がすべてをリンに伝えた。
「お前が必死に吸収してきた琳腺は私たちを封印していた術の楔、お前の両親が命とお前に呪いをかけることを代償にして作ったモノだ。私はこの地球にたまる人間どもの呪い合う感情、戦争、内乱、ヒトが死ぬときに残す呪いや残留思念が集まり、生まれた存在。私は世界に災いを降り注ぐが役目なのだ。」
「なんでこんなことに、」
「お前たちは愚かだ特にお前は。ギムルはお前の両親を裏切り私と契約を交わした。私の封印を解く代わりに奴望みを聞くことでな。」
「ギムルは何でこんなことを」
「奴は愛した人ともう一度会いたかったそうだ。今奴はお前のことなどとうに忘れ、愛した人との時間を送っているだろう。」
「…」
「さてそろそろ私もお前を殺して役目をっ、なぜだ!なぜ体が動かん!」
「私は最初から人間じゃない、リンゲンだったんだ両親が最後に私にかけたのは一握の呪いと使命だったんだ。」
「貴様なんぞが私を喰おうなどとふざけるな!」
「もう黙れ。お前は私になるんだ。」
「畜生が...」
リンの目にはもう何も映っていない。この世界にはもう味方はいない。なら、もう…
「全部終わったら私も行くね、かあさん、とうさん、ヴァン…」
リンが巨大化して現れ、世界を喰らっていく。ヒトの魂が蒸発していく。
「くるなあああああ!もう失いたくない!なにも!明日も明後日もこの人と生きっいぎっいぎでぇぇぇぇ」
リンはもう個体としての自分はもういない。新たな琳腺となりこの地球の一部になったのだ。ヒトをこの世界から消滅させて。
次の個体が、リンゲンが自分の存在を消滅させるまでただ呪いを受けるだけの受け皿として。
本作品を読んでいただきありがとうございました!主人公が報われない展開が好きすぎて自分で作品を作りたくなってしまい、筆を走らせた次第です。