第81話 回復+食事=上書き
「よっ・・・ほっ・・・はっ!」
体を曲げてー、戻してー、縮めてー。
「とぅっ!」
軽くジャンプ。
「・・・うん、もう大丈夫かな?」
「もう大丈夫かな、ではありませんわ」
「あ、おはようリリー。」
「おはようございます、ルタさん。・・・はぁ」
朝起きて、体を解していたら、リリーにため息を吐かれた。
「何故?というお顔をなさっていますが、さっきの出来事をお忘れ?」
「あー・・・」
今朝、寝起きでのんびり散歩してたら、メイドさんに悲鳴を上げられたんだよねぇ。
「食べて寝たら治るって、ちゃんと言ってあったのに」
「それが通じるのは身内だけですわよ」
リリス、二度目のため息。
「まあ、お小言はこれくらいにしておきましょう。ゼリア子爵がお待ちですわ。急がなくても良いとのことでしたけれど、その状態ならすぐに行けますわね」
「そうだね。これからのこともあるし、さっさと行くとしよっか」
「では、ついていらっしゃい」
あたしは先導するリリスの後を追う形で寝かされていた部屋を出た。
そして五分ほど歩いて通された部屋の中には、優雅に紅茶を嗜むゼリア子爵の姿が。
それと・・・
「あれ、前子爵、もう起きて大丈夫なの?」
地下での監禁によって弱っていた前ゼリア子爵の姿もあった。
前子爵はさすがに自分で歩くことはできないようで、車椅子に座って、
「むぐ?おお!来たか!救世主殿!!はぐっ!!」
豪快に、大きなステーキにかぶりついていた。
・・・あー、なんだろう、この感じ、身近ですっごい覚えがあるなぁ。
ちらりと横目でリリスの様子を窺ってみれば、なるほど遠い目をしている。
これ、共通認識で確定かなぁ。
「ほれ、いつまでも突っ立っておらんで、こっちへ来るといい。がふっ、はぐっ」
「行儀が悪いですよ、父上。仮にも、淑女の前です」
おい、仮にもって何だ。
あたしたちは立派な淑女だぞ、このスットコドッコイが。
「仕方ないであろう、腹が減っているのだから。それに、たくさん食べて早く治さねばな」
うん、間違いない。
この人、院長とかと同じ、フィジカル化け物タイプだ。
「あなたもそちら側でしてよ(ボソッ)」
「おい、心を読むな、脳筋魔法使い」
あんたもモーニングスターぶん回してるんだから、こっち側だよ。
ともかく、あたしらは促された通り、子爵親子の座るテーブルに着く。
すると、目の前には薫り高いハーブティーが給仕されるわけなんだけど・・・
「肉の匂いで、お茶の香りが搔き消えてる・・・」
「ティータイムとして見れば、落第ですわね・・・」
一口飲んだハーブティーはおいしいはずなのに、微妙な気分になるあたしたちである。
「はぐっ!おかわ・・・むぐおぉ!?」
「はぁ・・・がっつき過ぎですよ、父上。ほら、お水です」
現子爵が差し出した水を、喉に肉を詰まらせた前子爵が勢いよく飲む。
これ、行動だけ見たらどっちが父親かわかんないな。
そんな子爵たちを微妙な気分で見ながら、あたしたちは話し合いが始まるまでお茶を楽し・・・いや、楽しめてないけど、楽しむのだった。
焼けた肉の匂いって、強いよねぇ・・・。
次回の更新は2月14日(土)午前6時の予定です。




