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ざまぁ・復讐系まとめ

その婚約破棄の相手は私じゃありません! ~入れ替わり令嬢と騎士の一週間~

作者: 汐乃 渚

2023/04/24 終盤部分を変更しました。



「アデリナ! 俺はお前との婚約を、今この場で破棄する! お前がモニカに行ってきた陰湿な行いの数々は、断じて許せん!」



――夜会の場で高らかにそう宣言したのは、私の婚約者だった。



トラヴィス!? あ、あ~んの大バカ野郎、とうとうやらかしやがったわね……!?


思わず変な声が出てしまいそうになったけれど、何とか堪えた。



今まさに婚約破棄の真っ最中なんだけど、問題はソコじゃない。


……いやいや。

婚約破棄も、十分に問題なんだけどね!?



何より問題なのは――婚約破棄されている『アデリナ・ウェルス』が、私ではない(・・・・・)ことだ。



アデリナは()なんだけど!

あれは私の身体(・・・・)なんだけど!!



だけど精神(・・)は、私の幼馴染であるジェフリーなのよ!!!



つまり――その婚約破棄の相手、私じゃないんですけど~~~!!!




***




――事の起こりは、一週間前に遡る。



「いたた……。わぁ! 私の顔、やっぱり可愛い……!」

「うるさいな、さっさと退いてくれ」



素っ気ない言葉は間違いなく私の声(・・・)によるものなんだけど、思っていたよりも変な感じ!!!



私と幼馴染のジェフリーは、地下の書庫で見つけた禁術――『入れ替わりの儀式』を行った。

準備に数年を要したのに、期限は一週間という何とも短期間の効果である。



慣れない身体の感覚にフラついて、思わず自分を(・・・)押し倒してしまった私。

鏡で見るのとはまた違う視点に呑気な声を上げたら、下からジロリと睨まれた。



「早くしてくれないか。誰かに見られたらマズいだろ」

「ちぇー。自分(・・)に近づくのにも注意しないといけないなんて、本当に変な感じ」

「君が良くてもそっちは俺の身体(・・・・)なんだから、真昼間から婦女子を襲っていると誤解されたら大変だ。それに妙な噂が立ったら、困るのは君の方だろう」

「そっ、そうだったわね……! っ、じゃなくて――そうだったな」



いけない、いけない。

今から一週間、私はジェフリー(・・・・・・・)なんだから。



慌てて言い直して、起き上がった私は自分に手を差し出した。


ジェフリーの身体は少し動いただけで筋肉がグッと力強く動くのを感じるから、引っ張らないように注意して、私の身体が立ち上がるのを助ける。

うーん、私って別にガリガリじゃないけど、こうやって接してみると華奢に感じてしまうものなのね。


やっぱり、入れ替わってみて正解だわ。



「――違和感はない、か?」

「あ、……えぇ。大丈夫よ」



ぎこちない言葉遣いで、お互いの状況を確認する。


少し高いように感じるジェフリーの声。

少し低いように感じる私の声。


立ち上がってみれば、ジェフリーの身体は体幹もしっかりしていて、さっきはどうして倒れてしまったのか不思議に思ってしまうほどだった。

自分を見下ろすのって、やっぱり変な感じ。


光を反射してきらめきながら流れる蜂蜜色の髪に、長い睫毛。

大きく透き通るサファイアブルーの瞳。

細い鼻筋に、ぷっくりと色づいた唇。

少し童顔気味の整った顔立ち。

平均的な身長にバランスの良い体格で、流行のドレスもバッチリ着こなしている。



やっぱり私、可愛い……!

ジェフリーが入れ替わりたくなるのも納得だわ!!



この入れ替わりが実現したのは、お互いの身体でやってみたいことの利害が一致した結果である。



伯爵家の令嬢として生まれた私は……蝶よ花よと育てられながらも、実はとんでもないお転婆娘である。


幼いころは登れそうな木を見れば登る、虫を見つければ捕まえる、水溜まりで泥遊びをする……などなど、じゃじゃ馬っぷりを発揮したエピソードは枚挙に暇がない。



そんな私は、当然の如く剣術にも興味を持った。

当時から女性騎士も、いないでもない。


けれど……残念ながら私には、性差を超えて剣を振るえるほどの恵まれた体格も、それを補えるほどの才能もなかった。


別に、騎士になりたかったわけじゃない。

それでも、憧れは色褪せない。


成長して本の虫と呼ばれることのある今でも、鍛錬を欠かしたことはない。

どれだけ食事や運動に気を遣っても、自分が筋肉の付きにくい体質であることは理解していた。



私の自己満足に付き合ってくれたのが、幼馴染のジェフリー・クライヴだ。



彼は侯爵家の次男に生まれ、幼いころから体格に恵まれていた。

国への忠誠心の強い家柄に、優れた剣術――彼は当然のように騎士となる道を歩んだ。



けれど彼は……色とりどりのドレスや、絹のリボンにレースの飾り、きらめく宝石の付いた装飾品が好きだった。


女性向けのドレスブランドのみならず、国中の服飾店、工房、職人に至るまで諳んじられるほど調べ尽くしている始末。


彼は女性の着飾った姿を見るのが、何よりも楽しみなのだという。

……が、騎士の身で不審者でもない女性の恰好を、ジロジロじっくり眺めまわすことはできないし――もちろん騎士でなくともNG案件――フラストレーションは溜まっていくばかりだった。


