第9話 少女+衝撃=救助
*注意
本話には人命救助シーンが含まれますが、その方法はあくまでもフィクションであり、空想上のお話です。決して真似をしないでください。
なんか、目の前の簀巻き(にした質の悪い酔っ払い)が急に紫色の泡を噴き出した。
「ごぼ、ごぼぼぼぼぼ!!」
「おい、しっかりしろ!!なんかヤバそうだぞ!!」
「うーん。落とし前つける前に死なれるのも困るんだけどねえ。」
店員は慌ててるのに、店長は冷静・・・っていうか呑気だな。
まあ、料理するうちに気が晴れて、そこまで興味が無くなったんだろうけど。
けれど、こいつは貴重な手がかりだって、あたしのカンは囁いてる。
なら、こいつに死なれるのは困る訳で・・・うーん。
「よし、ちょっとそれ借りますねー。」
「え?ちょ、ルタちゃん何する・・・って簀巻きを投げたぁっ!?」
こいつ、口から泡吹いてるってことは体内に何かあるってことだよね?
だったら話は簡単だね。
真上にぽーいと放り投げてから、くるーっと回って・・・
「ちょいやー!!」
「蹴ったあああああああああああ!?」
あたしの蹴りで飛んでいく簀巻き。
さて、こんなことをした目的の方は・・・と。
「うん、おっけー!!」
「いや、何がおっけーなのルタちゃん?あれかい?新手の落とし前のつけ方?冥途送り?君、メイドじゃなくてウェイトレスだからね?」
「いや、何をうまいこと言ってるんですか店ちょ「料理長ね。」・・・料理長。」
この状況でも訂正求めて来るんかい!!
まあ、それはともかく。
「あたしだって、こんなのにトドメ差したくないですよ。そうじゃなくて、あれです。」
あたしが指さしたのは、簀巻きが蹴られて飛んで行ったその道中。
そこには、大量の紫色の液体が飛び散っていた。
うわあ・・・改めて見るとばっちぃなぁ・・・。
「これは・・・ヤツの吐しゃ物か。・・・そうか、そういうことか。」
「えっと、料理長。どういうことなんです?俺には何が何やら・・・。」
そう店長に尋ねるのは、さっきから慌てふためいている店員くん。
「唯一わかるのは、ルタちゃんがゴリ・・・」
「はい?」
ニッコリ。
「ひぃっ!?や、やっぱり何もわからないですぅ!!」
「ははは。で、ルタちゃん。」
「はい。」
「君は、ヤツを吐かせることで治そうとしたんだね。」
「え!?それっていったい・・・?」
「さっき、ヤツは紫色の泡を口から吹いてた・・・つまり、体の中に何かがある状態だって思ったんだね?」
「はい、そうです。」
「で、とりあえず強い衝撃を与えて胃の中を空にさせたと。」
「それが一番手っ取り早かったので。」
さすが店長。
全部わかってるじゃん。
「どうやら泡は止まったみたいだけど・・・これ、原因が胃の中由来じゃなかったら、ただダメージ与えただけじゃない?」
・・・あ。
「確かに・・・。で、でも!!ルタちゃんはそこも考えた上で蹴ったんだよね?」
「いやあ、そこまで考えてないんじゃないかな?」
全部・・・わかってるじゃん・・・やっべ。
「ま、まあ!!そんなことより、ヤツの様子をもっと詳しく見た方がいいんじゃないですか?」
「(話を逸らしたね。)・・・まあ、いいけどね。よし、コイツを奥に運・・・汚いな。」
そうなのだ。
あたしが思いっきり蹴って吐いたのが空中だったから、簀巻きの体も含めたいろんなところに吐しゃ物が散らばっちゃってるのだ。
「じゃあ、ルタちゃん。こうした責任を取って、1人で掃除よろしくね。」
「えー!?人命救助の結果じゃないですか!!手伝ってくださいよ!」
「嫌だよ汚いし。簀巻きだけは綺麗にして運んどくから、頑張ってね。これ、料理長命令。」
「えー!!」
「あはは。頑張ってね、ルタちゃん。」
「ちょ、手伝ってくれないの!?」
人手ぷりーず!!
「いや、僕は明日への仕込みとかあるし・・・(触りたくないし。)」
「後半聞こえてますけど!!」
「はっはっは!!とにかく、頑張って!!」
そう言って、店員くんはそそくさと引っ込みやがった!!
くそ!!あいつ!!
一応、人を助けた結果なのに納得がいかない!!
とはいえ、そんな不満を言っててもどうしようもなく、仕方なくあたしはお掃除をする羽目になったのだった。
くそぅ。
次回は5月6日(土)の午前6時に更新予定です。