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問題児in追放修道院  作者: バタ足攣り太郎


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85/85

第85話 路地裏+再開=誠意

「どのツラ下げて来やがったんだい、このスットコドッコイ!!」


「ぎゃふんっ!?」


「「・・・・・・」」


 今、あたしの目の前では、いい年したおっさんが飲み屋から叩き出されて情けない恰好をしている。


 とりあえず、おっす、あたしリタちゃん。


 このクエイ公国での支援が受けられないとわかったあたしたちは、ガイルのおっさんの持っている伝手とやらを頼ってここまで来たわけなんだけど・・・


「おいおい、二十年ぶりに会ったってのに、ずいぶんなご挨拶じゃねぇか」


「ふん!お前みたいな薄情なオヤジ、あたしの知り合いには居やしないよっ!」


 それで、見せられてるのが、中年オヤジが妙齢の女将にキレられてる光景ってわけ。


「小さい頃は兄ちゃん兄ちゃんってついてきてくれたってのに、時間ってなぁ残酷なもんだぜ」


「う、うっさい!!誰があんたなんかに!!」


 女将が顔を真っ赤にして突っかかっている。


 なにこれ、痴話喧嘩?


 あたしらは何を見せられてるの・・・?


「ねぇ、お父さん?」


「お、おう、ティータ。ちょっと待っててくれ、すぐに話を通すから。だから、その冷たい目を止めてもらえる?ミリーも揃ってその目はつらい」


 いや、無理でしょ。


「む、娘!?しかも、二人も・・・!?」


 あっちはあっちでなんかダメージ受けてるっぽいし。


 なに?昔のロマンス?お願いだから勝手にやって、あたしらを巻き込まないでくれる・・・?


「と、ともかく、ちょいと事情があってな。また、店を頼りたいんだ。親父さんに繋いでくれねぇか?」


「・・・はぁ」


「なぁ、顔出せなかったのは謝るからよ、頼むぜ、アリス」


 なんか、すごいかわいい名前してる。


 確かに、こんな路地裏にある飲み屋の女将してる割には整った顔立ちをしているし、髪もきれいな金髪で、アリスって名前はピッタリかもしれないね。


 で、そのアリスは一瞬、その目を悲しみで揺らした後にガイルのおっさんの目をしっかりと見て口を開いた。


「いないよ」


「・・・何?」


「親父は・・・先代は、一年前に亡くなった。昔のよしみで教えてあげる。()()()()()()()()()()()()()()()さね」


「!!それは、本当か!!」


「ああ。先代店主は、今の死因で確かに亡くなった。これは、この店にかけて嘘偽りなく断言する」


「なんて、こった・・・」


 事故死・・・にしては、雰囲気とガイルのおっさんの反応がおかしい。


 これは、隠語?


 何か、事情がありそうだな。


 とりあえず、あたしとリリスはアイコンタクトをして頷きあい、口を挟むことにした。


「ごめんなさい、あなたとお父さんに何があったかはわかりませんが、わたくしたち、頼る宛てがありませんの。どうか、力を貸してくれませんか?」


「お願い、おねえちゃん!」


 元の口調を隠したリリスに加えて、あたしも年齢相応に見えるように振舞って頼み込む。


 そんなあたしたちを見た女将は、少し視線を巡らせた後に溜息を吐くと、さっきよりも冷えた目を向けてきた。


「人に物を頼むなら、それ相応の態度を示しな」


「「・・・」」


 態度には出さないものの、あたしたちは内心で大いに驚愕した。


 バレている。


 この人には、あたしたちの偽装が。


 目の前のアリスという女性は、それを見抜いた上で、今から態度を改めるならとりあってやると、最後の警告をしてきたんだ。


 ミリーは少しためらっているようだけど、あたしはそうじゃない。


 ガイルのおっさんのこれまでの態度、それに目の前の女性の聡明さと洞察力・・・ここは、賭ける場面だ。


「ごめん、あたしらが間違っていた。改めて、力を貸してくれないかな?シエル王国とクエイ公国、両国のために」


「ティータ!」


「ミリー、この人に隠し事はダメだよ。少なくとも、必要な情報と誠意は見せないと。」


「そう・・・あなたがそう判断したのなら、わたくしもそれに倣いましょう。・・・失礼いたしました。わたくしたちはシエル王国の者です。両国の友好のため、どうか力をお貸しいただきたいのです」


 あたしとリリスは揃って礼をとる。


 もちろん、淑女らしくカーテシーでね。


 これで、高等な教育を受けた人間だってことはアリスに伝わったはず。


「・・・よし、最低限の礼儀はできるようだね」


 どうやら、なんとか弾かれずには済んだみたいだ。


「ほら、お嬢さんたちが誠意を示したんだ、あんたはどうすんだい?」


 アリスが問いかけたのは、もちろんガイルのおっさんだ。


 あたしらの事情を知っているせいか、あっさり情報を開示したことに目を見開いて驚いたガイルのおっさんは、改めてアリスに向き直る。


「そうだな、娘たちにだけ頭を下げさせるわけにはいかんよな。」


 そう言うと、おっさんは姿勢を正し、シエル王国の男性貴族としての礼をとる。


「今はガイルとしか名乗れない。しかし、我が祖、我が名において、あなたに真摯な謝罪を。そして、どうか我らにご助力を願えないだろうか、レディ」


 かっこつけ・・・ってわけでもなく、身に着けた礼法を最大限に発揮しているガイルのおっさんは、元当主なだけあって、あたしから見てもかっこよかった。


 それはアリスも同じようで・・・いや、アリスには特に効いたみたいで、顔を耳まで赤くしながら、「わ、わかったよ!わかったから、元に戻しな、調子が狂う」なんて言っている。


「・・・ここでは詳しい話もできないね。いいさ、三人とも、中に入りな」


 そう言って、アリスが店に入っていくので、あたしらもそれについていく。


 どうやら、ガイルのおっさんの伝手とやらを、なんとか頼ることができそうで、あたしは少し、胸のつかえがとれた気がしたのだった。




 次回の更新は3月14日(土)午前6時の予定です。

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