決して女性に対して下心があるわけではないと、彼は強調した。


彼のお母様のコーディネートを考えることはあっても、落ち着いた貴婦人の装いと若い令嬢向けの華やかな装いはまた違う。

姉か妹がいればここまでではなかったかもしれないけれど、彼の家系は男兄弟ばかりだった。


『せめて俺が小柄で化粧映えする顔立ちだったなら、女装癖があると言われるくらいは耐えるのに……!』と零すほどだから、相当重症だ。


着せ替え人形を志願した私に対しても、『婚約者でもないのに女性の服装に口出しはできない』と首を振る。

彼に婚約者がいたとして、これだけ服飾に詳しい男にあれこれ口を出されては大変だと思う。

センスは良いと思うけれど、受け入れにくいという人もいるでしょうし。


制服と服装規定のある騎士では、本来の自分の姿を装う事すらままならない。

『ドレスを着たいなら着れば良いのに』と言ったこともある。

けれど彼が言うには、自分が着飾りたいわけでもないし、精悍な自身の身体でドレスを纏うのは彼の中では許容できないことなのだという。



私たちの『好き』と『得意』は違っていた。


私が彼の剣を触らせてもらい、重さや感触を確かめる間、彼は私のドレスに施された緻密な装飾や、生地の質感をじっくりと堪能する。

仲の良い母親たちが交友する中、私たちは手合わせやファッション談義の合間にそのような時間を過ごした。



私は、練習用でも構わない。

きちんとした重さの剣を自在に振るってみたかった。


彼は華やかできらびやかな店舗に入り浸って、たくさんのドレスや宝飾品に触れ、頭のてっぺんから爪先まで好きなように着飾らせてみたい。



そんな想いの果てに――こうして、お互いの入れ替わりが実現した。



「レディ、一曲お願いできますか?」

「はい、喜んで」



ダンスに誘う際の定型文を交わして、ガランとしたウェルス家のダンスホールで二人、ステップを踏む。


禁術のためにぼんやりとした光を放っていた魔法陣は、既に無い。

何とか掻き集めた材料は、年々魔法に関する規制の厳しくなっていくこれから先、きっともう手に入れることはできないだろう。


どうにかこうにか間に合ったという安堵と、念願が叶い始めた実感に、心が沸き立つのを抑えられない。



一週間後の入れ替わり最終日前夜には、王宮で開かれる大規模な夜会が予定されていた。

この夜会が過ぎれば、私がお嫁入りする準備が本格的に始まってしまうのだ。


間に合って良かったと、心から思う。

これからはきっと目が回るほど忙しくなるだろうし、結婚してしまえば様々な面で入れ替わることも難しい。



伯爵家の嫡男であるトラヴィスと私の婚約は、今は亡きお互いの祖父たちが結んだもの。


結婚前から既に仲の悪さが露呈し始めている婚約者に対して、思うところが無いでもない。

というか、行き着く先が完全に仮面夫婦であることは承知の上だ。


トラヴィスは既に婚約者が私であることへの不服を隠そうともせず、下級貴族のモニカというご令嬢相手に恋人ごっこを繰り広げている。

それを見せられたところで、私の方も自分から変わるつもりはないのだけど。


まるで知性を感じられないトラヴィスには何の期待もしていないし、私も私であまりお嫁に欲しいと思われるタイプではないので、お互い様というか、まぁ釣り合いは取れているのかなと思う。


超ハッピーとはいかないまでも、こんなものだろうと割り切れるレベルだし。

叶う望みというのは、案外少ないものなのだから。

結婚後どうなるかは、私の頑張り次第よね。



先のことはともかく、私はこの一週間を全力で楽しむと決めていた。



夜会まで、騎士団では訓練漬けの日々だという。

私の方も夜会の準備ということで、ドレスや飾りなどを一式揃える予定である。


やりたいことを実践するタイミングとして、これ以上ないほど完璧だった。



高ぶる感情のままに動いてしまいそうな身体をコントロールして、ジェフリーらしいさりげなくも正確なリードを意識する。


入れ替わってのダンス(これ)は一週間後の夜会に向けた、練習と称した最終確認だ。


私たちを見守るのは、お互いの侍女と侍従だけ。

この二人だけが私たちの入れ替わりを知り、協力してくれることになっている。



夜会ではお互い男女逆のステップで踊る必要があるので少し心配していたのだけど、この調子なら違和感を感じるほどでもないと思う。



「なかなか悪くないんじゃないか?」

「そうね……変なところでボロを出さなければ、問題なさそう」



そう頷き合って、手を放す。



「それじゃあまたね、ジェフリー(・・・・・)

「あぁ、また一週間後に。アデリナ(・・・・)



互いに別れを告げ、入れ替わりの一週間が幕を開けた。



***



「~~~~~!!!!!」



訓練初日。

騎士団の訓練場に足を踏み入れたときは、思わず飛び上がって喜んでしまいそうだった。


訓練中にコッソリ覗かせてもらったことはあるけれど、外から見るのと実際この場所に立つのでは、やっぱりまるで違う。



踏み固められては摩擦で削られていくせいで、お世辞にも良い状態とは言えないザリザリとした地面。

乱雑なようでよく手入れのされた武器置き場。

訓練着で集まった騎士たちの、暑苦しいほどの熱気。


この場を構成するすべてのものに、胸が高鳴る。

そんな場所で自分がこれから騎士として訓練できるのだと考えただけで、とにかく嬉しかった。



刃を潰した剣の打ち合う金属音が、周囲のあちこちから聞こえてくる。


構えた剣は重みでブレることなく、自分の身体の一部となっているのを感じる。

辺りに漂うピリピリとした緊張感は心地よくて、先ほどまでとはまるで違う、静かな高揚感に満たされていく。


ジェフリーは若手騎士の中でも有望株だ。

拙い私の剣術では不安だったけれど、共に訓練する騎士たちにはあらかじめ彼から調子が悪いと伝えられていた。


だから私は、思うままに剣を振るうことができた。

幸いだったのは、私に剣を教えてくれたのはジェフリーなので、恐らく全くの別物ではないだろうということ。



そう思っていたので、小休憩になったとき訓練相手の騎士に言われた言葉に首を傾げてしまった。



「なあジェフリー、いつもはそんなに綺麗な剣筋じゃないだろ!! どうしてお前、今日はそんなに余所行きの動きなんだ? 今日はあの子だっていないのに」



あ、あれ……?

本人に教わった通り動いたつもりだったんだけど、何か違ったのかしら?



「いや……、なんだか調子が出なくて。その言い方じゃ、俺の事普段どういう風に思ってるんだ」



あまり大人し過ぎてもジェフリーらしくないし、少し呆れたように返せば、向こうも大袈裟に肩を竦める。



「なんだよー! いつもはこっちが頼んだって、もっと容赦ないだろー!!」

「そうか……。なら、もっと激しくても良いということだな?」

「わーバカ!! 今日はちょっと楽かもって思ってたのに、余計なこと言うな!!!」



もっと頑張ろうと気合を入れると、別のところにいた騎士が走ってきてそんなことを小さく叫んだ。


走ってきた騎士は、私の次の訓練相手だった。

タックルを受けた先ほどの相手の騎士は顔をしかめて、新しくやって来た騎士に反撃している。


むむむ。

どこまで本気かはわからないけど、私のせいで騎士たちの士気が下がるのはよろしくない……!!


やっぱり私とジェフリーでは、根本的に何か違うのかしら。

それに聞きそびれたけど、あの子って何のこと?



「これはこれで、こっちの調子も狂うんだってー!」

「だからって、自分の番が終わってから言う事ないだろ! あぁもう、絶対次ヤバいぞ……」



騎士たちがギャーギャーと言い合う中、訓練再開の合図が響いた。



身体の記憶というのは大したもので、普段のジェフリーのように動きたいと意識すれば自然と動くことができた。


確かに、荒々しい動きではあると思う。

考えるよりも先に身体が動いている感じもする。

動体視力のおかげか相手の小さな動きの一つ一つが見えるので、予備動作から直感的にある程度向こうの動きを予測して反応すると、攻撃は一方的なものになった。



きっと、これが生まれ持った才能というものなんだろう。


ジェフリーの身体は、私がやりたかったことのもっともっと先を可能にしてくれた。



「いつもより何倍も容赦なかった……!!」



疲れたように「えーん」と泣き真似をしている騎士には申し訳ないけれど、私は楽しくて仕方がない。

もしかして、自分では実現不可能な理論上のあーんな動きやこーんな動きもできるかも!!


