第77話 異形+怪力=限界
『ずいぶんと足癖が悪い娘ですね。ほれ、反省なさい。』
ブン!
ゴシャッ!!
「がっはっ・・・!?」
ぐぅ・・・あたし・・・リタちゃん。
一番奥の牢屋に囚われていた前ゼリア子爵。
その身柄を確保して撤退しようとした矢先に現れた異形のピエロに蹴り食らわせようとして、返り討ちにあってしまったよ。
派手にぶん投げられたあたしは、その勢いの強さから受け身も碌にとれずに鉄格子に叩きつけられた。
肺から空気が押し出され、背中には激痛。
おまけに、掴まれた脚は身体強化をしていたはずなのに青黒く変色している。
どんな力してるのさ、あのピエロは・・・。
「ルタさん!?くっ!」
あたしが撃退されたのを見て、反射で攻撃しそうになったのを、リリスは無事にこらえたね。
『ほう、状況判断はしっかりしているようですね。そうです、あなたでは私には敵いません。』
地面につきそうな長い腕を伸ばし、異形のピエロは聖職者が迷える子羊を誘うように話しかけてくる。
『さあ、おとなしくそれをお渡しなさい。さすれば、ここは見逃してあげましょう。』
「何を・・・何を言うか!このような状態の父を置いて行くことなど、できるはずもない!」
『おや、あなたは・・・ほう。強い衝撃で目が覚まされましたか。では・・・』
ピエロは長い両腕を、まるで骨や関節なんて無いように目の前でぐるぐるとネジリ、その先端を花のように開く。
『もう一度、夢の世界へと旅立っていただきましょうか。『夢現』』
ピエロの腕の花からは鱗粉が噴き出し、それは現ゼリア子爵へと直撃・・・
「させませんわ!」
する前にリリスによって防がれた。
ゼリア子爵をリリスが庇う形だったんだけど、リリスに直撃した鱗粉はそのまま弾け、一見変化は見られない。
『ふむ・・・やはり魔法抵抗力の高い個体には効かないようですね。まだまだ改良の余地がありそうだ。ああ、それと・・・』
ピエロがそう言った次の瞬間、リリスの体が弾かれるように横にかっとんだ。
『警戒がお留守ですよ。』
ガシャン!と音を立てて、リリスもあたしと同じように鉄格子に叩きつけられる。
あたしと違って、リリスはそこまで耐久力は高くない。
今ので、意識を失ったと考えていい。
まずい、ゼリア子爵親子を守っていた盾が、これで完全に剝がされた。
『さて、それでは心置きなく回収させていただき・・・おや。』
だから、あたしが立ちふさがる。
さっきの衝撃で全身ボロボロだけど、まだ意識のあるあたしが。
『やれやれ、さっきのでご理解いただけなかったのでしょうか?あなたでは、私に勝てないという事実を。』
「いただけなかったね。」
だって、あたしはまだ動いてる。
『そうですか。では、その愚かさを抱えたまま沈みなさい。』
ピエロは長い両腕をムチのようにしならせて叩きつけて来た。
その速度は凄まじく、普段のあたしでは避けられないほどだ。
だから・・・
『!?どこに・・・がっ!?』
普段とは違うことをした。
あたしがやったことは外から見たら単純だ。
ものすごく早く踏み込んで、ものすごく重いパンチを食らわせた。
ただ、それだけ。
『ぐっ・・・なんです、その姿は!?』
でも、今のあたしは全身に灰色の線が走り、それが光り輝いている状態だ。
おまけに、肌は少し紅潮して煙も少し上がってる。
「行くよ、化け物ピエロ。あんたは、あたしが潰す!!」
どこからどう見ても負担全開のこの状態は、あまり長くは続けられない。
ここから一気に勝負を決める!
あたしはそう覚悟を決め、異形ピエロへと立ち向かうのだった。
次回の更新は1月17日(土)午前6時の予定です。




