第76話 探索+救出=現出
新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。
バカン!!
そんな音と一緒に扉が地面へと叩きつけられ、周囲に衝撃波が広がった。
「「「「どわぁぁぁぁ!?」」」」
きっと見張りだろう、数人がそれで吹き飛ぶ。
『ビィィィィィ!!!』
そして鳴り響くこの耳障りな音は確実に侵入者を知らせる警報。
奥から近づいてくる足音が聞こえる中、辺りを見渡して状況を確認することにしたあたしはリタちゃん。
フルパワーの拳で鉄の分厚い扉を破壊した、メイドさんの恰好をしている修道女です。
さてさて、そんなこんなであたしたちが突入したこの地下・・・
目の前には一本の長い道があって、その脇には鉄格子が並んでる。
うん、完全に牢屋だね、これ。
「よくもまあ、このような規模のものをこんなところに造ってくれたものだ。」
ゼリア子爵も呆れを隠そうともしない。
というか、むしろ軽く感心が入ってるな。
あと、好き勝手やられた怒りが少々ってとこかな。
「侵入者だ!」
「迎え撃・・・お前は!?」
「ん?」
迎撃に出て来た男の一人がこっちを見て固まる。
でもあれ?確か、こいつって・・・うわ、マジで?
「釈放するまではわかってたけど、顔が割れてるのを重要施設の警備に回す?ねえ、跡賊のお頭さん?」
そう、こいつはあのときあたしが撃退した跡賊の頭だった人物。
なのに、そんな立場だったにしては身ぎれいにして、良い鎧を身にまとってらっしゃる。
まあ、本来の立場を考えればそうだろうね。
だから、あたしはポケットから、あの時にあえて門番に渡さなかったそれを出して見せびらかす。
「これ、なーんだ?」
「!?」
跡賊の頭だった男はそれ・・・紋章が刻んであるペンダントを目にすると、無言であたしへと襲い掛かって来た。
それはもう必死に。
つまりそれは、視野の狭窄を意味する。
きっと、ヤツが一番に考えているのはペンダントの奪還。
なので・・・
「ぽーい!」
「!!」
あたしはそれをゆるーく目の前に放ってやる。
男は迷うことなくそれに飛びつき、ペンダントをその手中へと・・・
「はい残念。」
収める寸前にあたしがキャッチ。
そして、流れるように回し蹴りを男へと叩き込む!
「ぐぎゃっ!?」
ベゴン!と鎧がへこむ音と共に、男はあたしに蹴り飛ばされていった。
そして、その流れのまま周囲にいた他の警備にもあたしは攻撃を加えていく。
動きを止めず、流れるように。
数々の体術を駆使して一人一人確実に潰して進む。
「この・・・!」
「お邪魔でしてよ。」
「ごぁっ!?」
そして、撃ち漏らした敵はリリスが適宜沈めてくれている。
リリスは本来は魔法が主体の戦い方だが、この空間には魔封じの効果が張ってあるので、外に放出するタイプの魔法は使えない。
でも、リリスだって修道院に所属する修道女。
格闘術や近接戦闘の一つや二つ、お手の者なのだ。
ってか普段からモーニングスターぶん回したりもしてるからね、この金髪ドリル。
まったく、できる同僚を持って、あたしは幸せだね。
ちなみに、ゼリア子爵はそんな様子を興味深そうに見ながらついてきてるよ。
子爵も身のこなしを見る感じ、最低限は戦えるみたいだけど、出番は無さそうだね。
さて、そんなこんなで敵を倒しながら進んでいくと、行き止まりにたどり着いた。
そこにも鉄格子が嵌めてあり、どうやら人が捕らえられているようだ。
そこにいたのは・・・
「父上!!」
鎖につながれて微動だにしない、前ゼリア子爵の姿であった。
「ご無事ですか!?父上!?」
とりあえず鉄格子の外からゼリア現子爵が声をかけるも反応はない。
やはり、前子爵も魔道具で意識を朦朧とさせられてる感じかな。
とりあえず、今すぐにでも助けたそうな現子爵をなだめつつ、あたしとリリスは罠の有無を確認。
安全を確保すると、あたしが素手で鉄格子を捻じ曲げて檻の中へと入る。
「父上、なんと、お労しい・・・。」
近づいてみればはっきりとわかるその姿はひどく痩せていて、ほとんど骨と皮だけとなっていた。
いますぐに命の危険はないようだが、放置しておいていい状態とも思えない。
「早く連れ出して、医者に見せましょう。」
「ああ、そうだな。どれ、私が背負って運ぼう。失礼します、父上。」
ゼリア現子爵が前子爵をおぶり、今度は来た道を戻りにかかる。
そのときだ。
『おやおや、困りますね。その方を連れて行かれては。』
そんな声と一緒に、あたしたちが歩いていた少し先の空間、そこに黒い球体が現れた。
そして、球体の中央にピシピシと赤黒いヒビが入ると、まるで卵から雛が孵化するかのように、そこから赤いピエロのお面がぬっと出て来た。
出て来た赤いピエロのお面を中心にさらに細かいヒビが走ると、黒い球体は破裂。
中から出て来たピエロの体は黒い修道服のようなものを纏っており、両腕が地面につきそうなほどに長い。
とはいえ、どんな異形であろうと、あたしたちの敵には変わりない。
あたしはすぐさま踏み込むと、異形のピエロへとムーンサルとキックを叩き込もうとして、
「!?」
『ずいぶんと足癖が悪い娘ですね。ほれ、反省なさい。』
その足を長い腕で思い切り掴まれ、脇の鉄格子へと投げ飛ばされ、叩きつけられてしまうのだった。
次回の更新は1月10日(土)午前6時の予定です。