それから私は、闘争心を剥き出しにして剣を振るった。

相手をする騎士たちは半泣きになっていた。



訓練初日で既に、ジェフリーが規格外だということは十分理解できた。


羨ましい気持ちもあるけれど、それ以上に誇らしい気持ちで胸がいっぱいになる。

ジェフリー本人は望んでいないかもしれない。


だけど、身体能力だけでこれほどの才能。

それに加えて彼には剣術に関する天性のものがあるのだから、是非とも存分に活かしてほしいと思う。



今ごろジェフリーは、私の身体で買い物三昧だろうか。


行きつけのドレスショップは貸し切りにしてある。

他の馴染みの店へは侍女が案内するだろうし、彼も行きたい店をリストアップしていたようだった。


これと思うものがなくても、私のクローゼットからどうとでもするに違いない。


ジェフリーが夜会で私をどのように着飾るのか、今からとっても楽しみだわ!!!



***



初日以降の訓練も順調だった。


ジェフリーとしての生活も、彼の侍従がサポートしてくれるので、気まずい部分はあれど不便はほとんどない。

朝起きて鏡を見たときに目に入る、短い黒髪と素の状態で鋭い眼光にも慣れてきた。


緊急時以外に連絡しないという約束で、今のところ何の便りもないということは、向こうも問題ないのだろう。

まぁ……自分で言うのもなんだけど、私は突拍子もないことをする変わり者と評判なので、何かあっても「またか……」という反応をされるくらいでしょうね。


私と同じくらい、彼もこの入れ替わりを全力で満喫していることを願うばかりだ。



共に訓練する騎士たちの気安い雰囲気にも、努めて馴染むようにした。



「いーよなー、侯爵家のお坊ちゃんは夜会に出席する側で」



雑談の中、ぼそりと呟かれた一言に思わず苦笑いが浮かぶ。


話題は夜会の警備についてだった。

騎士たちの出自は様々で、ここにいる大半は警備の任に就くという。



ジェフリーは興味のなさそうな態度に反して、大規模な催しへの参加は欠かさないという驚異の出席率を誇っている。

理由の大半は言わずもがなだけど、残る一割ほどは他の令息たち同様婚約者探しである。


気を持たせない程度に令嬢(のドレスや飾り)を視界に入れることが可能なのはごくわずかな時間で、彼の頭は最新トレンドのインプットのためにフル回転しているし、本来果たすべき目的はあまり順調ではなさそうだけど。


まぁ、なんだ。

ジェフリーも頑張っているので、貴族の子息として夜会に出席するのは許してあげてほしい。



「畜生、俺だって綺麗なご令嬢と踊ってみたいわーー!!」



豪奢な会場で社交に勤しむ同僚を横目に勤務するのが辛いのかと思えば、続いた叫びに肩の力が抜ける。

なんだか可哀想になって、思わずその騎士の肩をポンポンと叩いてしまった。


そんな私の行動に、何故か周囲にいる別の騎士たちが慌て始める。



「バッカお前、ジェフリーに慰められてどーすんだよ!!!」

「コイツだって色々苦しいのを耐えてんだから、余計なこと言うな!!」



流石の気安さで頭を叩かれている騎士はハッとした表情で顔を上げると、私に向かって謝ってきた。

何のことかと内心首を傾げながら、こちらも気にしないでくれと伝える。


どうやら彼らは、ジェフリー本人が夜会を楽しみにしていることを知らないらしい。

ジェフリーは想像以上に上手く本心を隠しているようで、夜会への参加は思いっきり苦行扱いである。


色々と気になるところではあるけれど、あまり突っ込むのも危険な気がする。



お互いに微妙な雰囲気を残したまま、訓練が再開された。



***



「――それで、用事というのは?」

「あっ、あの、その……!」



夜会を明日に控えた、訓練最終日。

訓練が終わると、城勤めの侍女に人通りの少ない建物の影へ呼び出された。


見下ろした先にいる少女は緊張で顔を真っ赤に染めて、お腹の前で組んだ両手を固く握りしめている。

一応尋ねてはみたものの、用件は流石の私でも察するというものだ。


ど、どうしよう……!?

こっちまで緊張してきた……!!


だがしかし、今の私はジェフリーである。

生唾を飲みたいのをグッと堪えて、彼女の言葉を待つ。



(わたくし)、ジェフリー様をずっとお慕いしておりました!!」



キタァーーーーー!!!!!


表情筋を駆使して無表情を装い、心の中で叫ぶ。



訓練に励むジェフリーを陰ながら応援してきたと、彼女は懸命に言葉を紡いだ。


対する私は、態度に出さないよう精一杯気を付けながらも、このような状況にどうしたものかと頭をフル回転させる。



婚約者すら決まっていないジェフリーの周囲には、これまで驚くほど女性の影はなかった。


彼は精悍な風貌で眼つきも鋭いし、ぶっきらぼうなところもある。

女性たちから怖がられているのでは? と思っていただけに、想いを寄せる子もいるのだと……正直、驚いた。



――案外ジェフリーって、モテるのね。


消化できない複雑な思いを抱えながら、少女を見下ろす。


先日仲間の騎士が言っていた人物は、彼女の事かしら? それとも他の人?

ふと、そんなことがよぎる。



侍女の少女は気持ちを伝えたかっただけらしく、返事は要らないと締めくくった。


どのような心境でそう告げたのか、私には知る由もない。

けれど……時間を取らせてしまったと、後頭部が見えるほど深々と頭を下げた姿から、彼女にとって返事は聞くまでもないのだろうと感じられた。


それでも私には、彼女がひどく眩しかった。



「名前を、聞かせてくれないか?」



せめて名前だけでも、本人に伝えておくべきだと思ったのに……謙虚な少女は、そっと首を横に振る。


告白を夜会の前日に選んだのは、夜会が終わってからの心境の変化につけこみたいわけではないからだという。

わかりきった返事が覆ることを、恐れているようでもあった。


「明日はどうか頑張ってください」と、まるで同士を応援するかのように告げ、彼女は去っていった。



想いを伝えたことで満足したのか、軽快な後ろ姿で遠ざかる少女を見送りながら、首を傾げる。


どうしてジェフリーの周囲の人たちは――明日の夜会を、試練か何かのように言うのかしら?


いつだって催しの後は、ドレスのデザインや飾りの流行についてひとしきり語る男である。

今だって、夜会のために選び抜いた一式をうっとりと眺めているに違いないのに。



***



一週間というのは本当にあっという間で、とうとう夜会当日を迎えた。


明日の昼前にはジェフリーとの入れ替わりが終了し、元の自分の身体に戻る。

そのため今日がジェフリーとして活動できる、実質ほぼ最終日でもある。



女性の身支度に時間がかかることは知っていたけれど、まさか男性の支度がこんなに早く終わるとは思わなかったわ……!


後ろに流して固めた髪に違和感を感じつつ、この夢のようだった一週間に思いを馳せる。



ジェフリーとして剣を振るうのは、想像していた以上に素晴らしい体験だった。

今日は休みだったが、つい数刻前までは侯爵家の鍛練場で剣の振り納めをしていた。


彼の兄弟などは冷やかしに来るかと思っていたのに、「そっとしといてやろうぜ」と囁きながら素通りしていった。

そんなに鬼気迫っていたのかしら……ちょっと申し訳ないと思ってしまう。


一週間は短かったけれど、目的は達成できた。

ジェフリーの方はどうかしら?


今夜の夜会は、私にとって騎士の儀礼服姿での参加を楽しむという面もありつつ、主にジェフリーがどんなドレスや飾りを選んだのかという確認作業的な意味合いが強い。

対してジェフリーにとってはこの一週間の集大成でもあるし、私の知り合いの令嬢たちとファッションについて談笑することもできるという、いわば最後のお楽しみというやつ。


きっと、ワクワクしているに違いない。

是非とも最後まで楽しんでほしいものだ。



不思議なことに会場に向かう間、共に馬車で過ごしたジェフリーの両親たちは私になんと声を掛けたものか考えあぐねているようだった。

入れ替わりがバレてしまったのかと内心焦ったものの、そういうわけではなかったみたい。



「お前の気持ちは、わかっているつもりだ」

「家のことは気にせず、やりたいようにおやりなさい」



意を決したように謎の言葉を残し、彼の両親は会場に消えていった。



え……女性の服装をジロジロ眺め回しても良いってこと???

流石にそれはマズくない???



冷や汗をかきつつ、周囲を見渡す。

勿論、許可があったからといって、通りゆく女性たちを舐めるように見るようなことはしない。


到着が少し早かったようで、まだアデリナ(ジェフリー)は来ていないようだった。




――何かがおかしいことは、すぐにわかった。



婚約者であるトラヴィスは、()をエスコートしていなかった。


それどころか、恋人の腰を抱いて堂々と会場へ足を踏み入れる。

怖いものなど何もないとでもいうように、傲慢な笑みを浮かべながら――。



……ちょっと、なんてことしてるのよ!!!

そういうのはせめて結婚後にしなさいよぉぉぉーー!!


非常識もいいところだ。

王宮で開かれる夜会でこんなことするなんて、信じられない……!!



内心怒りの炎を燃やしていると、しばらくしてアデリナが両親を伴い会場へ入ってきた。


一人きりじゃなかっただけ、周囲の視線も多少はマシかしら。

久しぶりに見た私の顔は存外にこやかで、ちっとも婚約者の仕打ちに堪えているようには見えなかったのが救いね。


私はこの程度で顔を曇らせるほどトラヴィスへの情は無いので、これまで築き上げたキャラが変わってしまうことを一番心配していた。



今宵のアデリナ・ウェルスの装いは青系統でスッキリとまとめた、大人びた印象を与えるものだった。


ふ~ん、なんだか意外な感じ。

てっきりパステルカラーのフワフワ系か、濃いめピンクのブリブリ系で来ると思っていたのよね。

結婚前だし、令嬢のうちにできる恰好というイメージがあったのは否めない。


これまでと系統が違うとはいえ、流石はファッションオタクなジェフリーの見立てだけあって、よく似合っていた。



まぁ、馬鹿な婚約者は後でシメるとして、今夜はジェフリーに夜会を楽しんでほしい。



――そんな私の願いは砕け散ることとなる。



***



高らかに婚約破棄を宣言したトラヴィスと、冷ややかな笑みを浮かべるその婚約者であるアデリナ。


私の目下の不安点は、肝心のアデリナの中身が本人ではないということだった。



――いやいやいやいや!!!


私と入れ替わった状態のジェフリーに、この役をやらせるのはダメじゃない……!?

でも今出て行っても、ジェフリーの身体だと幼馴染っていうだけで当事者じゃないし……!



「……陰湿な行い、とは?」

「思い当たる節が無いとは言わせないぞ!!」



小首を傾げるアデリナ(ジェフリー)と、自信満々に言葉を重ねるトラヴィス。



私が悩んでいる間に、トラヴィスの恋人であるモニカ嬢に対して悪口を言っただの、友人たちと嘲笑しただの、ぶつかったフリをして転ばせただのと、聞き捨てならない話が飛び出してくる。



「――ちょっと待った!! わ……っ、彼女は、断じてそのようなことはしていない!!!」



あまりの内容に、思わず割って入ってしまった。


婚約者の幼馴染の登場に、トラヴィスは眉を寄せる。



「ジェフリー・クライヴか。当事者でも無いくせに、何故そう言い切れるんだ。お前がずっと傍に付いていたとでも言うのか?」



あっ、どうしよう。

墓穴を掘ってしまったかもしれない……。



「そんなこと、私の人となりを知っていれば、誰だってそう言うでしょう」



狼狽えそうになったところに、アデリナの呆れたような声が届く。



……それもそうね。


伊達に長年『あの人、見た目はそこそこ良いけど――ヒソヒソ』みたいな話題に上り続けているわけではない。

基本的に言葉や行動を慎むタイプではないのだ。


そんな私が婚約者の恋人に対して、よくある女性らしい陰湿な行動を取るはずがない。


大体、真っ先に咎めるべきはトラヴィスなわけで。

何を言っても聞かない馬鹿に付ける薬はないんだし、その恋人をどうにかしようだなんて、それこそ時間の無駄というものよね。



口を出してしまった以上、傍にいた方が良いだろうと自分の身体の近くへ移動する。


そうする間も、トラヴィスは馬鹿にしたように鼻を鳴らした。



「フン、どーだかな。モニカはお前と違って俺を支えてくれるし、女性としての魅力もある。内心、彼女に対して見苦しく嫉妬していたのだろう? だからモニカに、様々な嫌がらせをしたんだ!!」



必要最低限の会話しかしないので、こうして実際に思っていることを言われたのは初めてだけど……トラヴィスの言葉には、心底呆れてしまった。


あの男の言う『支えてくれる』というのは、不都合なことを指摘することなく、傍に侍って耳障りの良い甘い言葉を囁くことなのだろう。

『女性としての魅力』というのは、アレだ。

要は可愛い系よりも、バインバインでセクスィーな見た目がタイプという……。


こんなところで個人的な嗜好を主張されても、正直困る。

おじいさまたちが結んだ婚約に、そのような内容はそもそも含まれていないだろうに。



彼女よりも性格や見た目が劣っているから嫉妬したのだろうというトラヴィスの主張は、的外れだと言わざるを得ない。


このような男の恋人でいられるモニカ嬢のことが、ある意味羨ましくはあるかもしれないけれど。



「彼女に嫉妬して嫌がらせをした、とおっしゃいますが……。私が、どのような悪口や嘲笑をしたというのですか? 適当なことを申されては困ります」



冷めた態度のアデリナに対し、トラヴィスは我が意を得たりと口角を上げる。



「お前はモニカの外見を貶めたと聞いているぞ!! 着ているものや身につけているものがどうだとか……」

「まあ! 『女性の外見を貶める』だなんて……そんなはしたないことをするなんて、とんでもない」



私の事を『女性としての魅力がない』と言い放った分際で、よくもしゃあしゃあとしていられるものだ。

アデリナの当てこすりにも気づかずに、トラヴィスは得意気な表情を崩さない。



「嘘じゃありませんわ!!!」



しかしアデリナの言葉が言い逃れに聞こえたのか、トラヴィスに腰を抱かれたモニカ嬢が声を上げる。



「私の装いを下品で、身に付けているものが不釣り合いだと言われました!」



言ってないし!!!


…………んんん?

もしかして彼女が言っているのは……ジェフリーと入れ替わった、この一週間の話なのかしら?


トラヴィスとアデリナの後頭部へ交互に向けていた視線を、モニカ嬢へと移す。



「うわ、ケバっ……!」



女性としての魅力あふれる箇所にばかり注目してしまいそうで、ジェフリーの身体でそれは良くないと、彼女をあまり視界に入れないようにしていたのだけど……。


モニカ嬢は目に痛いほど真っ赤なドレスに身を包み、大ぶりでゴテゴテした印象の首飾りが豊かな胸元をこれでもかと強調しながら彩っている。

メイクも濃くて、この距離からでもわかるほど白粉を塗りたくり、これまた真っ赤な口紅を施していた。


彼女は私たちと同年代のはずなのに、大人っぽいというよりは老けて見えるし、色っぽいどころかお色気しか感じられない。

だけど妖艶とか蠱惑的かというとそうでもなく……ただただ露出が多くて派手な印象だ。


見かける度に肌面積が多めだと思っていたけれど、今日は特に酷い。



小さく零れてしまった心の声が聞こえたのだろう。

私の身体にコッソリと足を踏まれた。


『要らん事言うな』という、ジェフリーの声が聞こえてくるようだ。



ふむ。

ドレスの下で気付かれない程度に足を踏むくらいだと、ちっとも痛くないのね。


もし誰かの足を踏みつける機会が訪れた際は、全力でやろうと心に決めた。



「あら、そのように受け取られたのですね」



アデリナはモニカ嬢の言葉に、心外だとでも言いたげな声を上げる。



「出先でたまたまお会いした際、今夜の装いについて恋人からプレゼントしてもらったのだと、事細かに説明されていらしたので……『必要以上の肌の露出は、催しの品位を損ねるので何か羽織った方が良い』『目立つ宝飾品を身に付けるのであれば、それなりの品でないと恥をかくことになる』とお伝えしたのです。ここは王宮の大広間であって、娼館ではないのですもの。過剰に露出せずとも、似合う装いはあるでしょうに。……恋人からの贈り物とはいえ、モニカ様のためを思って申し上げたのですが、まさか悪口と勘違いされるなんて」



あぁ……気になっていたことを指摘したのね。

モニカ嬢の素材は素晴らしいのに、残念な仕上がりになっていることが引っかかっていたらしい。


ジェフリーの言いたかったことは分かったけれど、モニカ嬢にしてみれば自慢していたところに水を差されたら、それは気分も害すか。

というかこの内容なら、悪口を言われているのはむしろトラヴィスの方じゃない。


それなのに、あの男のことで嫉妬した私がモニカ嬢に嫌がらせをしただなんて、思い上がりも甚だしい。



浮かびそうになった忍び笑いを堪えるために小さく咳ばらいをしたのだけど、うっかりトラヴィスの注意を引いてしまった。



「ジェフリー・クライヴ! 何だ、言いたいことでもあるのか!?」



あっ、ヤバ……。


トラヴィスのやつ、どうしてこういうときだけ目ざといのよ。



「いや……私的な空間ならともかく、アデリナが結婚相手の愛人候補である女性に公の場での品格を求めるのは、婚約者として間違っていないように思うが」

「愛人ですって!?」

「貴様ァ、モニカのことをそんな風に言うな!!!」



えええぇぇぇえ!?

婚約者がいるにもかかわらず、それとは別に結婚前から付き合っている恋人――しかも相手が下級貴族のご令嬢ときたら、結婚後はそのまま愛人コースが定番じゃない!



「婚姻前に関係を解消するつもりだったのか……それは失礼した。君たちが関係を続けるものとばかり――」

「モニカと別れるわけないだろうがっ!! 俺たちは愛し合っているんだ!!」



えぇぇ……。



「そこまで想い合っているのに、先ほどの内容で何故アデリナが彼女に悪口を言ったなどと思い込めるんだ? 君の贈り物のせいで、恋人の装いに品がないと周囲に蔑まれないよう指摘したに過ぎない。当然、君の評判も下がる。嫉妬どころか、見上げた献身じゃないか」



だって、私だったら絶対にそんなことしないもの。

こんなに騒ぎ立てるよりも、むしろ感謝すべきじゃない?


私の言葉にトラヴィスは衝撃を受けたのか、「なっ、な……!?」と口を開けて戦慄いている。


そこに、アデリナの冷たい声が被せられた。



「他におっしゃられていたことも、まるで心当たりがありません。モニカ様と言葉を交わしたのは先日のそれ一回きり。それも彼女の方から声を掛けてきたのです。友人を伴って嘲笑したり、ましてや危害を加えられるほど接近したことなどございません。……余計なお世話だったにせよ、モニカ様の装いについての指摘をああまで誤解できるのですもの。夢やロマンス小説の内容を、現実に起きた出来事だと勘違いされても仕方ないことでしょうか」



アデリナが眉を顰め、トラヴィスとモニカ嬢の主張を妄言だと切り捨てると、周囲から失笑が漏れる。


笑われた自覚はあるのか、二人の顔が真っ赤に染まった。



――というか、ジェフリーったら私の演技上手過ぎない???


私って真顔だとこんなに怖いのね……!!



言い返せなくなったのか、トラヴィスは口汚く私を罵り始めた。



「お前はっ……いつだってそうだ! 俺を蔑んでいる! そんな女に好意を抱けるわけがない!! 自分が変わり者と呼ばれているのは知っているだろう!? 本を読み始めれば、時間も忘れて書庫に入り浸る! 邸に会いに来たと思ったら、後継者である俺を差し置いて父上と経営の話で盛り上がる! 俺とはろくに口も利かないくせに!! 俺を夫として敬い、妻として支えてくれそうもない女と結婚できるか!!」



これが彼の偽らざる本心なのだろう。


そんなことは言われなくても知っている。

だからお互い様だったんじゃない。


ただ、やっぱり言葉にされると心にクるものがある。

既に十分呆れていたけれど……まだ先があったとは。



これっぽっちの理由で、こんな騒ぎを起こしたなんて。


きっと彼は、私を悪者にして辱めたかったのだと思う。

けれどそれにしては、やり口が稚拙過ぎた。



アデリナは禍々しいまでのオーラを纏い、トラヴィスへ蔑みの視線を送る。



「愚かな方。ならば、初めからそう言って婚約解消を請えば良かったでしょう。それを王家主催の夜会の場でありもしない言いがかりをつけて、まるで告発でもするかのように私へ婚約破棄を宣言するなんて。嫉妬が故の嫌がらせだなどと……伴侶として敬うべきところの無い方に、どうしてそのような感情が抱けますか。ご自身でそう思い込んで、自尊心でも満たしたかったのですか?」

「~~~~~っ!!!」



キッツぅーーー!


というか言葉も辛辣だけど、見慣れた自分の顔のはずなのに、本人から見ても今のアデリナは正直怖い。

素材は同じでも迫力が違うわ……。



トラヴィスは唇を噛み視線を動かすと、ジェフリー()に向かって口を開いた。



「ジェフリー・クライヴ! お前だって、自分より賢いと周囲にひけらかすような女は嫌だろう!? この気持ちは、同じ男として理解できるはずだ!!」



ちょっと、何で今の流れでこっちに話を振るのよ!?

そもそもアデリナの弁護をしていたジェフリーに同意を求めるなんて……本当に頭が悪いわね。


大体、同意があったからどうだというのだろう。

既に私たちの周囲の人々は苦笑を浮かべながらも、トラヴィスへ向ける視線は白けきったものとなっている。



「……馬鹿馬鹿しい。なんて狭量な男なんだ。無能よりも優秀な方が良いに決まっている。それでも伯爵家の跡継ぎか?」



呆れて肩を竦めると、トラヴィスは「なんだとォ!?」と更に激昂する。

そして視線をアデリナに戻し、地団太を踏んで叫んだ。



「うるさいっ! うるさいうるさーーい!! アデリナ!! 最初からお前が黙って頷けば良かったんだ! 可愛げのない女め!!!」


「――は? 可愛いですけど」


「…………」

「…………」



あっ――――!!!



自身の失言に気付き、内心冷や汗が滝のように流れる。


今の私はジェフリーなのに、やってしまった……。

トラヴィスがあんまり好き勝手に言うものだから、つい……。



取り繕うにも、幼馴染を庇ったにしては内容が非常にマズい。マズすぎるよ……!!!



周囲が静まり返り視線だけが飛び交う中、振り返ったアデリナが美しい笑みをこちらに向けた。



「ありがとう、ジェフリー(・・・・・)



いやいや、その返しもマズいって……!!


何かフォローしてくれないかと自分の顔を見つめていると、涼やかな声が響いた。



「――さぁ、ショーは終わりだ。皆、引き続き夜会を楽しんでくれ」



手袋越しにポンポンと手を叩きながらそう言ったのは、第四王子殿下。


騎士団を率いる第四王子は、平たく言えばジェフリーの上司にあたる。

このような醜聞騒ぎに部下が……それも騎士が参加していたとあれば、呼び出しや叱責は免れないだろう。


ジェフリーの身体で大変なことをしてしまったと、今更ながらスッと血の気が引いていく。

けれど……第四王子はすれ違いざまに肩を叩き、「愉しませてもらったよ」とだけ囁いて去っていった。



動き出した警備の騎士たちが、会場で騒ぎを起こしたとしてトラヴィスとモニカ嬢を捕らえて連行していく。


アデリナにも関係者として事情を聞かせてほしいと、両親同伴で別室へ案内されていった。



ジェフリーには、重ね重ね申し訳ないと思う。

折角の夜会を台無しにしたどころか、入れ替わったせいで私とトラヴィスの問題に巻き込んでしまった。


案内された先では、一体どのように話が転がっていくのか。


あれだけの醜態を晒したのだもの。

トラヴィスとの婚約がなくなるのは間違いないけれど……夜会で騒動を起こしたペナルティが気になる。


心境としてはこちらも被害者ながら、トラヴィスを煽ったと加担者扱いされてしまう場合もあり得るわけで。


どうあれ、私にできることはない。

両親が上手くまとめてくれることを祈るばかりだ。



ジェフリー()は一応部外者ということで、呼び出されることはなかった。

けれどそのせいで、周囲の興味を一身に集めてしまっている。


ここにいてもできることはないし、残っても良いことはないだろうと、彼の両親に帰宅を促す。



数人の騎士仲間たちに「やるじゃん!」と謎のイイ笑顔で見送られながら、私はジェフリーとして王宮を後にしたのだった。



帰りの馬車ではジェフリーの両親に謝罪を遮られ、むしろ決闘沙汰にしなかったことを褒められた。


……ジェフリーはそんなに血の気の多いタイプではないはずだけど、案外家族からはそう思われているのかしら?

何となく、夜会の前まで熱心に鍛練に励んでいたせいもある気がする。



邸に帰り着けば、さっさと寝ろと寝室に押し込まれる。


気になることや心配事は山のようにあるけど……ウダウダと考えても仕方ないので、疲労感と睡魔に身を委ねることにした。



***



翌朝、入れ替わり最終日。



昼前には、お互い本来の身体に戻るはずだ。


先週同様に成果報告も兼ねて、ジェフリーがウェルス家を訪問する予定だったけれど……流石に昨日の今日である。


あの後、私と両親が早々に解放されたとは考えにくい。

どのくらい王宮に残ったのかも不明だし、何より騒動からまだ半日程度しか経っていない。


約束していたとはいえ、このようなときに訪問するのは憚られた。



――どうせ時間が来れば元の身体に戻るはずだし、無理に今日会いに行く必要はないでしょう。


そう思い、予定の変更についてジェフリーの家族に伝えると、口々に反対されてしまった。

なんというか、追い立てるような気迫まで感じられる。



「昨晩の騒動の後です。しばらく期間を空けた方が――」

「今更何を呑気なこと言ってるの!? 今日行かずに、いつ行くというのです! 先方には既に、貴方の訪問を知らせてあります!」



今行けすぐ行けとばかりに急かされ。



「服はいつものもので――」

「馬鹿か!! 礼服がやりすぎなら、こないだ仕立てたやつを着ていけ!」



おろしたての一式に身を包み。



「手土産は別に――」

「要るんだよ!! これ! 今朝咲いたばかりのやつだから!!」



華やかで良い香りの花束を持たされ。



「この馬車――」

「今日は! お前が使え!!」



昨晩も乗ったクライヴ家の紋章が輝く馬車に再び乗せられ。



「「いってらっしゃい!!!!!」」



暑苦しいほどの熱気を放つ家族と使用人たちに、盛大に見送られた。


朝からだんまりを決め込んだジェフリーの侍従は乗り込む際に御者席へと逃げたので、馬車の中は私一人きり。



「どうなってるのよ……!?」



花の芳香が漂う空間で、私は天井を仰いだ。



***



馬車に揺られ始めてしばらくすると、意識がフッと遠のく。


時間が来たのだ――。




――目を開けばそこは、やけに懐かしく感じる自室のソファーの上。

傍らには侍女の姿もある。



久しぶりの自分の身体に少し違和感を感じながら、首を動かす。


当然と言えば当然ながら、室内に変化はない。



「アデリナ様、お戻りになったのですね?」

「……えぇ。面倒を掛けたわね」



何らかの変化に気付いた侍女が鏡を持ってきてくれた。


よく磨かれた鏡に移るのは――私の顔。

それを目にしてようやく、本当に戻ったのだという実感に包まれる。



「もうじきジェフリーが来るけれど、今のうちに知っておいた方が良いことはある?」

「……昨晩、アデリナ様の婚約は取り消されました。ですので現在どなたとも婚約関係にない状態となります」

「やっぱりね。あれだけ騒ぎになったのだもの、当然よ」



少なくとも、あれだけ私と結婚したくないと騒いでいたトラヴィスの願いは叶ったわけだ。



「別室へ呼ばれた際、基本的に事実確認のみでお咎めなどはなかったそうです。皆様さほど遅くない時間にお戻りになりました」

「あぁ、良かった!! そこを心配していたの!」



私たちはすぐに解放されたらしいけれど……トラヴィスは王家主催の催しで騒動を起こしたとして、連行されて事情聴取を受けた後はしばらくモニカ嬢共々地下牢に入ることになると、帰り際に担当者に伝えられたという。

彼のお父様は仕事で領地に戻っているところなので、身元の引き受けまでしばらくかかるだろう。



「それから――この、やけに気合の入った格好はどういうことかしら?」



来客の予定といっても、相手はジェフリーだ。


大抵は普段使いのドレスや鍛練用の軽装での出迎えだったのに、今の私ときたら新しく買い足したであろう余所行き用のドレスに身を包み、それに合わせるように髪型からメイク、装飾に至るまで完璧に仕上げられていた。


私の言葉に、侍女はニッコリと微笑んだ。



「本日は、大事な日ですので」

「……………………。うん」



それ以上何も言えないまま、来客の知らせが届いた。



***



両親と共に、ジェフリーを迎え入れる。


毎日見ていたはずなのに、やっぱり自分の身体で見上げるとなんだか懐かしく感じてしまうのが不思議。



「これを、君に」



そう言って彼は、白を基調とした花束を私へ差し出した。

抱えるように受け取ると、片方の手をそのまま握られてしまう。


驚きに目を丸くすると、彼はそのまま流れるように跪いた。



「君が昨晩、大変な目に遭ったことは知っている。だが、どうか言わせてくれ。――アデリナ・ウェルス。俺と、結婚してほしい」

「~~~~っ!!!」



急なジェフリーのプロポーズの言葉に思わず両親の方を見れば、二人とも瞳を潤ませ満面の笑みを浮かべている。


私はそれで、もう逃げられないことを悟った。



「……ハイ」



ぎこちなく頷けば、辺りは割れんばかりの歓声に包まれた――。



***



「――それで当然、詳しい説明はしてもらえるのよね?」



あれから両親は『あとは若い二人で』なんて定型文を述べて、私たちを見送った。


侍女が案内した温室はすっかり支度が整えられていて――つまり、お膳立ては全て完了しているということだ。



予感は、あった。

これでも頭の回転は鈍い方ではないと自負しているのだもの。


私がジェフリーの姿でやらかした失言に、あの対応。

彼の両親の言葉に、送り出すまでの一連の流れ。

説明を避けた彼の侍従に、私を迎えた侍女の笑み。


全てが繋がれば、共に訓練した騎士たちの反応や少女の応援にも合点がいく。



一体いつから、どこから仕組まれていたのだろう。



嬉しくないわけじゃない。

私の為だったこともわかってる。


大人げなく不貞腐れているだけのことだというのは、自分でも理解している。

けれど……まるで罠にでも掛けるような仕打ちをされたのは、面白くなかった。



口を尖らせた私に、ジェフリーは苦笑を浮かべる。



「もちろんだ。君は全てを知る権利がある」



そう言うと、彼はスッと目を細めた。



「――俺が君に、ずっと想いを寄せていたことは知っていたか?」

「……知らなかった。だって貴方、そんな素振りなかったもの」



ジェフリーはいつだって私の幼馴染で、剣の稽古相手で、お喋り相手という、友人や親友に近い存在だった。

私が彼の気持ちに気付いたのは、昨日の件があったからだ。



「本当は、ずっと隠し通すつもりだった。だが……あの男は君の相手に相応しくないどころか、君への当てつけに、とうとう恋人まで……! そんな男の元に君が嫁ぐことが、どうしても我慢できなくなった」



トラヴィスの婚約者であった私以上に、あの男がモニカ嬢を恋人にしたことが許せなかったのだろう。

ジェフリーは憎々しげに顔を歪めた。



「君に相談することも、勿論考えた。だが君は一度決めたら、それを貫き通す性格だということはよく知っている。そんな君にどれほど言葉を尽くしたところで……きっと頷いてはくれないと思った。――そんな折、数年前から取り組んでいた『入れ替わりの儀式』の実現が現実味を帯びた。……君の執念の賜物だな。これを使わない手はなかった」



そしてジェフリーは、私とトラヴィスの破婚のために――そして自身が次の婚約者の座を手に入れるため、策を講じる。



彼はあらかじめトラヴィスの不貞の証拠を集め、自身と私の両親へ話を通していた。


その上で私と入れ替わり――私の口からも、両親へトラヴィスとの婚約解消の嘆願を行い、ジェフリーと気持ちが通じ合ったように振舞う。

いくら私が頑固者とはいえ、当の本人が「結婚が危ぶまれるような相手と、これ以上婚約関係を続けることは難しい」と告げれば、説得力は十二分にあった。

実のところ私の両親の方も、私へトラヴィスとの婚約解消を提案しようとしていたらしく、渋るどころか喜ばれたという。



そしてトラヴィスからも婚約解消を言い出したくなるように、モニカ嬢へ接触したらしい。

偶然の遭遇を演出しながら、彼女が私の行いをトラヴィスへ訴えるよう、わざと嫌味を言って怒らせたそうだ。


まだほんの軽い挨拶だったのに、とジェフリーは肩を竦める。



「本当はあの程度の内容ではなく、もっと色々と言うつもりだったんだが……想像以上に耐性が低かったようで、少し会話しただけで激怒して、鼻息荒く去っていったな」



トラヴィスとモニカ嬢の関係について、私が今後も口出ししていくつもりだと意識づけることが目的だったという。

女性に対しての嫌味の言い方は、様々な催しの場でファッションの情報収集をするために耳を澄ませていると色々聞こえてくるそうで、そこで覚えたらしい。


彼は私への劣等感でいっぱいのトラヴィスが、大勢の前でそのことを理由に虚偽を交えて言いがかりをつけてくるであろうことも予想していた。



その結果、トラヴィスは自爆した。


もしかすると、あの馬鹿が私にしたがったように――ジェフリーも、トラヴィスにああやって痴態を演じさせることで、留飲を下げようとしたのかもしれない。



「婚約解消だけでは、不足だと思った。それだけではきっと、昔からお転婆な君はどこにでも駆けて行ってしまう。だから、卑怯に感じるだろうが……同時に外堀も埋めさせてもらった。俺以外、誰の元にも行けないように」



熱を感じさせる彼の瞳に、強固な意志が覗く。


ジェフリーは、あの騒動を私が静観していられないだろうことも見越していた。


予想通り、うっかり私がジェフリーの姿で口出ししてしまったことにより、彼も舞台に上がることとなった。

そして何か口にするほど、周囲にいた人々にはジェフリーが私を庇っているように映っただろう。



「君が最後に言ったことは、最高だった。アデリナはいつだって可愛いから、俺の代わりに言ってくれて嬉しかった」



彼はそう口にすると、顔を綻ばせた。

その辺りに関しては私が自分で失言をしただけなので、責めるに責められない。



「――私、随分とジェフリーの手のひらの上で転がされていたのね」



ジェフリーはこの入れ替わりの機会に、とんでもなくやりたい放題してくれていた。

私の想像を軽々と超えるほどの行動力に、正直度肝を抜かれたと言わざるを得ない。



「転がすなんて、とんでもない。俺がアデリナのことを知り尽くしているだけのことだ」



彼の屈託のない笑みに、私も面映ゆい気持ちになってしまう。



「貴方の目論見は上手くいったようだけど、もしトラヴィスがもう少し賢くて、お父様に聞く耳がなかったらどうするつもりだったの?」

「そうなれば最終手段だ。婚約解消が叶わなければ、君の元婚約者に決闘を申し込むつもりでいた。少なくともそれで、あの男に悩まされることはなくなる」

「あっ、ソウデスカ……」



ジェフリーのご両親の懸念は最もだったらしい。

まさか決闘まで視野に入れていたなんて……。


将来有望な現役騎士相手では、トラヴィスなど一瞬のうちに切り捨てられていただろう。

そのとんでもない強さは、私もよく知るところだもの。



「……私、貴方の愛の深さに溺れてしまいそう」

「できることなら、ずっと溺れていてくれ。これまで抑え込んでいた分、歯止めが効きそうにない」



平静を保つために茶化したつもりが、ジェフリーは笑みを深めると共にやけに破壊力のある言葉を返してきた。

彼の強い視線に射抜かれて、私は自分の顔が熱くなっていくのを感じる。


耐えきれずに、私はそっと視線を逸らした。



――まさか、ジェフリーと婚約することになるなんて。



それに加え、急にこれほどまで強く想われていたのだと突きつけられて、衝撃が大き過ぎる。


嬉しくないわけじゃない。

というより……実際のところは、ものすごく嬉しい。


けれど素直に喜ぶには、恥ずかしさが勝った。



厳重に封をしたはずだった気持ちが、ジェフリーの言葉を受けて綻んでいくのを感じる。



幼いころは、ジェフリーと結婚するのだと思っていた。

ずっと一緒にいるのだと……。


しかし婚約者には別の人間が据えられ、私は自分の気持ちに蓋をした。



結婚して一緒にいられないのなら――気の置ける幼馴染として一緒にいれば良い。


実際、そうして過ごす時間は幸せだった。

……そのくせ、彼の周囲に女性の影がないことに、心の底では安心してもいた。



婚約者には、何の期待もしていなかった。

あの馬鹿がたとえどれほど優秀で素晴らしい婚約者だったとしても、同じこと。


相手がジェフリーでないのなら、誰だろうが違いなんて無かった。



――名も知らぬ少女が首を振り、軽やかに駆けていく姿が頭をよぎる。


彼女がひどく眩しかったのは……ジェフリーへ、自分の気持ちを真っすぐに伝えていたから。

彼女の勇気が尊くて、羨ましくて、私もそうできたら良いのにと思う心を、必死で抑えつけていた。


彼女の応援の言葉が耳に蘇り、ふと、背中を押されたような気がした。


皮肉かもしれない。

だけどきっと、彼女の応援は……相手が違えど、そういうことだった。

少なくとも私には、そのように思えた。



顔を赤く染め黙り込んだ私を、彼は機嫌良さそうに見つめている。


そのことにも戸惑ってしまいながらも、私は意を決して口を開いた。



「私……私も、ジェフリーに聞いてほしいことがあるの」



真剣な表情を浮かべた私に、ジェフリーの表情も引き締まる。



「小さいころから……本当はずっと、ジェフリーが好きだった。お転婆で変わり者の私を受け入れてくれるし、強いところはカッコいいし、ドレスや飾りが好きなところは可愛いと思う。今回してくれたことも……驚いたし、素直に喜べなかったけど、本当はすごく嬉しかったの。これからもずっと一緒にいられるなんて、幸せよ。大好き、ジェフリー。本当に、ありがとう」



はじめは驚いていたジェフリーだけど……私が言い終わるころには、初めて目にする蕩けるような笑顔を浮かべていた。



「俺もアデリナが大好きだ。可愛いのに、突拍子もなかったり……やると決めたことに真っすぐで。そんな、君らしい君が好きなんだ。君も同じ気持ちだったなんて、本当に嬉しく思う。ただ、お転婆なところは好きだが……もし俺から離れようとしても、絶対に逃がすつもりはない。そこだけは覚悟しておいてくれ」

「いや、その言い方は怖いから!」



そんなことを言いながら、二人笑う。


そうして、私とジェフリーの長年積もり続けた想いは通じ合ったのだった。



***



一時的に王宮の地下牢に入れられたトラヴィスとモニカ嬢だったが、彼らは引き起こした騒動のせいでとんでもない悪評が立ち、集中的な非難を浴びた。

そして王宮からの呼び出しに泡を食って駆け付けた父親たちを大激怒させた。


不名誉な招集だけでも耐え難いにもかかわらず、彼らの言動や振る舞いは非常識過ぎて、当人たちのみならず家格を貶めるほどのものだったためである。



伯爵家の後継者に据えられていたトラヴィスは廃嫡され、家系図からも名前が抹消された。

その後は少ない荷物だけ持たされ、放逐されてしまったという。


モニカ嬢は辺境にある修道院へ送られたそうだ。


結局、あれほど嫌った女との婚約破棄には成功したものの、彼らが共に人生を歩むことは叶わなかった。




夜会での醜聞はやがて忘れ去られ、仲睦まじい夫婦の話題へと移り変わる。


新しい訓練方法を編み出した騎士が隊長に就任し、それを支える妻が抜群のセンスを発揮して社交界の流行を作り出すことになるのは、もう少し先のお話――。




長々とお付き合いいただきありがとうございます!!!


というわけで、男女が入れ替わっている最中に婚約破棄されてしまうお話でしたw

意図せず入れ替わっちゃった系ではなくて、思いっきり自分たちの意思で入れ替わっています。

(入れ替わりの詳細につきましては、あまり深く突っ込まないでくださいませ←)


婚約破棄モノで、実はヒーローが手を下している(ざまぁしている)んだけど、婚約破棄されている当人が反撃しているように見えて、主人公は自己弁護をしているつもりなのに、傍から見るとヒーローが庇っているように見えたら(ややこしいけど)面白いなーと思って書きました。

笑い要素多めでサラッと軽い雰囲気を目指したのですが、貫ききれませんでした……!!


そしてジェフリー視点も書きたい気持ちはありますが、もし書くとしても、いつになるやらです(汗)


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ここまでお読みいただきありがとうございました!


2023/04/24 終盤部分を変更しました。

※告白シーンをガッツリ書き換えています。


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[良い点] 重い剣をふるってたのしー!!ってなってるのが面白かったです。高い視線、いくらでも動ける体、反応のいい感覚とか楽しかっただろうな~! 身支度する時間が早い!!というのが特に。わかる! [気に…
[一言] トラヴィスは、婚約破棄以前に貴族としての心構えも忘れてたんですかね。 第四王子の収拾の付け方が完璧です。 まぁ、国としてもおバカさんが自分の代にいてほしくはないから、良かったかもしれません。…
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